本はごはん。
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タイトルを見たとき、「一体何のこっちゃ?」と思いましたが、
言うなれば「糖尿病ドキュメンタリー」いや、「糖尿小説」です。
幸いながら現在のところ糖尿病には罹患しておらず、周りにも該当者が
いないので、言葉は知っていてもその実際のところは知りませんでしたが、
1型と2型があって、すごくおおざっぱに言うと「2型は本人の不摂生」
「1型はウイルス感染などによる免疫反応(=不摂生が原因ではない)」
とか、しかし2型と1型の中間というか2型から1型へ移行(?)する
タイプもあるらしいとか、
未だに糖尿病の全てが解明されているわけではないなどの医学的なことや、
糖尿病を患っている人の日常などが展開されていますが、
著者は当初、厳しいまでの食事管理を実施しますが、その食事管理に振り
回されイライラしたり妻とぶつかったりしながら、やがて肩の力が抜けて、
適度に管理していくすべを、つまりは糖尿病との付き合い方を身につけていく
過程が描写されています。
それにしても。
糖尿病にならないように気をつけるに越したことはない、それに尽きると思います。
「シュガーな俺」 平山 瑞穂 ★★★
言うなれば「糖尿病ドキュメンタリー」いや、「糖尿小説」です。
幸いながら現在のところ糖尿病には罹患しておらず、周りにも該当者が
いないので、言葉は知っていてもその実際のところは知りませんでしたが、
1型と2型があって、すごくおおざっぱに言うと「2型は本人の不摂生」
「1型はウイルス感染などによる免疫反応(=不摂生が原因ではない)」
とか、しかし2型と1型の中間というか2型から1型へ移行(?)する
タイプもあるらしいとか、
未だに糖尿病の全てが解明されているわけではないなどの医学的なことや、
糖尿病を患っている人の日常などが展開されていますが、
著者は当初、厳しいまでの食事管理を実施しますが、その食事管理に振り
回されイライラしたり妻とぶつかったりしながら、やがて肩の力が抜けて、
適度に管理していくすべを、つまりは糖尿病との付き合い方を身につけていく
過程が描写されています。
それにしても。
糖尿病にならないように気をつけるに越したことはない、それに尽きると思います。
「シュガーな俺」 平山 瑞穂 ★★★
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どうもこの著者と私はあまり相性がよくないのか、「ツボ」が
微妙にずれているのか。
絶賛されているらしい連作短編集ですが、しかもテーマが「死」
で、逝く人、残される人、そして再生という私の大好きなテーゼ
であるにもかかわらず、悪くはないんだけどどうもいまひとつ
ぴんと来ないと言うか、物足りないと言うか…。
強いて言えば、ちょっときれい過ぎる感じかなぁ。
たとえば、夫と子供を残して逝った妻が残したたった一言だけの手紙、
それはとてもいいと思うのだけれど、それを受け取った夫の衝撃って
こんなもんかしら。
心理描写など、もっと深くてもいいと思うんだけど、全般的に表面的な感じと
いうか、自己完結的というか。
経験したことがないことなのに、経験者以上の「体験談」として、心理面を
含めて語れるのが小説家ではないかと思うのだけれど、ちょっと大げさに
言うと「魂の叫び」みたいなものが感じられないような…。
すいません好みの問題だと思います。
「その日のまえに」 重松 清 ★★★
微妙にずれているのか。
絶賛されているらしい連作短編集ですが、しかもテーマが「死」
で、逝く人、残される人、そして再生という私の大好きなテーゼ
であるにもかかわらず、悪くはないんだけどどうもいまひとつ
ぴんと来ないと言うか、物足りないと言うか…。
強いて言えば、ちょっときれい過ぎる感じかなぁ。
たとえば、夫と子供を残して逝った妻が残したたった一言だけの手紙、
それはとてもいいと思うのだけれど、それを受け取った夫の衝撃って
こんなもんかしら。
心理描写など、もっと深くてもいいと思うんだけど、全般的に表面的な感じと
いうか、自己完結的というか。
経験したことがないことなのに、経験者以上の「体験談」として、心理面を
含めて語れるのが小説家ではないかと思うのだけれど、ちょっと大げさに
言うと「魂の叫び」みたいなものが感じられないような…。
すいません好みの問題だと思います。
「その日のまえに」 重松 清 ★★★
面白かったです。期待以上でした。
キップを無くしてしまって駅から出られなくなってしまい、東京駅で
暮らすことになってしまった子供達の話です。
中には死んでしまった子もいて、その子を思いやりながら生活していく
なかで、「死」や「魂」、「受け入れるとはどういうことなのか」、
「心」「人格」とは何か、などが展開されています。
とくに「人格」や「薄れていく魂」について語られる部分が、
恐らくこれは「原子論」なのかなぁと思うのですが、とても
興味深い。
児童文学だと思うんですが、避けることなく死を正面から描いているのが
とても良いと思います。
あと、さすがに文章上手いですね。当たり前のように思われがちですが凄く上手いです。
むしろ上手すぎてさらりと読み飛ばされないか心配になるくらいです。
「キップをなくして」 池澤 夏樹 ★★★★
キップを無くしてしまって駅から出られなくなってしまい、東京駅で
暮らすことになってしまった子供達の話です。
中には死んでしまった子もいて、その子を思いやりながら生活していく
なかで、「死」や「魂」、「受け入れるとはどういうことなのか」、
「心」「人格」とは何か、などが展開されています。
とくに「人格」や「薄れていく魂」について語られる部分が、
恐らくこれは「原子論」なのかなぁと思うのですが、とても
興味深い。
児童文学だと思うんですが、避けることなく死を正面から描いているのが
とても良いと思います。
あと、さすがに文章上手いですね。当たり前のように思われがちですが凄く上手いです。
むしろ上手すぎてさらりと読み飛ばされないか心配になるくらいです。
「キップをなくして」 池澤 夏樹 ★★★★
全くの余談ですがこの本、何軒本屋を回っても店頭でぜんぜん見つからず、
結局店員さんに聴いて引き出しから出して貰いました。
あれだろうか、ライトノベルを思わせる表紙の割に、R-18指定の
かかりそうな暴力シーンが結構あるから自主規制なんだろうかと
思うのは勘ぐりすぎ? 単なる偶然?
とにかく、何でもかんでも他人のせいにして言い訳ばっかりしつつ適当に
逃げて生きている大学生が、ひょんなことからヤクザの世界に
片足を突っ込みます。
結局は自分がトラブルメーカーで、世話になったヤクザの組を窮地に陥れて
しまうのですが、それでも相変わらず中途半端でひっかきまわすだけ
引っかき回しながら、本人は悩んでいるつもりでいる。
しかしそういう「イマドキの若者」の空気感とか、友人との距離感とか、将来に対する
漠然とした不安とか、そういったものがタイトルも含めよく表現されています。
これからこの青年がどう人生と対峙していくのか、続編があってもいいかもしれません。
「すじぼり」 福澤 徹三 ★★★
結局店員さんに聴いて引き出しから出して貰いました。
あれだろうか、ライトノベルを思わせる表紙の割に、R-18指定の
かかりそうな暴力シーンが結構あるから自主規制なんだろうかと
思うのは勘ぐりすぎ? 単なる偶然?
とにかく、何でもかんでも他人のせいにして言い訳ばっかりしつつ適当に
逃げて生きている大学生が、ひょんなことからヤクザの世界に
片足を突っ込みます。
結局は自分がトラブルメーカーで、世話になったヤクザの組を窮地に陥れて
しまうのですが、それでも相変わらず中途半端でひっかきまわすだけ
引っかき回しながら、本人は悩んでいるつもりでいる。
しかしそういう「イマドキの若者」の空気感とか、友人との距離感とか、将来に対する
漠然とした不安とか、そういったものがタイトルも含めよく表現されています。
これからこの青年がどう人生と対峙していくのか、続編があってもいいかもしれません。
「すじぼり」 福澤 徹三 ★★★
著者はいわずとしれたシンガーソングライターですが。
詩の世界でも、美しい日本語で奥行きのある世界観を綴っていますね。
表題作をはじめ、いくつかの中編が収められています。
共通して言えるのは、美しい日本語、故郷(=日本)への想い、そして
ひとを見つめる眼差しの優しさでしょうか。
表題になっているひとつめの短編の「解夏」に、印象的なフレーズが沢山
でてきます。
まあストーリィはあちこちに出ているのであえて触れませんが、最後の中編が
ちょっと何というか、何年もかけて積み重なりすれ違ってしまったものが
数日で氷解するのは現実的ではないのではないか、とも思いましたが、
この著者の詩や小説を読んでいつも思うのは、この著者は、人間の持つ優しさとか思いやり
とか可能性というものを絶対的なまでに信じているのだろうなぁ、と。
そしてその強さはどこからくるのだろう、と。
そんな強さを持ちたいものだと思います。
「解夏」 さだ まさし ★★★★
詩の世界でも、美しい日本語で奥行きのある世界観を綴っていますね。
表題作をはじめ、いくつかの中編が収められています。
共通して言えるのは、美しい日本語、故郷(=日本)への想い、そして
ひとを見つめる眼差しの優しさでしょうか。
表題になっているひとつめの短編の「解夏」に、印象的なフレーズが沢山
でてきます。
まあストーリィはあちこちに出ているのであえて触れませんが、最後の中編が
ちょっと何というか、何年もかけて積み重なりすれ違ってしまったものが
数日で氷解するのは現実的ではないのではないか、とも思いましたが、
この著者の詩や小説を読んでいつも思うのは、この著者は、人間の持つ優しさとか思いやり
とか可能性というものを絶対的なまでに信じているのだろうなぁ、と。
そしてその強さはどこからくるのだろう、と。
そんな強さを持ちたいものだと思います。
「解夏」 さだ まさし ★★★★
警察小説のアンソロジーです。
懐かしい昭和の風俗漂う作品が多め。
粒が揃っていますが、ミステリーが多いかなぁ。
「昭和の風俗漂う」と書きましたが、「パンティ」という言葉と並んで
「乳バンド」という言葉が出てきたのには思わずのけぞりました。
ちちちちちばんど…。
あ、個人的には高橋治の「椿の入れ墨」が良かったです。
「警察小説傑作短篇集」 大沢 在昌(選) ★★★
懐かしい昭和の風俗漂う作品が多め。
粒が揃っていますが、ミステリーが多いかなぁ。
「昭和の風俗漂う」と書きましたが、「パンティ」という言葉と並んで
「乳バンド」という言葉が出てきたのには思わずのけぞりました。
ちちちちちばんど…。
あ、個人的には高橋治の「椿の入れ墨」が良かったです。
「警察小説傑作短篇集」 大沢 在昌(選) ★★★
ホラー短編集です。
ホラーというジャンルで、もちろんグロい表現も在りながら
なんか品が良いというか上質感を感じられるのは、心理描写がしっかり
していることと、
何より「異形そのもの」よりも、その「異形を生み出してしまう人間の
心の弱さ、怖さ、魔物性」みたいなものがきちんと表現されているから
ではないかと思います。
そしてホラーながら、何となくユーモラスな気配が漂っているのも
朱川作品の特徴ではないかと。
ただこの作品集は、ほかの朱川作品(「かたみ詩」「いっぺんさん他」)
にある、良くも悪くも甘ったるさみたいなものがないので、
好き嫌いが別れるかもしれません。
最後の作品は、「ほう、そうくるか」と思いました。
「水銀虫」 朱川 湊人 ★★★
ホラーというジャンルで、もちろんグロい表現も在りながら
なんか品が良いというか上質感を感じられるのは、心理描写がしっかり
していることと、
何より「異形そのもの」よりも、その「異形を生み出してしまう人間の
心の弱さ、怖さ、魔物性」みたいなものがきちんと表現されているから
ではないかと思います。
そしてホラーながら、何となくユーモラスな気配が漂っているのも
朱川作品の特徴ではないかと。
ただこの作品集は、ほかの朱川作品(「かたみ詩」「いっぺんさん他」)
にある、良くも悪くも甘ったるさみたいなものがないので、
好き嫌いが別れるかもしれません。
最後の作品は、「ほう、そうくるか」と思いました。
「水銀虫」 朱川 湊人 ★★★
タイムトラベルものです。面白いです。
構成が巧みで、一気に読ませます。
そして、タイトルが秀逸です。
基本的には「もしあのとき〜だったら」系の話ですが、パラドックスに
陥りやすいタイムトラベルねたを上手く纏めています。
「時空を超えたラブ・ストーリィ」と紹介されており、確かにその要素は
あるんですが、私は「生き方」みたいなものを考えさせられるなぁと
思いました。
「時を超えるひと」は彼女の真実を知らないまま時を超えますが、
もし知っていたとしても、やっぱり時を超えるんじゃないか、など。
白石一文の「どれくらいの愛情」とセットで読むといいんじゃないかと、
個人的には思います。
ただ、これはもう完全に好みの問題だと思うんですが、文章に比喩が多くて、
正直ちょっとくどいかなぁ。「比喩」以上の演出効果を担って繰り返される
キーワードももちろんあるんですが…。
「Y」 佐藤 正午 ★★★★
構成が巧みで、一気に読ませます。
そして、タイトルが秀逸です。
基本的には「もしあのとき〜だったら」系の話ですが、パラドックスに
陥りやすいタイムトラベルねたを上手く纏めています。
「時空を超えたラブ・ストーリィ」と紹介されており、確かにその要素は
あるんですが、私は「生き方」みたいなものを考えさせられるなぁと
思いました。
「時を超えるひと」は彼女の真実を知らないまま時を超えますが、
もし知っていたとしても、やっぱり時を超えるんじゃないか、など。
白石一文の「どれくらいの愛情」とセットで読むといいんじゃないかと、
個人的には思います。
ただ、これはもう完全に好みの問題だと思うんですが、文章に比喩が多くて、
正直ちょっとくどいかなぁ。「比喩」以上の演出効果を担って繰り返される
キーワードももちろんあるんですが…。
「Y」 佐藤 正午 ★★★★
児童文学、ですかね。短編集です。
どの短編も、貧しい環境の中で精一杯生きていく子供達を描いています。
世の中がまだまだ貧しかった頃、社会は子供達を守ってくれるどころか
子供だろうが容赦なく厳しく、そんな中で子供が親を守るような、
そんな逞しさも垣間見られます。
どの話も無名の市井の子供達の苦労が中心で、例えばお金持ちの家に養子に
貰われることになってめでたしめでたし、なんて話はひとつもなく、
相変わらず苦しい環境のなかに置かれ続けるものばかりですが、
それでも何となく明るい気配が漂うのは、この子供達が苦労を背負い込み
ながらも顔を上げて、まっすぐ明日を見ているからなのかもしれません。
「なまくら」 吉橋 通夫 ★★★
どの短編も、貧しい環境の中で精一杯生きていく子供達を描いています。
世の中がまだまだ貧しかった頃、社会は子供達を守ってくれるどころか
子供だろうが容赦なく厳しく、そんな中で子供が親を守るような、
そんな逞しさも垣間見られます。
どの話も無名の市井の子供達の苦労が中心で、例えばお金持ちの家に養子に
貰われることになってめでたしめでたし、なんて話はひとつもなく、
相変わらず苦しい環境のなかに置かれ続けるものばかりですが、
それでも何となく明るい気配が漂うのは、この子供達が苦労を背負い込み
ながらも顔を上げて、まっすぐ明日を見ているからなのかもしれません。
「なまくら」 吉橋 通夫 ★★★
これも芥川賞受賞作なんですよねぇ…。うーん…。
3編の短編が収められていますが、どれも夫婦について描かれています。
表題にもなっている最初の短編は「離婚」について描かれているのですが、
この離婚に至る経緯というかふたりの関係の変遷というか、
お互いにどんどん(心情も含め)すれ違い、ボタンの掛け違いが延々続き
なすすべなく崩壊してしまう、ということは確かにあることだとは思います。
しかし主人公30歳。この設定でこの内容は、あまりに幼すぎてちょっと
どうなのかしら、というのが正直なところ。しかしそれはまあ小説なので
いいとしても、
著者が言いたかったことが最後の2行なのだとしたら、そのために書かれ
たものだとしたら、これじゃはっきり言って物足りない。
なにより読後にこちらの胸に「ずしん」と残るものがない。
きっと好みの問題なのだとおもいますすいません。
たまに鋭い言葉が出てくるので、期待したいと思うのですが。
「八月の路上に捨てる」 伊藤 たかみ ★★
3編の短編が収められていますが、どれも夫婦について描かれています。
表題にもなっている最初の短編は「離婚」について描かれているのですが、
この離婚に至る経緯というかふたりの関係の変遷というか、
お互いにどんどん(心情も含め)すれ違い、ボタンの掛け違いが延々続き
なすすべなく崩壊してしまう、ということは確かにあることだとは思います。
しかし主人公30歳。この設定でこの内容は、あまりに幼すぎてちょっと
どうなのかしら、というのが正直なところ。しかしそれはまあ小説なので
いいとしても、
著者が言いたかったことが最後の2行なのだとしたら、そのために書かれ
たものだとしたら、これじゃはっきり言って物足りない。
なにより読後にこちらの胸に「ずしん」と残るものがない。
きっと好みの問題なのだとおもいますすいません。
たまに鋭い言葉が出てくるので、期待したいと思うのですが。
「八月の路上に捨てる」 伊藤 たかみ ★★
4つの中編が収められています。
正直なところどれもストーリィは先が読めてしまいますが、シンプルで
著者のメッセージがストレートに現れていると思います。
ただ、ちょっと気になったのは「ビジネスマンのディティール」がきっちり
描き込まれていることが白石作品の大きな魅力のひとつで、それが
ストーリィに奥行きと立体感を与えていると思っていたのだけれど、
1編目の「20年後のわたしへ」のOLのオフィス・シーンでのディテールや、
タイトルにもなっている4編目の「どれくらいの愛情」の主人公(実業家)
のビジネス・シーンなんかが今までになく薄くて、何と言えばいいのか、
ちょっと奥行き感がないというか、キャラクターとエピソード中心というか、
そんな印象がちょっと否めません。
著者のメッセージは、目に見えないもの、つまり「想い」みたなこととか、
不完全を内包する(がゆえの)完全さ、みたいなことだと思うのですが、なかなか難しい
テーマですね。
「(選択に際して何らかの)圧力がかかりその選択をせざるを得なかったとしても、それは
結局自分で選んだ選択なのである」
という考え方は、つまりは全て自分の責任でありその結果を自分で背負っていくという覚悟を
持たなければななにもはじまらない、ということだと思います。
「運命を変えられるか否か」について私は解をもっていませんが、運命は自分で作るもの
だと思っているので。
「どれくらいの愛情」 白石 一文 ★★★★
正直なところどれもストーリィは先が読めてしまいますが、シンプルで
著者のメッセージがストレートに現れていると思います。
ただ、ちょっと気になったのは「ビジネスマンのディティール」がきっちり
描き込まれていることが白石作品の大きな魅力のひとつで、それが
ストーリィに奥行きと立体感を与えていると思っていたのだけれど、
1編目の「20年後のわたしへ」のOLのオフィス・シーンでのディテールや、
タイトルにもなっている4編目の「どれくらいの愛情」の主人公(実業家)
のビジネス・シーンなんかが今までになく薄くて、何と言えばいいのか、
ちょっと奥行き感がないというか、キャラクターとエピソード中心というか、
そんな印象がちょっと否めません。
著者のメッセージは、目に見えないもの、つまり「想い」みたなこととか、
不完全を内包する(がゆえの)完全さ、みたいなことだと思うのですが、なかなか難しい
テーマですね。
「(選択に際して何らかの)圧力がかかりその選択をせざるを得なかったとしても、それは
結局自分で選んだ選択なのである」
という考え方は、つまりは全て自分の責任でありその結果を自分で背負っていくという覚悟を
持たなければななにもはじまらない、ということだと思います。
「運命を変えられるか否か」について私は解をもっていませんが、運命は自分で作るもの
だと思っているので。
「どれくらいの愛情」 白石 一文 ★★★★
何の先入観もなしに読んだのですが、驚きました。
相当な調査と取材の上に、綿密に積み上げられているように思います。
戦争物のノンフィクションも結構読んでいるのですが、例えばそれは
「ガダルカナルやフィリピンに於ける陸軍」であったり、「司令部の戦略」
であったり、「大和」であったりとテーマが絞り込まれていたり、
また特攻隊についても終盤の「沖縄線」のものが多かったりしたのですが、
これは戦争全体の流れと、陸軍、それになにより航空隊の最前線と変遷が
とても緻密に描き出されています。
いろんな人の目を通して、飛行機乗りだった亡き祖父の実像が浮かび
上がってきますが、惜しむべくは恐らくアンチテーゼとして登場した
「特攻隊はテロと同じ」と主張する新聞記者の描き込みと立ち位置が
ちょっと弱いかなぁ。
それでも。
この作品は、もっと多くの人が読むべきだとおもいます。
「永遠の0」 百田 尚樹 ★★★★★
相当な調査と取材の上に、綿密に積み上げられているように思います。
戦争物のノンフィクションも結構読んでいるのですが、例えばそれは
「ガダルカナルやフィリピンに於ける陸軍」であったり、「司令部の戦略」
であったり、「大和」であったりとテーマが絞り込まれていたり、
また特攻隊についても終盤の「沖縄線」のものが多かったりしたのですが、
これは戦争全体の流れと、陸軍、それになにより航空隊の最前線と変遷が
とても緻密に描き出されています。
いろんな人の目を通して、飛行機乗りだった亡き祖父の実像が浮かび
上がってきますが、惜しむべくは恐らくアンチテーゼとして登場した
「特攻隊はテロと同じ」と主張する新聞記者の描き込みと立ち位置が
ちょっと弱いかなぁ。
それでも。
この作品は、もっと多くの人が読むべきだとおもいます。
「永遠の0」 百田 尚樹 ★★★★★
「おくりびと」の時代劇版みたいな雰囲気です。
主人公はお寺に身を寄せる湯灌士。
この著者の小説としての作品はまだ2〜3冊だと思うのですが、それに
しては文章(ちょっと硬いところもあるけど)と構成が上手い。
漫画の原作者だったということもあるのでしょうか。
読みやすいし優しくて良いんですが、欲を言うともっと、なんというか
突っ込んだものも読みたいなぁと思う。
とにかく出てくる人がみんな優しくて、傷ついたり傷つけられたりも
するんだけど、それもみんなそれぞれの「優しさゆえ」みたいな感じで。
「八朔の雪―みをつくし料理帖」もそんなテイストだったし、
それはそれでいいんだけど、ちょっと違う面も見たいなぁという欲が出てくる。
「出世花」 高田 郁 ★★★
主人公はお寺に身を寄せる湯灌士。
この著者の小説としての作品はまだ2〜3冊だと思うのですが、それに
しては文章(ちょっと硬いところもあるけど)と構成が上手い。
漫画の原作者だったということもあるのでしょうか。
読みやすいし優しくて良いんですが、欲を言うともっと、なんというか
突っ込んだものも読みたいなぁと思う。
とにかく出てくる人がみんな優しくて、傷ついたり傷つけられたりも
するんだけど、それもみんなそれぞれの「優しさゆえ」みたいな感じで。
「八朔の雪―みをつくし料理帖」もそんなテイストだったし、
それはそれでいいんだけど、ちょっと違う面も見たいなぁという欲が出てくる。
「出世花」 高田 郁 ★★★
やっぱり読まず嫌いというのは良くないな。と思った。
著者は映画監督が本業なんですかね。映画の原作ということになるのかな。
映画を撮った後に著したようです。
緻密な心理描写に正直なところ驚きました。まったく性格の違う登場人物
たちを、キャラクターをたてるというよりも、内面からきちんと描き分けて
います。ここがかなり秀逸。
ただまあ作家が本業ではないせいか、というより映像の世界の人だから
だと思うのですが、日本語とか文章とか、言葉を積み上げて構成して
いくというより、場面や情景みたいなものを切り取って言葉に置き換えて
いるような印象です。
お互いを思いやったつもりが相手を傷つけていたり、近いようで遠い、かといって他人にも
なれない「家族」というやっかいな関係性を何組かの親子、兄弟関係、疑似家族関係を
通して描いていますが、
でも「家族だからいつかきっとわかり合える」と思うのか、それとも
「いや家族だからと言ってもどうしようもないだろう」と思うのか。
それはラストをどう判断するのか、つまり個々の読み手に委ねられているのでしょう。
「ゆれる」 西川 美和 ★★★★
著者は映画監督が本業なんですかね。映画の原作ということになるのかな。
映画を撮った後に著したようです。
緻密な心理描写に正直なところ驚きました。まったく性格の違う登場人物
たちを、キャラクターをたてるというよりも、内面からきちんと描き分けて
います。ここがかなり秀逸。
ただまあ作家が本業ではないせいか、というより映像の世界の人だから
だと思うのですが、日本語とか文章とか、言葉を積み上げて構成して
いくというより、場面や情景みたいなものを切り取って言葉に置き換えて
いるような印象です。
お互いを思いやったつもりが相手を傷つけていたり、近いようで遠い、かといって他人にも
なれない「家族」というやっかいな関係性を何組かの親子、兄弟関係、疑似家族関係を
通して描いていますが、
でも「家族だからいつかきっとわかり合える」と思うのか、それとも
「いや家族だからと言ってもどうしようもないだろう」と思うのか。
それはラストをどう判断するのか、つまり個々の読み手に委ねられているのでしょう。
「ゆれる」 西川 美和 ★★★★
久しぶりに「本を読むということの醍醐味」を味わわせてくれる本です。
しかし念のため言っておきますと、決して読みやすい本ではありません。
崩壊寸前のオーストリア帝国が舞台の中心です。昔、ブルーブラッドものを
読みあさったときのヨーロッパ近代史を記憶を掘り起こしながら
読みました。
まあ言ってしまえば諜報もの歴史小説ですが、言葉も表現もそぎ落とされて
おり、同時に極限までそぎ落とされていながら重厚な情報量があるため、
とにかく想像力をフルに動員しないと読めません。
キャラクタ設定と世界観がしっかりしていて、ちょっとファンタジーの
雰囲気も。
と思ったら、著者はファンタジー出身なんですね。
続編というか姉妹編もあるようなので、そちらもいってみましょう。
「天使」 佐藤 亜紀 ★★★★
しかし念のため言っておきますと、決して読みやすい本ではありません。
崩壊寸前のオーストリア帝国が舞台の中心です。昔、ブルーブラッドものを
読みあさったときのヨーロッパ近代史を記憶を掘り起こしながら
読みました。
まあ言ってしまえば諜報もの歴史小説ですが、言葉も表現もそぎ落とされて
おり、同時に極限までそぎ落とされていながら重厚な情報量があるため、
とにかく想像力をフルに動員しないと読めません。
キャラクタ設定と世界観がしっかりしていて、ちょっとファンタジーの
雰囲気も。
と思ったら、著者はファンタジー出身なんですね。
続編というか姉妹編もあるようなので、そちらもいってみましょう。
「天使」 佐藤 亜紀 ★★★★
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