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本はごはん。
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116654.jpg  禅僧による小説です。

 23歳で自殺してしまった女性の周りの人たちの視点を通して女性が描かれて
 いきます。それを通して、彼女もいろいろあったんだなぁと思うのですが、
 しかし死ぬほどのことだったんだろうか、とも同時に思うのです。

 つまり何人かの(もしくは何人もの)見方を重ねてみたところで、
 「自殺の理由」なんて判らないわけです。誰にも。もしかしたら本人にも。
 
 副題についている「神の庭」というのは、そういうことを指しているの
 かなぁ、と思います。人間には見ることも聴くことも識ることもできない
 神の領域、みたいなもの。

 「シンクロニシティ」についても描かれていますが、これも「神の庭の遊戯」なのかも。

 宗教的哲学的な見地と、それに物理学(?)的な考え方と、沖縄の宗教観(死生観)まで
 織り重なっていてちょっと整理するのに手間取りますが、結局本質は一緒なんだろうなと。

 ただ、「慈悲」というのは難しいな、と。「赦し」もまたしかり。
 「甘え」とか「逃避」とか「思い上がり」とか「傲慢さ」みたいなものが簡単にすり替わって
 しまう危険を、どうしても感じる。


リーラ―神の庭の遊戯」 玄侑 宗久 ★★★★
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610050.jpg  この著者のルポルタージュはしっかりしていますね。

 DV、共依存、幼児虐待、家庭内殺人など、家庭内での犯罪についての
 ルポルタージュです。

 被害者だけでなく加害者にも取材しており、また裁判での様子や近所の
 反応など、事件を複眼的にとらえているのがいいと思います。

 また単に事件を追うだけではなく、法整備や福祉のあり方、
 法律の評価できる点とこれからの課題なども、判りやすく紹介しています。

 それにしても。
 もともと日本は、確かに「家庭内不可侵」みたいな雰囲気があって、家庭と
 いうのはある種の「聖域」だったように思うんですが、残念ですが現代ではそれはもう
 「神話」なんですね。

 やっと政治家が重い腰をあげて法整備を始めたところ、という感じですが、まだまだ家庭内
 犯罪は「加害者有利」なように思えて仕方ありません。

 結局家庭も職場も社会も、弱者にしわ寄せが行くんだよなぁ。


家庭という病巣」 豊田 正義 ★★★★
9784167739010.jpg  短編集です。
 不条理ものというか、現代のおとぎ話のような。
 
 淡々とした文章ながら、言葉の使い方が確信的ですね。
 同じ場面を想起させるいくつかの言葉のなかから、「これ」というものを
 確信的に選別している感じがします。

 ただ、なんというか不条理ストーリィが強すぎて、肝心の主題が見えにくい
 ような気もするんですが。 

 悪くないと思うのですが…。
 好みの問題かな。


ぬかるんでから」 佐藤 哲也 ★★★
111751.jpg  知らずに手に取りましたが、遺稿集でした。

 この著者の歴史物を読むといつも、過去の美しい日本の風景が目の前に
 ありありと浮かぶのは(それは荒ぶる海だったり、強風に耐える松の緑
 だったり一面金色に輝く稲穂の波であったり様々ですが)、

 ここ(肺結核で養生した湯治場)に著者の原風景があるのかもしれない
 と思いました。
 殊に「死」と隣り合わせで見る自然は、普段我々が見過ごしている
 たくさんのことを心に焼き付けるのかもしれません。

 著者が人生の中で経験した様々な「死」を通して培った死生観、
 つまりは哲学が凜とした言葉で綴られています。

 それにしても著者の死に様はもう見事と言うしかなく。
 悲壮感も絶望感もなく、正しく見事というのはこういうことなんだろうと思います。
 そばで見守るしかない親族は辛いと思いますが…。

 美しい日本語を奏でる作家の新作がもう読めないのが、非常に残念です。


死顔」 吉村 昭 ★★★★
32247507.jpg  うーん。

 池永作品を読む度に思うんですが、この著者、何かを持ってる。
 それは確かだと思う。
 そう思うんだけど、それがいつも作品に表現されきってない。
 そんな、なんとも歯がゆいような気がするのです。

 これは沖縄を舞台にした恋愛小説ですが、正直なところ沖縄の持つ哀しみ、
 あの底抜けに明るい太陽の影が実はどれほど暗いものなのか、いまひとつ
 表現し切れていないような、ここにあるのはちょっと表層的なような。

 内地(ヤマト)の身勝手さは、主人公の女性の身勝手さに表現しているの
 かなぁとも思うのだけれど。
 
 結局著者は、「沖縄を舞台にした恋愛」を描きたかったのか「恋愛を通して沖縄」を描き
 たかったのか。どっちにしてもちょっと中途半端なような…。

 「沖縄」のようなそれ自身が強力なネタの場合、相当な覚悟と想いとテクニックが要ると
 思うのです。どれかが致命的に欠けている、とは思いませんが、いずれにしてももう一声。
 是非。


でいごの花の下に」 池永 陽 ★★★
4758434034.jpg  面白いです。
 連作時代小説でしかも、全編通して料理が絡んできます。

 事情を抱えて上方から江戸へやってきた料理人(女性)の話ですが、
 これだけ情報網と高速移動手段が発達した現代でも「ケンミンショー」
 なんかを見るとびっくりする食べ物や習慣に出会うワケですから、
 当時の人たちが受けるカルチャーショックは今の比ではないでしょう。

 そういった当時の目から見た比較文化論的目線と、当時の人情とか風俗など、
 そしてキャラクター配置が秀逸でそれぞれのキャラがしっかり立っており、
 更に「料理」というテーマが物語に奥行き感、立体感を作り出しています。

 なんかTV局が飛びつきそうな、ドラマ化には格好の作品という感じ。
 
 続くのかな。続くといいな。



八朔の雪―みをつくし料理帖」 高田 郁 ★★★★
32099080.JPG  またしても惜しい作家が逝ってしまいました。

 著者との出会いは「コミュニケーション不全症候群」で、まだ若かった私に
 こういう視点があるのか! と、強い衝撃を与え、

 それから表紙に惹かれて「翼あるもの」を読んで再度衝撃を受けました。

 この「翼あるもの」はヤヲイ系の元祖というか、まあ今で言うとボーイズ
 ラブなんじゃないのと言われてしまいそうですがその範囲にとどまって
 いるものでは全くなく、文学としてとても上質であると思います。

 しかしよく考えてみるとこの著者の作品は6~7冊しか読んでいないのです。
 おそらく「コミュニケーション不全症候群」を読んだときのインパクトが
 強すぎて、それほどたくさん読んでもいないのに

 「中島梓(栗本薫)=すごい作家」という刷り込みがなされたのかもしれません
 (今もそれを間違っていたとは思っていませんが)。

 で、この本ですが。
 膵臓ガン(当初は胆管ガンだと思われていた)での闘病記です。
 
 ガンで入院すると検査だのなんだので相当忙しいらしい、とか
 手術直後は集中治療室で身体に10本くらいの管をつなげられる(まあガンの種類にもよるので
 しょうが)らしい、とか
 ガンの手術後って2週間も絶食する、とか

 いろんな実情が判るんですが、しかし…。

 何が切ないって、これが「あの」著者の文章とは…。
 あの美しい表現で人間の感情と感覚の襞を紡いだ人の文章とは…。

 文章そのものだけでなくおそらく思考深度も、あの頃の中島梓であればもっと鋭利に切り込んで
 そこから真理の欠片みたいなものを掬い上げていたであろうに、と思われる箇所も散見され、
 そして同時に「書きたい!」という叫び。

 なんともせつなく、遣る瀬ない。
 

ガン病棟のピーターラビット」 中島 梓 ★★★
116901.jpg  ううむ。びっくりした。これはすごい。

 第二次世界大戦中、徴兵忌避して逃亡生活を続けてきた主人公の、現在と
 過去(逃亡時代)が交互に描かれていきます。

 なりより構成が巧みで、現在のことが描かれていたのに、いつの間にか過去の
 描写へ移っていたりするのですが、それでストレスを感じることもない。

 『徴兵忌避』なんて言葉でしか知りませんでしたが、逃亡生活がディテール
 豊かに描かれており、特高警察に対する恐れや、そして戦傷者や招集に応じた
 者たちへの『引け目』『後ろめたさ』などの精神面も緻密に描かれる一方、

 いやいやながらも徴兵に応じ、理不尽な軍隊内での仕打ちや、最前線の南洋の
 島で食べるものもなく、先ほどまで一緒に笑っていた同胞が次の瞬間死んで
 いたり、部隊全滅の中、からくも生き延びた文字通り「死線をかいくぐってきた」
 経験を持つ者の独白との対比が鮮やかです。

 それにしても。
 緊張の連続であった逃亡生活も敗戦によって終わりを告げ、今や結婚し仕事も持ち、
 いち庶民として安定した生活を営んでいた主人公ですが、結局のところ戦前はもちろん、
 戦後にも彼の安息の場所はない。

 ラストはやはり、主人公のこれからを暗示しているのでしょう。

 タイトルも秀逸だと思います。


笹まくら」 丸谷 才一 ★★★★
32177484.jpg  気がつけば、この本はアップしてなかった。
 毎日ブログをチェックしているにもかかわらず、つい単行本も
 (もちろん全巻)買ってしまうほどの威力を持っている
 ねこまんがです。

 とてもシンプルな画でありながら、ねこの持っている柔らかさや
 しっとり感、まあるいラインなんかが、すごくよく現れています。

 彼がことあるごとに、

 「ねこ飼いってみんな似てるの? 著者(飼い主)の行動とか反応
  とか、あんたにそっくりだけど」

 と言うのがちょっと…。

 あたくしはトメちゃのファンです。


くるねこ 4」 くるねこ 大和 ★★★★★
基本的に、新刊本は文庫本になったら読む、というスタンスです。

20代の頃はノートPC+単行本を標準装備で持ち歩いていましたが、案の定肩をおかしくしました。
(本は主に移動中に読みます)。
更に、家の中がどんどん本で侵食されていきます(本を捨てたり売ったりできない性格)。

それ以来、ノートPCの必要最低限の機能はケータイに担わせ、(科学モノとかリアルタイムで
読むことに意味がある本以外)単行本はやめて文庫本(もしくは新書)にしました。

なので、読みたいなぁと思う新刊が出ると、早く文庫本にならないかなぁ、と思います。
しかし。
作家、出版社、タイトル(内容)を見て、「ああこれは…単行本化は無理かなぁ…」と
思われるものが結構あります。

例えば現在、文庫本待ちは100冊超あるのですが、そのなかで「文庫化期待薄」を
ピックアップしてみると…。

■「ことば汁」 小池 昌代  中央公論新社
 詩人の作品(これは小説)ってあんまり文庫化されない傾向があるように思う。

■「かぐや姫の結婚」 繁田 信一  PHP研究所
 タイトルに「かぐや姫」とありますが、藤原実資というひとの日記に書かれている、彼の娘の
 政略結婚を通して当時の貴族の風習などを紹介したものらしい。だけど「藤原実資」も
 「平安時代」もいまひとつメジャー感に欠けるというか、文庫化するには部数は望めないという
 判断が下されそうな気が。

■「またの名をグレイス 上」「またの名をグレイス 下」 マーガレット・アトウッド  岩波書店

 翻訳物でしかも上下巻。上下巻は大抵下巻の売りが落ちるし、文庫化するには「上・中・下」巻
 にしなきゃいけないのかも。翻訳物ってコスト(印税)が高くなるし、無理かも。

■「東京裁判における通訳」 武田 珂代子  みすず書房
■「オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険」 鈴木 光太郎  新曜社

 ちょっと学術書チックなところと、そして版元が…。
 どっかの版元が手を挙げてくれないかな。

■「正直書評。」 豊崎 由美  学習研究社

 これもどっかの版元が手を挙げてくれないかな。文芸雑誌持ってる版元はだめだろうけど。

■「平凡パンチの三島由紀夫」 椎根 和  新潮社

 版元的には何の問題もないと思うんですが、「平凡パンチ」と言う名前そのもの、そして
 それが象徴する時代性みたいなものって、若い人は知らないだろうから、読者層が狭い
 って判断されそう。

■「会津のこころ―優しく・烈しく・美しく」 中村 彰彦  日新報道

 検証ものであれ小説であれドキュメントであれ安心して読める著者で、新選組を始め幕末に
 関するものを多く著しておりこれも読みたいんだけれど、ちょっとご当地ぽいというか
 郷土ものみたいなタイトルが読者層を狭めていそうな、そして版元が…。

■「アイヒマン調書―イスラエル警察尋問録音記録」 ヨッヘン・フォン ラング  岩波書店

 あー。読みたいんだけどなぁ。「服従の心理―アイヒマン実験」も、すごく面白かったし
 (こちらも文庫にはなってない)。これも文庫は無理だろうなぁ。

■「私が何を忘れたか、思い出せない―消されゆく記憶」 スー ハルパーン  ウェッジ

 これは進歩の著しい脳科学(特に認知症)についてのノンフィクションらしいので、
 文庫になるのを待つよりとっとと読んだ方がいいんだろうな。文庫化は期待薄だと思うし。

ざっくりみただけでこれだけあるのか。うーん。
どーでしょう出版社さん、文庫にしませんか。私は買いますが。

…無理だろうな。

あ、献本してくださっても! …無理だろうな。

32186019.jpg  女性の更年期を真正面から扱った本。
 医学書以外で、こんな風なレポートものはなかったんじゃないかなぁ。

 更年期は50歳ブラスマイナス5歳で始まるのが一般的らしく、私がその年に
 至るにはまだ猶予があるモノの、最近立て続けに白髪をみつけて自分でも
 びっくりするくらい動揺してしまった私は、おそるおそるページをめくって
 みました。

 著者の友人のネットワークをフルに使って、彼女たちの更年期の症状や
 性生活のかなりつっこんだところまでレポートしており、また更年期障害の
 対応として婦人科医、漢方医、心療内科医、はてや「セックス奉仕隊」まで
 取材しています。

 つまり更年期の症状(いやほんと多種多様かつ多方面に症状が出るんですね…)や
 それに対する様々な治療法が、いろんな角度から紹介されており、更年期の正しい
 知識を得るにはとても良いと思うし、特に男性も読んだ方がいいと思う。
 
 そして「更年期」が「性生活」とこれほど密接に絡み合ってるとは思っていませんでした。

 同時に見えてくるのは、女性達の様々な「性」に対する考え方、スタンスです。
 どうも「不倫」の問題はついて回るらしい。

 「婚外セックス」も「不倫」も、一概に良いとか悪いとか言えるものではないと思うのですが、
 何と言えばいいのかな、究極の目的は「セックス」ではないんじゃないかと、そう思うんだけどな。

 もちろん「セックス」は重要だけどひとつの表現手段であって、結局ひとは誰かとお互いに
 認め/認められ、求め/求められる関係を築きたいんじゃないかと、そう思うんだけど。

 だから婚外セックスも不倫も、緊急避難的にはありだと思うんですが、たとえばこの中に出てくる
 『自分は、セックスを(夫以外の男と)繰り返すことによって女として進化していく選ばれた女性
 (要約)』みたいな考え方は、私にはよく理解できないけどなぁ。

 更年期を過ぎたらシベリアへ行く(=セックスから撤退? 卒業? する)のかニューヨークへ
 行く(=不倫、婚外セックスに踏み出す)のか、それしか選択肢がないのは淋しいなぁ、
 と思うのだけれど。


快楽(けらく)―更年期からの性を生きる」 工藤 美代子 ★★★★
32247572.JPG  女性の納棺士が、仕事や仕事を通して感じたことを綴ったものです。

 文章がかなり軽いです。これは年配の堅い方からは批判が出るかもと思う
 くらい軽いです。でもこれはこれでいいんじゃないかな。「死」という
 ものを良くも悪くも「穢れ」とか「非日常」なんかに切り離して蓋をして
 しまうよりよっぽどいいと思います。

 ただ文章が、日本語が…と思ったら、これもブログ本なんですね。
 うーん。内容的にも、わざわざ本買わなくてもブログで十分かも…。
 すいません…。




今日のご遺体 女納棺師という仕事」 永井 結子 ★★★
40964.jpg  「ねこもの」だというだけで飛びつくのはもうやめようと心に強く誓い、
 店頭で見つけておそるおそるぱらぱらめくってから購入しました。

 結論からすると、なかなか良かったです。

 詩人とその妻が、じわじわと猫の魔力にとりつかれていく経緯が、
 美しい日本語で綴られています。
 
 同時に、猫だけでなく、うつろいゆく季節、失われていく時代を
 哀しくも暖かい眼差しで見つめています。

 とても言葉に対する感度が高い、というより強い印象を受けるのは、やはり
 著者が詩人だからなのでしょうか。


猫の客」 平出 隆 ★★★
32247420.jpg  「カタブツ」以来(読むのは)2作目です。

 「カタブツ」でも思いましたが、面白い作家です。この「あやまち」も
 はっきり言って地味めなんですが、リフレインしていく構成が「日常」を
 上手く表現していたり、

 なんといってもこの29歳独身OLの心理描写が秀逸で、かなりリアルです。
 何気なく取っている日常の行為、行動をうまく心理解説つきで描写しており、
 「現代」がよく表現されていると思うのです。

 タイトル通り、主人公が恋した相手がかつて犯した「あやまち」、そして
 主人公が犯した「あやまち」、社会的、法的に「罪」に重軽はありますが、
 あやまちには重いも軽いもないのかもしれません。

 主人公が犯した「あやまち」は、恋愛関係にある相手に対して、という限りではなく、
 「ひととして」自分ならどう対峙するだろうか、ということを考えさせられます。

 そういう意味でもこの29歳OLは現代の一般的な人間の姿かもしれません。
 しかし同時に、彼女は自分の「あやまち」を正しく認識してはいますが、彼女の愛は果たして
 本当だったのだろうか、とも思うのです。


あやまち」 沢村 凛 ★★★
276378-2.gif  「おくりびと」の脚本を書いた小山薫堂氏の短編小説です。

 どの作品も小山氏の性格が良く出ているというか、暖かくて、でも
 現実的な展開です。
 ちょっとしたことで元気を貰って、だけどシンデレラのように生活が
 一転するのではなくて、元の自分の生活に戻っていくというような、

 いわゆる「夢物語」ではなく「現実」のなかに潜むほのかな優しさ、
 みたいなものが全編を通して描かれています。

 例えば自分を捨てた父親が死んだ後、ひょんなことから自分も父親にしっかり
 愛されていたということを思い出し、父親を赦し受け入れる話がありますが、
 これも、

 父親はものすごくドラマティックな人生でやむに止まれず自分を捨てたのではなく、ありがちな
 どーしようもないことで自分と母親を捨てています。

 実際のところ、そんなもんでしょう。そうそうドラマティックな展開なんてなくて、「日常」の
 なかで泣いたり笑ったり、やるせなくなったりしながらそのなかで、赦せなかったりどうしても
 消化できないことが澱のように溜まって行くものだと思うのです。

 その「澱」が、人との出会いやそれこそ「何かの弾み」で「氷解」していくような、
 「人生もそう捨てたもんでもないよ」みたいな、そんなメッセージ集のように思います。

 ただ、個人的にはセレンディピティネタがちょっと勿体なかったような気がして。
 是非もう一声。


フィルム」 小山 薫堂 ★★★
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