bookshelf 『東京・地震・たんぽぽ』 豊島ミホ 忍者ブログ
本はごはん。
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a5aac2fd.png  東京で震度6の大地震が起きたというシチュエーションでの連作です。
 地震直前から数ヶ月後まで、様々なひとたちの様々なシーンを描いています。

 こういう非常事態には、人間のもつ精神的な貧しさや負の感情、そして
 易々と悪事に流れてしまう弱さなどが露呈するものなのでしょうけれど、
 そしてそういうこともきちんと描かれていますが、

 特に印象的だったのは、公園で生き埋めになってしまう主婦の話。
 助からないかもしれない、そんな状況の中で彼女は、夫へ連絡することを
 早々に諦め、自分のブログを更新していく…というところ。

 ひとは追い詰められて初めて認識する/できるものなのかもしれませんし、
 目を逸らしてきたものを見つめざるを得なくなるのかもしれません。
 
 全体のコンセプトや構成はすごく良いと思うし、何より、最後の最後で、最初と最後の
 話が繋がって、そこからいくらでも膨らませることができるのに、

 それは例えば、甘い物好きの友人は何故彼女という存在がありながらまるで東京と心中するかの
 ように残ったのか、とか、
 彼女がその事実を知ったらどう感じるか、とか、
 彼女の存在があったのに自分だけ逃がした事実を知ったら彼はどう思うか、とか、
 破綻しかけていた夫婦はこのあとどうなるのか、などなどたくさんありますが、
 
 それをせずに、すべて読者の想像力に委ねたのはとても潔いし、こういう余韻とか、思わず
 考えさせられてしまうものがしっかりあることが良書の条件であると思います。

 一方で、文章力、切り込む深さの濃淡、特に全般的な描き込みの浅さとか、つまり表現力が
 もうすこし…かな。
 でも若い作家さんのようですし、期待してます。


東京・地震・たんぽぽ」 豊島 ミホ ★★★
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