bookshelf 『風待ちのひと』 伊吹有喜 忍者ブログ
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ab286941.png  帯だか裏表紙だかに「魂の再生の物語」とか(たしか)書いてあって、
 こういう大げさな表現が好きではない私はちょっとなぁと思いながら
 読みました。が、良い作品ですね。

 人生順風満帆だったのにうつ病に罹り、母親の残した実家に静養にやってきた
 サラリーマンと、夏だけこの地にもどってくるワケありの女性と。
 このふたりの触れ合いを中心に、「生きる」ということ、「生き方」という
 もの、そして自分にとって本当に大切なものを見つけていく物語。
 
 このうつ病に罹ったエリートサラリーマンが心の奥底に抱えていたもの、普通
 なら気がつかないふりをして、それどころか本当に気づくことなく終わる人の
 方が圧倒的に多いであろうことを掬い上げているところが見事だと思う。

 女性の人物像が少し都合良すぎるように思わなくもないのだけれど。

 あと、この小説の良いところは、イマドキの小説にしてはめずらしく、
 「じれったいほどになかなか進展しないことろ」だと思う。

 何でも結論を急ぐ風潮の現代。そう簡単に結論の出ない事はもちろん、そもそも結論自体がない
 ことだってたくさんある。「結論のない状態」に耐えながら何かを見つけ出していいくのが
 「大人」ってもんだと思う(今すぐ結論を欲しがる、結論のない状態に耐えられないのが子供だ)。
 そういう意味では確かに「大人の恋愛小説」と言って良いのかもしれない。

 ただやっぱり「魂の再生の物語」というコピーは個人的にはいかがなものかと思う。
 そんなに軽々しく使って言い言葉じゃないし、恋愛ごときで魂は再生なんてしないと私は
 思っているので。


風待ちのひと」 伊吹 有喜 ★★★★
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