本はごはん。
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それぞれの道を歩いている、20代後半になったゼミ仲間たち。
久しぶりに再会し、それぞれが抱える迷いや悩みが交錯していきます。
なんとなく「ふぞろいの林檎たち」を思い出した。
20代後半って、どうだったかな…と思い返してみると。
もちろん今とは時代背景が違うけれど、でももうすっかり学生ではなくて
会社にも社会人にも馴れて、組織の不文律みたいなものも見えてきて、
こんなことするために会社に入ったんだろうか、とか
会社での自分の将来もなんとなく想像がついてしまったりとか
かといって転職するにもエネルギーが必要で、でもまだ今なら間に合う
かもとか、でも一体「何に」間に合うというのかすらよく判らず。
そんな時期だったように思います。
すべてが手に入ると思えるほど子供ではなく、
すべてを割り切って受け入れてしまえるほど年を取っているわけでもなく
そういうどっちつかずの焦燥感みたいなものに捕らわれる年代なのかもしれません。
テーマは良かったと思います。
ただ、ちょっと冗長かな。全体的に平坦な印象。もっと削る部分と、突っ込む部分とを、
あえて言うとバランスを崩してくれるくらいの方がよかったような気もします。
「月曜の朝、ぼくたちは」 井伏 洋介 ★★
久しぶりに再会し、それぞれが抱える迷いや悩みが交錯していきます。
なんとなく「ふぞろいの林檎たち」を思い出した。
20代後半って、どうだったかな…と思い返してみると。
もちろん今とは時代背景が違うけれど、でももうすっかり学生ではなくて
会社にも社会人にも馴れて、組織の不文律みたいなものも見えてきて、
こんなことするために会社に入ったんだろうか、とか
会社での自分の将来もなんとなく想像がついてしまったりとか
かといって転職するにもエネルギーが必要で、でもまだ今なら間に合う
かもとか、でも一体「何に」間に合うというのかすらよく判らず。
そんな時期だったように思います。
すべてが手に入ると思えるほど子供ではなく、
すべてを割り切って受け入れてしまえるほど年を取っているわけでもなく
そういうどっちつかずの焦燥感みたいなものに捕らわれる年代なのかもしれません。
テーマは良かったと思います。
ただ、ちょっと冗長かな。全体的に平坦な印象。もっと削る部分と、突っ込む部分とを、
あえて言うとバランスを崩してくれるくらいの方がよかったような気もします。
「月曜の朝、ぼくたちは」 井伏 洋介 ★★
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すいませんすいませんすいません。
初めに謝っときますほんとーにすいません。いろんな意味ですいません。
この著者、「おとーさんたちに経済小説を書いているひと」という印象しか
なく、いままで読んだことなかったんですがたまにはと思って手に取って
みたのです。
銀行に辞表をたたきつけて経済評論的活動をしてきた主人公の元に、ある日
知らない女性からメールが舞い込み…と、ストーリィは始まるのですが。
前半をしばらく読んだ段階での感想は、
「これはお父さんたち向けのハーレクインロマンスか!?」。
おとーさんたちにとってのファンタジーって、こんな感じなんですかね?
自分と同年代の、しかしまだまだ美しい人妻と、そして若さ溢れかなり美しい娘。
母娘ですよ母娘! しかも母娘一緒に、つまり3P!
そして「今日は佐和子(=母親の方)を抱いてやりたい」って何ですかねこの傲慢さ。あちこち
尊大さが目立つんですが、50代くらいの男性の心の中ってこんな感じなんでしょうか。
ちょっと幻滅。
自分を慕ってくれていると信じていた過去の部下たちからの自分への評価が著しく低いということを
知って落ち込む場面がありますが、これは結構ありがちです。特に、「自分は指導上手、教育熱心
である」と自認しているひとほど、周りの評価は冷ややかだったりします。
お父さんたちへのサービスなのかもしれませんが、濡れ場をこんな即物的な感じじゃなくて
もうちょっと文学的に表現してくれたらもっと違った印象になったかもしれません。
併せて、「息子との和解」があまりにもご都合主義過ぎるんじゃないかなぁ。
恐らく私は著しく想定読者を外れているためにこんな感想になってしまったのだと思います。
ほんとすいません。
「 日暮れてこそ 」 江上 剛 ★★
初めに謝っときますほんとーにすいません。いろんな意味ですいません。
この著者、「おとーさんたちに経済小説を書いているひと」という印象しか
なく、いままで読んだことなかったんですがたまにはと思って手に取って
みたのです。
銀行に辞表をたたきつけて経済評論的活動をしてきた主人公の元に、ある日
知らない女性からメールが舞い込み…と、ストーリィは始まるのですが。
前半をしばらく読んだ段階での感想は、
「これはお父さんたち向けのハーレクインロマンスか!?」。
おとーさんたちにとってのファンタジーって、こんな感じなんですかね?
自分と同年代の、しかしまだまだ美しい人妻と、そして若さ溢れかなり美しい娘。
母娘ですよ母娘! しかも母娘一緒に、つまり3P!
そして「今日は佐和子(=母親の方)を抱いてやりたい」って何ですかねこの傲慢さ。あちこち
尊大さが目立つんですが、50代くらいの男性の心の中ってこんな感じなんでしょうか。
ちょっと幻滅。
自分を慕ってくれていると信じていた過去の部下たちからの自分への評価が著しく低いということを
知って落ち込む場面がありますが、これは結構ありがちです。特に、「自分は指導上手、教育熱心
である」と自認しているひとほど、周りの評価は冷ややかだったりします。
お父さんたちへのサービスなのかもしれませんが、濡れ場をこんな即物的な感じじゃなくて
もうちょっと文学的に表現してくれたらもっと違った印象になったかもしれません。
併せて、「息子との和解」があまりにもご都合主義過ぎるんじゃないかなぁ。
恐らく私は著しく想定読者を外れているためにこんな感想になってしまったのだと思います。
ほんとすいません。
「 日暮れてこそ 」 江上 剛 ★★
この著者の作品は初めて読みますが、1ページ目からもう、著者独特の
リズムに引き寄せられてしまうのだけれど、文章はかなりきわどいところに
あるように思う。計算の上のことかもしれないけれど、嫌う人もいるんじゃ
ないかな。
サブタイトル通り、母親と、ときどき父親も混じる関係を描いています。
実体験がかなりの部分を占めているものと思われ。
ぱっと読んだところでは母親との関係性、もしくは母親への思慕がストレート
に表現されているため、感情的に受け付けにくく感じるひともいるのでは
ないかと予想されるのですが、
私がこれを読んでいて思い出したのは「青春の門」。筑豊つながり。いえ、
それだけではなくて、青春の門が「上昇志向の塊オレはヤルぜ!的青春小説」
だとしたら、これは現代版の青春小説ではないかと。
食べるに困らない、豊かになった分だけ見えにくくなってしまった自分自身と将来。
やりたいことも、なりたいものも判らない。そのなかで生きいかなきゃならない現代。
そういう意味では、昔の方が貧しかったかもしれないけれどその分、判りやすかったのかも
しれません。
つまり、母親との関係性が前面に出てはいますが、これは、ひとりの人間の迷いと苦悩と自立への
悪戦苦闘の記ではないかと。そんな風に感じました。
なかなか良い作品でありました。
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー ★★★★
リズムに引き寄せられてしまうのだけれど、文章はかなりきわどいところに
あるように思う。計算の上のことかもしれないけれど、嫌う人もいるんじゃ
ないかな。
サブタイトル通り、母親と、ときどき父親も混じる関係を描いています。
実体験がかなりの部分を占めているものと思われ。
ぱっと読んだところでは母親との関係性、もしくは母親への思慕がストレート
に表現されているため、感情的に受け付けにくく感じるひともいるのでは
ないかと予想されるのですが、
私がこれを読んでいて思い出したのは「青春の門」。筑豊つながり。いえ、
それだけではなくて、青春の門が「上昇志向の塊オレはヤルぜ!的青春小説」
だとしたら、これは現代版の青春小説ではないかと。
食べるに困らない、豊かになった分だけ見えにくくなってしまった自分自身と将来。
やりたいことも、なりたいものも判らない。そのなかで生きいかなきゃならない現代。
そういう意味では、昔の方が貧しかったかもしれないけれどその分、判りやすかったのかも
しれません。
つまり、母親との関係性が前面に出てはいますが、これは、ひとりの人間の迷いと苦悩と自立への
悪戦苦闘の記ではないかと。そんな風に感じました。
なかなか良い作品でありました。
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー ★★★★
「バチスタシリーズ」は桜宮が舞台でしたが、今回の舞台は東京。しかし
この著者のことですから、どっかで繋がるのでしょう。この話もまだ種明かし
されてないネタもあるし、続いてってどっかで桜宮とも繋がるのかな。
人間界に於ける「託卵」というすごいテーマです。
人工授精や代理母はもちろん、生命倫理から「家族」の定義まで、なかなか
答えの出ない問題を真正面から取り上げています。
辛辣な厚生労働省批判は相変わらずです。毎度のことながらここまで酷いの
かと思う。
この著者の作品らしく全体的によくまとまっていてぐいぐい読ませるんですが、
今回の主人公である女性産婦人科医師にはちょっと感情移入がしにくい。
彼女の行為は、現状、そう簡単に正否を下しにくいものであるけれども、そもそも彼女が
その行為に至った動機が、行為が行為だけに相当なる動機が必要だと思うのだけれど、
なんというか。彼女の愛が感じられないんだよなぁ。夫にも、関係のある同僚医師にも、そして
自ら生み出した自分の子供に対してすら、愛が感じにくい。
では社会正義の実現のための行動か、となると、それもちょっとなぁ、と。
社会正義のためということが出発点だったとしても、勝手に他人を巻き込んだ時点で、もうその
大義名分は成立しないんじゃなかろうか。社会正義を正すために、身近な社会正義を
冒しちゃってるというか。
このあたりって、続編とか読めば解消されるのかしら?
と、まあ多少の違和感はありつつも「五体満足に生まれ落ちることの奇跡」というものを
考えさせてくれる良い本であるとおもいます。
「ジーン・ワルツ」 海堂 尊 ★★★
この著者のことですから、どっかで繋がるのでしょう。この話もまだ種明かし
されてないネタもあるし、続いてってどっかで桜宮とも繋がるのかな。
人間界に於ける「託卵」というすごいテーマです。
人工授精や代理母はもちろん、生命倫理から「家族」の定義まで、なかなか
答えの出ない問題を真正面から取り上げています。
辛辣な厚生労働省批判は相変わらずです。毎度のことながらここまで酷いの
かと思う。
この著者の作品らしく全体的によくまとまっていてぐいぐい読ませるんですが、
今回の主人公である女性産婦人科医師にはちょっと感情移入がしにくい。
彼女の行為は、現状、そう簡単に正否を下しにくいものであるけれども、そもそも彼女が
その行為に至った動機が、行為が行為だけに相当なる動機が必要だと思うのだけれど、
なんというか。彼女の愛が感じられないんだよなぁ。夫にも、関係のある同僚医師にも、そして
自ら生み出した自分の子供に対してすら、愛が感じにくい。
では社会正義の実現のための行動か、となると、それもちょっとなぁ、と。
社会正義のためということが出発点だったとしても、勝手に他人を巻き込んだ時点で、もうその
大義名分は成立しないんじゃなかろうか。社会正義を正すために、身近な社会正義を
冒しちゃってるというか。
このあたりって、続編とか読めば解消されるのかしら?
と、まあ多少の違和感はありつつも「五体満足に生まれ落ちることの奇跡」というものを
考えさせてくれる良い本であるとおもいます。
「ジーン・ワルツ」 海堂 尊 ★★★
久しぶりに小川洋子氏です。短編集。
やっぱり不思議な作家です。この著者はもちろん想像力もすごいなあと
思うけれど、それよりも「感性」の作家なのではないかと思う。
エロスとグロテスク。解放と孤独。永遠と一瞬。喪失と残存する想い。
それらが対立することなく補完し合いながら、タイトル通り「夜明けの縁」、
つまりはあちらでもなくこちらでもない空間に迷い込んだ人々の姿を、
時には情熱的に、時には残酷に、渇いた空気のなかに映し出しています。
この空気感が、彼女の感性が支配する世界ではないかと。
個人的にはいちばん最初の短編に出てくる「曲芸師」がメタファーするもの、
について、つらつらと思いを馳せてしまいます。
「夜明けの縁をさ迷う人々」 小川 洋子 ★★★★
やっぱり不思議な作家です。この著者はもちろん想像力もすごいなあと
思うけれど、それよりも「感性」の作家なのではないかと思う。
エロスとグロテスク。解放と孤独。永遠と一瞬。喪失と残存する想い。
それらが対立することなく補完し合いながら、タイトル通り「夜明けの縁」、
つまりはあちらでもなくこちらでもない空間に迷い込んだ人々の姿を、
時には情熱的に、時には残酷に、渇いた空気のなかに映し出しています。
この空気感が、彼女の感性が支配する世界ではないかと。
個人的にはいちばん最初の短編に出てくる「曲芸師」がメタファーするもの、
について、つらつらと思いを馳せてしまいます。
「夜明けの縁をさ迷う人々」 小川 洋子 ★★★★
これは難しいテーマですね。
妻が癌で入院。息子(と娘)に「死」というもの、命のつながりというものを
どうやって教えていくか。子供と一緒に考えながら、「化石」とか「宇宙」
とか「カメ」、そして自分(父親)で紡ぐストーリィで子供に伝えようと
しています。
とても難しいテーマに挑戦しているのはすごく良いと思うのですが、どうにも
「死生観」的なものがちょっと私には合わないかもしれない。
併せて、息子の描き方がちょっとどうだろうか。どうも「大人が考える子供」
の域を出ていないような。「親の死」というものに対する漠然たる不安、を
抱えているにしても、ちょっと違和感。
どうでもいいことなんですが、息子の会話を読んでると、どうしても「クレしん」を思い出して
しまって…。すいませんすいません。
「てのひらの中の宇宙」 川端 裕人 ★★★
妻が癌で入院。息子(と娘)に「死」というもの、命のつながりというものを
どうやって教えていくか。子供と一緒に考えながら、「化石」とか「宇宙」
とか「カメ」、そして自分(父親)で紡ぐストーリィで子供に伝えようと
しています。
とても難しいテーマに挑戦しているのはすごく良いと思うのですが、どうにも
「死生観」的なものがちょっと私には合わないかもしれない。
併せて、息子の描き方がちょっとどうだろうか。どうも「大人が考える子供」
の域を出ていないような。「親の死」というものに対する漠然たる不安、を
抱えているにしても、ちょっと違和感。
どうでもいいことなんですが、息子の会話を読んでると、どうしても「クレしん」を思い出して
しまって…。すいませんすいません。
「てのひらの中の宇宙」 川端 裕人 ★★★
またしても米澤穂信氏です。
ユーゴスラビアからやってきた少女との2ヶ月間。
日本の高校生たちは彼女と交流することによって、特に主人公は
閉塞されていた自分に風穴を開けられたように感じる…。
実際のユーゴスラビアの紛争を背景に書かれており、基本的には私の
好むジャンルなのでありますが。
そしてミステリと言っても、日常の延長線上にあるミステリなので
これも私の好むところなのでありますが。
ただそのいくつかの謎解きが、ちょっと突拍子もないような気がするんです。
とくに墓地のエピソードとか。
あと、ちょっとライトノベルっぽい感じも…(いや、ライトノベルが悪いと言ってるわけじゃ
ないんですが)。
なにより大刀洗の描かれかたがちょっと不満というか…。もうちょっと大刀洗の伏線貼っても
いいんじゃないかしら。「そういうヤツだから」でずっと済ませてきて、最後に「どん!」
って言うのは、来るだろうなと思っていたけどちょっと…。
筆力のある筆者なのでしっかり読ませますけどね。
好みの問題だと思います。
「さよなら妖精」 米澤 穂信 ★★★
ユーゴスラビアからやってきた少女との2ヶ月間。
日本の高校生たちは彼女と交流することによって、特に主人公は
閉塞されていた自分に風穴を開けられたように感じる…。
実際のユーゴスラビアの紛争を背景に書かれており、基本的には私の
好むジャンルなのでありますが。
そしてミステリと言っても、日常の延長線上にあるミステリなので
これも私の好むところなのでありますが。
ただそのいくつかの謎解きが、ちょっと突拍子もないような気がするんです。
とくに墓地のエピソードとか。
あと、ちょっとライトノベルっぽい感じも…(いや、ライトノベルが悪いと言ってるわけじゃ
ないんですが)。
なにより大刀洗の描かれかたがちょっと不満というか…。もうちょっと大刀洗の伏線貼っても
いいんじゃないかしら。「そういうヤツだから」でずっと済ませてきて、最後に「どん!」
って言うのは、来るだろうなと思っていたけどちょっと…。
筆力のある筆者なのでしっかり読ませますけどね。
好みの問題だと思います。
「さよなら妖精」 米澤 穂信 ★★★
ボクサーたちのノンフィクションです。
頂点まで上り詰めながらも目に障害を負ってしまい、それでもボクシングから
離れられない元チャンピオン、自分の存在価値を認められない孤独な少年、
友人を事故で死なせてしまった不良両年などがあたつまる小さなジム。
そこで彼らはストイックというよりはむしろ愚直とも言えるような努力を
重ねて頂点を目指していきます。
「天才」とは何かと考えた時に、これは私の個人的な定義でありますが、
ひとつは「努力を努力と思わない」こと。これは言い換えれば、
他人から見れば「努力」としか見えないことも、本人にとっては「楽しい」と
思えるほど「夢中になれることを見つけられる」ということでもあります。
そしてもうひとつは「運」ではないかと。
「運」以前に、努力を努力と思わないほど夢中になれることに出会えること自体が、かなり
難しいことじゃないかと思います。
彼らをボクシングへと導いたのは「孤独」であったと思いますが、孤独と真っ正面から対峙した
ことが彼らを「努力を努力と思わない」までにボクシングに集中させたのではないかと思います。
この著者の作品は初めて読みましたが、ちょっと説明過多かな。正直なところはもうすこし
「余白」もしくは「行間」が欲しいと思いますが、なかなか良い作品だと思います。
「魂の箱」 平山 譲 ★★★★
頂点まで上り詰めながらも目に障害を負ってしまい、それでもボクシングから
離れられない元チャンピオン、自分の存在価値を認められない孤独な少年、
友人を事故で死なせてしまった不良両年などがあたつまる小さなジム。
そこで彼らはストイックというよりはむしろ愚直とも言えるような努力を
重ねて頂点を目指していきます。
「天才」とは何かと考えた時に、これは私の個人的な定義でありますが、
ひとつは「努力を努力と思わない」こと。これは言い換えれば、
他人から見れば「努力」としか見えないことも、本人にとっては「楽しい」と
思えるほど「夢中になれることを見つけられる」ということでもあります。
そしてもうひとつは「運」ではないかと。
「運」以前に、努力を努力と思わないほど夢中になれることに出会えること自体が、かなり
難しいことじゃないかと思います。
彼らをボクシングへと導いたのは「孤独」であったと思いますが、孤独と真っ正面から対峙した
ことが彼らを「努力を努力と思わない」までにボクシングに集中させたのではないかと思います。
この著者の作品は初めて読みましたが、ちょっと説明過多かな。正直なところはもうすこし
「余白」もしくは「行間」が欲しいと思いますが、なかなか良い作品だと思います。
「魂の箱」 平山 譲 ★★★★
そういえば、うつ病を患っている人の手記だとかブログだとかはよく見る
けれど、躁病を患っている人の手記はあまり見たことがないなぁと。
で、この本ですが。
躁病を患い、投薬治療を続けているものの数年おきに発症してしまう
著者の躁病体験記、とでもいうのでしょうか。
躁病を発病すると、その人は王様のような万能感につつまれるという
ことは知識として知ってはいましたが、では具体的にどんな行動を
取るのか、ということがここにはどっさり綴られています。
これを読んでいると、躁病の発病した状況は、薬物中毒患者と似て
るんじゃないか、という気もするんですが、薬物も躁病の経験もない
ので私には断言できません。
お金がなくても次々と買い物しまくる(100万円単位)とか、ヤクザにも平気で喧嘩売るとか、
しかもそれは海外で、ついには刑務所まで経験するところまで突っ走るとは、恐ろしや躁病。
しかし周りの人も困りますよね…いや本人がいちばん大変だとは思うんですけど。どうも著者は
発病するとタイに行きたくなるように見受けますが、確かにあのくらいおおらかな国であれば、
ちょっとヘンな外国人として受け入れてくれるのかもしれません。少なくともこのぎすぎすした
日本よりも。
しかし著者の病状が快復するのはいつも日本の医療機関を受診してからのようですので、
精神医療についてはやはり日本が一歩先を歩いているのでしょうか。
正直に書きますと、結局はいろんな形で表出する万能感、思考の拡散、妄想などのオンパレード
なので、ちょっと飽きてくる感も否めませんが、なかなか貴重な書だと思います。
「躁病見聞録―この世のすべては私のもの」 加藤 達夫 ★★★
けれど、躁病を患っている人の手記はあまり見たことがないなぁと。
で、この本ですが。
躁病を患い、投薬治療を続けているものの数年おきに発症してしまう
著者の躁病体験記、とでもいうのでしょうか。
躁病を発病すると、その人は王様のような万能感につつまれるという
ことは知識として知ってはいましたが、では具体的にどんな行動を
取るのか、ということがここにはどっさり綴られています。
これを読んでいると、躁病の発病した状況は、薬物中毒患者と似て
るんじゃないか、という気もするんですが、薬物も躁病の経験もない
ので私には断言できません。
お金がなくても次々と買い物しまくる(100万円単位)とか、ヤクザにも平気で喧嘩売るとか、
しかもそれは海外で、ついには刑務所まで経験するところまで突っ走るとは、恐ろしや躁病。
しかし周りの人も困りますよね…いや本人がいちばん大変だとは思うんですけど。どうも著者は
発病するとタイに行きたくなるように見受けますが、確かにあのくらいおおらかな国であれば、
ちょっとヘンな外国人として受け入れてくれるのかもしれません。少なくともこのぎすぎすした
日本よりも。
しかし著者の病状が快復するのはいつも日本の医療機関を受診してからのようですので、
精神医療についてはやはり日本が一歩先を歩いているのでしょうか。
正直に書きますと、結局はいろんな形で表出する万能感、思考の拡散、妄想などのオンパレード
なので、ちょっと飽きてくる感も否めませんが、なかなか貴重な書だと思います。
「躁病見聞録―この世のすべては私のもの」 加藤 達夫 ★★★
えーと。ミステリでした。いやこの著者はミステリ作家だということは
もちろん知っていましたが、「ボトルネック」や「犬はどこだ」などを
読む限り、
ミステリという器を使ってはいるものの、それは日常の延長線上にある謎で
あったり、ひとの心の繊細な機微だとか、そういったものが描かれている
ところにとても興味を持っていたのであります。
しかしこの作品はミステリど真ん中でありました。
この作品は、極限状態に追い込まれながらも派閥を組まずにはいられな
かったり、自分のポジションを有意に保つことに苦心したりする人間の性
みたいなものなどがよく表現されていおり、
かつミステリとしても「上手くできてるなぁ」というのが正直な感想であります。
しかしながら。これは「ミステリ大好き」と「普段あんまりミステリ読まない」ひととでは
相当読後感が違うのではないかと。つまりはミステリの大作に対するオマージュなのか、
有名どころのミステリが絡められていたりします。
そして。ミステリ嫌いというわけではないけれど、最初にその環境設定やら登場人物やらを
覚えなきゃいけないのがちょっと面倒なのと、謎解きそのものよりも心理的なものであったり
著者の信念的なものやメッセージ性を感じられるものの方を、私は好むようです。
「インシテミル」 米澤 穂信 ★★★
もちろん知っていましたが、「ボトルネック」や「犬はどこだ」などを
読む限り、
ミステリという器を使ってはいるものの、それは日常の延長線上にある謎で
あったり、ひとの心の繊細な機微だとか、そういったものが描かれている
ところにとても興味を持っていたのであります。
しかしこの作品はミステリど真ん中でありました。
この作品は、極限状態に追い込まれながらも派閥を組まずにはいられな
かったり、自分のポジションを有意に保つことに苦心したりする人間の性
みたいなものなどがよく表現されていおり、
かつミステリとしても「上手くできてるなぁ」というのが正直な感想であります。
しかしながら。これは「ミステリ大好き」と「普段あんまりミステリ読まない」ひととでは
相当読後感が違うのではないかと。つまりはミステリの大作に対するオマージュなのか、
有名どころのミステリが絡められていたりします。
そして。ミステリ嫌いというわけではないけれど、最初にその環境設定やら登場人物やらを
覚えなきゃいけないのがちょっと面倒なのと、謎解きそのものよりも心理的なものであったり
著者の信念的なものやメッセージ性を感じられるものの方を、私は好むようです。
「インシテミル」 米澤 穂信 ★★★
第二次世界大戦の「特攻」の話です。
現代の若者(大学生)がゼミの課題で特攻を調べることになって、自分の
祖母に話を聴くというスタイルになっています。冒頭、この若者が祖母に
向かって、
「9・11のテロは神風特攻と同じではないか」と言うシーンがあるので、
そのあたり突っ込んでくるのかと思ったらそうではなく、であればわざわざ
こういうスタイルを取る必要があったのかどうかは少し疑問です。
スタイルはともかく、特攻で散らなければならなかったひとの数だけ
知られざる葛藤やドラマがあったのでしょう。
それから本書ではちらりとしか触れられていませんが、2世(日系2世や
朝鮮系2世など)の苦悩やその立場ならではの哀しみや。
はっきり言ってこの手の、つまりは戦争モノにはとても弱いことを自覚しています。
それでも、どうしても読んでしまう。
おそらくは多大な犠牲を払って得た、しかしながらちょっと違う方向へ走ってしまった
平和の上に安穏と暮らしている自分に、なにか後ろめたさを感じてしまうからなのかも
しれない。
そしてもっと正直に言えば、多大な犠牲を払っても彼らが必死で守ろうとした日本は、おそらく
現在の、こんな日本じゃなかったのじゃないか。そう思いながらも何もしない自分を
認めたくないからなのかもしれない。
本書については、この手の者としては恋愛が中心に据えられているためかとても読みやすく、
多くの人が手に取りやすいのではないかと思います。しかし個人的には「永遠の0」とか
「ふたつの祖国」とかを是非併せて読んで欲しいと思う。
「二十歳の変奏曲」 稲葉 稔 ★★★
現代の若者(大学生)がゼミの課題で特攻を調べることになって、自分の
祖母に話を聴くというスタイルになっています。冒頭、この若者が祖母に
向かって、
「9・11のテロは神風特攻と同じではないか」と言うシーンがあるので、
そのあたり突っ込んでくるのかと思ったらそうではなく、であればわざわざ
こういうスタイルを取る必要があったのかどうかは少し疑問です。
スタイルはともかく、特攻で散らなければならなかったひとの数だけ
知られざる葛藤やドラマがあったのでしょう。
それから本書ではちらりとしか触れられていませんが、2世(日系2世や
朝鮮系2世など)の苦悩やその立場ならではの哀しみや。
はっきり言ってこの手の、つまりは戦争モノにはとても弱いことを自覚しています。
それでも、どうしても読んでしまう。
おそらくは多大な犠牲を払って得た、しかしながらちょっと違う方向へ走ってしまった
平和の上に安穏と暮らしている自分に、なにか後ろめたさを感じてしまうからなのかも
しれない。
そしてもっと正直に言えば、多大な犠牲を払っても彼らが必死で守ろうとした日本は、おそらく
現在の、こんな日本じゃなかったのじゃないか。そう思いながらも何もしない自分を
認めたくないからなのかもしれない。
本書については、この手の者としては恋愛が中心に据えられているためかとても読みやすく、
多くの人が手に取りやすいのではないかと思います。しかし個人的には「永遠の0」とか
「ふたつの祖国」とかを是非併せて読んで欲しいと思う。
「二十歳の変奏曲」 稲葉 稔 ★★★
どこからか手に入れた捜査報告書と、捜査関係者および犯人ではないかと
疑われながら自殺してしまった人の周辺に取材を重ねたドキュメンタリー。
これを読む限り、この該当者が犯人なのかなぁとも思いますが、そして
グリコは果たして裏取引に応じたのか、いずれにしても重要な鍵を握ると
思われる人物が自殺してしまっている限り、これ以上明らかになることはな
いのでしょうか。
「捕まったら(その捕まった仲間は)死ぬことになっている」という
「かい人21面相」の言葉を、自ら実行して自殺したのだとしたら、
そして少なくともグリコ・森永事件は、これを読んでも単独犯の犯行
とは思えず、とすれば、事件に係わった人間が多ければ多いほど、
誰かから「漏れる」リスクは格段に上がるはずなのに、いまだに共犯者が
一人も出てこないのは、この結束力はどこからくるのだろうか。
そしてそして。
日本の警察の組織力って、この程度のものなんですかね。つまらない縄張り意識と保秘の名目の
元の情報ブロック。ミスにミスを重ね失態がマスコミに漏れれば弱い立場の者をスケープゴート
に仕立て上げ自殺にまで追い込む。
ひとりひとりは頑張っているのでしょうけれど、組織力としてどうなのか、と。
よく取材しているとは思いますが致命的に文章が。とてもプロの文章とは思えない。
日本語もところどころ引っかかる。
何よりも、取材を重ねてきた著者にとっては自明のことかもしれないが、初めて読む読者に
読ませるための文章になってない。特にプロローグの構成、凝ったつもりかもしれないが
読みにくいだけ。そしてそのあとの構成もなんだわかりにくい。ちょっとびっくりです。
知られていなかった事実を取材を重ねて世に出したという点では一読の価値がありますが、
ドキュメンタリーの質としてはちょっと疑問。勿体ないなぁ。
「グリコ・森永事件「最終報告」真犯人」 森下 香枝 ★★★
疑われながら自殺してしまった人の周辺に取材を重ねたドキュメンタリー。
これを読む限り、この該当者が犯人なのかなぁとも思いますが、そして
グリコは果たして裏取引に応じたのか、いずれにしても重要な鍵を握ると
思われる人物が自殺してしまっている限り、これ以上明らかになることはな
いのでしょうか。
「捕まったら(その捕まった仲間は)死ぬことになっている」という
「かい人21面相」の言葉を、自ら実行して自殺したのだとしたら、
そして少なくともグリコ・森永事件は、これを読んでも単独犯の犯行
とは思えず、とすれば、事件に係わった人間が多ければ多いほど、
誰かから「漏れる」リスクは格段に上がるはずなのに、いまだに共犯者が
一人も出てこないのは、この結束力はどこからくるのだろうか。
そしてそして。
日本の警察の組織力って、この程度のものなんですかね。つまらない縄張り意識と保秘の名目の
元の情報ブロック。ミスにミスを重ね失態がマスコミに漏れれば弱い立場の者をスケープゴート
に仕立て上げ自殺にまで追い込む。
ひとりひとりは頑張っているのでしょうけれど、組織力としてどうなのか、と。
よく取材しているとは思いますが致命的に文章が。とてもプロの文章とは思えない。
日本語もところどころ引っかかる。
何よりも、取材を重ねてきた著者にとっては自明のことかもしれないが、初めて読む読者に
読ませるための文章になってない。特にプロローグの構成、凝ったつもりかもしれないが
読みにくいだけ。そしてそのあとの構成もなんだわかりにくい。ちょっとびっくりです。
知られていなかった事実を取材を重ねて世に出したという点では一読の価値がありますが、
ドキュメンタリーの質としてはちょっと疑問。勿体ないなぁ。
「グリコ・森永事件「最終報告」真犯人」 森下 香枝 ★★★
初めて読みましたが、すごい筆力を持つ書き手ですね。
一人の孤児(少女)が少女から女性へと成長していく過程で、「人間」とか
「罪」とか「世間」、そして「倫理とは」というものを描写しています。
殺人事件も絡んでいるのでミステリなのかもしれませんが、あまり
ミステリには重点を置いていないように感じられます。
何というか、翻訳小説を読んでいるかのような無駄のない文章でありながら
表現はとても詩情豊かで、情景描写が秀逸です。自然や四季の移ろいを美しく
謳いながら、少女から女性へと揺れながら変容を遂げる様子をここまで精密に
描き出している作品は他にあまりないのではないか。
ただ、基本的にシンデレラ・ストーリィというか、少女漫画的甘ったるさを
感じる人もいるであろうと想像され、評価のわかれるところかもしれません。
この作品を含め、「孤児シリーズ」なるものがあと3冊あるようなのですが、連作好き
の私としても読むかどうかはちょっと微妙。この1冊でお腹いっぱいかもしれない。
10代の時に読んでたらかなりハマッたであろうと思います。
「雪の断章」 佐々木 丸美 ★★★★
一人の孤児(少女)が少女から女性へと成長していく過程で、「人間」とか
「罪」とか「世間」、そして「倫理とは」というものを描写しています。
殺人事件も絡んでいるのでミステリなのかもしれませんが、あまり
ミステリには重点を置いていないように感じられます。
何というか、翻訳小説を読んでいるかのような無駄のない文章でありながら
表現はとても詩情豊かで、情景描写が秀逸です。自然や四季の移ろいを美しく
謳いながら、少女から女性へと揺れながら変容を遂げる様子をここまで精密に
描き出している作品は他にあまりないのではないか。
ただ、基本的にシンデレラ・ストーリィというか、少女漫画的甘ったるさを
感じる人もいるであろうと想像され、評価のわかれるところかもしれません。
この作品を含め、「孤児シリーズ」なるものがあと3冊あるようなのですが、連作好き
の私としても読むかどうかはちょっと微妙。この1冊でお腹いっぱいかもしれない。
10代の時に読んでたらかなりハマッたであろうと思います。
「雪の断章」 佐々木 丸美 ★★★★
中学校教師が屋根裏で見つけた手記、それは明治初期、日本にやってきた
イギリス人女性探検家「I・B」の通訳を務めた日本人男性「イトウ」の手に
よるものであった。
しかし手記は前半部分しか残されておらず、彼は「イトウ」の子孫である
女性マンガ原作者を捜し当て、一緒に手記の行方を追う、
というものであります。
この「I・B」と「イトウ」は実在の人物でありますが、そのほかは作者の
フィクションのようですね。
作中に展開されるイトウの手記が素晴らしく、ぐいぐい読ませます。
反発しながらもどうしようもなく「I/B」に惹かれていくイトウの
心情描写が秀逸です。
それと対照的に、現代の展開が軽すぎるように感じるのですが、これは計算なのでしょうか?
正直なところ、現代の展開はちょっと物足りない。
あちこち含みを残したままの終わり方と、構成がなかなか良いと思いますが、なにより、
この題材が素晴らしい。目の付け所がすごい。
自分の人生を生きなさい、というメッセージは真新しいものではないですが、
「おまえ自身の【不可思議な】人生を生きるのだ」というこの【不可思議】が深い味わいと
なって残る作品であります。
「忘却の河」 イトウの恋 ★★★★
イギリス人女性探検家「I・B」の通訳を務めた日本人男性「イトウ」の手に
よるものであった。
しかし手記は前半部分しか残されておらず、彼は「イトウ」の子孫である
女性マンガ原作者を捜し当て、一緒に手記の行方を追う、
というものであります。
この「I・B」と「イトウ」は実在の人物でありますが、そのほかは作者の
フィクションのようですね。
作中に展開されるイトウの手記が素晴らしく、ぐいぐい読ませます。
反発しながらもどうしようもなく「I/B」に惹かれていくイトウの
心情描写が秀逸です。
それと対照的に、現代の展開が軽すぎるように感じるのですが、これは計算なのでしょうか?
正直なところ、現代の展開はちょっと物足りない。
あちこち含みを残したままの終わり方と、構成がなかなか良いと思いますが、なにより、
この題材が素晴らしい。目の付け所がすごい。
自分の人生を生きなさい、というメッセージは真新しいものではないですが、
「おまえ自身の【不可思議な】人生を生きるのだ」というこの【不可思議】が深い味わいと
なって残る作品であります。
「忘却の河」 イトウの恋 ★★★★
不覚にも、この作家を知りませんでした。
読んでいて丸谷才一と似た匂いがするなぁと思ったのですが、
同時代の人のようですね。
この「忘却の河」は連作になっていて、初めは会社社長である父、そして
その長女、次女、妻…と関係者の独白が続いていきます。
「心に幕を下ろし」、「薄紙を挟んだような」家族関係ですが、それぞれが
抱える「心の重荷」が展開されていきます。
それにしても構成が絶妙です。現在と過去とが違和感なく交錯し、
それぞれの章が見事に調和して、そして読後には各章(つまりは各人)の
人生が万華鏡のように反射する。
「罪」「魂」「救い」という重い、結論の出ないテーマを扱っていますが、破綻することもなく
逃げることもなく。久しぶりに「真っ当な小説」を読んだ満足感が残ります。
「忘却の河」 福永 武彦 ★★★★★
読んでいて丸谷才一と似た匂いがするなぁと思ったのですが、
同時代の人のようですね。
この「忘却の河」は連作になっていて、初めは会社社長である父、そして
その長女、次女、妻…と関係者の独白が続いていきます。
「心に幕を下ろし」、「薄紙を挟んだような」家族関係ですが、それぞれが
抱える「心の重荷」が展開されていきます。
それにしても構成が絶妙です。現在と過去とが違和感なく交錯し、
それぞれの章が見事に調和して、そして読後には各章(つまりは各人)の
人生が万華鏡のように反射する。
「罪」「魂」「救い」という重い、結論の出ないテーマを扱っていますが、破綻することもなく
逃げることもなく。久しぶりに「真っ当な小説」を読んだ満足感が残ります。
「忘却の河」 福永 武彦 ★★★★★
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