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本はごはん。
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115351.jpg  南極越冬調査隊に、料理担当として参加した著者の体験記です。

 南極調査隊は、研究者である地質や気象などを調べるその道の学者などと、
 設営に携わる医者やメカニックや、著者のような料理人とで構成されて
 おり、つまりはみんな、「プロ」なんですね。

 そんな人たち9人(しかも男ばっか)が1年間、雪と氷に閉ざされた極寒の、
 嫌でも一日中、毎日、顔を突き合わせなきゃならない世界に放り出されたら
 そりゃいろいろあるでしょう。

 しかしその「いろいろ」を乗り越えて、毎日を楽しく暮らす工夫を凝らし
 ながら、人との結びつきが強固になっていく過程が、料理人ならではの
 視点でユーモラスに語られています。

 しかしなぁ。マイナス30℃でジンギスカン(もちろん屋外)ってなぁ…。
 缶ビールが1分で凍るなかでねぇ…。

 すごすぎて想像がつかない。


面白南極料理人」 西村 淳 ★★★
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32247222.jpg  かなり久しぶりに上原氏の著作を読みましたが、
 淡々とした文章ながらも温かい眼差しは相変わらずですね。

 ハッピーエンドというか、ああ良かったねぇで終わるものもありますが、
 やるせなさの渦中のひと、思い現実を背負ったままの人など様々です。
 みんなそれぞれに、いろいろあるよね。

 しかし「ママ友」のはどーしても理解できない。




にじんだ星をかぞえて」 上原 隆 ★★★
059651.jpg  またしても裁判傍聴記です。

 ここに取り上げられているのは、歯科医の息子が妹を殺してバラバラにして
 しまった事件とか、渋谷の「セレブ妻」が夫を殺してバラバラにした事件、
 何人かの女性を監禁して捕まったイケメンの「監禁王子」事件など、
 メジャー級の事件が並んでいます。

 これだけメジャー級の事件になると、新聞社がネットで「裁判傍聴記録」を
 詳細かつ(ほぼ)リアルタイムに載せていたりするので、内容については
 ある程度知っていますが、

 新聞社の裁判傍聴記録が、その属性の特徴上、客観的「報道」であるのに
 対し、この本はある意味等身大というか、「被告席に着くまでの動作が
 30代とは思えないほどノロノロだった」とか「ボンヤリした鑑定医」など、
 報道では削除されてしまいがちな情報も記載されているため、情景が
 想像しやすい。

 一方で、メジャー級の事件、つまりは数度の公判、論告求刑、判決と、10回前後にわたる
 法廷を20ページ前後に纏めているため、よく言えばコンパクトでありますが、捨象されて
 いる部分もかなりあります。

 それにしても。
 裁判員制度問題が浮上してからずっと疑問に思っていることがふたつ。

 ひとつは、なぜ裁判員が量刑も決定するのか、ということ。有罪か無罪かを決めるのは
 まあいいとして、量刑についても裁判員が決めるとなると、同様の事件で量刑がかなり
 違ってしまう、という事態が出てきちゃうんじゃないのかしら。

 そしてふたつめが「公判前整理手続き」。
 これは公判前に裁判官と検察官、弁護士が、「争点」や「証人、証拠」について「合意」を
 とる手続きだとおもったんですが(事前にこの辺を整理しておくとによって、裁判の迅速化が
 図れる)、

 この「公判前整理手続き」には裁判員は一切タッチしない。しかしこれ、穿った見方をすると、
 裁判員抜きの場で、「公判のストーリー、シナリオ」みたいなものが作られてしまう、という
 ことはないのかしら。

 そのあたりまで踏み込んだ本はないのかな。


あなたが猟奇殺人犯を裁く日」 霞っ子クラブ ★★★
52fd3aee.jpeg  うーむ。
 遙か昔に読んだ「前世療法」みたいな感じかなぁと思って読みましたが…。
 正直、客観性が著しく低い(と思える)。

 中国のとある奥地の村に、前世の記憶を持つ人たちが結構いて、その人達が
 経験した(覚えている?)「生まれ変わり」について取材したレポートです
 が、その場所を明確にしないのはいいとしても…。
 
 まず、その一帯の人口がどのくらいで、前世の記憶を持つ人がどのくらい
 居るのかとか、その土地の支配的死生観や弔いの儀式などの「死」に対する
 支配的意識、また、
 
 「前世の記憶を持っている人」に対して、「前世の記憶を持っていない人」
 は、どのような感情を抱いているのか、とか、

 背景となる情報が全くない。文化人類学並のデータや考察までは要求しないけど、とにかく
 バックボーンになる情報がなさすぎる。

 そんななかで、前世を記憶している人たち84人だかの証言がつらつら並んでいますが、
 これだと「ふーん」としか言いようがない。

 なんでも「スープ」を飲まなければ前世の記憶を持ったまま転生するそうです。

 以前何かで聴いた「忘却の泉」に似ています。生まれ変わる前に「忘却の泉」に落とされ、
 その泉は底に穴が開いていて(しかし水はその穴から抜けない)、その穴から落ちて転生する
 んだそうですが、その際、泉の水を飲んでしまうことによって前世の記憶を失うという説です。

 まあこの手の話は洋の東西を問わず、結構似た話が多いですしね。

 ここに書かれていること全てに懐疑的に思っているわけでもありませんが、
 「何とも言いようがない」というのが正直なところです。

 ただねぇ…占いで株が大当たりして億単位の儲け、あなたもどうぞ! なんて書かれちゃうと、
 胡散臭さが限りなく…。
 
 あと、編集者ちゃんと文章見てるのかな、と思った。この文章はちょっとなぁ。


生まれ変わりの村1」 森田 健 ★★
138151.jpg  元警視庁刑事による警察裏話集。
 ちょっと露悪的なところもないでもない。

 一時期裏金問題などで警察組織が叩かれたことがありますが、
 「一生懸命やっているひとたちもいるんだよ」ということを訴えたかった
 のだろうと思います。確かにそれはそうだろうとも思います。

 ここに書かれているそれぞれの逸話は(ちょっと自慢話に思える部分も
 あるけど)まあ面白く読めなくもないですが、なんというかエピソード集
 以上のものになっていないのが残念です。

 警察という機構、組織、政治との関わり、現場の考え方やあり方、そういったことに
 対して、著者なりの視点とか問題提起とか、そういうものが潔いくらい「ない」んですよねぇ…。


警察裏物語」 北芝 健 ★★
125943.jpg  あくまで「エッセイ」だと思って読みましたが、読むウチに
 「ああこれ食べたい作りたい」と思うものがいくつも出てきます。

 タイトル通り、B級C級料理が中心ですが、そのシンプルさがかえって
 食欲をそそります。

 何と言ってもレシピがおおざっぱなのがいいです。
 「醤油と酒と塩で適当に味付け」みたいな感じで、それがかえって
 挑戦欲をかき立てます。

 しかも簡単なモノが多いです。なにしろ「ねこまんま」から始まりますし、
 やろうと思えばすぐにできるものが多いのもいいと思います。
 しかし缶詰料理はあんまり好きじゃないんだよな…。

 しかし著者の食に対する飽くなき探求心、というか、どん欲さは素晴らしい。
 ついて行けないところも少なからずあるけれども。


ぶっかけ飯の快感」 小泉 武夫 ★★★
978-4-89048-844-5.jpg  ねこまんがです。最初の「ハナちゃんのガマさん」がもう爆発的に面白い。
 猫の本能や猫の意地、猫のプライドなどが全て炸裂しています
 (amazon で最初の数ページが読めます)。

 それと、お母さんが「人間ミャウリンガル」、つまりハナちゃんのアテレコ
 をするんですが、これもなかなかいい味出しています。

 「ねこがぶつぶつ文句を言う」というのも、あーあるわーと思うのですが、
 そういえば人間の脳から前頭葉を取ると猫の脳になる(前頭葉抜きの人間の
 脳と、猫の脳はかなり似ている)というのを何かで読んだことがあるなぁ。

 なかなかに面白いんですが、最初の話のインパクトが強すぎるのか、
 だんだんと後半に進むにつれ尻すぼみ感がなくもない。

 また、最後に30ページほどエッセイが入っているのですが、エッセイが悪いとは言わない
 けれど、この著者には画で表現して欲しいなぁ。


ウチのハナちゃん」 松本 英子 ★★★★
133252.jpg  この本を読むにあたって、夏目漱石の「夢十夜」を読み返して
 みましたが、いやあやっぱり面白いなぁ。
 美しい日本語で語られる夢幻の世界に、ある種の本能的な恐怖感みたいな
 ものを、さーっとひと撫でされる心地がします。

 しかし結論から言うと、漱石の「夢十夜」を先に読み返したのは失敗で
 あった…。

 で、この本ですが、10人の作家がそれぞれ「こんな夢を見た」で始まる
 短編を寄せています。まあ、野中柊と道尾秀介両氏の作品は悪くないか
 なぁ。野中氏の作品は、視点や視座や目的がころころと転移していく
 夢の特性を良く生かしていると思います。

 しかし漱石が、短い文量かつシンプルな設定でありながらその情景が奥行き感をもって立ち
 上がってくる世界を展開しているのに対し、こちらは上記の2作品を含め、(最近の全般的な
 傾向でもあるのかもしれませんが)全体的にいじりすぎかと。
 そして文量のわりに、残るものが薄いというか…。
 
 比べてはいけないとは思うモノの、こんなタイトルだと比べるなという方が無理では…。
 作家には酷な企画ではないかと思いました。

 (漱石の「夢十夜」は、ココで読めます。)


眠れなくなる夢十夜」 「小説新潮」編集部 (編さん) ★★★
51Z7FV7DT0L._SL160_.jpg<br />  タイトルを見ると、ちょっと怪しげな実用書っぽい雰囲気を感じて
 しまいますが、脳の神経生理学から見た「記憶のメカニズム」が、非常に
 判りやすく、かつ面白く書かれています。

 タイトルにある「記憶力を強くする」という How to を期待するとちょっと
 外すかもしれませんが、そんなのどうでもいいくらい面白い。

 「記憶」をキーワードに、海馬を中心とする脳の記憶機能、そこに付随する
 シナプスをはじめとする記憶組織、夢との関連、そしてそもそも記憶とは
 何なのか、脳とコンピューターの相違、などなど。

 特筆すべきは、第一線の研究者が、専門用語を駆使するのではなく、
 素人にもとても判りやすく説明していることだと思います。

 これを読むと脳の研究というのはせいぜいここ100年、しかも重要な発見はここ20~30年の
 間に集中しており、最近になってやっといろいろ判ってきたところなんだなぁということが
 良くわかります。

 この本自体が既に少し前(2001年発行)のものなので、この本の後にも新しい発見が少なからず
 あることと思われ、まさに日進月歩のジャンルなのでしょう。

 ひとつだけ引用しておくとすれば、

 『天才とは、努力が足りない凡人の妄想によって作られた言葉である』。


記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方」 池谷 裕二 ★★★★
08747792.jpg  相川らず面白いです。

 「ワセダ三畳青春記」の時も思いましたが、この著者が不思議な
 吸引力をもってキャラの立ったひとたちを吸い寄せているとしか思えない。
 しかしまあ私も外国へ行けば、「ヘンな日本人」もしくは「日本人はヘン」
 と思われてるかもしれない。

 今回は日本に居る外国人とともに、彼らと居ることによって見慣れた東京
 ではなく、外国人から観た「トーキョー」を描き出しています。

 最後の話がいいです。  
 すごくいいです。


異国トーキョー漂流記」 高野 秀行 ★★★★
32034703.jpg  タイトル通りの裁判傍聴記です。しかしまあ25年は長いなぁ。

 しかしこの手の本が増えてきているにも関わらず、大概のこの手の本で指摘
 されている事柄、例えば最高裁は検察側が上告すると扉を開けるけれど、
 被告側からの上告にはめったに扉を開かないとか、

 警官などが証人で、しかしその証言について傍聴人が明らかに疑問を感じる
 ものであってもほぼ無条件に採用されてしまうとか、
 
 痴漢被害者の証言偏重(と感じられること)とかが、

 相変わらず繰り返されているように感じるのは気のせいでしょうか。

 最後の章だけが救いかなぁと思います。


裁判中毒―傍聴歴25年の驚愕秘録」 今井 亮一 ★★★
4309407714.jpg  面白かった(楽しいとか、笑えるという意味ではありません)。

 三島の二・二六事件三部作といわれている「英霊の聲」「憂国」
 「十日の菊(戯曲)」に加え、「二・二六事件と私」というエッセイも
 入っています。

 「英霊の聲」と「憂国」は、三島の理想やファンタジーや幻滅や、
 どうしても断ち切れない想いみたいなものが、かなりストレートに現れて
 いると思います。

 それに対して「十日の菊」は、かなりシニカルかつ辛辣なトーンで、ひとつは
 死に時を逃してしまった人間の悲劇を通り越した喜劇、つまりは三島の美意識を、

 もうひとつは、怨念を胸に抱きながらも善意(と自分が信じる)行動を繰り返しながら、悲劇の
 本質を理解しないがために悲劇をも性懲りもなく繰り返してしまう「大衆」を描いており、

 後者については最後に掲載されているエッセイを読む限り、三島は「気性」と片付けていて、
 つまり死に時を見定め始めた三島は「大衆(=日本人)」に対して諦観を持つに至った、
 もしくは大衆に対して諦めはじめたことにより自分の死に時を見定めることになった、
 ようにも見えます。

 文学作品として相変わらず完成度は高いと思いますが、それにしても難しい。
 確かに「天皇の人間宣言」、それは日本人が培ってきた精神の死を意味するものだったの
 かもしれない。

 しかしながら、残念ながら万人が三島ほど深い精神性や思考力を持っているわけでもないのが
 事実でもあり、また、三島が理想とする、

 「天皇は人間だけれど、その振る舞いに於いて神でなければならない(要約)」

 というのは、かなり過酷な要求でもあるように、戦後に生まれ溢れかえるモノに囲まれて
 育った私などは思います。

 しかし二・二六や特攻隊は事実であり、彼らや三島が文字通り命を賭して訴えた言葉を
 我々は軽んじてはいけないと思うのです。


英霊の聲 オリジナル版」 三島 由紀夫 ★★★★★
30940959.jpg  なかなかどっしりした本です(内容が)。
 誰もが経験のある「後悔」を切り口に、哲学の世界に自然と入っていきます。

 「あのときこうしていれば」もしくは「あのときこうしなければ」という
 後悔、それは重いものも軽いものも含めてなぜそう思うのか、そもそも人は
 何を基に行動を決定するのか、本当にそれは自由意志なのか。

 それらに付随して「偶然」とは、「運命」とは何か、などなど、多くの
 哲学者の考え方も紹介しながらうまく纏めています。

 結果として、「それは運命であった」という受け入れ方をするのか、
 「偶然」とシニカルに片付けるのかそれはその人によるのかもしれま
 せんが、人間は「なぜ?」という問いをどうしても発してしまう性を
 背負っているようです。

 その究極が哲学者なんだな、と思いました。


後悔と自責の哲学」 中島 義道 ★★★★
32232056.JPG  温泉繋がり連作です。
 どれも違う温泉ですが、全部実在の温泉みたいですね。

 日本人にとっての温泉というのは、なんかこう特別のものですね。
 年代にあんまり関係なく、若くて史跡なんかにはあまり興味がなくても
 「温泉」というものに対してはちょっと特別感を抱くというか。

 この短編集では、いろんな事情を抱えた夫婦やカップルやその片われが
 温泉を訪れますが、旅というのは例えそれが1泊であってもちょっとした
 「非日常」だと思うんだけれど、

 この短編集を読んでいると、温泉は「非日常」というより、日常が「Side-A」
 だとすると、温泉は「Side-B」のような、そんな表裏一体感を感じます。

 この短編集の最初の作品と2番目の作品に顕著に表れている対立する軸の対比みたいなものが、
 より強くそう感じさせるのかもしれません。

 悪くないです。


初恋温泉」 吉田 修一 ★★★
ihin_obiari.jpg  著者は「遺品整理」の草分け的存在であり、誠実かつ真摯にその
 仕事に向き合う姿にはまったく頭が下がります。

 遺品整理業で関わった様々なケースについて紹介されており、なかには
 まるでドラマのような展開もあります。そういう意味で、ケース集としては
 いいのかもしれません。

 しかし、正直なところ、表面的な印象が拭いきれない。

 もちろん親族を失うという非日常の渦中に放り込まれ、精神的に大きな
 ダメージを受けているクライアントに、個人のことをあれこれ聞けるわけは
 ないと思いますし、

 個人のプライベートなことをだらだらと書くわけにもいかないのでしょう。
 しかし男性と女性の傾向の違いとか、「孤独死」と「孤立死」とか、ちらりと出てきており、
 
 そのあたりをもう一歩掘り下げて欲しいなぁというのも正直なところです。
 これだと、ブログで十分なんじゃないかなぁ…と思ってしまうのですすいません。


遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実」 吉田 太一 ★★★
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