bookshelf 『凶悪―ある死刑囚の告発』 「新潮45」編集部 忍者ブログ
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123918.jpg  確かに「事実は小説より奇なり」とは言いますが。

 以前、死刑判決がおりた元ヤクザが、獄中から、自殺や事故として処理され
 ていた事案が実は殺人事件であったとして告発したーということがあった
 のは確かに覚えています。
 その一連の事件の「当事者」によるノンフィクションです。

 「当事者」とは新潮45の編集者で、死刑囚から事件を告白され、ウラを取り、
 警察にもレポートを提出して動かし、雑誌に掲載するという一連まで、
 そしてその後の裁判、判決までも追っています。

 借金でどうにもならなくなっている人を、事故または自殺に見せかけて殺し、
 保険金や不動産を手に入れるーそれも何度も。

 そしてどれも「事件」としては扱われておらず、解剖すらされていなかった
 ケースもあるという現実。

 闇に葬られてしまった事件というのも、まだ結構あるのかもしれません。

 既にジャーナリズムは死んでしまった(と私は思っています)が、マスコミにはまだこういう
 役割が残っているのだなぁ、とも思いました。

 著者はあとがきで「ジャーナリズムは死なない」と言っていますが、一方で報道調整やら
 世論誘導やらに手を染めている限り無理でしょう。

 そして何よりも、このケースはマスコミがその能力を最大限発揮し成果を出せた
 「非常に上手くいったケース」ですが、そうでない「無辜の人」にその能力が凶器となって
 襲いかかる可能性とその制御について触れられていないのが残念です。


凶悪―ある死刑囚の告発」 「新潮45」編集部 ★★★★
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