本はごはん。
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タイムトラベルものです。面白いです。
構成が巧みで、一気に読ませます。
そして、タイトルが秀逸です。
基本的には「もしあのとき〜だったら」系の話ですが、パラドックスに
陥りやすいタイムトラベルねたを上手く纏めています。
「時空を超えたラブ・ストーリィ」と紹介されており、確かにその要素は
あるんですが、私は「生き方」みたいなものを考えさせられるなぁと
思いました。
「時を超えるひと」は彼女の真実を知らないまま時を超えますが、
もし知っていたとしても、やっぱり時を超えるんじゃないか、など。
白石一文の「どれくらいの愛情」とセットで読むといいんじゃないかと、
個人的には思います。
ただ、これはもう完全に好みの問題だと思うんですが、文章に比喩が多くて、
正直ちょっとくどいかなぁ。「比喩」以上の演出効果を担って繰り返される
キーワードももちろんあるんですが…。
「Y」 佐藤 正午 ★★★★
構成が巧みで、一気に読ませます。
そして、タイトルが秀逸です。
基本的には「もしあのとき〜だったら」系の話ですが、パラドックスに
陥りやすいタイムトラベルねたを上手く纏めています。
「時空を超えたラブ・ストーリィ」と紹介されており、確かにその要素は
あるんですが、私は「生き方」みたいなものを考えさせられるなぁと
思いました。
「時を超えるひと」は彼女の真実を知らないまま時を超えますが、
もし知っていたとしても、やっぱり時を超えるんじゃないか、など。
白石一文の「どれくらいの愛情」とセットで読むといいんじゃないかと、
個人的には思います。
ただ、これはもう完全に好みの問題だと思うんですが、文章に比喩が多くて、
正直ちょっとくどいかなぁ。「比喩」以上の演出効果を担って繰り返される
キーワードももちろんあるんですが…。
「Y」 佐藤 正午 ★★★★
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日本に駐在していたロシア人新聞記者による「日本人論」です。
もっとステレオタイプで的外れな日本人論かと思っていましたが、社会学者
ではなく、文化人類学者でもないにも関わらず著者の観察眼はとても鋭く、
かつ暖かい。
日本書紀の神話の説明から構造を解き明かそうとしていたり、とても勉強も
したように見受けます。
初出が1971年らしいので、現代の目から見ると変わってしまった部分も
ありますし、「ちょっとそれは考えすぎでは…」と思う部分も全くないわけ
ではありませんが、例えば、
【日本人の言動や意識など全ての根本には、日本人独特の「美意識」が横たわっている】(要約)
など、ううむ。と唸らせる指摘/分析も少なくありません。
また、日本について書かれた様々な「日本論」「日本人論」からの引用も豊富で、既に紹介され
ている日本(人)論+彼の目で見た、感じた日本(人)論と、厚みのある展開がなされています。
前述したとおり、表面的な生活スタイルや行動様式はこの40年弱のあいだでずいぶんと変わっ
てしまいましたが、彼が考察した日本人の「精神」(外国人からすると摩訶不思議としか言い
ようがないらしいですが)、それはあまり変わっていないのかもしれません。
彼も言うように、表面的なスタイルが変わっても、2000年かけて培ってきた「美意識」は
そう簡単には変わらないものなのでしょうし、「変わらずに変わっていく」というところが
日本人の最大の強みなのかもしれません。
「一枝の桜―日本人とはなにか」 フセワロード オフチンニコフ ★★★★
もっとステレオタイプで的外れな日本人論かと思っていましたが、社会学者
ではなく、文化人類学者でもないにも関わらず著者の観察眼はとても鋭く、
かつ暖かい。
日本書紀の神話の説明から構造を解き明かそうとしていたり、とても勉強も
したように見受けます。
初出が1971年らしいので、現代の目から見ると変わってしまった部分も
ありますし、「ちょっとそれは考えすぎでは…」と思う部分も全くないわけ
ではありませんが、例えば、
【日本人の言動や意識など全ての根本には、日本人独特の「美意識」が横たわっている】(要約)
など、ううむ。と唸らせる指摘/分析も少なくありません。
また、日本について書かれた様々な「日本論」「日本人論」からの引用も豊富で、既に紹介され
ている日本(人)論+彼の目で見た、感じた日本(人)論と、厚みのある展開がなされています。
前述したとおり、表面的な生活スタイルや行動様式はこの40年弱のあいだでずいぶんと変わっ
てしまいましたが、彼が考察した日本人の「精神」(外国人からすると摩訶不思議としか言い
ようがないらしいですが)、それはあまり変わっていないのかもしれません。
彼も言うように、表面的なスタイルが変わっても、2000年かけて培ってきた「美意識」は
そう簡単には変わらないものなのでしょうし、「変わらずに変わっていく」というところが
日本人の最大の強みなのかもしれません。
「一枝の桜―日本人とはなにか」 フセワロード オフチンニコフ ★★★★
仲間が山で遭難してしまい、遺体発見まで約半年の捜索隊活動、その後も
報告書作成など数年間にわたって仲間の遭難事故と対峙し、格闘した記録で、
これ以上のノンフィクションがあるだろうか、という本です。
ひとつひとつの情報に一喜一憂して振り回されたり、自分たちの「希望」が
情報にバイアスをかけてしまったり、捜索隊全体に暗く重苦しいムードが
漂いしかし、ささいなきっかけでハイテンションに明るくなったりと、
リアルな事実の記録が紡がれています。
私も数年前まで山に登っていましたがそれは「登山」というほどのレベルの
ものではなく、第1の目的が「山頂(付近)で食べるお弁当」で、
第2のそして最大の目的が「下山してからのビール」というどうしようもない
なまくらトレッキングでありましたがそれでも、
息を切らしてたどり着いた場所で見る風景はやはり格別のものであり、その風景はたとえば、
ヘリコプターでそこへ降り立っても(同じ風景でありながら)見ることの出来ない風景なの
ではないかと思ったりしたのであります。
冬のアルプスという過酷な条件下で山を目指す人たちはの連帯感というか結束は強いものだ
とは思いますが、それにしても本当に頭が下がる捜索活動です。時には仲間割れの危機にも
見舞われながらも遭難した仲間3人を見つけ出します。
惜しむらくは、捜索活動を共にした仲間達のキャラクターをもう少し掘り下げて欲しかった
とも思いますが、「仲間の遭難」という非常事態下、しかも今後も付き合いの続く人たちで
しょうから、難しいところもあるのかもしれません。
「なぜ彼らはそのルートをたどったのか」
この謎は未だに解けていないようですが、いくら頭で考えても
「その時、その状況下の、その場所」
にいなければ判らないこともあるのでしょう。
「いまだ下山せず!」 泉 康子 ★★★★
報告書作成など数年間にわたって仲間の遭難事故と対峙し、格闘した記録で、
これ以上のノンフィクションがあるだろうか、という本です。
ひとつひとつの情報に一喜一憂して振り回されたり、自分たちの「希望」が
情報にバイアスをかけてしまったり、捜索隊全体に暗く重苦しいムードが
漂いしかし、ささいなきっかけでハイテンションに明るくなったりと、
リアルな事実の記録が紡がれています。
私も数年前まで山に登っていましたがそれは「登山」というほどのレベルの
ものではなく、第1の目的が「山頂(付近)で食べるお弁当」で、
第2のそして最大の目的が「下山してからのビール」というどうしようもない
なまくらトレッキングでありましたがそれでも、
息を切らしてたどり着いた場所で見る風景はやはり格別のものであり、その風景はたとえば、
ヘリコプターでそこへ降り立っても(同じ風景でありながら)見ることの出来ない風景なの
ではないかと思ったりしたのであります。
冬のアルプスという過酷な条件下で山を目指す人たちはの連帯感というか結束は強いものだ
とは思いますが、それにしても本当に頭が下がる捜索活動です。時には仲間割れの危機にも
見舞われながらも遭難した仲間3人を見つけ出します。
惜しむらくは、捜索活動を共にした仲間達のキャラクターをもう少し掘り下げて欲しかった
とも思いますが、「仲間の遭難」という非常事態下、しかも今後も付き合いの続く人たちで
しょうから、難しいところもあるのかもしれません。
「なぜ彼らはそのルートをたどったのか」
この謎は未だに解けていないようですが、いくら頭で考えても
「その時、その状況下の、その場所」
にいなければ判らないこともあるのでしょう。
「いまだ下山せず!」 泉 康子 ★★★★
児童文学、ですかね。短編集です。
どの短編も、貧しい環境の中で精一杯生きていく子供達を描いています。
世の中がまだまだ貧しかった頃、社会は子供達を守ってくれるどころか
子供だろうが容赦なく厳しく、そんな中で子供が親を守るような、
そんな逞しさも垣間見られます。
どの話も無名の市井の子供達の苦労が中心で、例えばお金持ちの家に養子に
貰われることになってめでたしめでたし、なんて話はひとつもなく、
相変わらず苦しい環境のなかに置かれ続けるものばかりですが、
それでも何となく明るい気配が漂うのは、この子供達が苦労を背負い込み
ながらも顔を上げて、まっすぐ明日を見ているからなのかもしれません。
「なまくら」 吉橋 通夫 ★★★
どの短編も、貧しい環境の中で精一杯生きていく子供達を描いています。
世の中がまだまだ貧しかった頃、社会は子供達を守ってくれるどころか
子供だろうが容赦なく厳しく、そんな中で子供が親を守るような、
そんな逞しさも垣間見られます。
どの話も無名の市井の子供達の苦労が中心で、例えばお金持ちの家に養子に
貰われることになってめでたしめでたし、なんて話はひとつもなく、
相変わらず苦しい環境のなかに置かれ続けるものばかりですが、
それでも何となく明るい気配が漂うのは、この子供達が苦労を背負い込み
ながらも顔を上げて、まっすぐ明日を見ているからなのかもしれません。
「なまくら」 吉橋 通夫 ★★★
これも芥川賞受賞作なんですよねぇ…。うーん…。
3編の短編が収められていますが、どれも夫婦について描かれています。
表題にもなっている最初の短編は「離婚」について描かれているのですが、
この離婚に至る経緯というかふたりの関係の変遷というか、
お互いにどんどん(心情も含め)すれ違い、ボタンの掛け違いが延々続き
なすすべなく崩壊してしまう、ということは確かにあることだとは思います。
しかし主人公30歳。この設定でこの内容は、あまりに幼すぎてちょっと
どうなのかしら、というのが正直なところ。しかしそれはまあ小説なので
いいとしても、
著者が言いたかったことが最後の2行なのだとしたら、そのために書かれ
たものだとしたら、これじゃはっきり言って物足りない。
なにより読後にこちらの胸に「ずしん」と残るものがない。
きっと好みの問題なのだとおもいますすいません。
たまに鋭い言葉が出てくるので、期待したいと思うのですが。
「八月の路上に捨てる」 伊藤 たかみ ★★
3編の短編が収められていますが、どれも夫婦について描かれています。
表題にもなっている最初の短編は「離婚」について描かれているのですが、
この離婚に至る経緯というかふたりの関係の変遷というか、
お互いにどんどん(心情も含め)すれ違い、ボタンの掛け違いが延々続き
なすすべなく崩壊してしまう、ということは確かにあることだとは思います。
しかし主人公30歳。この設定でこの内容は、あまりに幼すぎてちょっと
どうなのかしら、というのが正直なところ。しかしそれはまあ小説なので
いいとしても、
著者が言いたかったことが最後の2行なのだとしたら、そのために書かれ
たものだとしたら、これじゃはっきり言って物足りない。
なにより読後にこちらの胸に「ずしん」と残るものがない。
きっと好みの問題なのだとおもいますすいません。
たまに鋭い言葉が出てくるので、期待したいと思うのですが。
「八月の路上に捨てる」 伊藤 たかみ ★★
4つの中編が収められています。
正直なところどれもストーリィは先が読めてしまいますが、シンプルで
著者のメッセージがストレートに現れていると思います。
ただ、ちょっと気になったのは「ビジネスマンのディティール」がきっちり
描き込まれていることが白石作品の大きな魅力のひとつで、それが
ストーリィに奥行きと立体感を与えていると思っていたのだけれど、
1編目の「20年後のわたしへ」のOLのオフィス・シーンでのディテールや、
タイトルにもなっている4編目の「どれくらいの愛情」の主人公(実業家)
のビジネス・シーンなんかが今までになく薄くて、何と言えばいいのか、
ちょっと奥行き感がないというか、キャラクターとエピソード中心というか、
そんな印象がちょっと否めません。
著者のメッセージは、目に見えないもの、つまり「想い」みたなこととか、
不完全を内包する(がゆえの)完全さ、みたいなことだと思うのですが、なかなか難しい
テーマですね。
「(選択に際して何らかの)圧力がかかりその選択をせざるを得なかったとしても、それは
結局自分で選んだ選択なのである」
という考え方は、つまりは全て自分の責任でありその結果を自分で背負っていくという覚悟を
持たなければななにもはじまらない、ということだと思います。
「運命を変えられるか否か」について私は解をもっていませんが、運命は自分で作るもの
だと思っているので。
「どれくらいの愛情」 白石 一文 ★★★★
正直なところどれもストーリィは先が読めてしまいますが、シンプルで
著者のメッセージがストレートに現れていると思います。
ただ、ちょっと気になったのは「ビジネスマンのディティール」がきっちり
描き込まれていることが白石作品の大きな魅力のひとつで、それが
ストーリィに奥行きと立体感を与えていると思っていたのだけれど、
1編目の「20年後のわたしへ」のOLのオフィス・シーンでのディテールや、
タイトルにもなっている4編目の「どれくらいの愛情」の主人公(実業家)
のビジネス・シーンなんかが今までになく薄くて、何と言えばいいのか、
ちょっと奥行き感がないというか、キャラクターとエピソード中心というか、
そんな印象がちょっと否めません。
著者のメッセージは、目に見えないもの、つまり「想い」みたなこととか、
不完全を内包する(がゆえの)完全さ、みたいなことだと思うのですが、なかなか難しい
テーマですね。
「(選択に際して何らかの)圧力がかかりその選択をせざるを得なかったとしても、それは
結局自分で選んだ選択なのである」
という考え方は、つまりは全て自分の責任でありその結果を自分で背負っていくという覚悟を
持たなければななにもはじまらない、ということだと思います。
「運命を変えられるか否か」について私は解をもっていませんが、運命は自分で作るもの
だと思っているので。
「どれくらいの愛情」 白石 一文 ★★★★
なかなか面白い主張でありました。
「アラカン」って何だそりゃ? とおもったら、「アラウンド還暦」だ
そうですよ。
ここまでくるともうどうなんだろうと思いますが、まあそれは良いとして。
冒頭では世のおばさま方がなぜ韓流だの、なんちゃら王子だのに熱狂するのか、
ということについて著者の考えが展開されていますが、なかなか面白い。
なるほどねぇ、とも思う。
社会(特に職場)で「支配ー被支配関係」に置かれている男性は、その関係性
を家庭にも持ち込んで、会社では被支配者だけれども、家庭では支配者になろう
とするというのは、DVが連鎖してしまうのと同様な理論なのかもしれません。
そして家庭で長いこと「被支配」層に置かれていた女性が、韓流だの何ちゃら王子だのに
熱狂するのも、無意識のうちに自分が「支配層」のポジションに立つことでもあるらしい。
これも連鎖か。
著者の言うように「巧妙に隠されてはいるけれど、そこ(韓流とか王子に熱狂するおばちゃん
たち)には【性欲】も含まれている」のだとすれば、結局は親父が若い愛人を欲しがるのと
同じように、おばちゃんも見目麗しくて何でも言うことを聴いてくれる、つまりは支配できる
若いツバメが欲しいという、身も蓋もない、しかしそれなりに説得力のある結論ですね。
しかし中盤から展開されているの著者のカウンセリングを通しての「症例」を見ると、
中高年男性のコミュニケーションスキルの低さというか、他人に対する共感能力の著しい欠乏に、
ため息が出てきます。
まあ著者はカウンセラーですから、幸せな人はカウンセリングなんかに行かないし、そういう
意味では不幸の実例ばかり積み重なってしまうんでしょうけれど、それにしても酷い。
著者は、「女性が男性化し男性が女性化」してきている現代の兆候は良い傾向で、男性はもっと
女性化すべきだという。
しかし。男性化だとか女性化だとか以前に、弱い者に対して暴力を振るうのはもってのほかで
あるとか、他社への共感だとか想像力だとか、そもそも人として大切なでも当たり前のことを
ちゃんと教育できる社会であるべきではないかと思うのだけれど。
「選ばれる男たち―女たちの夢のゆくえ」 信田 さよ子 ★★★
「アラカン」って何だそりゃ? とおもったら、「アラウンド還暦」だ
そうですよ。
ここまでくるともうどうなんだろうと思いますが、まあそれは良いとして。
冒頭では世のおばさま方がなぜ韓流だの、なんちゃら王子だのに熱狂するのか、
ということについて著者の考えが展開されていますが、なかなか面白い。
なるほどねぇ、とも思う。
社会(特に職場)で「支配ー被支配関係」に置かれている男性は、その関係性
を家庭にも持ち込んで、会社では被支配者だけれども、家庭では支配者になろう
とするというのは、DVが連鎖してしまうのと同様な理論なのかもしれません。
そして家庭で長いこと「被支配」層に置かれていた女性が、韓流だの何ちゃら王子だのに
熱狂するのも、無意識のうちに自分が「支配層」のポジションに立つことでもあるらしい。
これも連鎖か。
著者の言うように「巧妙に隠されてはいるけれど、そこ(韓流とか王子に熱狂するおばちゃん
たち)には【性欲】も含まれている」のだとすれば、結局は親父が若い愛人を欲しがるのと
同じように、おばちゃんも見目麗しくて何でも言うことを聴いてくれる、つまりは支配できる
若いツバメが欲しいという、身も蓋もない、しかしそれなりに説得力のある結論ですね。
しかし中盤から展開されているの著者のカウンセリングを通しての「症例」を見ると、
中高年男性のコミュニケーションスキルの低さというか、他人に対する共感能力の著しい欠乏に、
ため息が出てきます。
まあ著者はカウンセラーですから、幸せな人はカウンセリングなんかに行かないし、そういう
意味では不幸の実例ばかり積み重なってしまうんでしょうけれど、それにしても酷い。
著者は、「女性が男性化し男性が女性化」してきている現代の兆候は良い傾向で、男性はもっと
女性化すべきだという。
しかし。男性化だとか女性化だとか以前に、弱い者に対して暴力を振るうのはもってのほかで
あるとか、他社への共感だとか想像力だとか、そもそも人として大切なでも当たり前のことを
ちゃんと教育できる社会であるべきではないかと思うのだけれど。
「選ばれる男たち―女たちの夢のゆくえ」 信田 さよ子 ★★★
この著者の名前をどこかで見たなぁと思ったら、三島自決の日に呼び出され
檄文を託された人ですね。
妻よりも自分の方が先に逝くものだとばかり思っていたのに、
妻に先に逝かれてしまった著書が語る、正しく「妻の肖像」です。
出会いやこれまでの生活、思い出などが、それはそれは美しい日本語で
綴られていますが、若かりし頃、それは今よりも不便でお金もなかった
時代であったわけですが、いきいきと、優しい眼差しで当時を回想して
います。
しかし「新聞記者」という職業柄もあるのでしょうが、
「自分が死ぬこと」については著者は何度か思いを巡らせていますが、
「妻が(自分より先に)死ぬこと」は思いもよらなかったようです。
得てして、そんなもんなんでしょう。
思うに、大切な人を失うことによって図らずも抱えてしまった大きな心の穴は決して埋める
ことは出来ないのでしょうけれども、こうやってひとつひとつ思い出と想いをたどりながら、
その圧倒的な不在や後悔、寂しさや孤独に少しずつ心と身体を慣らしていくしかないのかも
しれません。
どうも著者も悪性リンパ腫を患っているようで、回復を願って止みません。
この美しい日本語を失うのはあまりにも惜しい。
「妻の肖像」 徳岡 孝夫 ★★★★
檄文を託された人ですね。
妻よりも自分の方が先に逝くものだとばかり思っていたのに、
妻に先に逝かれてしまった著書が語る、正しく「妻の肖像」です。
出会いやこれまでの生活、思い出などが、それはそれは美しい日本語で
綴られていますが、若かりし頃、それは今よりも不便でお金もなかった
時代であったわけですが、いきいきと、優しい眼差しで当時を回想して
います。
しかし「新聞記者」という職業柄もあるのでしょうが、
「自分が死ぬこと」については著者は何度か思いを巡らせていますが、
「妻が(自分より先に)死ぬこと」は思いもよらなかったようです。
得てして、そんなもんなんでしょう。
思うに、大切な人を失うことによって図らずも抱えてしまった大きな心の穴は決して埋める
ことは出来ないのでしょうけれども、こうやってひとつひとつ思い出と想いをたどりながら、
その圧倒的な不在や後悔、寂しさや孤独に少しずつ心と身体を慣らしていくしかないのかも
しれません。
どうも著者も悪性リンパ腫を患っているようで、回復を願って止みません。
この美しい日本語を失うのはあまりにも惜しい。
「妻の肖像」 徳岡 孝夫 ★★★★
何の先入観もなしに読んだのですが、驚きました。
相当な調査と取材の上に、綿密に積み上げられているように思います。
戦争物のノンフィクションも結構読んでいるのですが、例えばそれは
「ガダルカナルやフィリピンに於ける陸軍」であったり、「司令部の戦略」
であったり、「大和」であったりとテーマが絞り込まれていたり、
また特攻隊についても終盤の「沖縄線」のものが多かったりしたのですが、
これは戦争全体の流れと、陸軍、それになにより航空隊の最前線と変遷が
とても緻密に描き出されています。
いろんな人の目を通して、飛行機乗りだった亡き祖父の実像が浮かび
上がってきますが、惜しむべくは恐らくアンチテーゼとして登場した
「特攻隊はテロと同じ」と主張する新聞記者の描き込みと立ち位置が
ちょっと弱いかなぁ。
それでも。
この作品は、もっと多くの人が読むべきだとおもいます。
「永遠の0」 百田 尚樹 ★★★★★
相当な調査と取材の上に、綿密に積み上げられているように思います。
戦争物のノンフィクションも結構読んでいるのですが、例えばそれは
「ガダルカナルやフィリピンに於ける陸軍」であったり、「司令部の戦略」
であったり、「大和」であったりとテーマが絞り込まれていたり、
また特攻隊についても終盤の「沖縄線」のものが多かったりしたのですが、
これは戦争全体の流れと、陸軍、それになにより航空隊の最前線と変遷が
とても緻密に描き出されています。
いろんな人の目を通して、飛行機乗りだった亡き祖父の実像が浮かび
上がってきますが、惜しむべくは恐らくアンチテーゼとして登場した
「特攻隊はテロと同じ」と主張する新聞記者の描き込みと立ち位置が
ちょっと弱いかなぁ。
それでも。
この作品は、もっと多くの人が読むべきだとおもいます。
「永遠の0」 百田 尚樹 ★★★★★
うーん…。
斎藤美奈子の「妊娠小説」みたいな感じかと思ってたんですが…。
すいません。どうしてもちょっと浅い気が。
浮気をされた場合の男性の行動を、「黙認する男」「殺す男」「復讐する男」
などパターン別に整理していますが…。
なんというか、羅列だけなんだよなぁ。
結論としては「浮気を見つけても、あまり騒ぎ立てず男の器量を示すべき」
ということみたいなんですが、それもどうなのかなぁ。
浮気に限らず、苦境にあるときこそそのひとの人間性が問われると思うんです
けど、そういう深いところには一切立ち入るつもりはないみたいです。
映画、歌舞伎、読書ガイドとしても薄いし、ちょっとどうなんでしょうか…。
「寝取られた男たち」 堀江 珠喜 ★★
斎藤美奈子の「妊娠小説」みたいな感じかと思ってたんですが…。
すいません。どうしてもちょっと浅い気が。
浮気をされた場合の男性の行動を、「黙認する男」「殺す男」「復讐する男」
などパターン別に整理していますが…。
なんというか、羅列だけなんだよなぁ。
結論としては「浮気を見つけても、あまり騒ぎ立てず男の器量を示すべき」
ということみたいなんですが、それもどうなのかなぁ。
浮気に限らず、苦境にあるときこそそのひとの人間性が問われると思うんです
けど、そういう深いところには一切立ち入るつもりはないみたいです。
映画、歌舞伎、読書ガイドとしても薄いし、ちょっとどうなんでしょうか…。
「寝取られた男たち」 堀江 珠喜 ★★
セラピーやカウンセリングを仕事としている著者の体験記ですが、
これはグリーフケアですね。
自分の命の終わりが見えてきてしまった人や、その周りの残される人たち、
また、自分の子供との関係性を上手く築けない人たちなどに、カウンセリング
を通して「再生」の道へ共に歩いていく、というものです。
これを読んでいると、対極にあるように思える「生」と「死」というものが、
実はひと続きというか不可分というか、そういう関係にあるんだと感じます。
そして、人間というのは弱いけれども同時に、なんとも強いものだと、
そんな風にも思うのです。
「いのちのバトン」 志村 季世恵 ★★★
これはグリーフケアですね。
自分の命の終わりが見えてきてしまった人や、その周りの残される人たち、
また、自分の子供との関係性を上手く築けない人たちなどに、カウンセリング
を通して「再生」の道へ共に歩いていく、というものです。
これを読んでいると、対極にあるように思える「生」と「死」というものが、
実はひと続きというか不可分というか、そういう関係にあるんだと感じます。
そして、人間というのは弱いけれども同時に、なんとも強いものだと、
そんな風にも思うのです。
「いのちのバトン」 志村 季世恵 ★★★
「おくりびと」の時代劇版みたいな雰囲気です。
主人公はお寺に身を寄せる湯灌士。
この著者の小説としての作品はまだ2〜3冊だと思うのですが、それに
しては文章(ちょっと硬いところもあるけど)と構成が上手い。
漫画の原作者だったということもあるのでしょうか。
読みやすいし優しくて良いんですが、欲を言うともっと、なんというか
突っ込んだものも読みたいなぁと思う。
とにかく出てくる人がみんな優しくて、傷ついたり傷つけられたりも
するんだけど、それもみんなそれぞれの「優しさゆえ」みたいな感じで。
「八朔の雪―みをつくし料理帖」もそんなテイストだったし、
それはそれでいいんだけど、ちょっと違う面も見たいなぁという欲が出てくる。
「出世花」 高田 郁 ★★★
主人公はお寺に身を寄せる湯灌士。
この著者の小説としての作品はまだ2〜3冊だと思うのですが、それに
しては文章(ちょっと硬いところもあるけど)と構成が上手い。
漫画の原作者だったということもあるのでしょうか。
読みやすいし優しくて良いんですが、欲を言うともっと、なんというか
突っ込んだものも読みたいなぁと思う。
とにかく出てくる人がみんな優しくて、傷ついたり傷つけられたりも
するんだけど、それもみんなそれぞれの「優しさゆえ」みたいな感じで。
「八朔の雪―みをつくし料理帖」もそんなテイストだったし、
それはそれでいいんだけど、ちょっと違う面も見たいなぁという欲が出てくる。
「出世花」 高田 郁 ★★★
やっぱり読まず嫌いというのは良くないな。と思った。
著者は映画監督が本業なんですかね。映画の原作ということになるのかな。
映画を撮った後に著したようです。
緻密な心理描写に正直なところ驚きました。まったく性格の違う登場人物
たちを、キャラクターをたてるというよりも、内面からきちんと描き分けて
います。ここがかなり秀逸。
ただまあ作家が本業ではないせいか、というより映像の世界の人だから
だと思うのですが、日本語とか文章とか、言葉を積み上げて構成して
いくというより、場面や情景みたいなものを切り取って言葉に置き換えて
いるような印象です。
お互いを思いやったつもりが相手を傷つけていたり、近いようで遠い、かといって他人にも
なれない「家族」というやっかいな関係性を何組かの親子、兄弟関係、疑似家族関係を
通して描いていますが、
でも「家族だからいつかきっとわかり合える」と思うのか、それとも
「いや家族だからと言ってもどうしようもないだろう」と思うのか。
それはラストをどう判断するのか、つまり個々の読み手に委ねられているのでしょう。
「ゆれる」 西川 美和 ★★★★
著者は映画監督が本業なんですかね。映画の原作ということになるのかな。
映画を撮った後に著したようです。
緻密な心理描写に正直なところ驚きました。まったく性格の違う登場人物
たちを、キャラクターをたてるというよりも、内面からきちんと描き分けて
います。ここがかなり秀逸。
ただまあ作家が本業ではないせいか、というより映像の世界の人だから
だと思うのですが、日本語とか文章とか、言葉を積み上げて構成して
いくというより、場面や情景みたいなものを切り取って言葉に置き換えて
いるような印象です。
お互いを思いやったつもりが相手を傷つけていたり、近いようで遠い、かといって他人にも
なれない「家族」というやっかいな関係性を何組かの親子、兄弟関係、疑似家族関係を
通して描いていますが、
でも「家族だからいつかきっとわかり合える」と思うのか、それとも
「いや家族だからと言ってもどうしようもないだろう」と思うのか。
それはラストをどう判断するのか、つまり個々の読み手に委ねられているのでしょう。
「ゆれる」 西川 美和 ★★★★
懐かしの「噂の真相」。
その編集者だった著者の作品ですが、「内幕ものかな…」と思っていた
想像を良い意味で裏切ってくれたように思います。
ある種の「編集者成長記」とでもいうのでしょうか。
新聞記者を皮切りに、いろんな事件を通して成長していく姿がここに
あります。
神戸新聞記者時代に阪神大震災と神戸連続児童殺傷事件に遭遇したことは、
著者にとって(地元の事件だけに)辛いことも多かったようですが、
しかし記者、編集者として大きな成長となったのではないかと思うし、
その時の気持ちを忘れないで欲しいなぁとおもいました。
しかしこの著者の性格(を想像すると)「大きなお世話や」と言われるんだろうなぁ。
「「噂の眞相」トップ屋稼業」 西岡 研介 ★★★
その編集者だった著者の作品ですが、「内幕ものかな…」と思っていた
想像を良い意味で裏切ってくれたように思います。
ある種の「編集者成長記」とでもいうのでしょうか。
新聞記者を皮切りに、いろんな事件を通して成長していく姿がここに
あります。
神戸新聞記者時代に阪神大震災と神戸連続児童殺傷事件に遭遇したことは、
著者にとって(地元の事件だけに)辛いことも多かったようですが、
しかし記者、編集者として大きな成長となったのではないかと思うし、
その時の気持ちを忘れないで欲しいなぁとおもいました。
しかしこの著者の性格(を想像すると)「大きなお世話や」と言われるんだろうなぁ。
「「噂の眞相」トップ屋稼業」 西岡 研介 ★★★
久しぶりに「本を読むということの醍醐味」を味わわせてくれる本です。
しかし念のため言っておきますと、決して読みやすい本ではありません。
崩壊寸前のオーストリア帝国が舞台の中心です。昔、ブルーブラッドものを
読みあさったときのヨーロッパ近代史を記憶を掘り起こしながら
読みました。
まあ言ってしまえば諜報もの歴史小説ですが、言葉も表現もそぎ落とされて
おり、同時に極限までそぎ落とされていながら重厚な情報量があるため、
とにかく想像力をフルに動員しないと読めません。
キャラクタ設定と世界観がしっかりしていて、ちょっとファンタジーの
雰囲気も。
と思ったら、著者はファンタジー出身なんですね。
続編というか姉妹編もあるようなので、そちらもいってみましょう。
「天使」 佐藤 亜紀 ★★★★
しかし念のため言っておきますと、決して読みやすい本ではありません。
崩壊寸前のオーストリア帝国が舞台の中心です。昔、ブルーブラッドものを
読みあさったときのヨーロッパ近代史を記憶を掘り起こしながら
読みました。
まあ言ってしまえば諜報もの歴史小説ですが、言葉も表現もそぎ落とされて
おり、同時に極限までそぎ落とされていながら重厚な情報量があるため、
とにかく想像力をフルに動員しないと読めません。
キャラクタ設定と世界観がしっかりしていて、ちょっとファンタジーの
雰囲気も。
と思ったら、著者はファンタジー出身なんですね。
続編というか姉妹編もあるようなので、そちらもいってみましょう。
「天使」 佐藤 亜紀 ★★★★
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