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本はごはん。
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51GberoX1ML._SL160_.jpg  なんか乱丁騒ぎがあったようですね。

 白状すると所詮はライトノベルだろうと思っていましたすいません
 面白かったですほんとすいません。

 ただ、いちばん初めの章がすごくよくて、これは! と期待して読んだ
 のですが、読み進めていくうちにやっぱりライトのベルのニオイがした
 ような気がするのはやっぱり気のせいでしょうか…。

 設定は、隕石が降ってきてそれを見た人は塩柱になってしまうというSF
 ですが、従来の生活や環境が破壊されてしまった無秩序状態のなか
 でさらけ出される人間の業とか醜さみたいなものを、

 誤魔化すでもなく美化するでもなく淡々と描かれているのはいいですね。

 でも、心理描写面と会話がビミョーに幼いような気がするのも気のせいでしょうか…。
 30歳(近く)の戦闘機乗りである秋庭の言動が特に…。

 非日常を舞台に、良くも悪くも「にんげんというもの」がうまく表現されていて
 なかなか面白かったです。


塩の街」 有川 浩 ★★★
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9784167209162.jpg  最近の作品ばかりでもなく、所謂「名作」ばかりでもなく、
 アンソロジーとしてとてもバランスがとれているように思います。

 小川洋子(既読)はヨーロッパで珍道中の末愛すべき大勘違いを放ち、

 開高健は、よくぞまあここまで書けるものだと感心するほど、ワインの
 味について 1ページ以上にわたって語り続けそしてワインから当然の
 ように過去の女性を想起し、

 澁澤龍彦は日本の風潮に正しく檄を飛ばしながらヒロポンを打ちまくり
 (そして彼が嘆く「日本の風潮」は現在も正しくかつ強力に引き継がれて
  しまっている)、

 小学生の頃に読みあさった江戸川乱歩は「そうそうそう! この雰囲気!
 これよこれ!」と読書の原風景を思い出させてくれました。

 更に言うと、芥川龍之介の「魔術」、安部昭の「天使が見たもの」、向田邦子の「ダウト」など、
 どれも特に奇をてらったはなしではなくむしろ良くある話であるのに、なんとも完成度の高い
 作品になっていて、さすがとしか言いようがない。

 とくに「天使が見たもの」は、雑然とした世の中にひっそりと息づく静かな哀しみと美しさが
 独特の読後感を残す良作であると思います。


右か、左か ―心に残る物語 日本文学秀作選」 沢木 耕太郎 ★★★★
131261.jpg  はっきり言って自転車には全く興味ないのですが。

 サイクルロードレースが舞台になっていて、そのメンタリティも含め、
 このスポーツならではの特徴を活かしたミステリになっています。

 本物のエースとは、勝利は数多くのアシストたちの犠牲の上に成立
 しているものだと言うことと、その責任を自覚している者のことを
 いうのでしょう。

 しかしアシストは「役割」として犠牲になりますが、「人として」本当に
 必要な場面で自ら犠牲になれるかどうか、それはもしかしたら
 人間性そのものが問われるのかもしれません。

 全体のストーリィ展開は良くできていると思うのですが、良くできているからこそ
 勿体ないように思います。もう少し各人の心の機微などを丁寧に掬い上げてくれて
 いたら言うことないと思います。

 残念ながら、ストーリィを補足する部分、例えば幼なじみとのやり取りとか
 彼女に対する心理描写、また彼がゴールに執着を持たない部分などが、いささか雑
 な印象を受けます。

 ミステリの部分にウエイトを置いているせいなのかな。
 
 でも、どうしても序章?(プロローグ?)の表現がやっぱり引っかかる。
 そこまで覚悟して全てを背負って走ってきた人が、ああいう感覚になるとは
 ちょっと考え難いのだけれど…。

 良くできてるだけに、やっぱり勿体ない気が…。


サクリファイス」 近藤 史恵 ★★★
55002.jpg  数少ない「作家買い」対象の著者です。

 ああ、朱川湊人だなぁ、と感じられる短編集。ちょっとダークなので
 好みの別れるところかもしれませんが、「いっぺんさんや花まんま」など
 よりも、こっちが著者の本領なのではないか(と思いたい)。

 全編通して、人間が抱える「業」というもの、「愛」するが故に「業」が
 生まれるのか「業」を抱えるからこそ「愛」が存在するのか、とにかく
 その哀しい人間の性(サガ)を、鋭くはあるのだけれどどこか優しい視点で
 捉えているように思います。

 「アタシの、いちばん、ほしいもの」 が、とても良かった。
 突き放すようなラストですが、それも優しさなのではないかと思う。


赤々煉恋」 朱川 湊人 ★★★★
9784334747220.jpg  女の私が言うのもどうかと思うけれど、女同士というのは結構厄介な
 もんです。はっきりいって「メンドクサイ」。

 しかし友達がいなければいないで、「これで良いのだろうか」と不安にも
 なるものらしい
 (「らしい」と表現したのは、私にはその感覚がないもので)。

 そんな女性同士の関係を描いた短編小説集。

 幼なじみ、大家と店子、バツイチの彼の子供と私、母娘などなど、様々な
 シチュエーションでの女性同士の関係が描かれています。

 正直なところ、技巧的にはちょっとどうなんだろう。
 平易で読みやすいことは読みやすいんだけど…。
 それともこれも、計算の内なんだろうか。

 ただ、独特でふんわりした雰囲気を漂わせつつ、一本ぴんと通った世界観がしっかりある。
 主人公が悪態をついている場面でさえも。
 
 悪くないんだけどな。何だろう。もう一声欲しくなってしまうのは。


しずく」 西 加奈子 ★★★
b8650f52.png  相変わらず一気に読ませてくれます。
 ただ今回は厚生労働省が舞台になっているので、ちょっと説明過多
 気味ですが。

 テーマは変わらず、先進国にあるまじき日本の死亡原因究明率の
 低さと、その現状打開および向上のための死亡時画像診断の導入及び
 拡大の必要性。

 相変わらず面白いしさくさく読めるんですが、今回の舞台である
 厚労省、現実もきっとここに描かれている通りの官僚体質、いや
 官僚根性なんだろうなと溜息混じりに読んでいたら、

 解説を書いている元国会議員が「現実の官僚は、ここに書かれているのと同じ」って
 書いてあって、なんだかなぁ。

 官僚体質はまだ比較的判りやすいんですが、同時に考えてしまうのはやはり「メディア」。
 この作品の中でもいいように世論誘導に使われてますが、現実の献金疑惑報道なんかを見ても
 これもやはり小説の中の話だけではないように思います。

 恐らく個人個人は悪い人じゃないんでしょうけども、どうしてこうなっちゃうんでしょうかね。
 ひとは組織化するとダメになってしまうのでしょうか?

 このイノセント・ゲリラ、もちろん後を引く終わり方になってますし、まだ水面下で
 ぐにょぐにょ動いてる某省の動きも見て取れるので続き物だと思った方がいいみたいですね。
 ええ、ここまで読んだらもうちゃんとついていくつもりです。


イノセント・ゲリラの祝祭(上)」「イノセント・ゲリラの祝祭 (下)」 海堂 尊 ★★★
9784167743024.jpg  やはり一筋縄ではいかない作家ですね。

 テーマは「孤独」でしょう。
 ただ、孤独にも「種類」があるということでしょうか。

 自分の存在をある程度社会的に確立できている、つまりそれは
 「夫」「妻」「部長」「父親」などの社会的肩書きを持つということでしか
 ないケースも多く、

 同時にそれはいくつもの仮面を手にしてしまったということと同義でもあり、
 そういう立場の人が感じる孤独。そういう人が呑み込まれてしまう孤独。
 ふたりはそういう孤独に、ある種嬉々として飲み込まれていくわけですが、

 一方で、本能的に危機感を感じそこから回避しようとする3人目の男性。
 しかし彼がそこを回避して帰っていく先はやはり「彼の孤独」なわけであります。

 ここまで「甘い孤独」を描ける作家もめずらしい。
 もしかすると孤独というのは、究極まで突き詰めると「自己完結」なのかもしれない。
 なんてことを考えた。


少し変わった子あります」森 博嗣 ★★★★
04389702.jpg  ちょっと荒っぽいけど、思っていたよりも面白かったです。

 元プロ野球選手が事情を抱えて便利屋をやる、という筋ですが、
 ミステリーになるのかな。

 元プロ野球選手が便利屋、という設定からも判るように、そこにはそれなりの
 事情と心の傷とがあるわけですが、タイトルにもある「孤独」、この描き方が
 もう一声かな。悪くないんですけどね、もうちょっと美しく伏線を張って
 いただきたかった。

 それから全体のストーリィ展開(ミステリにあたる部分?)が、ちょっと
 唐突かつ乱暴に感じるところもあるかなぁ。とくに最期の方。

 更に言うと、いろんな要素が詰め込まれているのはいいんですが、未消化の
 ままのものもあるような。続編を構想しているのならそれはそれですが。

 終わりまでぐいぐいと引っ張って読ませる力(構成と筆力)はあると思うので、あとは
 心理面及びストーリィ面でもう少し繊細に展開していただくと言うことないかな、
 と思います。


145gの孤独」 伊岡 瞬 ★★★
205117.jpg  「スカイ・クロラ」シリーズの番外編というか外伝というか。
 ああ、これで「スカイ・クロラ」シリーズも終わってしまう…。

 短編集です。本編はどれも、「僕」の一人称で語られてきましたが
 (そしてその「僕」は必ずしもひとりではなかったわけですが)、この
 短編集は初めてキルドレを囲むひとたちの視点から三人称で語られています。

 そして。まるでお宝短編集の趣。ああもう堪らない。
 この短編集で「スカイ・クロラ」シリーズは完結します。

 全編通して渇いた空気感とでもいうのか、独特の世界に浸ってきましたが
 何とも幸せな読書時間でありました。


スカイ・イクリプス」 森 博嗣 ★★★★★
205015.jpg  「スカイ・クロラ」シリーズの、時系列的には4巻目。
 なんとも圧倒的。溜息しか出ない。

 全巻通してミステリ的な要素が一番強い巻ではありますが、謎解きそのもの
 にはあまり価値を見いだしません。「僕」がジンロウなのかカンナミか、
 それともクサナギなのかについては、さほど重要だとは思わない。

 それを解明することがこの本の主題ではないだろうし、つまりは誰でも
 いいのではないかと(そう言いながら私はきっとこの「僕」は「彼女」では
 ないかと思っているのだけれど)。

 それにしても。
 「自由」とか「大人」とか「子供」とか、「美しいということ」や
 「自分とは」とか「記憶」とか「時間」とか「戦い」とか、

 もう様々なことについて、シリーズを通して怒濤のように考えさせられ、ちょっと酔っぱらった
 ような、心地よい酩酊を感じます。

 押井守が非常に判りやすい平易な解説を書いていますが、そうか、アニメ映画の監督とは
 このくらいかみ砕いて平易に表現する能力が必要なのだな、と思ったりしました。

 あ、このシリーズはやっぱり「スカイ・クロラ」から(=刊行順に)読むことをオススメします。
 

クレィドゥ・ザ・スカイ」 森 博嗣 ★★★★★
03188662.jpg  猫小説、猫随筆が集められた1冊。
 著者も井伏鱒二や谷崎潤一郎、壺井栄に柳田國男等々と、そうそうたる
 ラインナップ。

 猫を見つめる視線は各々ですが、みんな穏やかで優しい。
 そしてそこから、昭和の生活や疎開先での村社会などが透けて見えてきます。

 しかし何時の時代も。
 猫は飼い主を仕えさせるもんなんですね。





」 大佛 次郎 他 ★★★
204936.jpg  「スカイ・クロラ」シリーズの、時系列的には3巻目。

 (時系列的な)1巻、2巻では草薙水素が語ってきましたが、ここで
 ジンロウにチェンジです。ええ、あのジンロウですよ。

 ジンロウは思考傾向がキルドレにしては一般に近いというか、「愛情」
 というものについていろいろ考えたりしています。


 この巻ではいろいろな局面が動き出していますが、そういったストーリィ上の
 展開ももちろん面白いんですが、何より、

 この巻の主題は「花束」で表現されている暗喩でしょう。
 すごい。


フラッタ・リンツ・ライフ」 森 博嗣 ★★★★
fef95875.png  バチスタシリーズのサイドストーリィですね。

 高階院長の若かりし頃の話ですが、主要な登場人物は大抵、
 出てきます(白鳥を除く)。

 相変わらず安心して読めます。かなり読みやすい。

 外科医のありかたとして、高階と渡海という対照的なふたりを配し
 ストーリィは展開していきますが、ちょっと極端かなぁと思う部分が
 ないでもないけれど、面白いです。

 主人公は世良くんという外科医一年生ですが、同じく新米看護師の花房と良い感じです。
 しかし「ジェネラル・ルージュ」では花房はあれでしたよね…。
 世良くんと渡海がその後どうなったのか、いつか読めるのでしょうか。

 これは内容とは関係ありませんが、級数(文字サイズ)が大きくて、上・下巻ともそれぞれ
 (約)200ページ、上下巻合わせて879円ってどうなんでしょう? 級数を落とせば恐らく
 300ページ強で1冊に纏められると思うんですが。(値段は500円〜700円ってとこ?)
 こんなことやってるから出版業界はどんどんダメになってくんじゃないんですかね。
 自分の首絞めてるのが判かんないのかなぁ。


ブラックペアン1988(上)」「ブラックペアン1988(下)」 海堂 尊 ★★★★
204769.jpg  引き続き「スカイ・クロラ」シリーズです。

 相変わらず草薙水素ちゃん、飛び回って墜としまくってそして順調に
 世間一般が言うところの「出世」をしていきます。

 「出世」にはもれなく社会的な束縛とか組織のしがらみとかがついて
 くるもので、永遠の子供であるキルドレ水素が、大人の世界に片足を
 突っ込むことになります。「今まで通り空を飛び」たいがために。

 『でも、煙みたいに自由になれれば良いな、と僕は思った。それには、
  つまり、煙みたいに消えなくてはならないだろう。いつまでも、
  自由なまま、この世に留まることはできない。
  消えていくその最後に、ものは自由になる。』

 つまり「完全な自由」なんてものはこの世にはなくて、だから「制限されたなかではある
 けれども天空での自由」である空中戦を彼女は選択したわけだけれど、結局は「大人の事情」
 つまりは社会にじわじわと巻き取られていく。

 この巻のメインは草薙とティーチャーとの市街空中戦ですが、これは「大人になれない
 キルドレ」と「大人になりたくなかった元子ども」の戦いでもあります。

 草薙にとってはそれが自分の「最高の死の舞台」であったにもかかわらず、結局は最低の
 茶番劇であり、つまりは完璧に「社会の演出」に取り込まれていたワケですが、この最高の
 死に場、死に時を逃した彼女は、また自由と死に場所を求めて空へ、
 「天国に墜ちて」いくのでしょう。


ダウン・ツ・ヘヴン」 森 博嗣 ★★★★
032ed8f5.jpg  「スカイ・クロラ」シリーズです。

 このシリーズは全5冊+外伝(風短編集)1冊で構成されているようですが、
 一番最初に刊行された「スカ イ・クロラ」は、時系列的には最後(第5巻?)
 になるようで、この『ナ・バ・テア』がストーリィ上は第1巻にあたる
 ようです。

 なので、この『ナ・バ・テア』から読む、という手もあったんですが、
 「スカイ・クロラ」が最初に刊行されていることにはそれなりの意味
 (もしくは意図)もあると思うので、刊行順に読みますよ。

 しかし。
 そうか。そうだった。

 「スカイ・クロラ」シリーズはは草薙の話だったんだ。すっかりそれを忘れていて、
 まんまとしてやられた。そうか。だから「スカ イ・クロラ」のラストはああなるのか。

 しかしここまで絶望と孤独、いや絶望なんて生やさしいものではなくて、つまり絶望とは
 希望を知っている人が感じることが出来る感覚で、そもそもその希望自体を知らない世界を
 描けるのはすごいなぁ。

 ラストで草薙が感じた喜び、それは「希望」なんだろうか?


ナ・バ・テア」 森 博嗣 ★★★★
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