bookshelf 『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道』 梯久美子 忍者ブログ
本はごはん。
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135281.jpg  硫黄島の総指揮官として、5日で陥落できると思っていた米軍の攻撃に
 36日間耐え続けた栗原忠道の素顔に迫っています。

 戦記物は得てして、戦場でのその人であったり、または英雄的に描き上げ
 られてしまったりと、「軍人」としての描かれ方が中心で、「個人」、
 「そのひとそのもの」に迫るものは以外と少ないと感じていましたが、

 この本は戦場で彼とともにあった人々の証言はもちろん、故人の多数の
 書簡から、栗原忠道という人を公私両面から描き出しています。

 「名誉の自決」だの「美学」などという美辞麗句にに逃げず、現実を正面
 から受け止め、信念をもって決断を下し実行する。それは、「玉砕禁止」
 など、一見兵士にとっても良いことであるかのように感じますが、

 水も食料もなく、硫黄や屍臭の充満する地下壕でただひたすら反撃の時を待つという、
 玉砕よりも更に厳しい「生」を強いるものであり、そして彼は常にその先頭に立ち続けた
 厳しさを持つ一方、

 家族に宛てた多数の書簡の中には、家族のアカギレや台所のすきま風などについて、実に
 愛情細やかに案じており、

 本当の優しさというのは、(哀しみを)引き受ける覚悟と強さを持った人しか持ち得ない
 のではないか、そしてその優しさがまたその人を強くするのではないか、そんな風に思えて
 きます。

 大本営のダメさ具合については大抵の第二次世界大戦検証本に書かれていますが、それに
 してもどーしようもないですね日本という国は。そしてじゃあ今現在、この途方もない犠牲を
 活かせているのかと考えれば、あまり変わってないように思うのは私だけでしょうか?

 丁寧な取材を積み重ね、構成も巧みでルポルタージュとしても秀逸だと思います。


散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道」 梯 久美子 ★★★★★
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