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本はごはん。
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b368f385.png  遙か昔、児島襄の「東京裁判」を読んだことがあるのだけれど
 もう記憶も定かではないので読んでみる。

 東京裁判の全容を上手く纏めたダイジェスト版、という感じです。全体を
 さらいたい場合にはいいかもしれません。が、詳細を深掘りしたい場合は
 更に他の本にあたる必要があります。

 裁判自体がかなり不公正であったことは明記されています。それは例えば、
 和解済み決着済みであったはずの過去の事件まで裁判対象とされたり、

 なにより事後法を適用するなど、また裁判官(つまりは戦勝国)側の
 感情的な理論なども、まったく読んでいて気分の良いものではないですが、
 知っておくべきことなのだと思います。

 1点引っかかるのは、「不公正な裁判であったが、この裁判によって明らかになった事件
 (南京大虐殺など)があるのだから、評価できる」という著者の意見。

 確かに裁判によって明らかになった事件があることは事実だと思います。が、事実を明らかに
 するために誰かの権利が犠牲となるのはおかしいんじゃないか。
 事実が明らかになったからといって、不公正な裁判を認めるわけにはいかないんじゃないか。
 あくまで公正な裁判をしつつ、事実を明らかにしていくべきなんじゃないかと、
 理想論だと言われようとなんだろうと、そう思うんですけれどね。


東京裁判の全貌」 平塚 柾緒 ★★★
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34ba52c9.png  長崎への原爆投下翌日、捕虜となっていた米兵B29戦闘員を上官の命令に
 より処刑(斬首)。当時、上官の命令に背くことなど考えられなかったとは
 いえ、死刑をおそれ逃亡した兵士の手記を元にしたノンフィクションです。

 逃亡中であり、発見されないためには勤勉に働くしかないという意識も働いた
 のでしょうが、この時代の人の勤勉さ、几帳面さ、誠実さには驚きます。
 そして手記からうかがい知れるのは観察眼の鋭さ。
 つまり頭のいい人だったのでしょう。

 辛い仕事に耐え、周りからの厚い信頼を勝ち取りながらも、同胞の裁判結果に
 一喜一憂し、いつ発見されるか恐怖と孤独との戦いの日々が、緻密に綴られて
 います。

 それにしても、東京裁判の理不尽さが際だちます。もちろん中には被告
 (日本人)に心を砕いた米国人弁護士なども居たようですが、非戦闘員の
 大量虐殺(当時の国際法でも認められていない)行為を棚に上げた裁判。

 戦争に向かって突き進んでしまった当時の日本の指導者たちの罪はもちろん裁かれるべきことでは
 ありますが、東京裁判は果たして裁判たり得たのか。

 この逃亡兵は陸軍中野学校の出身で、その経験が逃亡生活での彼の言動にも影響しているという
 記述があり、興味があります。陸軍中野学校関連、探してみることにします。


逃亡「油山事件」戦犯告白録」 小林 弘忠 ★★★★
276693-2-1.png  終戦直後、米兵にレイプされた母親から生まれ落ち孤児院
 (エリザベスサンダースホーム)で育ち、養子としてアメリカに渡り、
 ベトナム戦争にてわずか22歳でその生涯を閉じた一人の日本人の生涯です
 (大学進学時にアメリカに帰化していますが)。

 アメリカに渡ってから彼は、人一倍の努力で野球やフットボールの選手と
 して活躍しますが一方で、

 親切にしてくれる養子先の家族や友人たちの暖かい愛情を充分判って
 いながらもそれでも求めてしまう実の母親やゆるぎない自分の居場所。

 心に抱えたものは決して小さくはないはずなのに、明るく前を向いて
 生きていく強さに心を打たれます。

 出自が出自であるだけに、自分の存在価値を常に周りに提示することでしか自分の存在を
 許して貰えないと思い込んでいた彼が、成長して愛する人と家庭を築くことで、本当の自分の
 居場所を創り上げるという機会を得ることが出来なかったことが本当に残念だと思います。

 構成が素晴らしく、丁寧で読みやすい文章と共にぐいぐい読ませます。
 国境や人種を越えて共通して存在する悪意(差別)もあるけれど、同じように
 国境や人種を越えて存在する「想い」というものを忘れてはいけないと思いました。


ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ」 面高 直子 ★★★★★
205307.jpg  ずいぶん前に、本人の著作である「流転の王妃の昭和史」を読んだことが
 ありますが、第三者の目から書かれた本書を読んでみます。

 国家を挙げての政略結婚とも言える、満州国皇帝溥儀の弟、溥潔に嫁いだ
 皇族とも縁続きの良家のお嬢様の波瀾万丈の人生ですが、それにしても
 なんとも美しい人ですね。

 彼女の波乱の人生に思いを馳せるとき、どうしても同時に思い起こされる
 のは彼女の長女、慧生の人生です。

 学習院大学の同級生であるボーイフレンドと天城山で自殺してしまいますが、
 果たしてこれは「心中」だったのか、それもと男性側による「無理心中」
 だったのか。

 真相を知ることはもちろんできませんが、ここに引用されている慧生が男性に宛てた手紙を
 読むと、彼女も孤独だったのだな、と思う。

 恐らく子供時代がなかったんじゃないだろうか。浩自身も「手のかからないとてもよい子」で
 あったと回想しているが、それは「子供らしくない子」ということとイコールだ。

 「子供らしい子供時代」を持てなかった子供は、生き急ぐと同時に、自分の中に着々と
 孤独を育んでしまう。ふくれあがる「孤独」はいつも、出口を切望して止まない。
 ボーイフレンドと出会った彼女は、一気に「出口」めがけてなだれ込んでしまったのではないか。

 しかし一方で、「孤独」+「恋」=「心中」という方程式が、どうしても彼女にしっくり
 来ないのも事実で。(心中を覚悟した手紙がありますが、それをもってして「心中」だとも
  言い切れないと思うのです)。

 母親の浩は、終戦後2年間も慧生の妹、嫮生をつれて中国の牢獄を転々としなければならず
 (慧生は日本にいた)、やっとの思いで帰国したものの戦後の日本を生き抜くのに精一杯、
 父親はソ連に拘留中とあっては、慧生がこれだけの孤独を抱え込んでしまったことについて、
 誰も責められるものではなく、陳腐な言葉ではあるけれど、時代に翻弄された一家、という
 ことに尽きるのかもしれません。

 唯一の掬いは、晩年の溥潔と浩が仲むつまじく暮らしたということと、妹の嫮生が幸せな
 家庭を築いたということですが、その幸せを手に入れるまでに受けなければならなかった
 試練の多さに、呆然としてしまいます。


愛新覚羅浩の生涯―昭和の貴婦人」 渡辺 みどり ★★★
9784167219284.jpg  戦争体験記ですが、ちょっと変わっています。

 著者は、父親が銀行や証券会社を経営し、麹町一番町という一等地に住み
 (近隣は首相やらフォード日本支社長などのお家)、暁星に通うという
 いわゆる良家の子息で、戦争中もあまり食べ物に困ったりはしなかった
 ようです。

 一方で、というかだから、というのか、箱根に居住していたドイツ軍兵士
 たちとの交流(なんとこのドイツ兵たちは、宮ノ下の駅からアメリカの
 戦闘機を銃撃した)や、B29の上に日本の戦闘機が馬乗りになった話など、

 「え、そんなことあったの?」と思うような、あまり耳にしたことの
 ない話がたくさんあります。

 そして戦時中であろうが非常時であろうが、青年は恋をする。
 恋をしながら、時には無気力になりながら、戦後の混乱期を生きていく成長譚でもあります。

 全く古くささを感じさせず、読みやすい本でもあります。
 こういう立場の人による戦争体験記はあまりないと思うので、いろんな意味で戦争の意外な
 一面を知ることができると思います。


歩調取れ、前へ! ―フカダ少年の戦争と恋 」 深田 祐介 ★★★★
9784480688323.jpg  昭和16年の真珠湾攻撃から同20年の終戦まで、終戦当時15歳だった
 少年の目に映った戦争というものが描かれています。

 当時の大人達の言動、日々変わっていく日常、そしてどんどんすさんでいく
 人心などが、著者の個人的思いはむしろ控えめに、淡々とやさしい言葉で
 綴られています。

 著者が住んでいた向島近辺、つまり下町一帯は東京大空襲でターゲットにされた
 場所で、その時のリアルな記述は、それが現実に起きたことであると言うことが
 にわかには信じがたいほどです。

 ほんとにやさしい言葉で書かれているので、中学生でも充分読めると思いますし、
 読んで欲しいと思います。こういうことを「なかったこと」にして「見ないで」
 生きていくこともできますしそのほうが楽かもしれません。

 でも、知るべきだと、知らなければならないと思うのです。


15歳の東京大空襲」 半藤 一利 ★★★★
135281.jpg  硫黄島の総指揮官として、5日で陥落できると思っていた米軍の攻撃に
 36日間耐え続けた栗原忠道の素顔に迫っています。

 戦記物は得てして、戦場でのその人であったり、または英雄的に描き上げ
 られてしまったりと、「軍人」としての描かれ方が中心で、「個人」、
 「そのひとそのもの」に迫るものは以外と少ないと感じていましたが、

 この本は戦場で彼とともにあった人々の証言はもちろん、故人の多数の
 書簡から、栗原忠道という人を公私両面から描き出しています。

 「名誉の自決」だの「美学」などという美辞麗句にに逃げず、現実を正面
 から受け止め、信念をもって決断を下し実行する。それは、「玉砕禁止」
 など、一見兵士にとっても良いことであるかのように感じますが、

 水も食料もなく、硫黄や屍臭の充満する地下壕でただひたすら反撃の時を待つという、
 玉砕よりも更に厳しい「生」を強いるものであり、そして彼は常にその先頭に立ち続けた
 厳しさを持つ一方、

 家族に宛てた多数の書簡の中には、家族のアカギレや台所のすきま風などについて、実に
 愛情細やかに案じており、

 本当の優しさというのは、(哀しみを)引き受ける覚悟と強さを持った人しか持ち得ない
 のではないか、そしてその優しさがまたその人を強くするのではないか、そんな風に思えて
 きます。

 大本営のダメさ具合については大抵の第二次世界大戦検証本に書かれていますが、それに
 してもどーしようもないですね日本という国は。そしてじゃあ今現在、この途方もない犠牲を
 活かせているのかと考えれば、あまり変わってないように思うのは私だけでしょうか?

 丁寧な取材を積み重ね、構成も巧みでルポルタージュとしても秀逸だと思います。


散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道」 梯 久美子 ★★★★★
86310009.jpg  男装の麗人、川島芳子の生涯を追っています。

 残念ながら新事実の発見はありません。もう出尽くしてまっているので
 しょうし、今世に出ていない真実は、きっとそのまま歴史に埋もれて
 いくのでしょう。

 これは好みの問題だと思うのですが。
 ノンフィクションなのだろうとおもうのですが、川島芳子とつかず離れずの
 距離にいて、彼女の生涯をその目で見てきたという「謎の老人」が登場し、
 問わず語りのように川島のことを語っていきますが、

 この老人が実在の人なのかそれとも構成上の演出なのかよくわからない。
 恐らく演出なのだろうと思うのですが、ノンフィクションにこういう演出は
 あんまり私は好みではないし、

 もし実在の人物であればその立場を明確にしていただかないと、その発言を
 何とも評価できないし。

 最後に山口淑子が語った川島芳子がとても印象的です。
 現実に彼女たちの運命を分けたのは1枚の「戸籍」という紙でしたが、
 やっぱり本当は「血」だったんじゃないかと、血に逆らった生き方ができなかったから
 なんじゃないかと、そんなふうに思いました。


清朝十四王女―川島芳子の生涯」 林 えり子 ★★★
03033503.jpg  終戦直後、樺太の9人の女性電話交換手が、青酸カリを服毒して
 自決してしまった事件を丹念に追っています。

 日本の敗戦が誰の目にも明らかになった8月8日にロシアが参戦。
 8月15日日本はポツダム宣言を受諾、終戦、
 にもかかわらず8月20日、日本の北方地域侵略目的でロシアは進軍。
 攻撃と掠奪の限りを尽くすロシア。
 反撃して(それは自衛のためであったようですが)やたら戦禍を拡大して
 しまう日本軍。

 女性たちには職場死守だの「決死隊」だの言いながら、緊急事態に自宅から
 徒歩数分の職場に出勤もせず、女性たちを残して逃走してしまう上層部。
 さらに戦後、その上層部が書いた手記は、自己の保身のための虚言だらけ。

 こんな状況で自決してしまった女性たちには「かわいそう」なんて言葉は生やさしすぎます。

 しかし改めて思うのは、教育の恐ろしさです。
 ヒトラーも羨んだという戦前の日本の皇国一致体制は、幼いときからの刷り込み教育が
 大きな要因のひとつだったと思いますが、

 同胞がひとりまたひとりと青酸カリを煽って次々と倒れていく中、他局との通信回線を開け
 「どうすればいいのかわかりません。指示をおねがいします」と、自分の命に対して
 指示を仰ぐ悲痛な叫びを残して自決してしまった彼女たち。

 命のありかたや生きる力を教えないで、何が教育なんでしょうか。


 「永訣の朝 」 川嶋 康男 ★★★★★
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