本はごはん。
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なかなか重たい本ですね。
白血病の姉を救うべく、完全適性ドナーとして生み出された
デザイナー・ベイビーである妹。
彼女は両親に愛されて育ちますが、その愛は自分が姉の
完全ドナーであることから来る愛ではないのか、そう疑問に
思っても仕方ないですね。
彼女の視点だけではなく、父親、母親、姉、兄、弁護士など、
この件に関わる人物の視点で順に、複眼的に展開されていく
ので、誰かが決定的に悪いともかわいそうとも断定できない、
上手い構成になっています。
彼女は13歳になって、姉への臓器提供を拒否すべく弁護士を自分で調達して両親を訴え
ますが、このあたりはかなりアメリカ的ですね。
そして、白血病の娘(姉)も臓器提供サイドの娘(妹)も平等に愛していると言い切る母親の
ちょっと傲慢にすら思える思い込みもアメリカ的なのかしら。
恐らく、これは誰も裁くことの出来ない問題ですが、裁判を通してそれぞれが自分自身と
家族を見つめ直していく過程が、上手く描かれています。
裁判の結果どちらが勝利しても、彼らの苦悩は形を変えて続くはずでしたが、ラストは
「やっぱりな…」と思いつつ、こういう形のピリオドの打ち方はさすがプロだと思うと同時に、
ちょっと遣る瀬なく、かつ強制終了を食らったようにも感じます。
この本はいろんな読み方が出来ると思うのですが、それは例えば、デザイナーベイビーや
生体間臓器移植の是非についてはもちろん、親の「愛という名の支配」もしくは
「愛を振りかざした無言の圧力」と、子供の自我との戦い、つまりは子供の自立の物語とか。
ただ、彼女の「嘘」を考えるとき、それらは一転し、まったく別の世界が立ち上がってきます。
タイトルの秀逸さと併せて、萩尾望都の「半神」を彷彿とさせるのであります。
「私の中のあなた(上)(下)」 ジョディ・ピコー ★★★★
白血病の姉を救うべく、完全適性ドナーとして生み出された
デザイナー・ベイビーである妹。
彼女は両親に愛されて育ちますが、その愛は自分が姉の
完全ドナーであることから来る愛ではないのか、そう疑問に
思っても仕方ないですね。
彼女の視点だけではなく、父親、母親、姉、兄、弁護士など、
この件に関わる人物の視点で順に、複眼的に展開されていく
ので、誰かが決定的に悪いともかわいそうとも断定できない、
上手い構成になっています。
彼女は13歳になって、姉への臓器提供を拒否すべく弁護士を自分で調達して両親を訴え
ますが、このあたりはかなりアメリカ的ですね。
そして、白血病の娘(姉)も臓器提供サイドの娘(妹)も平等に愛していると言い切る母親の
ちょっと傲慢にすら思える思い込みもアメリカ的なのかしら。
恐らく、これは誰も裁くことの出来ない問題ですが、裁判を通してそれぞれが自分自身と
家族を見つめ直していく過程が、上手く描かれています。
裁判の結果どちらが勝利しても、彼らの苦悩は形を変えて続くはずでしたが、ラストは
「やっぱりな…」と思いつつ、こういう形のピリオドの打ち方はさすがプロだと思うと同時に、
ちょっと遣る瀬なく、かつ強制終了を食らったようにも感じます。
この本はいろんな読み方が出来ると思うのですが、それは例えば、デザイナーベイビーや
生体間臓器移植の是非についてはもちろん、親の「愛という名の支配」もしくは
「愛を振りかざした無言の圧力」と、子供の自我との戦い、つまりは子供の自立の物語とか。
ただ、彼女の「嘘」を考えるとき、それらは一転し、まったく別の世界が立ち上がってきます。
タイトルの秀逸さと併せて、萩尾望都の「半神」を彷彿とさせるのであります。
「私の中のあなた(上)(下)」 ジョディ・ピコー ★★★★
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どうもこの著者と私はあまり相性がよくないのか、「ツボ」が
微妙にずれているのか。
絶賛されているらしい連作短編集ですが、しかもテーマが「死」
で、逝く人、残される人、そして再生という私の大好きなテーゼ
であるにもかかわらず、悪くはないんだけどどうもいまひとつ
ぴんと来ないと言うか、物足りないと言うか…。
強いて言えば、ちょっときれい過ぎる感じかなぁ。
たとえば、夫と子供を残して逝った妻が残したたった一言だけの手紙、
それはとてもいいと思うのだけれど、それを受け取った夫の衝撃って
こんなもんかしら。
心理描写など、もっと深くてもいいと思うんだけど、全般的に表面的な感じと
いうか、自己完結的というか。
経験したことがないことなのに、経験者以上の「体験談」として、心理面を
含めて語れるのが小説家ではないかと思うのだけれど、ちょっと大げさに
言うと「魂の叫び」みたいなものが感じられないような…。
すいません好みの問題だと思います。
「その日のまえに」 重松 清 ★★★
微妙にずれているのか。
絶賛されているらしい連作短編集ですが、しかもテーマが「死」
で、逝く人、残される人、そして再生という私の大好きなテーゼ
であるにもかかわらず、悪くはないんだけどどうもいまひとつ
ぴんと来ないと言うか、物足りないと言うか…。
強いて言えば、ちょっときれい過ぎる感じかなぁ。
たとえば、夫と子供を残して逝った妻が残したたった一言だけの手紙、
それはとてもいいと思うのだけれど、それを受け取った夫の衝撃って
こんなもんかしら。
心理描写など、もっと深くてもいいと思うんだけど、全般的に表面的な感じと
いうか、自己完結的というか。
経験したことがないことなのに、経験者以上の「体験談」として、心理面を
含めて語れるのが小説家ではないかと思うのだけれど、ちょっと大げさに
言うと「魂の叫び」みたいなものが感じられないような…。
すいません好みの問題だと思います。
「その日のまえに」 重松 清 ★★★
著者はベトナムからボートピープルとして脱出し、日本に
帰化したそうで、苦労した経験やそこから得たものなどが綴られています。
確かに「水と安全がタダである(めずらしい)国」として日本は世界の
羨望を得ていたし、今もそうなのでしょう。
しかし、「識る」ということと「実感する」ということのあいだには、
やはり大きな隔たりがあるのだということを改めて感じます。
「水と安全がタダ(同然)」で付与されている環境でのほほんと生まれ
育った私には、そのありがたさを頭で理解することは出来ても、実感と
しては「判らない」のです。失って初めて判る類ですねきっと。
著者の前半生は本当に苦労が多く(ベトナム脱出に7回も失敗していたり)、
そこから多くのもの/ことを得たのだろうと思うのですが、今ひとつ胸に迫って
くるものがないのは何故だろう。
ちょっと表面的というか、キレイにまとめてしまっている感じがしないでもない
のです。
あと、帯(表紙裏側)に、
「帰化したことを全く後悔していない。なぜなら日本を深く愛するようになったから」
とあるのですが、日本のどのあたりが愛しいのか、私にはいまひとつ伝わって
きませんでした。
すいませんきっと私の読解力が低いせいです。
「日本人が知らない幸福」 武永 賢 ★★★
帰化したそうで、苦労した経験やそこから得たものなどが綴られています。
確かに「水と安全がタダである(めずらしい)国」として日本は世界の
羨望を得ていたし、今もそうなのでしょう。
しかし、「識る」ということと「実感する」ということのあいだには、
やはり大きな隔たりがあるのだということを改めて感じます。
「水と安全がタダ(同然)」で付与されている環境でのほほんと生まれ
育った私には、そのありがたさを頭で理解することは出来ても、実感と
しては「判らない」のです。失って初めて判る類ですねきっと。
著者の前半生は本当に苦労が多く(ベトナム脱出に7回も失敗していたり)、
そこから多くのもの/ことを得たのだろうと思うのですが、今ひとつ胸に迫って
くるものがないのは何故だろう。
ちょっと表面的というか、キレイにまとめてしまっている感じがしないでもない
のです。
あと、帯(表紙裏側)に、
「帰化したことを全く後悔していない。なぜなら日本を深く愛するようになったから」
とあるのですが、日本のどのあたりが愛しいのか、私にはいまひとつ伝わって
きませんでした。
すいませんきっと私の読解力が低いせいです。
「日本人が知らない幸福」 武永 賢 ★★★
「まえがき」に、高校生(=平成生まれ)の親類から、「明治時代」
「大正時代」と言うのに、どうして「昭和時代」と言わないのか、と
問われたと書かれています。
確かに「昭和時代」という言葉はまず耳にしませんし、なにより違和感がある。
それは著者が言うように、まだ「昭和の記憶が生々しく残っている」人たちが
多いからなのかもしれません。
だとすると、人口の過半数を平成生まれが占めるようになって以降、
「昭和時代」という言葉が定着するのかもしれませんね。
この本はタイトル通り、昭和の時代に書かれた遺書が集められています。
「昭和初年〜開戦まで」「開戦〜昭和20年まで」など、年代別に整理
されており、
遺書だけではなくその時期の時代背景や個人のエピソードなども纏められていて奥行き感が
あり、なによりも「昭和という時代」が「遺書」を通してくっきりと浮かび上がってきます。
それにしても。
昭和は64年まで(64年は7日間)でしたが、なんと激動の時代だったのでしょうか。
これだけのことと、これだけの変化が、たった64年のあいだに起こったということが
なんとも信じ難いような、軽い目眩にも似た感覚を覚えます。
「昭和の遺書―55人の魂の記録」 梯 久美子 ★★★
「大正時代」と言うのに、どうして「昭和時代」と言わないのか、と
問われたと書かれています。
確かに「昭和時代」という言葉はまず耳にしませんし、なにより違和感がある。
それは著者が言うように、まだ「昭和の記憶が生々しく残っている」人たちが
多いからなのかもしれません。
だとすると、人口の過半数を平成生まれが占めるようになって以降、
「昭和時代」という言葉が定着するのかもしれませんね。
この本はタイトル通り、昭和の時代に書かれた遺書が集められています。
「昭和初年〜開戦まで」「開戦〜昭和20年まで」など、年代別に整理
されており、
遺書だけではなくその時期の時代背景や個人のエピソードなども纏められていて奥行き感が
あり、なによりも「昭和という時代」が「遺書」を通してくっきりと浮かび上がってきます。
それにしても。
昭和は64年まで(64年は7日間)でしたが、なんと激動の時代だったのでしょうか。
これだけのことと、これだけの変化が、たった64年のあいだに起こったということが
なんとも信じ難いような、軽い目眩にも似た感覚を覚えます。
「昭和の遺書―55人の魂の記録」 梯 久美子 ★★★
「本当の贅沢とは何か」を追求した本です。
富(Wealth)と贅沢(Luxe)の違い、ヨーロッパの歴史の変遷と
価値観のシフトなど、「贅沢」の背景にあるものや、贅沢の「変遷」も
きちんと整理されています。
中世ヨーロッパ、禁欲生活の最たる場所であった修道院から、贅沢の極み
である高級ワインが生み出されたとか、
シャネルの原点は、彼女が多感な時期を過ごした修道院、それも一切の
装飾を廃した自然かつシンプルな環境と生活態度であったとか、
いずれも、「贅沢」からほど遠いところから「最高級の贅沢な品」が
生み出されているというのが面白い。
著者の言う本当の贅沢とは「閑暇」で、王侯貴族時代にいちばんさげすまされていた「労働」が
産業構造の大変化とともにいちばん尊いファクターとされるようになって、本来の「贅沢」は
我々の前から姿を消してしまった(著者はスーツを「贅沢の葬送のための喪服」と表現する)
ということのようだけれど、
大量消費時代やバブル経済も経験し、それなりにブランドだのラグジュアリーだのとひととおり
の経験を経て、「本当の贅沢」に気づき始めている人は多いんじゃないだろうか。
しかし本書の中で白州正子が言うように、「贅沢」と意識せずに(精神的に)贅沢な生活を
することがいちばん贅沢なんじゃないかな、と思う。
「贅沢の条件」 山田 登世子 ★★★
富(Wealth)と贅沢(Luxe)の違い、ヨーロッパの歴史の変遷と
価値観のシフトなど、「贅沢」の背景にあるものや、贅沢の「変遷」も
きちんと整理されています。
中世ヨーロッパ、禁欲生活の最たる場所であった修道院から、贅沢の極み
である高級ワインが生み出されたとか、
シャネルの原点は、彼女が多感な時期を過ごした修道院、それも一切の
装飾を廃した自然かつシンプルな環境と生活態度であったとか、
いずれも、「贅沢」からほど遠いところから「最高級の贅沢な品」が
生み出されているというのが面白い。
著者の言う本当の贅沢とは「閑暇」で、王侯貴族時代にいちばんさげすまされていた「労働」が
産業構造の大変化とともにいちばん尊いファクターとされるようになって、本来の「贅沢」は
我々の前から姿を消してしまった(著者はスーツを「贅沢の葬送のための喪服」と表現する)
ということのようだけれど、
大量消費時代やバブル経済も経験し、それなりにブランドだのラグジュアリーだのとひととおり
の経験を経て、「本当の贅沢」に気づき始めている人は多いんじゃないだろうか。
しかし本書の中で白州正子が言うように、「贅沢」と意識せずに(精神的に)贅沢な生活を
することがいちばん贅沢なんじゃないかな、と思う。
「贅沢の条件」 山田 登世子 ★★★
面白かったです。期待以上でした。
キップを無くしてしまって駅から出られなくなってしまい、東京駅で
暮らすことになってしまった子供達の話です。
中には死んでしまった子もいて、その子を思いやりながら生活していく
なかで、「死」や「魂」、「受け入れるとはどういうことなのか」、
「心」「人格」とは何か、などが展開されています。
とくに「人格」や「薄れていく魂」について語られる部分が、
恐らくこれは「原子論」なのかなぁと思うのですが、とても
興味深い。
児童文学だと思うんですが、避けることなく死を正面から描いているのが
とても良いと思います。
あと、さすがに文章上手いですね。当たり前のように思われがちですが凄く上手いです。
むしろ上手すぎてさらりと読み飛ばされないか心配になるくらいです。
「キップをなくして」 池澤 夏樹 ★★★★
キップを無くしてしまって駅から出られなくなってしまい、東京駅で
暮らすことになってしまった子供達の話です。
中には死んでしまった子もいて、その子を思いやりながら生活していく
なかで、「死」や「魂」、「受け入れるとはどういうことなのか」、
「心」「人格」とは何か、などが展開されています。
とくに「人格」や「薄れていく魂」について語られる部分が、
恐らくこれは「原子論」なのかなぁと思うのですが、とても
興味深い。
児童文学だと思うんですが、避けることなく死を正面から描いているのが
とても良いと思います。
あと、さすがに文章上手いですね。当たり前のように思われがちですが凄く上手いです。
むしろ上手すぎてさらりと読み飛ばされないか心配になるくらいです。
「キップをなくして」 池澤 夏樹 ★★★★
全くの余談ですがこの本、何軒本屋を回っても店頭でぜんぜん見つからず、
結局店員さんに聴いて引き出しから出して貰いました。
あれだろうか、ライトノベルを思わせる表紙の割に、R-18指定の
かかりそうな暴力シーンが結構あるから自主規制なんだろうかと
思うのは勘ぐりすぎ? 単なる偶然?
とにかく、何でもかんでも他人のせいにして言い訳ばっかりしつつ適当に
逃げて生きている大学生が、ひょんなことからヤクザの世界に
片足を突っ込みます。
結局は自分がトラブルメーカーで、世話になったヤクザの組を窮地に陥れて
しまうのですが、それでも相変わらず中途半端でひっかきまわすだけ
引っかき回しながら、本人は悩んでいるつもりでいる。
しかしそういう「イマドキの若者」の空気感とか、友人との距離感とか、将来に対する
漠然とした不安とか、そういったものがタイトルも含めよく表現されています。
これからこの青年がどう人生と対峙していくのか、続編があってもいいかもしれません。
「すじぼり」 福澤 徹三 ★★★
結局店員さんに聴いて引き出しから出して貰いました。
あれだろうか、ライトノベルを思わせる表紙の割に、R-18指定の
かかりそうな暴力シーンが結構あるから自主規制なんだろうかと
思うのは勘ぐりすぎ? 単なる偶然?
とにかく、何でもかんでも他人のせいにして言い訳ばっかりしつつ適当に
逃げて生きている大学生が、ひょんなことからヤクザの世界に
片足を突っ込みます。
結局は自分がトラブルメーカーで、世話になったヤクザの組を窮地に陥れて
しまうのですが、それでも相変わらず中途半端でひっかきまわすだけ
引っかき回しながら、本人は悩んでいるつもりでいる。
しかしそういう「イマドキの若者」の空気感とか、友人との距離感とか、将来に対する
漠然とした不安とか、そういったものがタイトルも含めよく表現されています。
これからこの青年がどう人生と対峙していくのか、続編があってもいいかもしれません。
「すじぼり」 福澤 徹三 ★★★
可愛い本ですね。
アップルパイやアイスクリーム、桜餅などのジャンクフードが
著者のエピソードとともに語られています。
なんかスイーツ系が多いように思うのは気のせいかしら。
様々なジャンクフードを紹介しつつその隙間に、
「女の子って躊躇しない生き物だなぁ、って思う」など、
面白いフレーズが挟まっています。
「コロッケはできたてのものをお肉屋さんで買って、夕暮れの土手で
愛犬とひとつづつ食べたい」
というのがなかなかよろしいと思いました。
「きらめくジャンクフード」 野中 柊 ★★★
アップルパイやアイスクリーム、桜餅などのジャンクフードが
著者のエピソードとともに語られています。
なんかスイーツ系が多いように思うのは気のせいかしら。
様々なジャンクフードを紹介しつつその隙間に、
「女の子って躊躇しない生き物だなぁ、って思う」など、
面白いフレーズが挟まっています。
「コロッケはできたてのものをお肉屋さんで買って、夕暮れの土手で
愛犬とひとつづつ食べたい」
というのがなかなかよろしいと思いました。
「きらめくジャンクフード」 野中 柊 ★★★
昭和38年のお正月、冬の大雪山で11人のパーティが遭難。
リーダーである1名のみ生還、残る10名が死亡という遭難事件の
唯一の生還者であるリーダーのドキュメンタリーです。
事件のことは、事故報告書提出後封印してこられたようですが
40年以上の時を経て、少しずつ語れるようになったということでしょうか。
沢山の経験を積んでいながらも、ほんの少しのタイミングのズレ、
気のゆるみ、ひとつひとつは大したことないものが積み重なって、
最悪の事態となってしまいます。
事故の経過はもちろん、リーダーの幼少の頃から掘り起こし、
その人となりの全体像を上手く描き出していると思います。
しかし、仲間を、それも自分が率いてきたチームの仲間10人を一度に亡くすという壮絶な
体験のあと、その遭難の際にも先頭に立って捜索隊を引っ張った親友もまた2年後に山で
逝ってしまうという体験は、もう想像しようにも想像力を遙かに超えてしまっています。
その親友の死までも自分の責任ととらえ、身体障害者となりながらも
精一杯生きてきた彼の生き方は素晴らしいものでありますが、
ただ欲を言えば、なんというか、恐らく本人が人前では弱い部分を一切さらけ出さないんで
しょうけれども、心の葛藤みたいなものをもう少し見せてくれても良かったかもと思います。
特に、事件当時の記述に散見される「若者特有の驕り」みたいなものを、どう総括したのか、
など。
「いのちの代償」 川嶋 康男 ★★★★
リーダーである1名のみ生還、残る10名が死亡という遭難事件の
唯一の生還者であるリーダーのドキュメンタリーです。
事件のことは、事故報告書提出後封印してこられたようですが
40年以上の時を経て、少しずつ語れるようになったということでしょうか。
沢山の経験を積んでいながらも、ほんの少しのタイミングのズレ、
気のゆるみ、ひとつひとつは大したことないものが積み重なって、
最悪の事態となってしまいます。
事故の経過はもちろん、リーダーの幼少の頃から掘り起こし、
その人となりの全体像を上手く描き出していると思います。
しかし、仲間を、それも自分が率いてきたチームの仲間10人を一度に亡くすという壮絶な
体験のあと、その遭難の際にも先頭に立って捜索隊を引っ張った親友もまた2年後に山で
逝ってしまうという体験は、もう想像しようにも想像力を遙かに超えてしまっています。
その親友の死までも自分の責任ととらえ、身体障害者となりながらも
精一杯生きてきた彼の生き方は素晴らしいものでありますが、
ただ欲を言えば、なんというか、恐らく本人が人前では弱い部分を一切さらけ出さないんで
しょうけれども、心の葛藤みたいなものをもう少し見せてくれても良かったかもと思います。
特に、事件当時の記述に散見される「若者特有の驕り」みたいなものを、どう総括したのか、
など。
「いのちの代償」 川嶋 康男 ★★★★
著者はいわずとしれたシンガーソングライターですが。
詩の世界でも、美しい日本語で奥行きのある世界観を綴っていますね。
表題作をはじめ、いくつかの中編が収められています。
共通して言えるのは、美しい日本語、故郷(=日本)への想い、そして
ひとを見つめる眼差しの優しさでしょうか。
表題になっているひとつめの短編の「解夏」に、印象的なフレーズが沢山
でてきます。
まあストーリィはあちこちに出ているのであえて触れませんが、最後の中編が
ちょっと何というか、何年もかけて積み重なりすれ違ってしまったものが
数日で氷解するのは現実的ではないのではないか、とも思いましたが、
この著者の詩や小説を読んでいつも思うのは、この著者は、人間の持つ優しさとか思いやり
とか可能性というものを絶対的なまでに信じているのだろうなぁ、と。
そしてその強さはどこからくるのだろう、と。
そんな強さを持ちたいものだと思います。
「解夏」 さだ まさし ★★★★
詩の世界でも、美しい日本語で奥行きのある世界観を綴っていますね。
表題作をはじめ、いくつかの中編が収められています。
共通して言えるのは、美しい日本語、故郷(=日本)への想い、そして
ひとを見つめる眼差しの優しさでしょうか。
表題になっているひとつめの短編の「解夏」に、印象的なフレーズが沢山
でてきます。
まあストーリィはあちこちに出ているのであえて触れませんが、最後の中編が
ちょっと何というか、何年もかけて積み重なりすれ違ってしまったものが
数日で氷解するのは現実的ではないのではないか、とも思いましたが、
この著者の詩や小説を読んでいつも思うのは、この著者は、人間の持つ優しさとか思いやり
とか可能性というものを絶対的なまでに信じているのだろうなぁ、と。
そしてその強さはどこからくるのだろう、と。
そんな強さを持ちたいものだと思います。
「解夏」 さだ まさし ★★★★
はじめは「不倫ものかぁ…、不倫ものねぇ…」と思ったのですが
タイトルの「十年」がやっぱりインパクトあるなぁと思い、読んでみました。
10年越しの不倫をしている当事者、もしくはその周辺の人々に取材した
ドキュメンタリーものですが、これが思った以上におもしろい。
なかなか著者の観察眼と洞察力が鋭いです。
取材対象者から実際に出てくる言葉だけでなく、彼女たちの背景にあるもの
にも必死に目をこらしています。
ただ、沢山のケースが紹介されていますが、成就したケースが1件もないのは
ちょっと不思議な感じもしました。そういうケースではなかなか取材に応じ
ないのかもしれないし、それがふつうだとも思いますが。
「依存」とか「自立」と言うことについて考えさせられます。
女性が経済的に「のみ」自立できても、結局のところそれは「都合のいい女」への近道でしかなく、
では精神的にも自立「できている」と自己評価する女性が、「私は不倫でいい」と納得ずくで
関係を成立させた場合、妻子を持ちながらそういう女性との付き合いを10年以上にもわたって
継続することのできる既婚男性という存在が私には甚だ不思議で、
その場合はその既婚男性も精神的自立が果たせていないのではないかと、そしてそんな男性を
選んだ「自称自立した女性」は、本当に自立できているのかと疑問に思ったりもします。
まあ不倫に限らず、自分の人生ですからその選択に付随するリスクと責任を自分で背負う覚悟
があるのならいいんじゃないでしょうか。
結局のところ、自分は何を求めるのかという価値観の問題のように思います。
それと、「愛」「恋」をどう定義するか、かな。
「不倫」ということを全て頭から否定するつもりはありませんが、周りや相手や問題や、そして
なにより自分自身から逃げてたら、ずるずる行くばっかりじゃないかしら。
不倫だけでなくて、結婚も同じだと思うけど。
「十年不倫」 衿野 未矢 ★★★
タイトルの「十年」がやっぱりインパクトあるなぁと思い、読んでみました。
10年越しの不倫をしている当事者、もしくはその周辺の人々に取材した
ドキュメンタリーものですが、これが思った以上におもしろい。
なかなか著者の観察眼と洞察力が鋭いです。
取材対象者から実際に出てくる言葉だけでなく、彼女たちの背景にあるもの
にも必死に目をこらしています。
ただ、沢山のケースが紹介されていますが、成就したケースが1件もないのは
ちょっと不思議な感じもしました。そういうケースではなかなか取材に応じ
ないのかもしれないし、それがふつうだとも思いますが。
「依存」とか「自立」と言うことについて考えさせられます。
女性が経済的に「のみ」自立できても、結局のところそれは「都合のいい女」への近道でしかなく、
では精神的にも自立「できている」と自己評価する女性が、「私は不倫でいい」と納得ずくで
関係を成立させた場合、妻子を持ちながらそういう女性との付き合いを10年以上にもわたって
継続することのできる既婚男性という存在が私には甚だ不思議で、
その場合はその既婚男性も精神的自立が果たせていないのではないかと、そしてそんな男性を
選んだ「自称自立した女性」は、本当に自立できているのかと疑問に思ったりもします。
まあ不倫に限らず、自分の人生ですからその選択に付随するリスクと責任を自分で背負う覚悟
があるのならいいんじゃないでしょうか。
結局のところ、自分は何を求めるのかという価値観の問題のように思います。
それと、「愛」「恋」をどう定義するか、かな。
「不倫」ということを全て頭から否定するつもりはありませんが、周りや相手や問題や、そして
なにより自分自身から逃げてたら、ずるずる行くばっかりじゃないかしら。
不倫だけでなくて、結婚も同じだと思うけど。
「十年不倫」 衿野 未矢 ★★★
男装の麗人、川島芳子の生涯を追っています。
残念ながら新事実の発見はありません。もう出尽くしてまっているので
しょうし、今世に出ていない真実は、きっとそのまま歴史に埋もれて
いくのでしょう。
これは好みの問題だと思うのですが。
ノンフィクションなのだろうとおもうのですが、川島芳子とつかず離れずの
距離にいて、彼女の生涯をその目で見てきたという「謎の老人」が登場し、
問わず語りのように川島のことを語っていきますが、
この老人が実在の人なのかそれとも構成上の演出なのかよくわからない。
恐らく演出なのだろうと思うのですが、ノンフィクションにこういう演出は
あんまり私は好みではないし、
もし実在の人物であればその立場を明確にしていただかないと、その発言を
何とも評価できないし。
最後に山口淑子が語った川島芳子がとても印象的です。
現実に彼女たちの運命を分けたのは1枚の「戸籍」という紙でしたが、
やっぱり本当は「血」だったんじゃないかと、血に逆らった生き方ができなかったから
なんじゃないかと、そんなふうに思いました。
「清朝十四王女―川島芳子の生涯」 林 えり子 ★★★
残念ながら新事実の発見はありません。もう出尽くしてまっているので
しょうし、今世に出ていない真実は、きっとそのまま歴史に埋もれて
いくのでしょう。
これは好みの問題だと思うのですが。
ノンフィクションなのだろうとおもうのですが、川島芳子とつかず離れずの
距離にいて、彼女の生涯をその目で見てきたという「謎の老人」が登場し、
問わず語りのように川島のことを語っていきますが、
この老人が実在の人なのかそれとも構成上の演出なのかよくわからない。
恐らく演出なのだろうと思うのですが、ノンフィクションにこういう演出は
あんまり私は好みではないし、
もし実在の人物であればその立場を明確にしていただかないと、その発言を
何とも評価できないし。
最後に山口淑子が語った川島芳子がとても印象的です。
現実に彼女たちの運命を分けたのは1枚の「戸籍」という紙でしたが、
やっぱり本当は「血」だったんじゃないかと、血に逆らった生き方ができなかったから
なんじゃないかと、そんなふうに思いました。
「清朝十四王女―川島芳子の生涯」 林 えり子 ★★★
ラジオ番組の中のひとつのコーナーを書籍化したもののようです。
心が温まる系のお話がたくさん詰まっています。
有名な(?)話もあります。
実話を素に構成しているそうです。
しかし恐らくこれは文章で読むよりも「ラジオで聴く」ほうが
更に良いのかもしれません。
「車椅子のパティシエ」 上柳昌彦のお早うGoodDay編 ★★★
心が温まる系のお話がたくさん詰まっています。
有名な(?)話もあります。
実話を素に構成しているそうです。
しかし恐らくこれは文章で読むよりも「ラジオで聴く」ほうが
更に良いのかもしれません。
「車椅子のパティシエ」 上柳昌彦のお早うGoodDay編 ★★★
警察小説のアンソロジーです。
懐かしい昭和の風俗漂う作品が多め。
粒が揃っていますが、ミステリーが多いかなぁ。
「昭和の風俗漂う」と書きましたが、「パンティ」という言葉と並んで
「乳バンド」という言葉が出てきたのには思わずのけぞりました。
ちちちちちばんど…。
あ、個人的には高橋治の「椿の入れ墨」が良かったです。
「警察小説傑作短篇集」 大沢 在昌(選) ★★★
懐かしい昭和の風俗漂う作品が多め。
粒が揃っていますが、ミステリーが多いかなぁ。
「昭和の風俗漂う」と書きましたが、「パンティ」という言葉と並んで
「乳バンド」という言葉が出てきたのには思わずのけぞりました。
ちちちちちばんど…。
あ、個人的には高橋治の「椿の入れ墨」が良かったです。
「警察小説傑作短篇集」 大沢 在昌(選) ★★★
ホラー短編集です。
ホラーというジャンルで、もちろんグロい表現も在りながら
なんか品が良いというか上質感を感じられるのは、心理描写がしっかり
していることと、
何より「異形そのもの」よりも、その「異形を生み出してしまう人間の
心の弱さ、怖さ、魔物性」みたいなものがきちんと表現されているから
ではないかと思います。
そしてホラーながら、何となくユーモラスな気配が漂っているのも
朱川作品の特徴ではないかと。
ただこの作品集は、ほかの朱川作品(「かたみ詩」「いっぺんさん他」)
にある、良くも悪くも甘ったるさみたいなものがないので、
好き嫌いが別れるかもしれません。
最後の作品は、「ほう、そうくるか」と思いました。
「水銀虫」 朱川 湊人 ★★★
ホラーというジャンルで、もちろんグロい表現も在りながら
なんか品が良いというか上質感を感じられるのは、心理描写がしっかり
していることと、
何より「異形そのもの」よりも、その「異形を生み出してしまう人間の
心の弱さ、怖さ、魔物性」みたいなものがきちんと表現されているから
ではないかと思います。
そしてホラーながら、何となくユーモラスな気配が漂っているのも
朱川作品の特徴ではないかと。
ただこの作品集は、ほかの朱川作品(「かたみ詩」「いっぺんさん他」)
にある、良くも悪くも甘ったるさみたいなものがないので、
好き嫌いが別れるかもしれません。
最後の作品は、「ほう、そうくるか」と思いました。
「水銀虫」 朱川 湊人 ★★★
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