本はごはん。
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小さな島で、それこそなんでも筒抜けになってしまうような、限定された
とても濃い人間関係のなかに夫と共に暮らす主人公の、秘めた恋、
というより強い情念の物語。
夫にも毎日の生活にも島の暮らしにも不満なものはなく。それでもどうしても
惹かれていく自分を止められない主人公。
妻の様子になにかを感じ、不安に思いながらもひたすら妻を見つめる夫。
恐らく何かを渇望して漂流する男。
情交シーンはおろか、キスすることもなく男は去るのだけれど、ここまで
官能的な空気を濃密に漂わせることができるのは著者ならでは。
相変わらず美しい文章と、心理描写も巧み。夫に対する心理なんてもうすごいとしか
言いようがない。
こういう作品って恐らく「大人の恋」って表されるのではないかと思うのですが、大人の恋って、
なんだろう。配偶者がいながら配偶者以外の異性に惹かれること?
私は、彼女が初めて男を見たとき「ミシルシ」だと思ってしまった、そのあたりが、良くも悪くも
大人の恋なんじゃないかと思ったりするのですが。
「切羽」とは、トンネルを掘っている最中の最先端箇所だそうで、トンネルが完成すると切羽は
消滅してしまう。タイトルが「切羽にて」ではなく、「切羽へ」であることを考えると、人生とは
常にトンネルを掘り続け「切羽」にあり続けることなのかもしれない。なんてことを考えました。
「切羽へ」 井上 荒野 ★★★
とても濃い人間関係のなかに夫と共に暮らす主人公の、秘めた恋、
というより強い情念の物語。
夫にも毎日の生活にも島の暮らしにも不満なものはなく。それでもどうしても
惹かれていく自分を止められない主人公。
妻の様子になにかを感じ、不安に思いながらもひたすら妻を見つめる夫。
恐らく何かを渇望して漂流する男。
情交シーンはおろか、キスすることもなく男は去るのだけれど、ここまで
官能的な空気を濃密に漂わせることができるのは著者ならでは。
相変わらず美しい文章と、心理描写も巧み。夫に対する心理なんてもうすごいとしか
言いようがない。
こういう作品って恐らく「大人の恋」って表されるのではないかと思うのですが、大人の恋って、
なんだろう。配偶者がいながら配偶者以外の異性に惹かれること?
私は、彼女が初めて男を見たとき「ミシルシ」だと思ってしまった、そのあたりが、良くも悪くも
大人の恋なんじゃないかと思ったりするのですが。
「切羽」とは、トンネルを掘っている最中の最先端箇所だそうで、トンネルが完成すると切羽は
消滅してしまう。タイトルが「切羽にて」ではなく、「切羽へ」であることを考えると、人生とは
常にトンネルを掘り続け「切羽」にあり続けることなのかもしれない。なんてことを考えました。
「切羽へ」 井上 荒野 ★★★
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