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本はごはん。
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b6195a60c9c1e437f5415fd59207712ae3212ba6_1.jpg  この本は評価が分かれるかもしれませんね。

 SFのようであり、ファンタジーのようでもあり、しかしその
 「どちらでもない」のだと思います。

 一つの町が消滅してしまう。そこに住む人々が消滅してしまう。
 それに関わる人たちがそれぞれの立場で描かれています。

 この「町の消滅」という設定自体かなり突拍子がないので、この設定自体を
 受け入れ難い人はこの小説をあまり評価しないかもしれません。

 しかし「町の消滅」というのはつまり、人生に起こりうる、直面せざるを
 得ない「理不尽」なものを現しているのであり、そのときどうするか、
 どんな風に生きるのか、

 生まれながらに背負わされた重荷や、ある日突然降りかかってくること、それぞれに対し
 どう対峙していくのか、ということが物語られているのだと思います。

 構成が秀逸です。恐らく主人公の女性を中心に展開すれば、もっと判り易く描けると思い
 ますが、これ以上いじるとしつこくなる直前で最高の構成がなされています。

 最終章に「(消滅せずに)残る人も町が決める」というフレーズがありますが、これは「運命」
 という言葉にそのまんま置き換えられるのではないかと。

 それぞれがどう「運命」と対峙していくのか、立ち向かうのか逃げるのか委ねるのか。
 見なかったことにするのか。

 そして人生に何を見いだすのか。

 「バスジャック」も面白かったですが、それ以上。
 でも最初にも書きましたが、好みの別れる作家かもしれません。


失われた町」 三崎 亜記 ★★★★★
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32321658.jpg  私的には非常に面白い本でありました。

 もちろん「光クラブ」の顛末は知っていたし、一般的解釈で理解して
 いましたが、初めて明かされた事実や、何よりある種の「三島論」的
 要素も加わっているのは予想外の収穫でありました。

 まず、自殺当初、当時の識者達がこぞって「アプレゲール型犯罪」と、
 ひとつのカタにはめ込んだコメント(要は自分には全く理解不能なんだが
 判ったような顔をして何も判っていないコメント)を出しているのは、

 近年少年の凶悪犯罪が相次いだとき、所謂「コメンテーター」がしたり顔で
 「少年の心の闇」という言葉をを連発していたのを想起させます。

 個人的感情を切り捨て、誰の目にも明らかな契約や法律のみに従って生き、
 その生き方に破綻を来して自殺したというのが表面的な解釈ではあるけれども

 では彼に「個人的感情」の一切を捨てさせ、まるで悪役を演じるかのような生き方をさせた
 原因と、それを貫徹せしめたものはいったい何だったのだろうか。

 それは著者の言うように「戦争への怒り」だったであろうし、同時に、それ(人間的感情)
 を捨てきれない自分への怒りもあったのではなかろうか。

 (主に)戦時中の体験を通じて「人」や「国家」に対し絶望し、しかしそれでも求めてしまう
 自分の心。自分は「情」を求めているのではなく、「経験」を求めて女性とつきあったなど
 の発言のウラに、実は「情」を求めてでも得られず、

 もうこの上はますます「個人的感情」を切り捨てて、少なくとも更に切り捨てたフリをして
 生きていくしかないという挫折感、もしくは諦観があったようにも感じられるのです。

 戦時中という非常事態では、理不尽な思いをしなかった人の方が極少数だと思いますが、
 大多数の人間が戦時中に受けた理不尽や不条理を忘れたふりをして生きていけたのに対し、
 彼はそれができなかったのでしょうし、

 戦後の日本の変わりように疑問を感じた人も少なくは無かったのでしょうが、それを
 豊かさと引き替えに不問に付した人が大多数であったのに対し、そうきなかったのが
 三島由紀夫なんでしょう。

 三島がこの「光クラブ」事件をモデルに「青の時代」という小説を著していますが、
 著者はこの「青の時代」が「限りなくノンフィクションに近い小説」と推理していて、
 つまり三島と「光クラブ」の山崎が、友人といえるかどうかはともかく、かなり近しい
 交流があったことも掘り起こしており、

 ではなぜ三島が(「青の時代」で)山崎の「最期」を描かなかったのか、もしくは
 「描けなかったのか」。
 それはやはり、「自分と同じ匂い」を感じていたからではないかと、そう思うのです。

 あ、著者も「あとがき」で書いていますが、所謂「ホリエモン」と呼ばれている人の事件と
 この「光クラブ」は似て非なるものだと思います。前者からはどうしても「哲学」が
 (私には)感じられません。


眞説 光クラブ事件 戦後金融犯罪の真実と闇」 保阪 正康 ★★★★★
9784480065117.jpg  うーん、この問題は一言で何が悪いとかどこに責任があるとは
 言えない問題ですね。

 かなりしっかりと調査されており、現在の高校中退の実情とその背景になって
 いるものについてレポートされています。

 親から生活態度をはじめとする基本的な教育を受けることが出来ず、学力も
 身に付かず、高校は所謂「底辺校」に進まざるを得ず、しかし経済的理由や
 学力不足(高校生でも九九が言えないなど)で中退してしまう。

 そして奔放な性生活の末若くして子供の親となり、貧困家庭を築くことに
 なる、という貧困の連鎖。もちろんDVやネグレクトなんかの問題も。

 もちろんその貧困やDVやネグレクトなどの負の連鎖を打ち切らなければ
 ならないと思いますが、著者の提案する「高校の義務教育化(=無償化)」と
 「高校の職業訓練校化」は果たして解決になるのかちょっと疑問に思います。

 底辺校の中退は必ずしも経済的理由だけではなく、「本来身についているはずの生活態度
 (歯磨きとか洗髪とか)が身についていない」とか「基礎的な学力(それこそ九九とか)」
 が不足していることが大きな要因になっているように本書からは見受けられます。

 だとすればこのあたりを強化、というか引き上げなければ、いくら高校が義務化(無償化)しても
 または職業訓練校化してスキルを身につけられるとしても、そもそも続かないんじゃないか。

 「(高校を中退した)殆どの若者が、異口同音に「夢などありませんよ」と語っていたが、
  そういう社会は公正な社会といえるのか」

 と書いていますが、全て社会の責任なんでしょうか。そこには社会の責任があると同時に、
 親の責任、個人の責任もあるんじゃないかと思うんですが。

 ドキュメンタリーとしては秀逸な部類だと思いますが、救済プログラムだけではなく、同時に
 (再)教育プログラムがセットになっている必要性を感じます。


ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所」 青砥 恭 ★★★★
9784167675028.jpg  ジャンルわけすればホラーなんでしょうが、上手いですね。
 かなり上手い。

 8編の短編が収められていますが、どれも、判りやすい怖さというより、
 人の心に潜む闇とか、闇を見る側が恐怖を投影してしまう、そんな
 描かれ方をしています。何というか、人間が根源的に持つ畏れのようなもの。
 
 死というものを畏怖しながら、同時に穢れとしてもみてしまうような
 説明のしようがないけれど自然に抱いてしまう感情。

 「ここで終わりだろう」と思ったら更に続きがある、という短編がいくつか
 あります。何故続きが? と考えてみると恐らくこの著者は単なるホラー小説を
 書きたかったのではないのだ、ということに気付きます。

 日本古来の文化風習と密接に絡み合いながら物語は進んでいきますが、描かれているとおり
 「彼岸」と「此岸」には明確な境目などないのかもしれません。


澪つくし」 明野 照葉 ★★★★
9784167602130.jpg  アンソロジーというものは、普段なら手に取らないような作家や作品との
 出会いとしてのみ期待しており、「アンソロジーそのもの」としての
 出来とか、完成度みたいなものは従来あまり意識してきませんでしたが、

 この本は、収録されている各作品が一級品であることはもちろん、
 アンソロジーとしての完成度がとても高いと思います。

 既読の作品が数点ありましたがそんなことはまったく関係なく、
 選ばれた作品の組み合わせやその並びによってか、既読の作品であるにも
 関わらず、新しい読み方が出来たように思います。

 そうそうたる作品が並べられていますが、私にとって印象的だったのは
 太宰治の「水仙」と、谷崎潤一郎の「鍵」。

 太宰は久しぶりに読みましたが、よくもまあここまで自分をさらけ出せるな、
 と(蜆のお味噌汁の場面とか)。そして自分をさらけ出したふりをして、
 影でニヤッと笑っていそうな、そんな作家としての凄み、みたいなものを感じます。

 そして谷崎。美しい文章で綴られるエキセントリックな内容にはじめは目を奪われますが、
 段々と彼のひんやりとした目線を意識せずにはいられません。

 そして。タイトルも秀逸です。


我等、同じ船に乗り 心に残る物語―日本文学秀作選」 桐野 夏生(編) ★★★★
276454-2.gif  結論。池永陽は、時代物を著すべきである。

 と思う。まあ、この著者の時代物はまだこの作品しか読んでいないので、
 断定するにはまだちょっと早いけど。

 なんだかんだと池永作品は結構読んでいるのですが、そして間違いなく
 好きな作家のひとりではあるのですが、いつも何かがちょっと足りない
 というかあと一歩というかあと一声というか、そんな読後感であることが
 否めなかったのですが、

 この作品、つまり時代物(での表現)というのが、この著者の文体が持つ
 ウエットな空気感とか、甘さとぎりぎり紙一重の優しさ、みたいなものが
 とても良く合っているように思います。
 
 仇討ちのために江戸へ出てきた武士が、自分の首に懸賞金をかけられたり周りの貧しい人々を
 救ったりという所謂「人情もの」ですが、彼が最後に出した結論が、非常に現代的だと思う。
 当時の武士は、こんな結論は出したくても出せなかったんじゃないかとも思う。

 でもそこもひっくるめて、この著者の持つ、「甘ったるいと言われかねない優しさ」や
 「折れてしまいそうな強さ」が、「時代物」「人情もの」ととても相性が良いように
 思ったのでありました。


雲を斬る」 池永 陽 ★★★★
148012.jpg  翻訳不可能と言われいていた「フィネガンズ・ウェイク」(ジェイムズ・
 ジョイス)を翻訳した翻訳家による日本語論。

 といっても硬いものではなくて、例えば方言に内包されている暖かみ、とか
 日本語の多様性の中に含まれているおかしみとか、感覚的な部分もきちんと
 掬い上げられています。

 おもしろいのは「シチ VS ナナ」。シチとナナの対決そのものだけでなく、
 日本語がいかに変遷を経てきているか、その変遷をも柔軟に飲み込み
 しなやかに変化してきたのか、面白く表現されています。

 日本語を意のままに操っているようで、まったく羨ましい。



日本語は天才である」 柳瀬 尚紀 ★★★
32334330.jpg  小学6年生の女の子が、父親の実家、それも幽霊がでそうな古い大きな
 お屋敷で、結果的に一族の過去を明らかにしていくミステリーです。

 彼女はこの家が恐ろしくて仕方ないんですが、その感覚、確かに自分にも
 あったなぁと思い出します。幼い頃、夏休みによく遊びに行った父親の
 実家は、トイレに行くのも本当に怖かった。

 ふんわりしていてあったかくて悪くないんですが、ちょっと大げさかなぁ。
 とくにラスト近づくにつれ、説明が多すぎる感じがどうしてもしてしまう。

 あと何だろう。何というか、読み物としては読みやすいしほのぼのしてるん
 だけど何か物足りないような気がするのは何だろう。

 やっぱあれかな、「片耳うさぎはもともと家の内にいる」というあたり。
 そのあたりをもう一歩…と思っちゃうのかな。悪くないんですけどね。


片耳うさぎ」 大崎 梢 ★★★
46nennme.gif  3歳の時に事故で失明し、それから46年後に視力を取り戻した男性の
 ノンフィクション・ノベルです。
 
 3歳の時に失明しているので、目が見えたころの記憶は殆ど残っていないわけ
 で、目が見えないながらも様々なことに次々とチャレンジし、家庭を築き、
 「充分な幸せ」を感じており、「人生に足りないものはないと思っている」。

 そんなある日、「手術すれば目が見えるようになるかもしれない」と言われ、
 彼は、それは「他人の心を読める能力」を要るか要らないか、選択を迫られて
 いるのと同じだと感じる。

 そういう、目が見えるのが当たり前の生活からは出てきそうもない感覚が
 随所に出てきます。

 また過去に光を取り戻した数少ない症例の人たちの大部分が、光を取り戻すことと、その後の
 人生の幸せがイコールでなかったことや、

 手術で光を取り戻しても、目に映るそれが何であるのか考えなければ判らず、相当な疲労を
 伴うものであるとか、男性と女性の区別も難しいとか、
 
 当たり前に様々なものを見てきている自分からは想像もつかないような、後天的に(大人に
 なってから)光を取り戻した人の「視界」が展開されています。

 高リスクな状況で手術を受け、また拒絶反応によって再度失明の危機にさらされたり
 しながらも、次々と挑戦していくその熱意は、ちょっと常人外れなくらいです。
 
 脳(ニューロン)と視力の関係も判りやすく解説されおり、とても興味深く読みました。

 それにしても。奥様は偉いなぁと思う。障害を持つ夫に引け目を持つでもなく甘やかす
 わけでもなく腫れ物に触るような扱いをするでもなく、自己主張をしながら対等な人格
 として対峙しています。
 相手が障害者じゃなくたって、なかなか難しいことだと思うんですよ。


46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生」 ロバート・カーソン ★★★★
211787c8.jpg  高橋留美子の名作、人魚シリーズです。
 ずいぶん昔にちらりと読みましたが、「人魚の森」をちらっと
 読んだだけだったので全部通して読んでみました。

 ううむ。やっぱりこれは名作ですね。
 人魚の肉を食べてしまって不老不死の身体を手に入れてしまった
 苦悩がテーマになっていますが、

 ここに描かれているのは、様々な「愛の形」ですね。
 不器用な形でしか愛せなかったり、母親を求めていたり、所有することで愛を表現しようと
 したり。

 ちょっとおどろおどろしいような昔の日本の風俗や、スプラッターなシーンも多くてすこし
 重めの展開ですがたまにでいいから続きを描いてほしいな、と。



人魚の森」「人魚の傷」「夜叉の瞳」 高橋 留美子 ★★★★
223926e1.jpg  なるほど。なるほどー。

 一人の女性が殺された。
 殺された女、女が殺されるきっかけを作った男、殺した男、
 殺した男の周辺の人たち、そして殺した男を愛した女。
 さて、誰が一番の悪人なんでしょう。

 一般的な、ごくふつうの生活を営むいわゆる「善人」の中に潜む
 悪意、歪んだ思い。それと、衝動的な殺意(による殺人)と、
 どちらが悪人なのか、判断できる人はいるのだろうか。

 悪人に徹することによって相手を解放し、それによって相手を守ることを選んだ男は
 悪人なのか。

 彼女が、相手はおろか自分(の想い)すら信じ切ることができなかったことは、彼女にとって
 幸せだったのか。盲信するのではなく正しく信じることは、特に自分を信じることはやはり
 難しいのか。むしろ今の世の中、そのほうが生きやすいのか。

 なかなか良い作品だと思いますが、特にプロットが良いと思うのですが、強いてあげると
 ちょっと冗長かなぁ。もうすこし上手く(短く)スピーディに纏めてもらっても
 良いように思います。


悪人(上)」「悪人(下)」 吉田 修一 ★★★
129161.jpg  捜査一課担当記者、警視庁クラブキャップなど、長年刑事事件取材を
 担当してきた記者による事件ドキュメンタリーです。

 宮崎勤事件、有楽町三億円強盗事件、そして半分以上がオウム真理教事件に
 割かれています。

 捜査の指揮官はもちろん、現場の刑事からも取材を重ねており、事件解決に
 いたるまでの彼らの執念や血の滲むような努力、そして時に彼らが払わな
 ければならない少なからぬ犠牲などについてレポートされています。

 特に、地下鉄サリン事件の折、詳細が判らないままとにかく現場に飛び、
 サリンを浴びながらも入院を拒否、点滴と注射だけで捜査本部に戻る刑事が
 こんなにいたのかと驚きました。

 ひとりひとりの刑事たちの、熱い思いを抱いた献身的な捜査については本当に頭が下がる
 思いですが、オウムの上九一色村一斉捜索が予定されていたその日に地下鉄でサリンが
 撒かれたたという事実。
 
 直前に一斉捜索は延期されていましたが、もし予定通りに一斉捜索されていたら。
 多くの刑事、警官が上九一色村に投入され、都内が手薄になった状態でサリンが撒かれて
 いたら。著者のいうように、情報が漏れていた可能性について、捜査していないわけは
 無いと思うんですが、捜査結果はどうだったのか。

 また、国松長官狙撃事件、事件後に犯行を自供した元警官? 元刑事? だかの件もどう
 なったんだか…。

 そのあたりの真実が、いつか日の目を見ることがあるのでしょうか。


捜査一課秘録」 三沢 明彦 ★★★
132972.jpg  「君たちに明日はない」の続編です。

 相変わらず歯切れ良くテンポ良く、かといって足りないわけではない。
 エンタテインメント小説として必要な要素を過不足無く満たしている
 と思います。

 前作から経験も積み、中堅どころとなった主人公。相変わらずリストラ屋
 をやっていますが、リストラ候補に挙がってしまった登場人物たちが
 よく居そうな人たちばかりというのが良いと思います。

 そして相変わらず、ディティールや女性の表現が上手いです。
 この観察眼は凄いと思う。そして必ず、じんわりさせてくれます。

 伏線貼られてますね。続刊が楽しみです。


借金取りの王子ー君たちに明日はない2ー」 垣根 涼介 ★★★★
123918.jpg  確かに「事実は小説より奇なり」とは言いますが。

 以前、死刑判決がおりた元ヤクザが、獄中から、自殺や事故として処理され
 ていた事案が実は殺人事件であったとして告発したーということがあった
 のは確かに覚えています。
 その一連の事件の「当事者」によるノンフィクションです。

 「当事者」とは新潮45の編集者で、死刑囚から事件を告白され、ウラを取り、
 警察にもレポートを提出して動かし、雑誌に掲載するという一連まで、
 そしてその後の裁判、判決までも追っています。

 借金でどうにもならなくなっている人を、事故または自殺に見せかけて殺し、
 保険金や不動産を手に入れるーそれも何度も。

 そしてどれも「事件」としては扱われておらず、解剖すらされていなかった
 ケースもあるという現実。

 闇に葬られてしまった事件というのも、まだ結構あるのかもしれません。

 既にジャーナリズムは死んでしまった(と私は思っています)が、マスコミにはまだこういう
 役割が残っているのだなぁ、とも思いました。

 著者はあとがきで「ジャーナリズムは死なない」と言っていますが、一方で報道調整やら
 世論誘導やらに手を染めている限り無理でしょう。

 そして何よりも、このケースはマスコミがその能力を最大限発揮し成果を出せた
 「非常に上手くいったケース」ですが、そうでない「無辜の人」にその能力が凶器となって
 襲いかかる可能性とその制御について触れられていないのが残念です。


凶悪―ある死刑囚の告発」 「新潮45」編集部 ★★★★
136452.jpg  「十年不倫」の姉妹編だというのでとりあえず読んでみましたけれども…。

 この本はタイトル通り、10年ものの不倫をしている男性を中心に
 インタビューしたものです。ルポルタージュの質自体は悪くないと
 思うんですが、まあここに出てくる男性達の、

 甘えと逃げと責任回避と薄っぺらい見栄のオンパレードにはちょっと辟易…。
 よくもまあ根気強く話が聴けたものだと感心してしまいます。

 まあ不倫しながらも真剣に考えている人は(いたとしても)語らない
 でしょうが。

 同時に、やっぱり男性は、自分の言葉で自分を語ることが下手なんだなぁ
 ということ。年齢層が若くなるとそうでもなくなってくるようですが。

 逃げ続けて人生終わるのもまあその人の人生ですけれどもね。


十年不倫の男たち」 衿野 未矢 ★★★
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