bookshelf 『ダウン・ツ・ヘヴン』 森博嗣 忍者ブログ
本はごはん。
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204769.jpg  引き続き「スカイ・クロラ」シリーズです。

 相変わらず草薙水素ちゃん、飛び回って墜としまくってそして順調に
 世間一般が言うところの「出世」をしていきます。

 「出世」にはもれなく社会的な束縛とか組織のしがらみとかがついて
 くるもので、永遠の子供であるキルドレ水素が、大人の世界に片足を
 突っ込むことになります。「今まで通り空を飛び」たいがために。

 『でも、煙みたいに自由になれれば良いな、と僕は思った。それには、
  つまり、煙みたいに消えなくてはならないだろう。いつまでも、
  自由なまま、この世に留まることはできない。
  消えていくその最後に、ものは自由になる。』

 つまり「完全な自由」なんてものはこの世にはなくて、だから「制限されたなかではある
 けれども天空での自由」である空中戦を彼女は選択したわけだけれど、結局は「大人の事情」
 つまりは社会にじわじわと巻き取られていく。

 この巻のメインは草薙とティーチャーとの市街空中戦ですが、これは「大人になれない
 キルドレ」と「大人になりたくなかった元子ども」の戦いでもあります。

 草薙にとってはそれが自分の「最高の死の舞台」であったにもかかわらず、結局は最低の
 茶番劇であり、つまりは完璧に「社会の演出」に取り込まれていたワケですが、この最高の
 死に場、死に時を逃した彼女は、また自由と死に場所を求めて空へ、
 「天国に墜ちて」いくのでしょう。


ダウン・ツ・ヘヴン」 森 博嗣 ★★★★
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