本はごはん。
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「夜空のむこう」に引き続き、香納諒一先生です。
なんというんでしょうか。「夜空のむこう」も、この
「タンポポの雪が降ってた」も、とくにものすごい展開があるわけじゃ
ないんですが、何とも質が良い短編集であります。
この著者の作品は、未だ上記の2冊しか読んでない(「ハードボイルド・
ミステリー」で有名な著者のようですが、そっち系の作品は全く未読)
ので言い切れないのですけども、
この著者のテーマは「孤独」なのかなと思いました。
誰にでも「孤独」はつきものですが、そしてその「孤独」のとらえ方や
あり方は人それぞれで、
そして同じ人でもその時々によって、つまりは年を重ねていく毎に
抱える「孤独」は変わっていくものであり、その「孤独」との対峙の仕方が
その人の生き方でもあったりするのだと思います。
この短編集の中には「回想」ものがいくつか収められていますが、「回想」とはつまり
自分が「孤独」とどのようにつきあってきたかを検証する作業でもあるのかも。
作品の中にもちらりと出てきますが、若い時分の「孤独」は、何よりも「残酷さ」と密接ですね。
若さ故の怖いモノ知らず、傲慢さ、積極性なんかが背後にあったんだろうなぁとしみじみ
思いました。
「タンポポの雪が降ってた」 香納 諒一 ★★★
なんというんでしょうか。「夜空のむこう」も、この
「タンポポの雪が降ってた」も、とくにものすごい展開があるわけじゃ
ないんですが、何とも質が良い短編集であります。
この著者の作品は、未だ上記の2冊しか読んでない(「ハードボイルド・
ミステリー」で有名な著者のようですが、そっち系の作品は全く未読)
ので言い切れないのですけども、
この著者のテーマは「孤独」なのかなと思いました。
誰にでも「孤独」はつきものですが、そしてその「孤独」のとらえ方や
あり方は人それぞれで、
そして同じ人でもその時々によって、つまりは年を重ねていく毎に
抱える「孤独」は変わっていくものであり、その「孤独」との対峙の仕方が
その人の生き方でもあったりするのだと思います。
この短編集の中には「回想」ものがいくつか収められていますが、「回想」とはつまり
自分が「孤独」とどのようにつきあってきたかを検証する作業でもあるのかも。
作品の中にもちらりと出てきますが、若い時分の「孤独」は、何よりも「残酷さ」と密接ですね。
若さ故の怖いモノ知らず、傲慢さ、積極性なんかが背後にあったんだろうなぁとしみじみ
思いました。
「タンポポの雪が降ってた」 香納 諒一 ★★★
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ミステリーのカテゴリに入るらしいんですが、これはミステリーの
体裁を借りた人間関係論だと思いました。
戦後まもなく自殺した作家の、自殺に至るまでの手記はなかなか圧巻です。
これ自体がかなり面白い。
この作家を自殺に追い込んだ「巨大な悪意」の謎を解くことになって
しまった国文学者も、その作家の人生とシンクロするように
「見えない悪意」に翻弄されていきます。
なかなか構成もよく練られているし、ぐいぐい読ませるんですが、後半、
二転三転していく過程で「これはちょっと説得力に欠けるなぁ」とか
「これはそんな簡単に信じないよね」とか、ちょっと強引なところがあって
すこし残念な感じ。悪くないんですけどね。
「追憶のかけら」 貫井 徳郎 ★★★
体裁を借りた人間関係論だと思いました。
戦後まもなく自殺した作家の、自殺に至るまでの手記はなかなか圧巻です。
これ自体がかなり面白い。
この作家を自殺に追い込んだ「巨大な悪意」の謎を解くことになって
しまった国文学者も、その作家の人生とシンクロするように
「見えない悪意」に翻弄されていきます。
なかなか構成もよく練られているし、ぐいぐい読ませるんですが、後半、
二転三転していく過程で「これはちょっと説得力に欠けるなぁ」とか
「これはそんな簡単に信じないよね」とか、ちょっと強引なところがあって
すこし残念な感じ。悪くないんですけどね。
「追憶のかけら」 貫井 徳郎 ★★★
これはすごく良い作品ですね。
短くない年月をメディアの片隅で過ごしたあたしにはとても懐かしく、
また共感できる部分が多々ありました。
しかし出版業界が舞台になってはいますが、そこに綴られていることは
出版業界の人に限らず、誰でも共感したりノスタルジーを感じられることだと
思います。
仕事も軌道に乗りだし人生の方向性もつきつつある30代、もう若いとは
言い難いけどまだ中年でもないその時期は、まわりのひとたちとの様々な
葛藤や交錯、仕事に対するそれぞれの想いなどを通して、人間として本当の
意味での大人へと成長する時期なのかもしれません。
何とも懐かしい空気感というか。
それから視線の柔らかさ、みたいなものを感じます。
時折文章が荒くなる感が無くもないですが、オススメです。
「夜空のむこう」 香納 諒一 ★★★★
短くない年月をメディアの片隅で過ごしたあたしにはとても懐かしく、
また共感できる部分が多々ありました。
しかし出版業界が舞台になってはいますが、そこに綴られていることは
出版業界の人に限らず、誰でも共感したりノスタルジーを感じられることだと
思います。
仕事も軌道に乗りだし人生の方向性もつきつつある30代、もう若いとは
言い難いけどまだ中年でもないその時期は、まわりのひとたちとの様々な
葛藤や交錯、仕事に対するそれぞれの想いなどを通して、人間として本当の
意味での大人へと成長する時期なのかもしれません。
何とも懐かしい空気感というか。
それから視線の柔らかさ、みたいなものを感じます。
時折文章が荒くなる感が無くもないですが、オススメです。
「夜空のむこう」 香納 諒一 ★★★★
ううむ。ううむ。
若いうち(すくなくとも20代)に読んだらもっと素直に好きになったかも
しれない。
悪くはないんですけど…。
「再生」というか「再起」がテーマだと思うんですが。
読んでるうちに「何かとかぶるなぁ」と思ったらあれです、
吉本ばななですね。
「喪失」と「疑似共同体」と「再生(再起)」みたいなものが、
キレイにかぶる。
しかし吉本ばななを読んだときほどのインパクトを感じないのは
何故だろう?
あたしが歳を取ったせいだろうか?
たぶんそれもあると思うんだけど、それだけじゃないとも思う。
決して悪くないんだけど、なにかがちょっと足りない感じ。
「流れ星が消えないうちに 」 橋本 紡 ★★★
若いうち(すくなくとも20代)に読んだらもっと素直に好きになったかも
しれない。
悪くはないんですけど…。
「再生」というか「再起」がテーマだと思うんですが。
読んでるうちに「何かとかぶるなぁ」と思ったらあれです、
吉本ばななですね。
「喪失」と「疑似共同体」と「再生(再起)」みたいなものが、
キレイにかぶる。
しかし吉本ばななを読んだときほどのインパクトを感じないのは
何故だろう?
あたしが歳を取ったせいだろうか?
たぶんそれもあると思うんだけど、それだけじゃないとも思う。
決して悪くないんだけど、なにかがちょっと足りない感じ。
「流れ星が消えないうちに 」 橋本 紡 ★★★
やっぱり白石作品の魅力は、背景にビジネスシーンがしっかりと描き込まれて
いるところだと思う。それがリアリティを支えていると思うのですが、それを
背景の一部としてちらりと使うより、「ビジネス・シーンそのもの」をベース
にして展開した方が、より著者の言いたいことが伝わるんじゃないかしら。
つまり簡単に言えば、この著者は「恋愛小説」より「ビジネス(企業)小説」
を描いた方が面白い。
そのあたりは「草にすわる」でも感じたことだし、この
「もしも、私があなただったら」は、「草にすわる」と同じテーマを扱って
いるように思うので、余計にそう感じるのかもしれません。
で、この作品ですが。いちばん気になったところだけ。
「もしも、私があなただったら」どうして欲しいだろうか、と考えることはとてもいいことなの
かも知れないけれどでもそれは同時に、ちょっと危険なのではなかろうか。
ややパラドックス気味で判りにくいんですが、
「もしも、私があなただったら、こうして欲しいんじゃないか」で終わればいいんですけど、
「私が想像するあなたの希望」=「あなたが想像する私の希望」
つまり、
「私の希望」=「あなたの希望」
みたいな図式が出てきて、そりゃあそういう図式が成立するのいちばんハッピーでありますが、
いつもいつも必ずしもそうはならないだろう現実的に、と思うのですが。
そのあたりを無視して、「私の希望」=「あなたの希望」みたいに短絡的になっちゃうと、
それは悲劇(喜劇)の始まりになってしまうんじゃないかなぁ。
「相手のためを思って」というのは確かに耳障りの良い言葉でありますが、現実には得てして
それが「一方的な押しつけ」つまりは「傲慢さ」みたいなものであったり、またそれが
「相手のためを思って/良かれとおもって」なのだからと免罪されてしかるべきである
というような、ある種の言い訳、免罪符のように使われている現実もるのじゃないかと
思うのです。
このあたり、難しいですけどね。
「もしも、私があなただったら」 白石 一文 ★★★
いるところだと思う。それがリアリティを支えていると思うのですが、それを
背景の一部としてちらりと使うより、「ビジネス・シーンそのもの」をベース
にして展開した方が、より著者の言いたいことが伝わるんじゃないかしら。
つまり簡単に言えば、この著者は「恋愛小説」より「ビジネス(企業)小説」
を描いた方が面白い。
そのあたりは「草にすわる」でも感じたことだし、この
「もしも、私があなただったら」は、「草にすわる」と同じテーマを扱って
いるように思うので、余計にそう感じるのかもしれません。
で、この作品ですが。いちばん気になったところだけ。
「もしも、私があなただったら」どうして欲しいだろうか、と考えることはとてもいいことなの
かも知れないけれどでもそれは同時に、ちょっと危険なのではなかろうか。
ややパラドックス気味で判りにくいんですが、
「もしも、私があなただったら、こうして欲しいんじゃないか」で終わればいいんですけど、
「私が想像するあなたの希望」=「あなたが想像する私の希望」
つまり、
「私の希望」=「あなたの希望」
みたいな図式が出てきて、そりゃあそういう図式が成立するのいちばんハッピーでありますが、
いつもいつも必ずしもそうはならないだろう現実的に、と思うのですが。
そのあたりを無視して、「私の希望」=「あなたの希望」みたいに短絡的になっちゃうと、
それは悲劇(喜劇)の始まりになってしまうんじゃないかなぁ。
「相手のためを思って」というのは確かに耳障りの良い言葉でありますが、現実には得てして
それが「一方的な押しつけ」つまりは「傲慢さ」みたいなものであったり、またそれが
「相手のためを思って/良かれとおもって」なのだからと免罪されてしかるべきである
というような、ある種の言い訳、免罪符のように使われている現実もるのじゃないかと
思うのです。
このあたり、難しいですけどね。
「もしも、私があなただったら」 白石 一文 ★★★
まあ、はっきり言って先が読めるし、ちょっと都合が
良すぎるような気がしないでもない。
それでも悪くはないんだけどなぁ。うん、悪くはないんだよ。
だけど何というか…。
なんか大人用に書かれた童話みたいな気がして、うーんもう一声。
「僕の行く道」 新堂 冬樹 ★★★
良すぎるような気がしないでもない。
それでも悪くはないんだけどなぁ。うん、悪くはないんだよ。
だけど何というか…。
なんか大人用に書かれた童話みたいな気がして、うーんもう一声。
「僕の行く道」 新堂 冬樹 ★★★
徳川代14台将軍、徳川家茂に降嫁した皇女、和宮の生涯です。
とても丁寧に資料を調べ上げて書かれているように思います。
特に、姑である天璋院との仲は、幕末の動乱を切り抜けてもなお
うちとけたものではなかったであろうという説には、なかなか
説得力があると思います。
きちんと史実を追って書かれており、入門書には最適ではないかと。
「和宮お側日記」 阿井 景子 ★★
とても丁寧に資料を調べ上げて書かれているように思います。
特に、姑である天璋院との仲は、幕末の動乱を切り抜けてもなお
うちとけたものではなかったであろうという説には、なかなか
説得力があると思います。
きちんと史実を追って書かれており、入門書には最適ではないかと。
「和宮お側日記」 阿井 景子 ★★
あまり期待しないで読んだんですが、思ったより良い本でした。
謎についてはいろんな解釈があり得ると思います。
私には私の解釈がありますが、それを書くのは控えておきます。
主人公は教師、しかも障害児教室の教師という所謂「聖職」に就きながら
極めて「俗物」でありますが、現実的にはこんなもんでしょう。教師としての
経験を積むうちに、対象(学校そのものや障害児、その親)との距離の
置き方や自分の気持ちの割り切り方、なんかを身につけていかないと、
身がもたないのかも知れません。
一方で、現実に障害児と対峙し連日悪戦苦闘している身からすれば、自分の
手は一切汚さないくせに正論ばかり吐かれたら反発したくなる気持ちも
わかります。
反発しながら口には出せない小市民的なところも。
つまり結構リアルです。
しかしこの主人公の奥さん、夫(主人公)に「見下されている」という劣等感を拭うことが
出来ず苦しんできましたが、重度障害者の自宅介護を進んで請け負ったり、最終的に
「殺人未遂の犯人である夫(と彼女は信じている)」を待つことによって、
自分を見下してきた夫に、自分を認めてもらおうとしているように感じます。
愛は縮んでも、そこまで執着できるものなんでしょうかね。
そんな妻の想いを感じつつ、自分は無実であるにも関わらずその役(=妻が信じるところの
殺人未遂犯)を演じようとしている夫は、かつてのように妻を見下していると言うよりは、
彼女が真実を知ることから守ろうとしているのかもしれません。
と、いうことは。
その「真実」は彼女に、「夫が殺人未遂犯である」以上の大きなインパクトを与えかねない
もの、ということなのかもしれません。
そしてそして。
更にもしかしたら、他の誰かも同時に守ってるかもしれませんね。
あ、著者がいちばん書きたかったのは「障害者と社会」だそうで、そういう意味でも
良書だと思いますが、もうすこしリズム感というかメリハリというか、そういうのを
出して欲しい気がします。
「縮んだ愛」 佐川 光晴 ★★★
謎についてはいろんな解釈があり得ると思います。
私には私の解釈がありますが、それを書くのは控えておきます。
主人公は教師、しかも障害児教室の教師という所謂「聖職」に就きながら
極めて「俗物」でありますが、現実的にはこんなもんでしょう。教師としての
経験を積むうちに、対象(学校そのものや障害児、その親)との距離の
置き方や自分の気持ちの割り切り方、なんかを身につけていかないと、
身がもたないのかも知れません。
一方で、現実に障害児と対峙し連日悪戦苦闘している身からすれば、自分の
手は一切汚さないくせに正論ばかり吐かれたら反発したくなる気持ちも
わかります。
反発しながら口には出せない小市民的なところも。
つまり結構リアルです。
しかしこの主人公の奥さん、夫(主人公)に「見下されている」という劣等感を拭うことが
出来ず苦しんできましたが、重度障害者の自宅介護を進んで請け負ったり、最終的に
「殺人未遂の犯人である夫(と彼女は信じている)」を待つことによって、
自分を見下してきた夫に、自分を認めてもらおうとしているように感じます。
愛は縮んでも、そこまで執着できるものなんでしょうかね。
そんな妻の想いを感じつつ、自分は無実であるにも関わらずその役(=妻が信じるところの
殺人未遂犯)を演じようとしている夫は、かつてのように妻を見下していると言うよりは、
彼女が真実を知ることから守ろうとしているのかもしれません。
と、いうことは。
その「真実」は彼女に、「夫が殺人未遂犯である」以上の大きなインパクトを与えかねない
もの、ということなのかもしれません。
そしてそして。
更にもしかしたら、他の誰かも同時に守ってるかもしれませんね。
あ、著者がいちばん書きたかったのは「障害者と社会」だそうで、そういう意味でも
良書だと思いますが、もうすこしリズム感というかメリハリというか、そういうのを
出して欲しい気がします。
「縮んだ愛」 佐川 光晴 ★★★
何気なく手に取ったのですが(なにぶんあたくしは「猫」がついて
いるものに滅法弱い)、最近これ系からは遠ざかっていたのでうっかりして
いました。
長野まゆみさんじゃないですか。男子系じゃないですか。
いやあ、久しぶりだなぁこの世界。しかし「少年」とか「青年」だけで
なくて、「おじさん」も出てきますよ。
最近はおじさんもこの世界で活躍しているのか。
隠語も飛び交っていますが、この著者はやっぱり、
とても叙情的な風景描写が美しい。
こういった作風もテーマも嫌いじゃないんですが、ちょっと深みが足りないと
いうか…。
「猫道楽」 長野 まゆみ ★★
いるものに滅法弱い)、最近これ系からは遠ざかっていたのでうっかりして
いました。
長野まゆみさんじゃないですか。男子系じゃないですか。
いやあ、久しぶりだなぁこの世界。しかし「少年」とか「青年」だけで
なくて、「おじさん」も出てきますよ。
最近はおじさんもこの世界で活躍しているのか。
隠語も飛び交っていますが、この著者はやっぱり、
とても叙情的な風景描写が美しい。
こういった作風もテーマも嫌いじゃないんですが、ちょっと深みが足りないと
いうか…。
「猫道楽」 長野 まゆみ ★★
「氷点」に続いて続編も行ってみましょう。
ううむ。ううむ。
「氷点」のテーマは「原罪」でしたが、続編のテーマは「赦し」みたいですね。
「人間が人間を赦せるのか」ということはつまり「人間は人間を裁けるのか」
ということと同義だと思います。個人的には無理に赦す必要はないのでは
ないか、ほっとけばいつの間にか赦せるようになってるかも知れないし、
人間に出来るのは所詮はその程度のことしかないと思うのですが。
そもそも「赦そう」と努力するその動機は、「赦し得ない醜い自分」とか
「辛い」という状況からの逃避と紙一重のような気がするのですよどうしても。
逆に「赦しを乞う」のもまったく同じで、これは下手すると脅迫になりかねません
(実際相変わらず主人公の妻は幼すぎで、自分が自殺にまで追い込んだ事実なんかは全て棚に
上げて逆ギレするもんだからまったくムカつきます。誰かに似てるような気がしていましたが
あれです、アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」のオバさんにそっくりです)。
また、「愛」についての考察が出てきますが、これにはあたくし、ちょっと肯首できません。
愛は意志だからと、結局自分をかばって片足を失ったひととの結婚を決意するのですが、
確かに「好き」ということと「愛」はイコールではないと思います。
「恋愛」というところの「恋」は感情(=好き)であって、「愛」は意志であると思います。
しかしそれは、感情のないところに意志で愛を咲かせるのではなくて、「恋」という幼い感情を
意志を持って「愛」に育て、ともに成長していくということだと思うのです。
「あなたはわたしのために犠牲になってくれたので、いちばん好きな人は他にいるんですけども
私は意志の力であなたを愛することにします」
って言ってるみたいで、それってずいぶん失礼じゃないかしらと思うんですが。
「続 氷点(上)」「続 氷点(下)」 三浦 綾子 ★★★
ううむ。ううむ。
「氷点」のテーマは「原罪」でしたが、続編のテーマは「赦し」みたいですね。
「人間が人間を赦せるのか」ということはつまり「人間は人間を裁けるのか」
ということと同義だと思います。個人的には無理に赦す必要はないのでは
ないか、ほっとけばいつの間にか赦せるようになってるかも知れないし、
人間に出来るのは所詮はその程度のことしかないと思うのですが。
そもそも「赦そう」と努力するその動機は、「赦し得ない醜い自分」とか
「辛い」という状況からの逃避と紙一重のような気がするのですよどうしても。
逆に「赦しを乞う」のもまったく同じで、これは下手すると脅迫になりかねません
(実際相変わらず主人公の妻は幼すぎで、自分が自殺にまで追い込んだ事実なんかは全て棚に
上げて逆ギレするもんだからまったくムカつきます。誰かに似てるような気がしていましたが
あれです、アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」のオバさんにそっくりです)。
また、「愛」についての考察が出てきますが、これにはあたくし、ちょっと肯首できません。
愛は意志だからと、結局自分をかばって片足を失ったひととの結婚を決意するのですが、
確かに「好き」ということと「愛」はイコールではないと思います。
「恋愛」というところの「恋」は感情(=好き)であって、「愛」は意志であると思います。
しかしそれは、感情のないところに意志で愛を咲かせるのではなくて、「恋」という幼い感情を
意志を持って「愛」に育て、ともに成長していくということだと思うのです。
「あなたはわたしのために犠牲になってくれたので、いちばん好きな人は他にいるんですけども
私は意志の力であなたを愛することにします」
って言ってるみたいで、それってずいぶん失礼じゃないかしらと思うんですが。
「続 氷点(上)」「続 氷点(下)」 三浦 綾子 ★★★
久しぶりに、良い小説を読んだなぁと思います。
「良い」というのは小説としての「完成度が高い」だけでなく、
読んで温かい気持ちになる、嫌みのない、かといって最近よく見かける
薄っぺらい癒し本ではないという意味です。
この著者には独特の「清涼感」みたいなものがあって、「明日の記憶」
(ちなみにこの本はあたくし的にはは文句なしの ★★★★★ )は
若年性アルツハイマーをテーマとした、この本とは対照的な「悲劇」がテーマ
でしたが、それにも、この本と似たような爽やかさ、つまりは優しさみたいな
ものが流れていたように思います。
併せて、最近は若者に「蟹工船」が売れているらしいですが、
「座敷わらし」と「シャボン玉」の意味をきちんと受け止めることが
生きている者の勤めだということを静かに訴えているようにも思います。
「愛しの座敷わらし」 荻原 浩 ★★★★
「良い」というのは小説としての「完成度が高い」だけでなく、
読んで温かい気持ちになる、嫌みのない、かといって最近よく見かける
薄っぺらい癒し本ではないという意味です。
この著者には独特の「清涼感」みたいなものがあって、「明日の記憶」
(ちなみにこの本はあたくし的にはは文句なしの ★★★★★ )は
若年性アルツハイマーをテーマとした、この本とは対照的な「悲劇」がテーマ
でしたが、それにも、この本と似たような爽やかさ、つまりは優しさみたいな
ものが流れていたように思います。
併せて、最近は若者に「蟹工船」が売れているらしいですが、
「座敷わらし」と「シャボン玉」の意味をきちんと受け止めることが
生きている者の勤めだということを静かに訴えているようにも思います。
「愛しの座敷わらし」 荻原 浩 ★★★★
冤罪ものですが、あまりにリアルで読んでいる途中で何度も
「これは実話ではなくて小説だよね?」と思わず確認してしまうほどです。
いくつかの偶然と運とで、いとも簡単に冤罪は作り上げられ、それを覆すのは
途方もなく大変で、実際殆ど不可能に近いということがよくわかります。
本の主題とは離れるのですが、あたしは今でも「無知は罪である」と思って
いますが、しかし無知なるが故に背負わなければならない運命の過酷さ、
みたいなものを考えると
「無知は罪である」という考え方そのものは変わらないのですが同時に
「無知は試練」でもあるのかもしれません。
「原島弁護士の愛と悲しみ」とセットでオススメしたい本です。
「死亡推定時刻」 朔 立木 ★★★★
「これは実話ではなくて小説だよね?」と思わず確認してしまうほどです。
いくつかの偶然と運とで、いとも簡単に冤罪は作り上げられ、それを覆すのは
途方もなく大変で、実際殆ど不可能に近いということがよくわかります。
本の主題とは離れるのですが、あたしは今でも「無知は罪である」と思って
いますが、しかし無知なるが故に背負わなければならない運命の過酷さ、
みたいなものを考えると
「無知は罪である」という考え方そのものは変わらないのですが同時に
「無知は試練」でもあるのかもしれません。
「原島弁護士の愛と悲しみ」とセットでオススメしたい本です。
「死亡推定時刻」 朔 立木 ★★★★
「カラフル」の著者の、大人小説とのことで読んでみました。
うーん、上手いなぁ。
日常の断片から、「ホンモノ」というか真理みたいなものを、ひょいひょいと
切り取っていく。
全く面白いのは、主人公とその兄弟が亡くなった父親のルーツを求め歩く
中で、ドラマティックな事実が明らかになるどころか、むしろ「なーんだ」と
思うような「現実」を知っていくことです。
実際、「現実」にはそうそうドラマティックなことなんてないんですよね。
自分にとっては重大なことであっても、世間では「よくある話」だったり。
そういった「現実」をきちんと受け止めて受け入れて、「どれだけ愛したら許してもらえるのか」
とか「どれだけ受け入れれば、自分を受け入れてもらえるのか」と途方に暮れながら
それでも泥沼を歩いていくのが人生だ! と、あっけらかんと言い放っていて気持ちいいです。
その強さはどこから来るのかと考えてみると、いろいろと面白い表現をしているのですが、例えば
「…なにがしらの前向きな意志を抱えてそこにいる。それでいて、真剣さの如何を問わず、
誰もがどこかしら浮かれている。ブランドモノのバッグを持ったり、エステで脚を細くしたり
するのにも似た、上滑りのエネルギー。地球をきらきらと輝かせているのは意外とそんなもの
なのではないかと私は思ったりするのだ。」
に代表されるように、「上滑り」とものすごく冷静に見ていながら、しかし同時に、
「地球をきらきらと輝かせているのは意外とそんなもの」と、人間そのものとか、人間の持つ
力やエネルギーみたいなものを、信じているからなのかもしれません。
それは「カラフル」もそうですし、この作品の中でもいたるところに、最後の少女との会話
にまで表現されています。
そしてこのひとは、難しい年頃の子供(と大人の中間年齢層?)の扱いが抜群に上手いですね。
相手(子供)を見下すのではなくおもねるのでもなく、こういうのが「対等」な扱いなんだ
ろうなぁと思います。
「いつかパラソルの下で」 森 絵都 ★★★
うーん、上手いなぁ。
日常の断片から、「ホンモノ」というか真理みたいなものを、ひょいひょいと
切り取っていく。
全く面白いのは、主人公とその兄弟が亡くなった父親のルーツを求め歩く
中で、ドラマティックな事実が明らかになるどころか、むしろ「なーんだ」と
思うような「現実」を知っていくことです。
実際、「現実」にはそうそうドラマティックなことなんてないんですよね。
自分にとっては重大なことであっても、世間では「よくある話」だったり。
そういった「現実」をきちんと受け止めて受け入れて、「どれだけ愛したら許してもらえるのか」
とか「どれだけ受け入れれば、自分を受け入れてもらえるのか」と途方に暮れながら
それでも泥沼を歩いていくのが人生だ! と、あっけらかんと言い放っていて気持ちいいです。
その強さはどこから来るのかと考えてみると、いろいろと面白い表現をしているのですが、例えば
「…なにがしらの前向きな意志を抱えてそこにいる。それでいて、真剣さの如何を問わず、
誰もがどこかしら浮かれている。ブランドモノのバッグを持ったり、エステで脚を細くしたり
するのにも似た、上滑りのエネルギー。地球をきらきらと輝かせているのは意外とそんなもの
なのではないかと私は思ったりするのだ。」
に代表されるように、「上滑り」とものすごく冷静に見ていながら、しかし同時に、
「地球をきらきらと輝かせているのは意外とそんなもの」と、人間そのものとか、人間の持つ
力やエネルギーみたいなものを、信じているからなのかもしれません。
それは「カラフル」もそうですし、この作品の中でもいたるところに、最後の少女との会話
にまで表現されています。
そしてこのひとは、難しい年頃の子供(と大人の中間年齢層?)の扱いが抜群に上手いですね。
相手(子供)を見下すのではなくおもねるのでもなく、こういうのが「対等」な扱いなんだ
ろうなぁと思います。
「いつかパラソルの下で」 森 絵都 ★★★
有吉佐和子の 「悪女について 」(名著ですよね)みたいな感じかなぁと
思って読んでみましたが、なるほどちょっと違うんですね。
不変なものは「死」のみであって、
命だけではなくて、「幸福」にも「感情」にも永遠なんてモノはなくて、
それを思い知らされた人たちはそれぞれに「幸せの記憶」だったり
「この世で一番醜く美しい結晶」であったりまたは「諦観」であったりを
胸に抱いて、新たに歩き出す。
「彼」を語ることで自分を語り、そして「君の話をきかせてほしい」という
切な願いに行き着く。
当たり前に、永遠に続くと思っていた幸せな時間、愛の時はもう戻らないけれど
それでも人はそれぞれの「結晶」を胸に抱き、語ることによって
生きていかなければならないのかもしれません。
このあたりのテーマが「むかしのはなし」に繋がっていっているように思います。
「私が語りはじめた彼は」 三浦 しをん ★★★
思って読んでみましたが、なるほどちょっと違うんですね。
不変なものは「死」のみであって、
命だけではなくて、「幸福」にも「感情」にも永遠なんてモノはなくて、
それを思い知らされた人たちはそれぞれに「幸せの記憶」だったり
「この世で一番醜く美しい結晶」であったりまたは「諦観」であったりを
胸に抱いて、新たに歩き出す。
「彼」を語ることで自分を語り、そして「君の話をきかせてほしい」という
切な願いに行き着く。
当たり前に、永遠に続くと思っていた幸せな時間、愛の時はもう戻らないけれど
それでも人はそれぞれの「結晶」を胸に抱き、語ることによって
生きていかなければならないのかもしれません。
このあたりのテーマが「むかしのはなし」に繋がっていっているように思います。
「私が語りはじめた彼は」 三浦 しをん ★★★
殺されてしまった女性が、年に一度だけ自分の命日に他人の身体を
借りてこの世に戻ってくるという連作短編集です。
自分を殺した犯人を追い求めるのかと思えばさにあらず。
やっぱり「死んだ」という事実が動かし難いモノである以上、
犯人を捜すよりも愛した人や家族がその後どうなっているのか
そちらのほうが重要なのかもしれません。
一年前(の命日)に身体を借りた人がどうなっているかケアするあたりも
なんか面白いです。
人間の心の裏や、時とともに変遷する姿とか、コンセプト自体も悪く
ないと思うんですが、なんというか、もう一声。
「彼女の命日」 新津 きよみ ★★★
借りてこの世に戻ってくるという連作短編集です。
自分を殺した犯人を追い求めるのかと思えばさにあらず。
やっぱり「死んだ」という事実が動かし難いモノである以上、
犯人を捜すよりも愛した人や家族がその後どうなっているのか
そちらのほうが重要なのかもしれません。
一年前(の命日)に身体を借りた人がどうなっているかケアするあたりも
なんか面白いです。
人間の心の裏や、時とともに変遷する姿とか、コンセプト自体も悪く
ないと思うんですが、なんというか、もう一声。
「彼女の命日」 新津 きよみ ★★★
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