bookshelf 『心の闇に魔物は棲むか―異常犯罪の解剖学』 春日武彦 忍者ブログ
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32215977.jpg  「判らない」ということに対して、ひとは強い不安を抱くようです
 (もちろん私も)。

 例えばナイフでメッタ刺しにして人を殺してしまった犯人になぜそんな
 ことをしたのか問うたとき、

 「どうにも事業が回らなくて借金をしたらそれが雪だるま式に膨らんで
  しまい、働いても働いても利息の分にもならず、連日鬼のような取り
  立てで、とうとう娘をフロに沈めるとまで言われ、どうにも金策も
  つかず、殺すしかないと思った」

 と言われれば、その殺人自体は肯定できなくともその動機については
 ある程度「理解」することができ、「まあ殺人は良くないけど、相手も
 悪かったんだろうなぁ」などと思うことができるわけです。

 しかし、「なんでこんなに残酷に人を殺しちゃったの?」と聞いたとき、もしも

 「だってその日はとってもお天気が良かったから」

 などと言われたら、私は間違いなく恐怖のどん底に突き落とされると思うのです。

 理解不能な事件が起きると「コメンテーター」という名のよくわからない人々がTVなどで
 さももっともらしく事件を「解説」してくれますが、結果としてそれらは的外れなものが多く、
 そういう「識者」達に対しても著者は相変わらず一刀両断で切り捨ててくれて気持ちいいです。

 しかしながらそういった現象は、「判りやすいストーリー(解説)」を得て「安心したい」という
 意識が(私も含めて)多く存在しているということの証左でもあるのでしょう。
 その「安易なストーリーにすがること」の危険性も、本書では訴えています。

 多くの事件の事例をひきながら、判らないことは「判らない」とはっきりした上で著者は本書の
 タイトルにもなっている問いに回答しており、その回答も、回答に至るまでの考察や意見に
 ついても説得力高が高い。

 事例も論旨もとても整理されており、良書です。


心の闇に魔物は棲むか―異常犯罪の解剖学」 春日 武彦 ★★★★
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