本はごはん。
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遙か昔、小娘の時に「青春の蹉跌」を読んで以来の石川先生です。
48歳のおやじのささやかな抵抗です。
抵抗する前から、抵抗しきれず有るべき場所へ帰ることが判って
いながら、ささやかな抵抗を試みます。
世代感の違いというか、当時の48歳と今の48歳はちょっと違うとは
思うんですが、抱えている物というか漠然とした不満というか、
そういうものは今も昔もあまり変わらないように思います。
そしてそれは、男性にも女性にも共通の物で、
「こんなはずではなかった」
「本当の自分はこんなではない」
ということから始まる。
ひとつまえの中村うさぎの「女という病」で、男も女も「承認欲求」を満たすために生きており、
女性は「愛される」という手段でその「承認欲求」を満たそうとする傾向が高いのではないかと
書きましたが、男性の場合の「承認欲求」を満たす手段は、上手い表現が見つかりませんが
「頼られる」ということなのではないかと。
そしてその「頼られる」ためには、腕力であったり経済力であったり影響力(カリスマ性も含め)
であったりとか、つまりは「POWER」を必要とするのではないか、と。
(あ、ヒモもそうですよ。ヒモというのは女を依存させてなんぼですから)。
で、女性の場合は「愛されない」ことが致命的になったときに「女という病」を発症し、
男性の場合は「頼られる」ためのパワーが足りないときに、それを何とかして手に入れようとして
「男という病」を発症するのではないかと思ったりしました。
そんなことをつらつらと考えながら、しかしまだちょっと浅いのでもう少しこれは考えてみたい
テーマであります。
あ、あとこの本を読んでいて、マーク トウェイン の「不思議な少年」を思い出しました。
「四十八歳の抵抗」 石川 達三 ★★
48歳のおやじのささやかな抵抗です。
抵抗する前から、抵抗しきれず有るべき場所へ帰ることが判って
いながら、ささやかな抵抗を試みます。
世代感の違いというか、当時の48歳と今の48歳はちょっと違うとは
思うんですが、抱えている物というか漠然とした不満というか、
そういうものは今も昔もあまり変わらないように思います。
そしてそれは、男性にも女性にも共通の物で、
「こんなはずではなかった」
「本当の自分はこんなではない」
ということから始まる。
ひとつまえの中村うさぎの「女という病」で、男も女も「承認欲求」を満たすために生きており、
女性は「愛される」という手段でその「承認欲求」を満たそうとする傾向が高いのではないかと
書きましたが、男性の場合の「承認欲求」を満たす手段は、上手い表現が見つかりませんが
「頼られる」ということなのではないかと。
そしてその「頼られる」ためには、腕力であったり経済力であったり影響力(カリスマ性も含め)
であったりとか、つまりは「POWER」を必要とするのではないか、と。
(あ、ヒモもそうですよ。ヒモというのは女を依存させてなんぼですから)。
で、女性の場合は「愛されない」ことが致命的になったときに「女という病」を発症し、
男性の場合は「頼られる」ためのパワーが足りないときに、それを何とかして手に入れようとして
「男という病」を発症するのではないかと思ったりしました。
そんなことをつらつらと考えながら、しかしまだちょっと浅いのでもう少しこれは考えてみたい
テーマであります。
あ、あとこの本を読んでいて、マーク トウェイン の「不思議な少年」を思い出しました。
「四十八歳の抵抗」 石川 達三 ★★
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中村うさぎという作家は、ファンタジー小説は読んでいませんで
したが、買い物依存で出てきた頃はすこし読んでいました。その後
ホスト→整形→風俗と変遷していく毎に、少しずつなんとなく
読まなくなっていたのですが。
この本は女性がおこした、または巻き込まれた事件について、
彼女たちの心理を著者が推測した「仮説集」で、
ノンフィクション、ルポルタージュとは言えません。
それぞれの仮説はそれなりに説得力があり、そう感じるということは
自分にも思い当たる節があると言うことを認めている以外の何物でも
ないという痛い事実を認識せざるを得ないのですが。
「女という病」というタイトルですが、結局のところ人間は性別にかかわらず
「承認欲求」を満たすために生きているのであり、女性の特性としてその
「承認欲求」は「愛される」という形(方法)で満たそう、満たされるべきだとする傾向が高く
(または無意識のうちにそうすり込まれているケースが多く)、
「承認欲求」が「愛される」という形で満たされない、または致命的にその道が断たれると、
症状として「女という病」が発症するのではないかと思います。
思っていた以上に面白い本でしたが、連載していた当時のページ数の問題からか、
各事件とも致命的に短い。もう一歩掘り下げていただきたいところ。
「女という病」 中村 うさぎ ★★★
したが、買い物依存で出てきた頃はすこし読んでいました。その後
ホスト→整形→風俗と変遷していく毎に、少しずつなんとなく
読まなくなっていたのですが。
この本は女性がおこした、または巻き込まれた事件について、
彼女たちの心理を著者が推測した「仮説集」で、
ノンフィクション、ルポルタージュとは言えません。
それぞれの仮説はそれなりに説得力があり、そう感じるということは
自分にも思い当たる節があると言うことを認めている以外の何物でも
ないという痛い事実を認識せざるを得ないのですが。
「女という病」というタイトルですが、結局のところ人間は性別にかかわらず
「承認欲求」を満たすために生きているのであり、女性の特性としてその
「承認欲求」は「愛される」という形(方法)で満たそう、満たされるべきだとする傾向が高く
(または無意識のうちにそうすり込まれているケースが多く)、
「承認欲求」が「愛される」という形で満たされない、または致命的にその道が断たれると、
症状として「女という病」が発症するのではないかと思います。
思っていた以上に面白い本でしたが、連載していた当時のページ数の問題からか、
各事件とも致命的に短い。もう一歩掘り下げていただきたいところ。
「女という病」 中村 うさぎ ★★★
実は、読まず嫌いしていた作家です。
文庫になっていたので読んでみました。
何というのか独特のリズム感と、短編にしては凝縮性の高い作品が
詰まっているように感じます。
が、この著者の特筆すべき点は、対象(この場合は「生」つまりは「死」で
あり、「死」であるところの「生」)との絶妙な距離感ではないかと思います。
これ以上距離を置けば何も訴えてこないし、これ以上近寄れば(判りやすく
なるとはおもいますが)よくある話に落ちてしまいそうな、ぎりぎりの距離感。
なかなか面白い作家です。
「かなしぃ。」 蓮見 圭一 ★★★★
文庫になっていたので読んでみました。
何というのか独特のリズム感と、短編にしては凝縮性の高い作品が
詰まっているように感じます。
が、この著者の特筆すべき点は、対象(この場合は「生」つまりは「死」で
あり、「死」であるところの「生」)との絶妙な距離感ではないかと思います。
これ以上距離を置けば何も訴えてこないし、これ以上近寄れば(判りやすく
なるとはおもいますが)よくある話に落ちてしまいそうな、ぎりぎりの距離感。
なかなか面白い作家です。
「かなしぃ。」 蓮見 圭一 ★★★★
面白いの一言に尽きます。
江戸時代の旗本の奥様の日記。こんなのが残ってるんですねー。
しかもこの奥様、かなり知的。水野忠邦の天保の改革を手厳しく批判
しています。その批判が当たっているかどうかではなく、まずこの
時代の女性が批判していたという事実と、かなりしっかりとした
論理を展開しているところに驚きます。
またこの時代の風俗や文化、例えば今も続く隅田川の花火なんかに
ついてもとても生き生きと表現されていて、なまじっかな資料を
読むより面白くリアルです。
この本は彼女の日記の現代語訳というわけではなく、著者が解説を加えつつ
日記を引用しながら紹介していくスタイルなのでちょっと物足りなさを
感じますが、入門というか、とばくちにはとても良い本だと思います。
「旗本夫人が見た江戸のたそがれ—井関隆子のエスプリ日記」 深沢 秋男 ★★★★
江戸時代の旗本の奥様の日記。こんなのが残ってるんですねー。
しかもこの奥様、かなり知的。水野忠邦の天保の改革を手厳しく批判
しています。その批判が当たっているかどうかではなく、まずこの
時代の女性が批判していたという事実と、かなりしっかりとした
論理を展開しているところに驚きます。
またこの時代の風俗や文化、例えば今も続く隅田川の花火なんかに
ついてもとても生き生きと表現されていて、なまじっかな資料を
読むより面白くリアルです。
この本は彼女の日記の現代語訳というわけではなく、著者が解説を加えつつ
日記を引用しながら紹介していくスタイルなのでちょっと物足りなさを
感じますが、入門というか、とばくちにはとても良い本だと思います。
「旗本夫人が見た江戸のたそがれ—井関隆子のエスプリ日記」 深沢 秋男 ★★★★
読み終わってから気がつきましたが、下で「もう切るわ」を取り上げた
井上荒野さんですね。
食べ物と愛、がテーマですが、確かに「食べる」という行為と「性愛」
という行為は、根源的に同種の物なんじゃないかと思います。
直木賞候補作ということで期待して読んだんですが、正直なところ、
直木賞本賞はもちろん、候補作になったのもちょっとどーなんでしょうか、
という感じ。
なんかちょっと甘い、薄い。
短編集なんですが、多くの短編が「不倫」関係にあるのもちょっと食傷してくるし、
特に男性の描き込みが薄いというか。出てくる男性はみんな、ぺらんぺらんで
薄っぺらい感じ。
テーマである「食べ物」も、各短編のキーワードとしては弱く、とりあえず
なにか食べ物を出しておきましたみたいにしか思えない。
ちょっと残念。
「ベーコン」 井上 荒野 ★★
井上荒野さんですね。
食べ物と愛、がテーマですが、確かに「食べる」という行為と「性愛」
という行為は、根源的に同種の物なんじゃないかと思います。
直木賞候補作ということで期待して読んだんですが、正直なところ、
直木賞本賞はもちろん、候補作になったのもちょっとどーなんでしょうか、
という感じ。
なんかちょっと甘い、薄い。
短編集なんですが、多くの短編が「不倫」関係にあるのもちょっと食傷してくるし、
特に男性の描き込みが薄いというか。出てくる男性はみんな、ぺらんぺらんで
薄っぺらい感じ。
テーマである「食べ物」も、各短編のキーワードとしては弱く、とりあえず
なにか食べ物を出しておきましたみたいにしか思えない。
ちょっと残念。
「ベーコン」 井上 荒野 ★★
先に読んだ同じ著者の『チーム・バチスタの栄光』について書こうかと
思ったのだけども、まあベストセラーだし映画にもなるらしいし、あちこちに
書かれているだろうしということで、同じ著者の『死因不明社会』のほうを
取りあげてみます。
TVをつければ煩いキャスターやら政治家やらが、やれ「格差」「格差」と連呼
し、煩いことこの上ない昨今。しかしこのあいだ上海に行ってきたあたくしは
正直なところ「日本の格差なんて甘い」と思ってしまっておりました。
(だってさー。中国の格差ってはんぱじゃないんだもん)。
しかしこの本を読むと、「死因特定」というジャンルに於ける地域格差の大きさには
(中国の圧倒的格差を目の当たりにしたあたくしでも)驚きます。
しかし更に正直なところ、自分が死んでしまったらべつに死因特定とかしてくれなくても
まあいいよ、と思います。
ですがこれが自分ではなくて、自分の大切な人となれば話は別です。
やっぱり理由は知りたい。原因は知りたい。
著者の自説も提案もとても論理的に構成されており、とても美しい。
個人的にも、なまじっか全身解剖されるより、著者の提案する Ai のほうがよっぽど良いです。
■(金銭的/時間的)低コスト
■遺族の心理的負担の軽減
(ほんとうはもっとメリットがありますが)このふたつが揃っただけでも実施に移す価値
があると思うんですが。資本主義社会のOLにどっぷり浸かっていたあたくしには、
厚生労働省のアルゴリズムは(日本語は理解できるけど)、まったく判りません。
この本を現厚生労働省幹部が読んだら、にやり、と笑うのでしょうか。
それとも、憮然として読まなかったことにするのでしょうか。
「死因不明社会」 海堂 尊 ★★★
思ったのだけども、まあベストセラーだし映画にもなるらしいし、あちこちに
書かれているだろうしということで、同じ著者の『死因不明社会』のほうを
取りあげてみます。
TVをつければ煩いキャスターやら政治家やらが、やれ「格差」「格差」と連呼
し、煩いことこの上ない昨今。しかしこのあいだ上海に行ってきたあたくしは
正直なところ「日本の格差なんて甘い」と思ってしまっておりました。
(だってさー。中国の格差ってはんぱじゃないんだもん)。
しかしこの本を読むと、「死因特定」というジャンルに於ける地域格差の大きさには
(中国の圧倒的格差を目の当たりにしたあたくしでも)驚きます。
しかし更に正直なところ、自分が死んでしまったらべつに死因特定とかしてくれなくても
まあいいよ、と思います。
ですがこれが自分ではなくて、自分の大切な人となれば話は別です。
やっぱり理由は知りたい。原因は知りたい。
著者の自説も提案もとても論理的に構成されており、とても美しい。
個人的にも、なまじっか全身解剖されるより、著者の提案する Ai のほうがよっぽど良いです。
■(金銭的/時間的)低コスト
■遺族の心理的負担の軽減
(ほんとうはもっとメリットがありますが)このふたつが揃っただけでも実施に移す価値
があると思うんですが。資本主義社会のOLにどっぷり浸かっていたあたくしには、
厚生労働省のアルゴリズムは(日本語は理解できるけど)、まったく判りません。
この本を現厚生労働省幹部が読んだら、にやり、と笑うのでしょうか。
それとも、憮然として読まなかったことにするのでしょうか。
「死因不明社会」 海堂 尊 ★★★
読後、軽いめまいを覚える。
次から次へと女を作る男は、結局のところ、自分しか愛していないのだろう。
それは最後に自分に還ってくる。「もう切るわ」と。
次から次へと女を作る男を、一時でも愛してしまった女は迫られる。
自分は本当に愛していたのか。
自分は本当は誰を愛しているのか。
構成はシンプルだけど、独特のリズムを刻んで進む。
「あとがき」は蛇足。解説は秀逸。
自分の内面と対峙させられてしまう、怖い小説。
「もう切るわ」 井上 荒野 ★★★★
次から次へと女を作る男は、結局のところ、自分しか愛していないのだろう。
それは最後に自分に還ってくる。「もう切るわ」と。
次から次へと女を作る男を、一時でも愛してしまった女は迫られる。
自分は本当に愛していたのか。
自分は本当は誰を愛しているのか。
構成はシンプルだけど、独特のリズムを刻んで進む。
「あとがき」は蛇足。解説は秀逸。
自分の内面と対峙させられてしまう、怖い小説。
「もう切るわ」 井上 荒野 ★★★★
この著者との出会いの書となったのは 「都市伝説セピア」でしたが、
そのとき思わずうなったことを覚えています。これは面白いし、いい作家
だなあと思っていましたが、その後 「花まんま」 で直木賞を受賞し、
一躍有名になりましたね。
読みたいと思いつつなんとなく機会を逸していたので、休みを機に
「わくらば日記」「花まんま」「いっぺんさん」の3冊をイッキ読みです。
どの作品にも言えることですが【昭和】という時代とそれにたいする
ノスタルジックな哀愁みたいなものがベースにあって、誰もが胸の奥に
ひっそりと抱えている過去に犯した小さな罪みたいなものとか傷みたいな
ものとか、そういうものが繊細に表現されていて、上質な大人の
ファンタジーという感じ。
この3冊、どれも良書でありますが、「都市伝説セピア」に比べるとちょっと丸くなってると
いうか、とがった部分がやや薄くなってるというか。「都市伝説セピア」ほどの衝撃はなく、
正直なところ、ちょっと「あれ?」と思ったりもしました。
まあこのほうが万人ウケはすると思うんですが。もしかして賞狙い?
「いっぺんさん」朱川 湊人 ★★★
そのとき思わずうなったことを覚えています。これは面白いし、いい作家
だなあと思っていましたが、その後 「花まんま」 で直木賞を受賞し、
一躍有名になりましたね。
読みたいと思いつつなんとなく機会を逸していたので、休みを機に
「わくらば日記」「花まんま」「いっぺんさん」の3冊をイッキ読みです。
どの作品にも言えることですが【昭和】という時代とそれにたいする
ノスタルジックな哀愁みたいなものがベースにあって、誰もが胸の奥に
ひっそりと抱えている過去に犯した小さな罪みたいなものとか傷みたいな
ものとか、そういうものが繊細に表現されていて、上質な大人の
ファンタジーという感じ。
この3冊、どれも良書でありますが、「都市伝説セピア」に比べるとちょっと丸くなってると
いうか、とがった部分がやや薄くなってるというか。「都市伝説セピア」ほどの衝撃はなく、
正直なところ、ちょっと「あれ?」と思ったりもしました。
まあこのほうが万人ウケはすると思うんですが。もしかして賞狙い?
「いっぺんさん」朱川 湊人 ★★★
カテゴリ的にはミステリらしいです。基本的にミステリはあまり
読まないんですが、エンタメ小説としても充分面白い作品です。
過去に戻れるんですが、自在にというわけにはいかず、戻れるのは
約10ヶ月前のある時点のみ。なんともビミョーです。
しかし10ヶ月といえど「戻る」ということはつまり「歴史をやり直す」
ことで、しかし「戻る」という新規要素が加わっているために、
「全く同じ」ということはあり得ません。まさしくカオス理論そのもの。
あたくしは読みながら「パラレル・ワールド」を想像したんですが、
やっぱり考えるのは、自分にそのチャンスがあったらどうするだろうか、ということ。
いずれにしても「戻る」場合、今の世界の自分はどうなるんでしょうか。
正確には書いてありませんが、やっぱり死んじゃうんだろうなぁ。
そうすると「今の世界」であたくしと関わりのある人は悲しむかもしれないし
なにより上のおじょうさん(ねこ)を置いていくわけにはいかないなぁ。
それにこの10ヶ月は激動だったので、正直、戻りたくないです。この10ヶ月の経験をもとに
多少上手く立ち回れるとしても。
それに何より、同じだけの時を重ねたい相手もいるし。
単なるタイムトラベラーものではなく、自分が引き裂かれる葛藤の中で結局自分が
何を選ぶのか、また自分では一度選んだつもりでも「これでもか」と究極の選択を迫られた
ときに、人はどんな判断を下すのか、そしてそれを責められる人はいるのか、そして
手に入れたものと失ったもの。
いろんな要素が「タイムトラベル」を上手く使って演出されています。
いやー、面白かった。
星の数は結構悩みました。限りなく★★★★に近い。
「リピート」乾 くるみ ★★★
読まないんですが、エンタメ小説としても充分面白い作品です。
過去に戻れるんですが、自在にというわけにはいかず、戻れるのは
約10ヶ月前のある時点のみ。なんともビミョーです。
しかし10ヶ月といえど「戻る」ということはつまり「歴史をやり直す」
ことで、しかし「戻る」という新規要素が加わっているために、
「全く同じ」ということはあり得ません。まさしくカオス理論そのもの。
あたくしは読みながら「パラレル・ワールド」を想像したんですが、
やっぱり考えるのは、自分にそのチャンスがあったらどうするだろうか、ということ。
いずれにしても「戻る」場合、今の世界の自分はどうなるんでしょうか。
正確には書いてありませんが、やっぱり死んじゃうんだろうなぁ。
そうすると「今の世界」であたくしと関わりのある人は悲しむかもしれないし
なにより上のおじょうさん(ねこ)を置いていくわけにはいかないなぁ。
それにこの10ヶ月は激動だったので、正直、戻りたくないです。この10ヶ月の経験をもとに
多少上手く立ち回れるとしても。
それに何より、同じだけの時を重ねたい相手もいるし。
単なるタイムトラベラーものではなく、自分が引き裂かれる葛藤の中で結局自分が
何を選ぶのか、また自分では一度選んだつもりでも「これでもか」と究極の選択を迫られた
ときに、人はどんな判断を下すのか、そしてそれを責められる人はいるのか、そして
手に入れたものと失ったもの。
いろんな要素が「タイムトラベル」を上手く使って演出されています。
いやー、面白かった。
星の数は結構悩みました。限りなく★★★★に近い。
「リピート」乾 くるみ ★★★
この手の本が出るだろうと思っていました。
飛行機の中で読むのにはちょうどいいだろうと思って持っていきました。
んー。まああれです。概要を知りたい人にはいいかと思います。
薩摩の過去からさかのぼって書かれているので、歴史的理解はしやすい
ですが、肝心の天璋院篤姫と和宮の確執とかその後について割かれて
いるページがあっけなく少ない。
つまりは薄い。
入門書にしてもちょっと物足りない感が否めず。
「最後の大奥天璋院篤姫と和宮 」鈴木 由紀子 ★★
飛行機の中で読むのにはちょうどいいだろうと思って持っていきました。
んー。まああれです。概要を知りたい人にはいいかと思います。
薩摩の過去からさかのぼって書かれているので、歴史的理解はしやすい
ですが、肝心の天璋院篤姫と和宮の確執とかその後について割かれて
いるページがあっけなく少ない。
つまりは薄い。
入門書にしてもちょっと物足りない感が否めず。
「最後の大奥天璋院篤姫と和宮 」鈴木 由紀子 ★★
久しぶりに村上春樹です。かなり久しぶりです。最後に読んだのは「カフカ」
だったか…。
不思議なお話ばかりの短編集。
しかし相変わらず、表現方法というか特に比喩が独特で、併せて彼は「苦労」
とか「努力」とかをまず表現しませんし(したとしてもかなりさらりと)、
「負の感情」すら独特の表現で表してしまうため(それらがいわゆる
「村上ワールド」の演出の基盤になっていると思うのですが)好き嫌いの
分かれるところなんだろうなぁと思います。
ただそれは読者の側の解読力みたいなものもあって「あーんなに苦労した」
とか「こーんなにタイヘンだったんだから!」とか「悲しみで息も出来ないくらい
ぼろぼろでそれは体重がこのくらい落ちて他人からは別人と見られるような」とかはっきり書かれて
ないとわからないのかな、というか、あまり想像しないのかな、と思うような感想もときどき見受け
ますが。まあ実生活でも、悲しみというのは極個人的なことなのに、しかし万人に判りやすい
悲しみ方をしないと、「あの人は案外冷たい」とか言われてしまうんでしょうしね。
この作家は、さらりと真理(らしきもの)を明瞭簡潔な言葉でずばっと突いてきますね相変わらず。
読んだ方は「あたりまえ」と思うかも知れないけれど、最大限にそぎ落とした言葉で簡潔に表現
するのは結構難しいことだと思うんですが。
相変わらずテーマは「死と再生」だと思うんですが、それを「ものがたり」としてうまく展開して
いると思います。個人的には最後の短編が好きかも。
★はみっつとよっつでちょっと迷いました。
「東京奇譚集」村上 春樹 ★★★★
だったか…。
不思議なお話ばかりの短編集。
しかし相変わらず、表現方法というか特に比喩が独特で、併せて彼は「苦労」
とか「努力」とかをまず表現しませんし(したとしてもかなりさらりと)、
「負の感情」すら独特の表現で表してしまうため(それらがいわゆる
「村上ワールド」の演出の基盤になっていると思うのですが)好き嫌いの
分かれるところなんだろうなぁと思います。
ただそれは読者の側の解読力みたいなものもあって「あーんなに苦労した」
とか「こーんなにタイヘンだったんだから!」とか「悲しみで息も出来ないくらい
ぼろぼろでそれは体重がこのくらい落ちて他人からは別人と見られるような」とかはっきり書かれて
ないとわからないのかな、というか、あまり想像しないのかな、と思うような感想もときどき見受け
ますが。まあ実生活でも、悲しみというのは極個人的なことなのに、しかし万人に判りやすい
悲しみ方をしないと、「あの人は案外冷たい」とか言われてしまうんでしょうしね。
この作家は、さらりと真理(らしきもの)を明瞭簡潔な言葉でずばっと突いてきますね相変わらず。
読んだ方は「あたりまえ」と思うかも知れないけれど、最大限にそぎ落とした言葉で簡潔に表現
するのは結構難しいことだと思うんですが。
相変わらずテーマは「死と再生」だと思うんですが、それを「ものがたり」としてうまく展開して
いると思います。個人的には最後の短編が好きかも。
★はみっつとよっつでちょっと迷いました。
「東京奇譚集」村上 春樹 ★★★★
これは小説です。
新撰組初期からのメンバーであり、後に袂を分かち、伊藤甲子太郎と共に
御陵衛士となり若くして死んだ藤堂が主人公ですが、土方と藤堂ってこんなに
緊密な関係だっけ? というのは小説ですからまあ良しとしましょう
(因みに、土方は沖田ともそんなに親密ではなかったようですよ)。
しかしなんというか、人物像を浮きだたせるためとはいえ、登場人物が
感傷的に過ぎる
(情感豊かに描くというのと、感傷的というのは違うと思うのです)。
土方はもちろん、藤堂なんてまるで少女漫画に出てくる影をもつ王子様
みたいな描かれ方。
特に、藤堂と永倉新八がじゃれ合うシーンが何度か出てくるんですが、あまりに子供っぽすぎる。
全体的に、なんか同人誌っぽい匂いがぷんぷんと。
剣術の試合や立ち会いの描写は類書に比べて抜きん出て判りやすいのには驚きましたが、
著者が柳生新陰流居合道四段らしいので、そのあたりに起因していると思われます。
あと、京での新撰組隊士募集に応じて入隊したとされる斎藤一が、この小説では会津から
「預かって欲しい」と依頼されて新撰組に合流することになっています。謎の多い
斎藤一ですが、「会津間諜説」に傾いているあたくしには、興味深い設定でありました。
藤堂が主人公ということですこし期待したんですが、残念。
「新鮮組 藤堂平助」秋山 香乃 ★★
新撰組初期からのメンバーであり、後に袂を分かち、伊藤甲子太郎と共に
御陵衛士となり若くして死んだ藤堂が主人公ですが、土方と藤堂ってこんなに
緊密な関係だっけ? というのは小説ですからまあ良しとしましょう
(因みに、土方は沖田ともそんなに親密ではなかったようですよ)。
しかしなんというか、人物像を浮きだたせるためとはいえ、登場人物が
感傷的に過ぎる
(情感豊かに描くというのと、感傷的というのは違うと思うのです)。
土方はもちろん、藤堂なんてまるで少女漫画に出てくる影をもつ王子様
みたいな描かれ方。
特に、藤堂と永倉新八がじゃれ合うシーンが何度か出てくるんですが、あまりに子供っぽすぎる。
全体的に、なんか同人誌っぽい匂いがぷんぷんと。
剣術の試合や立ち会いの描写は類書に比べて抜きん出て判りやすいのには驚きましたが、
著者が柳生新陰流居合道四段らしいので、そのあたりに起因していると思われます。
あと、京での新撰組隊士募集に応じて入隊したとされる斎藤一が、この小説では会津から
「預かって欲しい」と依頼されて新撰組に合流することになっています。謎の多い
斎藤一ですが、「会津間諜説」に傾いているあたくしには、興味深い設定でありました。
藤堂が主人公ということですこし期待したんですが、残念。
「新鮮組 藤堂平助」秋山 香乃 ★★
またしても本棚で眠っていた本を引っ張り出してきました(最近本屋に
行ってもあんまり読みたい本がない…)。
盛田氏の著作は、最初に「おいしい水」を読んで、ストーリィ展開自体は
ちょっと上手く行きすぎてるような気がしつつも、かなりリアルな
ディティールおよび心理描写が展開されていて、ちょっとやそっとの
取材ではここまでの女性心理は描けないのではないかと思い、
続いて「湾岸ラプソディ」を読んで、ちょと
「ふーん」「うーん」と思って遠ざかっていたのでした。
で、この「ラスト・ワルツ」ですが。
悪くないんですが…。なんて言えばいいのかな。ちょっと中途半場な感じというか。
好みの問題かなぁ。現在と12年前とが描かれていますが、どちらも同じ葛藤を抱えていて
それはいいんですが、葛藤は同じだとしても12年前と今とでは抱えるものも環境も
ぜんぜん違っているはずで、そのあたりの描き込みが薄いような気がするのは、
あたしが年を取って感性が鈍くなっているからなんでしょうか。
悪くないんですけどねー。
「ラスト・ワルツ」盛田 隆二 ★★★
行ってもあんまり読みたい本がない…)。
盛田氏の著作は、最初に「おいしい水」を読んで、ストーリィ展開自体は
ちょっと上手く行きすぎてるような気がしつつも、かなりリアルな
ディティールおよび心理描写が展開されていて、ちょっとやそっとの
取材ではここまでの女性心理は描けないのではないかと思い、
続いて「湾岸ラプソディ」を読んで、ちょと
「ふーん」「うーん」と思って遠ざかっていたのでした。
で、この「ラスト・ワルツ」ですが。
悪くないんですが…。なんて言えばいいのかな。ちょっと中途半場な感じというか。
好みの問題かなぁ。現在と12年前とが描かれていますが、どちらも同じ葛藤を抱えていて
それはいいんですが、葛藤は同じだとしても12年前と今とでは抱えるものも環境も
ぜんぜん違っているはずで、そのあたりの描き込みが薄いような気がするのは、
あたしが年を取って感性が鈍くなっているからなんでしょうか。
悪くないんですけどねー。
「ラスト・ワルツ」盛田 隆二 ★★★
チェーザレ・ボルジアといえば、塩野七生氏の
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」と河原泉氏のコミック
「バビロンまで何マイル?」とで充分だとおもっていました。
この2作、チェーザレは充分に魅力的だし、また、ある程度の史実を
踏まえた上で彼を描き出し表現するのは、相当な器量がいるのではないか
とも思っていました。
しかしそう来たか、という感じ。表現手段としてのコミックと、構成上に
アンジェラを配しての展開。判りやすく面白く、何よりチェーザレが
とても生き生きと描かれています(解釈が多少異なる部分はあるにせよ)。
イタリアはボルジア家という権力者の家系に生まれ、マキャベリに「理想の君主」と言わしめた
類い希なる頭脳と美貌とシーザーの名前を持ち、しかし当時致命的であった「庶子」という立場。
これで屈折しなければ、ほんとのノーテンキでしょう。
単なる暴君ではかったはずだと思うのはあたしだけか。
4巻目にしてルクレッツィアの登場です。
「チェーザレ 4」惣領 冬実 ★★★★★
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」と河原泉氏のコミック
「バビロンまで何マイル?」とで充分だとおもっていました。
この2作、チェーザレは充分に魅力的だし、また、ある程度の史実を
踏まえた上で彼を描き出し表現するのは、相当な器量がいるのではないか
とも思っていました。
しかしそう来たか、という感じ。表現手段としてのコミックと、構成上に
アンジェラを配しての展開。判りやすく面白く、何よりチェーザレが
とても生き生きと描かれています(解釈が多少異なる部分はあるにせよ)。
イタリアはボルジア家という権力者の家系に生まれ、マキャベリに「理想の君主」と言わしめた
類い希なる頭脳と美貌とシーザーの名前を持ち、しかし当時致命的であった「庶子」という立場。
これで屈折しなければ、ほんとのノーテンキでしょう。
単なる暴君ではかったはずだと思うのはあたしだけか。
4巻目にしてルクレッツィアの登場です。
「チェーザレ 4」惣領 冬実 ★★★★★
4〜5年前に「不自由な心」「一瞬の光」を読んで、なかなか良い作家が
出てきたなぁと思っていたのですが、「私という運命について」を読んで、
うーんちょっと違うかもと思ってしばらく遠ざかっていました。
この本も、実はずいぶん前に買ってそのまま読んでなかったのですが
(実は買ったはいいが読んでない本が家には山積み)、久しぶりに
手に取ってみましたよ。
3編の中編が入っていて、1編目は若いんだけどちょっとリタイアというか、
人生をポーズしている男性、2編目は老境に入った文学者、3編目は現役の
新聞記者の話です。
1編目と2編目はテーマが似ていて、言わんとしていることは判らないでも
無いんですが、なんというかちょっと弱いというか。
3編目がいちばん面白かったなぁ。
そう思うのは私がまだまだ人生に対して甘いのか。
もしくは私は今のところ現場の人間だから、よりそちらに共感するのか。
恐らく1編目と2面目にこの作家の普遍的なテーマがよりストレートに現れて
いるのだと思うのですが、現場の臨場感なしにそれを表現するのは難しいのかなぁ。
悪くはないんだけど、もう一歩という感じが否めません。しかしこのテーマを
追求してより深く表現して欲しいと思うし、それが出来る作家ではないかと思います。
「草にすわる」白石 一文 ★★★
出てきたなぁと思っていたのですが、「私という運命について」を読んで、
うーんちょっと違うかもと思ってしばらく遠ざかっていました。
この本も、実はずいぶん前に買ってそのまま読んでなかったのですが
(実は買ったはいいが読んでない本が家には山積み)、久しぶりに
手に取ってみましたよ。
3編の中編が入っていて、1編目は若いんだけどちょっとリタイアというか、
人生をポーズしている男性、2編目は老境に入った文学者、3編目は現役の
新聞記者の話です。
1編目と2編目はテーマが似ていて、言わんとしていることは判らないでも
無いんですが、なんというかちょっと弱いというか。
3編目がいちばん面白かったなぁ。
そう思うのは私がまだまだ人生に対して甘いのか。
もしくは私は今のところ現場の人間だから、よりそちらに共感するのか。
恐らく1編目と2面目にこの作家の普遍的なテーマがよりストレートに現れて
いるのだと思うのですが、現場の臨場感なしにそれを表現するのは難しいのかなぁ。
悪くはないんだけど、もう一歩という感じが否めません。しかしこのテーマを
追求してより深く表現して欲しいと思うし、それが出来る作家ではないかと思います。
「草にすわる」白石 一文 ★★★
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