bookshelf 『月読』 太田忠司 忍者ブログ
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cdda9061.png  ミステリ、ですね。

 パラレル・ワールドと言って良いのかな。
 この小説の世界は、我々が住む世界ほどには宇宙開発技術やIT関連技術は
 進んでいないようですが、そのかわりと言って良いのか、
 「月導」と「月読」というものあがあります。
  
 「月導」とは、死んだ人が残した「想い」のようなもの。人によって、
 オブジェや絵画になったり、また匂いや風になったりするようです。
 そして「月読」は、その「月導」を、死んだ人が残した最期の想いを
 読む人です。

 婦女暴行事件や殺人事件、高校生たちが抱えた親子関係に関する葛藤、
 そして「月読」。

 ミステリだからなのか、若干、事件が多すぎるような気がしないでもない。
 多くの事件が最期に全部繋がってぱたぱた解決ちゃうと、「都合良すぎ」になるリスクがある
 けれど、それを直前で上手く回避していると思う。

 同時に、高校生達が抱える「所在なさ」みたいなものや、「そこに意味なんてあるのか」
 という命題を上手く絡めていると思います。
     
 「意味、なし」と言い続け、同級生の自殺にも興味を示さなかった高校生が最期に月読に
 自殺した同級生の月導を読んで欲しいと頼みます。つまり、意味を知ろうとします。
 彼の死を受け止められるかどうかはわからないけれど、それでも意味を知ろうとするまでに、
 彼は事件を通して成長したという事なのでしょう。
  
 「月読」が万能ではないところ、そして死んだ人が最後に残したメッセージが必ずしも
 残された人にとって納得できるものばかりではない(それは借金から逃げ出した挙げ句の死
 であるのに、残してきた妻子の事ではなく猫のことを心配していたりなど)、というところが
 秀逸だと思います。

 続編があるらしいのでそちらも楽しみです。


月読」 太田 忠司 ★★★★
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