bookshelf 『ドキュメント死刑囚』 篠田 博之 忍者ブログ
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32111932.JPG  宮崎勤、小林薫、宅間守それぞれと文通を中心に交流した著者が、
 彼らがその重大犯罪に至るまでと、死刑確定までの心境を纏めています。
 数百通にのぼる手紙からかなり生々しいというか、本当の彼らの姿を紹介して
 おり、ドキュメンタリーとしてはクオリティの高い作品であると思います。

 が、しかし。
 著者は「死刑制度による犯罪抑止効果」に疑問を投げており、それには私も
 同感です。確かにさほどの犯罪抑止効果はないかも知れない。
 「死刑を急ぐのではなく、犯罪者心理を解明することにより、犯罪防止に
  役立たせるべき」とも言っています。総論では賛成ですが、しかし。

 何を持って、「犯罪者の心理を解明した(できた)」とするのでしょう?
 どういう結果をもって、解明したとするのでしょう?
 そもそも人間の心理を100%解明できることなんてないと思うし、だとすれば
 なおさら、何を持って「心理を解明」したとするのか、
 そのあたりになにも言及されていないのは残念です。

 また「死刑による犯罪防止効果への疑問」と「犯罪者心理の解明(による犯罪防止)」のために
 「死刑反対」というのはちょっと乱暴だと思います。
 そこには「被害者心理」「社会的コスト」「現状の法曹システム」、そしてそもそも「償い」とは
 なんなのか、などなど、同時に考えなければならないことが沢山あるはずで、それらの
 重要事項を無視して「死刑反対」と言われてもちょっと説得力がないかなぁ、と。

 宮崎、小林両死刑囚に対する記述と、宅間死刑囚に関する記述とでは、明らかに体温差を感じます。
 それは著者自らが記しているように、宅間死刑囚とは、他の二人に比べて交流が少なかったという
 要因もあるのでしょうが、著者が宅間死刑囚に対して「共感」はおろか「理解」出来る部分が、
 ほんの些細なことですら見いだせなかったからのように見受けます。

 確かに死刑制度が持つ犯罪抑止効果はそんなに強いものではないかもしれません。しかし
 だからといって、それがすなわち死刑制度を廃止すべき、となるものでもないと思います。 


 「ドキュメント死刑囚 」 篠田 博之 ★★★★
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