本はごはん。
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なんだかちょっと私には合わないような…と思っていたのが
この作家なのでありますが、これはとても良い作品でありました。
前半は不倫相手の子供を誘拐し、4年間にわたり逃亡しながらその子供を
育て続けた女、そして後半はその子供が本当の家庭に戻されてから、家族や
自分の過去や、そして自分自身を受け入れていくまでが描かれています。
恐らく「あの事件」がプロットなのかなと思います。「あの事件」について
は私も思うところがあるものの本題とは関係ないので割愛しますが、
この作品はそういう「すぐに想起できる実際に起こった事件」とか
「不倫」とか「誘拐」とか、そういった目先の事象に目が奪われると
本質が見えなくなるかもしれないなぁと思いました。
つまり、著者が問いかけているのは「不倫」や「誘拐」の是非などではもちろんなくて、
誘拐されていた間の、慎ましやかだけれど自然と人々の情と保護者の愛に包まれた生活。
本当の家庭に戻されてからの、育児放棄と過干渉の間を行ったり来たりするような不安定な愛を
一方的に押しつけられる家庭環境。
今も昔も、結局困難があれば逃げてしまう実の両親。
昔の生活に帰りたいと切望しながらも、過去の生活も現在のそれも憎む事によってやっと自分を
支える成長した彼女。
親を選べず、生まれてくる子も選べず、
それなのに生れ落ちた瞬間から否応なくはめ込まれる「家族」というもの、
その「家族っていったい何?」ということこそが、著者の問いかけなのではないかと思うのです。
母親のことを好きかどうか訪ねると彼女の友人はこう言うのです。
「好きとか嫌いとかない。母親は、母親」
必死に愛そうとしたけど愛せなかった。だから自分を保つには(実の家族も誘拐されていた間の
偽造家族も)憎むしかなかった。
友人の言葉はそんな彼女に、新しい家族関係の可能性を示しているように思います。
そして自分を誘拐した女の最後の言葉を思い出す事によって、そこに戻りたいと願っていた
自分(=そのままの自分)を肯定することが出来た彼女は、これから新しい「家族」を
築き上げていくのだろうと思わせます。
スピード感と緊迫感溢れるイントロダクションが特に見事です。
「家族」というものを「女の側」から見た佳作だと思います。
「八日目の蝉」 角田 光代 ★★★
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