bookshelf 『忘却の河』 福永武彦 忍者ブログ
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111502.jpg  不覚にも、この作家を知りませんでした。
 読んでいて丸谷才一と似た匂いがするなぁと思ったのですが、
 同時代の人のようですね。

 この「忘却の河」は連作になっていて、初めは会社社長である父、そして
 その長女、次女、妻…と関係者の独白が続いていきます。

 「心に幕を下ろし」、「薄紙を挟んだような」家族関係ですが、それぞれが
 抱える「心の重荷」が展開されていきます。

 それにしても構成が絶妙です。現在と過去とが違和感なく交錯し、
 それぞれの章が見事に調和して、そして読後には各章(つまりは各人)の
 人生が万華鏡のように反射する。

 「罪」「魂」「救い」という重い、結論の出ないテーマを扱っていますが、破綻することもなく
 逃げることもなく。久しぶりに「真っ当な小説」を読んだ満足感が残ります。
 

忘却の河」 福永 武彦 ★★★★★
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