bookshelf 社会(学) 忍者ブログ
本はごはん。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

32280671.JPG.jpeg  日本に駐在していたロシア人新聞記者による「日本人論」です。

 もっとステレオタイプで的外れな日本人論かと思っていましたが、社会学者
 ではなく、文化人類学者でもないにも関わらず著者の観察眼はとても鋭く、
 かつ暖かい。

 日本書紀の神話の説明から構造を解き明かそうとしていたり、とても勉強も
 したように見受けます。

 初出が1971年らしいので、現代の目から見ると変わってしまった部分も
 ありますし、「ちょっとそれは考えすぎでは…」と思う部分も全くないわけ
 ではありませんが、例えば、

 【日本人の言動や意識など全ての根本には、日本人独特の「美意識」が横たわっている】(要約)

 など、ううむ。と唸らせる指摘/分析も少なくありません。

 また、日本について書かれた様々な「日本論」「日本人論」からの引用も豊富で、既に紹介され
 ている日本(人)論+彼の目で見た、感じた日本(人)論と、厚みのある展開がなされています。

 前述したとおり、表面的な生活スタイルや行動様式はこの40年弱のあいだでずいぶんと変わっ
 てしまいましたが、彼が考察した日本人の「精神」(外国人からすると摩訶不思議としか言い
 ようがないらしいですが)、それはあまり変わっていないのかもしれません。

 彼も言うように、表面的なスタイルが変わっても、2000年かけて培ってきた「美意識」は
 そう簡単には変わらないものなのでしょうし、「変わらずに変わっていく」というところが
 日本人の最大の強みなのかもしれません。


一枝の桜―日本人とはなにか」 フセワロード オフチンニコフ ★★★★
PR
416660340X.jpg  イスラム教という宗教、そしてその世界の生活様式については全く知識がなく
 果たしてそんな状態でこの本を読んで面白いだろうかと多少不安にも思った
 のですが、そんな心配はまったく杞憂でとても興味深い本でありました。

 「妻は4人まで娶ることができる」。これは私から見れば限りなく悪法である
 と思っていましたが、この発想はそもそも、
 「それまで無限に妻を迎えることができたが、4人までに【制限】した」
 ものであるとか、

 全身黒ずくめで目だけ出しているあの女性の衣装、あれもそもそもは
 上流階級の婦人が大衆に姿を見せないため、また他部族から自分の部族の
 女性達を守るためのものであったとか、なるほどと思うものばかりで
 そういう決まりができたのにはそれなりの理由があったのですね。

 しかしそれらのそもそもの「理由」となった原因が解消、もしくは緩和されつつある現代でも
 その「掟」だけが残り、そもそもの理由とは違った意味づけをされて「利用」されている
 ようにも感じます。

 つまり本来の意味が薄れ、その制度が手段として使われるようになってきているのではないか、と。
 
 興味深く思ったのは「国の成熟度はその国の女性の教育の度合い、成熟の度合いに比例する」
 みたいな表現があって、たしかに西洋でも日本でも女性の地位が男性と同等になったのは比較的
 最近の話だし、

 宗教や地域に限らず、女性というのは「半人前」的な扱いをされてきたことが多いことを
 考えると、国の成熟度と女性の自立度というのでしょうか、それは関連していると考える
 こともできるのでしょう。

 しかし「国の成熟度」とは何で測るのか。
 旧来のイスラムの価値観と、日本を含めた西側の価値観とでは相当に異なることは間違いない
 とおもいます。

 そのほか女子割礼や古今のプリンセスの波乱の人生など盛りだくさんですが、
 同じ時代に同じ女性に生まれながら、場所によってこれほどまでに違ってしまうものかと
 驚愕もする本であります。

 それにしても。

 「女子割礼を受け入れることによって教育を受けさせてほしいとか、結婚後も働かせてほしい
  という交渉の切り札として使う」

 というのは、したたかと言うよりも、何とも哀しいと思いました。


イスラーム世界の女性たち」 白須 英子 ★★★★
135119.jpg  いうならば京都と東京の比較文化論、でしょうか。

 近年ではどの地方都市もだいたい同じような店が並び、さほど違いはないのでは
 ないかと思ってしまいますが、「ケンミンショー」(かなりお気に入りの番組)
 を観ても、やはり地域ごとの特徴はあるわけで。

 この本は「京都」と「東京」を比較分解していますが、いちいちおもしろい。
 著者は京都大好きであるらしいけれど、京都もしくは東京のどちらかに肩入れ
 するのではなく、どちらのいいところもちょっとなぁ…というところも指摘
 しています。

 そしてそのような文化の背景についての著者の解説も、なるほどなぁと思うところが多く。

 それにしても、名古屋のゴージャスな結婚式や北海道の会費制結婚式については結構耳にする
 ことも多いですが、京都女性の嫁入りの際の儀礼にに則ったやりとりに、
 ああなんと大変なことだなぁと思う私は、やっぱり東女なんでしょう。


都と京」 酒井 順子 ★★★
9784166606801.jpg  この本のタイトルを見た正直なところは、「また新語か…」でありました。

 言葉というものは不思議なモノで、例えば「多重人格」という症例が一般に
 認知されると多重人格患者が爆発的に発生するみたいなことがあって、その
 そもそもの認知は「言葉」であり「命名」であったりするわけで、なんというか
 こう負を誘発してしまう危険も孕んでいるのではないかと思ったりするのです。
 (「プチ鬱」なんてその最たるモノではないかと)。

 まあそれはいいのですが。
 タイトルにある「アベンジャー」とは、「復讐者」という意味だそうです。
 自分の不運や孤独を家庭や学校や職場や社会といった他者に責任転嫁し、
 秋葉原事件などをはじめとする数々の通り魔大量殺人のような方法で『復讐を遂げる』。

 何故そこにまで至ってしまうのか『環境』『個人』とわけて丁寧に考察されています。

 昨今の「派遣切り」などに代表される労働条件の悪化など、環境の変化ばかりあげつらうのでは
 なく、「共感性、想像力、忍耐力、葛藤処理能力の低下」など、個人が未成熟化してきている
 現状もきちんと指摘されています。

 著者の言う「自己愛型社会」、まったく現代社会はそうだとおもうのですが、それはマズローの
 5段階欲求理論の最高次の「自己実現欲求」の段階に、少なくとも先進国は到達したという
 ことなんでしょう。

 それなのに、それが人間の根本を脅かすような状況を創り出している皮肉な現状は、
 それを資本主義によって手に入れたからなんでしょうか。

 オーストラリアの経済学者、クライブ・ハミルトン氏

 「経済成長神話(=市場経済)は必ずしも人を幸せにしない」

 という説を思い出します。

 彼は、

 「過剰な消費を止めて、家族やコミュニティと関わることにって得られる幸せを求めよう」

 とも言っていますが、この自己愛型社会、本当の愛とか幸せを既に見失い、
 薄っぺらい満足を「消費」することでなんとか不安定な自己を支えている状況
 (著者の言うところの「人間の根幹に関わる部分まで市場経済に支配されている」)
 のなかで、果たして人間は本来の人間を取り戻すことができるのでしょうか。


アベンジャー型犯罪―秋葉原事件は警告する」 岡田 尊司 ★★★★★
6031710.gif  ひさしぶりに「うえちづ」先生です。
 相変わらずきちんとデータを整理した上で理論的に展開しているので
 読みやすい。
 20年前、時間とお金にそこそこの余裕を持つ主婦たちが、ネットワークを
 活かしてさまざまな地域活動などをしていた当時の検証レポートと併せて、
 当時うえちづが予測した20年後と今の「現実」も比較しています。

 その活動のひとつの重要な資源となったネットワークを、著者は「女縁」
 と名付けています。地縁でも血縁でもない「女縁」。この縁(ネットワーク)
 を活かして、主婦は「家庭」から飛び出し、自己実現を図っていったという
 ことなんでしょう。

 しかし、あれです。論旨とか検証結果はよくわかるんですが、判らない。
 何が判らないって、自分にこういう価値観がないから判らない。生活費やら
 子供の教育費やらは全て夫の稼ぎに頼り、自分は働かず(働いても女縁活動費の数万円)
 「勉強会」やら「朗読会」やら。そして夫が定年になると邪魔者扱い。

 どうも「高収入の夫」を持ち働く必要はなく、しかし「自己実現」のために活動する資金は
 夫の収入には頼りたくない。でも誰でも出来る単純作業で時給も安い「パート」なんか
 したくはないし、「ピアノの先生」とか「翻訳」とか、ちょっと知的で効率よくお小遣い稼ぎ
 をしながら地域活動などに打ち込むアクティブな「主婦」、ではなくて「いち女性」、と
 いうのが目指すところみたいに見えます。

 いやまあ、夫も仕事を口実に家庭では生活無能力者になるパターンもあるようですから
 お互い様なのかも知れません。「勉強会」なんかも、地域の福祉面や教育面の向上に繋がる
 ケースもあるみたいだし、一概に全てを否定するつもりはありませんが。

 しかし。いちばん不思議なんですが、なんで夫婦で一緒に遊ばないんでしょうか?
 もちろん別々の趣味を持っているとは思いますがどうして「いつも」別々に遊ぶんでしょうか?
 いちばん何でも話せる相手というのは、夫(もしくは妻)ではないんでしょうか?
 こんなこと言ってるから私はいまだに…?
 

 「「女縁」を生きた女たち」 上野 千鶴子 ★★★
32052652.JPG  社会学関連の本が30冊紹介されていますが、
 これは社会学の入門書としてもかなり秀逸なのではないでしょうか。

 とりあげられている30冊いずれも、導入部分がとても見事です。
 時には著者の個人的な体験であったり、時には原著が刊行された当時の日本の
 風俗や情勢であったり、そういったところから原著のテーマへするりと入って
 いきます。

 また、どの原著も濃い内容かつ厚い本だと思うのですが、(エッセンスだけとは
 いえ)数ページにサマライズされているのには驚きました。
 きっぱりすっきりしていますね。すごいなぁ。

 マルクスから現代の社会学者まで、そうそうたるラインナップで、
 原著に当たりたいなぁとおもった本をいくつか発見できましたが、これは
 著者の思惑通りですね。


 「社会学の名著30 」 竹内 洋 ★★★★
31004395.JPG<br />  偶然なんですけどもね。なんでこうも似たようなテーマの本が
 続くんでしょうか。
 意識して選んでるわけではないのに。ジャンルは全く違うというのに。
 まあ、今に始まったことではないですが。

 イスラエル人の研究者が、5年ほどヤクザにみっちりつきあって書いた本
 らしいです。
 私はてっきり、「ヤクザの内実」を「外国人の眼」から見た、
 もっとエンタテインメント系の本だと思っていたのですが。

 頭からいきなり「自己」と「他者」ですよ。
 「自己とは実は実体ではなく、結局は行為の連続的プロセスに過ぎない」
 ですよ。
 「免疫」も「ヤクザ」でも、同じこと言ってますよ。
 どうやら私はもうしばらく、「自己」と「他者(非自己)」について
 考えなければならないらしい。

 明確な基準をもたない日本社会において、「逸脱」はその行為そのものによってではなく、
 その行為を社会がどう受け止めるかによって決まる。曖昧ですからね、日本人は。
 つまりこの本は、日本文化論でもあるのです。

 それから、マスメディアがこんなふうになっちゃったのは、社会が複雑化したから
 仕方ないんでしょうか?
 昨今の「後期高齢者なんとやら」でも強く感じたのですが、「マスメディア」と「ジャーナリズム」
 の混同が激しいというか、「報道」の「エンタテインメント化」や「世論誘導」は罪悪だと
 思うんだがなぁ。
 もちろん、自分で情報を収集し取捨選択し、自分の頭で考えることを放棄してメディアに
 流される「個人」ももっと問題ですが。

 それにしても。
 なんと。
 ヤクザの機関誌があるらしいんですよ!

 読みたい読みたい読みたい読みたい読みたい。


ヤクザの文化人類学」 ヤコブ・ラズ ★★★★
02148558.jpg  いやもう面白いの何のって。

 サラリーマンの三大不良債権のひとつとまで言われている「専業主婦」に
 関する様々な論説がいっぺんに読めます(夫の溜息も)。
 (サラリーマンの三大不良債権=マイホーム、子供、専業主婦、らしい)

 中には、「子供の健やかな成長のために主婦は家庭にいるべき
 (=専業主婦たるべき)で、健全で明るく楽しい家庭を築くために、
 主婦はなるべく外出も控えよう」って、おいおいオッサンそんなこと
 言って大丈夫なのこれって3〜40年前に書かれたヤツかしらと思って

 文末見たらなんと1998年でしかも(現在はわかんないけど)当時
 れっきとした大学の教授で、

 さらにこれにとどまらず、「私の説に反論する権利があるのは、公共の場で自説を展開し
 明確にしている人のみ」と、もうこれでもかこれでもかでのけぞりまくったり、

 専業主婦国家謀略論を叫ぶひともいれば、経済面から分析する人もいて石原里紗氏の例の
 「ふざけんな専業主婦!」も入ってるし、結構楽しめます。

 個人的には山田昌弘氏の分析が実情に近いんじゃないかと思います。
 しかしいつも思うんですが、世間の「専業主婦」ってくくり方自体が、相当乱暴なんじゃ
 ないんですかね。


夫と妻のための新・専業主婦論争 」 中公新書ラクレ編集部 ★★★
16773601.jpg  「パラサイト・シングル」で議論を巻き起こした社会学者の山田先生が、
 ペットについて書いているのでちょっとびっくりしたんですが、
 よく考えてみれば「家族社会学」にペットはもう必須のものかも知れません。

 あまり目新しい論旨はないんですが、ペットは学者をもメロメロにした
 というところが面白かったというか、彼はそれがいちばん
 言いたかったのかも。



 「家族ペット―ダンナよりもペットが大切」 山田 昌弘 ★★★
bar code.
search.
※ 忍者ブログ ※ [PR]
 ※
Writer 【もなか】  Powered by NinjaBlog