bookshelf 『群青に沈め』 熊谷達也 忍者ブログ
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0de353b7.png  「熊谷達也」が著した「特攻もの」。
 この組み合わせで期待せずには居られようか。…しかし。

 特攻と言えば零戦、そして回天をすぐに思い出しますが、あまり知られて
 いない「伏龍」をメインに持ってきたのはすごく良いと思います。
 
 伏龍とは、機雷をつけた棒を持って海中に潜み、敵の船がやってきたら機雷を
 爆発させる特攻ですが、機雷を爆発させた本人はもちろん、周りに展開して
 いる特攻仲間も爆死するというとんでもないものです。

 飛行機乗りを目指して予科練へ行ったものの戦況の悪化、飛行機不足でこの
 伏龍部隊に配属された若者が主人公です。

 軍隊の理不尽さ、不利な戦況、特攻で死ぬ事への迷い、不安、恐怖。
 そういった事々が丁寧に描写されているあたりはさすがに熊谷達也。しかし。

 若い世代の人たちにも読んで欲しいという意図からかもしれませんが、主人公があの時代の人に
 してはちょっと幼すぎる感が否めません。特に主人公の胸中を描きこんだ様々な場面は、まるで
 「今時の若者」です。
 
 確かにあの時代の青年達にも青年らしい感情はあったと思うのですが、それにしてもあまりにも
 薄っぺらい。時代が戦争へと、否応なく「死」を、それも自ら選んだ死を見据えた短い生を
 生きざるを得なかった彼らの、怒り、哀しみ、苦悩、願い、祈りは、もっともっと深いもので
 あったと思うし、それを描き出して欲しかった。
 
 なんというか、判りやすく今時風に表現するとなるとこうなるのかもしれませんが、それは
 ちょっと違うんじゃないか。彼らの心理を出来る限り忖度してそのまま表現するべきじゃ
 ないのか。それを知るべきなんじゃないか、たとえ小説だとしても、と、私は思う。

 それは恐らく今の一般的な心理では理解できない部分もあるんだと思うけれど、それが「戦争」
 というものなんじゃないか、つまりは彼らの「生」というものをもっと真正面から描き出して
 欲しかったと思う。

 好きな作家だけに、ちょっと残念。
 青春小説だと思えばいいのかもしれませんが。

群青に沈め」 熊谷 達也 ★★★
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