bookshelf エッセイ系 忍者ブログ
本はごはん。
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276409-2.gif  セラピーやカウンセリングを仕事としている著者の体験記ですが、
 これはグリーフケアですね。

 自分の命の終わりが見えてきてしまった人や、その周りの残される人たち、
 また、自分の子供との関係性を上手く築けない人たちなどに、カウンセリング
 を通して「再生」の道へ共に歩いていく、というものです。

 これを読んでいると、対極にあるように思える「生」と「死」というものが、
 実はひと続きというか不可分というか、そういう関係にあるんだと感じます。

 そして、人間というのは弱いけれども同時に、なんとも強いものだと、
 そんな風にも思うのです。


いのちのバトン」 志村 季世恵 ★★★
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32099080.JPG  またしても惜しい作家が逝ってしまいました。

 著者との出会いは「コミュニケーション不全症候群」で、まだ若かった私に
 こういう視点があるのか! と、強い衝撃を与え、

 それから表紙に惹かれて「翼あるもの」を読んで再度衝撃を受けました。

 この「翼あるもの」はヤヲイ系の元祖というか、まあ今で言うとボーイズ
 ラブなんじゃないのと言われてしまいそうですがその範囲にとどまって
 いるものでは全くなく、文学としてとても上質であると思います。

 しかしよく考えてみるとこの著者の作品は6~7冊しか読んでいないのです。
 おそらく「コミュニケーション不全症候群」を読んだときのインパクトが
 強すぎて、それほどたくさん読んでもいないのに

 「中島梓(栗本薫)=すごい作家」という刷り込みがなされたのかもしれません
 (今もそれを間違っていたとは思っていませんが)。

 で、この本ですが。
 膵臓ガン(当初は胆管ガンだと思われていた)での闘病記です。
 
 ガンで入院すると検査だのなんだので相当忙しいらしい、とか
 手術直後は集中治療室で身体に10本くらいの管をつなげられる(まあガンの種類にもよるので
 しょうが)らしい、とか
 ガンの手術後って2週間も絶食する、とか

 いろんな実情が判るんですが、しかし…。

 何が切ないって、これが「あの」著者の文章とは…。
 あの美しい表現で人間の感情と感覚の襞を紡いだ人の文章とは…。

 文章そのものだけでなくおそらく思考深度も、あの頃の中島梓であればもっと鋭利に切り込んで
 そこから真理の欠片みたいなものを掬い上げていたであろうに、と思われる箇所も散見され、
 そして同時に「書きたい!」という叫び。

 なんともせつなく、遣る瀬ない。
 

ガン病棟のピーターラビット」 中島 梓 ★★★
115351.jpg  南極越冬調査隊に、料理担当として参加した著者の体験記です。

 南極調査隊は、研究者である地質や気象などを調べるその道の学者などと、
 設営に携わる医者やメカニックや、著者のような料理人とで構成されて
 おり、つまりはみんな、「プロ」なんですね。

 そんな人たち9人(しかも男ばっか)が1年間、雪と氷に閉ざされた極寒の、
 嫌でも一日中、毎日、顔を突き合わせなきゃならない世界に放り出されたら
 そりゃいろいろあるでしょう。

 しかしその「いろいろ」を乗り越えて、毎日を楽しく暮らす工夫を凝らし
 ながら、人との結びつきが強固になっていく過程が、料理人ならではの
 視点でユーモラスに語られています。

 しかしなぁ。マイナス30℃でジンギスカン(もちろん屋外)ってなぁ…。
 缶ビールが1分で凍るなかでねぇ…。

 すごすぎて想像がつかない。


面白南極料理人」 西村 淳 ★★★
125943.jpg  あくまで「エッセイ」だと思って読みましたが、読むウチに
 「ああこれ食べたい作りたい」と思うものがいくつも出てきます。

 タイトル通り、B級C級料理が中心ですが、そのシンプルさがかえって
 食欲をそそります。

 何と言ってもレシピがおおざっぱなのがいいです。
 「醤油と酒と塩で適当に味付け」みたいな感じで、それがかえって
 挑戦欲をかき立てます。

 しかも簡単なモノが多いです。なにしろ「ねこまんま」から始まりますし、
 やろうと思えばすぐにできるものが多いのもいいと思います。
 しかし缶詰料理はあんまり好きじゃないんだよな…。

 しかし著者の食に対する飽くなき探求心、というか、どん欲さは素晴らしい。
 ついて行けないところも少なからずあるけれども。


ぶっかけ飯の快感」 小泉 武夫 ★★★
9784166606955.jpg  猫ものにはつい手が出てしまうんですが…。
 すいません。あたくし的には外しました。

 ちょっとプロの書き手とは思えないというか…。
 話がくどくて結局何が言いたいんだろうと思ってしまう。

 他人の著書に出てくる猫話を引き合いに出しながら、「忘れた」とか
 その著書が「見つからない」で終わり。その程度であればその話はそもそも
 書かなくてもいいんじゃないの? って思ってしまいます。

 村上春樹者なんてちょっと調べればすぐ判ると思うんだけどなぁ。
 
 日本語の間違いも気になってしまいます。
 すいません、あたくしには合わないようです。


猫の品格」 青木 るえか
201926s.jpg  著者はスキルス性胃ガンを患い再発、闘病の後2006年秋に、36歳で亡くなって
 います。

 ガンは早期発見されれば生存の可能性は高くなってきている現在でも、やはり
 病死のトップは相変わらずガンであり、またスキルス性については自覚症状が
 殆ど出ないため(つまり発見されたときは手遅れの段階になっているケースが
 多い)、治癒率が低いと聞いたことがあります。

 とても正直に自分の心情が語られていると思いますが、正しく「仕事に生きた」
 感があり、自分のやりたいことを追求して走り抜けていった感じです。

 つまりこの著者は、死を前にして自分の精神世界を深く内省するよりも、
 「やりたいこと」「やるべきこと」へ全エネルギーを注ぎ込んだ感があるというか。
 家庭をもっていなかったということもあるのかもしれません。

 やはり人間は死を目前にすると、「何かを残したい」という重いが強くなるんですね。
 最後に著者が手がけた、メディアミックス戦略によるガン治療の改革がいつか花を咲かせると
 いいなぁと思います。


末期ガンになったIT社長からの手紙」 藤田 憲一 ★★★
03095783.jpg  「半陰陽」である著者のエッセイです。
 半陰陽(インター・セックス)とは、生物学的に男性とも女性とも分類でき
 ない状態のことですね(トランス・ジェンダーとはまったく違う)。

 坂東眞砂子の「山姥」にも、「ふたなり」という表現で出てきました。
 (関係ないですが「坂東眞砂子 山姥」で検索したら amazon でもまったく
  引っかからず、版元の新潮社でも「該当なし」でした。確か直木賞取った
  と思ったんだけど。
  あれでしょうか、「子猫殺し騒動」で絶版になっちゃたんでしょうか?)

 良くも悪くも「性別」というものは自分の身体にも心にもぴったりと張り
 付いてしまっているもので、それが「どちらでもない」という状態が
 どんなものであるのか、想像の範疇を超えてしまっています。

 「両方経験できる」メリットというのもあるのかもしれませんが、デメリットの方が大きい
 んじゃないかしら。特にアイデンティティの確立とか、精神的な部分では。

 著者は女性として結婚したあと離婚し、そのあと揺れながらも(一般的には)男性として
 生きる道を歩んでいるようですが、男性化すると靴のサイズが大きくなり、女性化すると
 サイズが小さくなると言うのには驚きました。ホルモン(注射)、恐るべし。

 著者自身も書いているとおり時代解説的な要素もあるんですが、ちょっと内容も表現も整理
 されきっておらず、社会学的な見方からするとまだまだ甘いという感は拭えません。

 正直なところ、インター・セックスについても時代解説についてもどちらも中途半端な感じ
 が否めず、そのあたりをもっとブラッシュ・アップしてもらうと、ものすごく面白いものに
 なるのではないかと思います。


『性別が、ない!』ということ。」 新井 祥 ★★
32223945.JPG  マガハがいつの間にか文庫を出していたんですね。知らなかった。

 それはともかく。
 最近「とても良い俳優になってきたなぁ」と思っていた三浦友和氏による
 「マスコミとの闘争」について書かれた本です。

 「マスコミとの闘争」と言っても本人が書いているとおり、彼らは防御すら
 できず、ひたすら逃げるしか手がないのですが。

 国民的スターであった「百恵ちゃん」との結婚後、10年にも渡ってマスコミ
 は「報道の自由」だの「知る権利」だのを振りかざして彼らを追いかけ続け
 ますが、その様子は今で言うところのパパラッチそのものであり、

 長男の幼稚園の入園式を、幼稚園の前まで行きながらも断念せざるを得ない
 ほどにまでエスカレートした様は、正しく「狂って」いたとしか思えません。

 しかし。
 ここでマスコミ批判をするのは簡単ですが(もちろん当時のマスコミは批判されるべきですが)
 その背後には無言でそのマスコミを煽っていた「視聴者/読者」が(私を含めて)居るわけで、
 その自覚を果たしてどれだけの人が持っているのだろうかと思います。
 
 それにしてもこの夫婦、とても真面目なんだなぁと思います。おそらく、こういう生き方しか
 できないんだろうと思いますが、それがなんとも格好いい。


被写体」 三浦 友和 ★★★★
150308.jpg  アメリカに留学し、現地の男性と結婚しそのままアメリカで生活を続けて
 いる日本人女性の目から見た「アメリカでの日常」が綴られています。

 「ミリタリー・ワイフ」というタイトルですが、ミリタリー・ワイフならでは
 の話ももちろんありますがそれがすべてではなく(むしろ全体の半分も
 占めていない)、

 あのゴージャスなクリスマス・ツリーにまつわる苦労とか、
 アメリカの子供が抱える、日本の子供とはまた違った大変さなどの
 アメリカでの日常が、

 「アメリカ最高!」というわけではなく、また「やっぱり日本よ!」という
 わけでもなく、文化の違うアメリカでの生活について、その大変さも含めて
 自然に語られています。

 そして、やはり異文化に暮らすことによって見えてくる祖国、というものがあるのだなぁと
 おもいます。
 
 「正義か平和か」。

 正義を守るために戦争になってしまったのが20世紀であるならば、
 正義を貫きながら平和を維持できる21世紀であってほしいと、
 著者同様、思います。


ミリタリー・ワイフの生活」 ジョンソン桜井 もよ ★★★
41G67510JQL.jpg  聴いた話によると、葬儀屋さん曰く

 「昔に比べると遺体に使う防腐剤の量が圧倒的に今は減っている」そうで、

 それは即ち、昔は大量の防腐剤を遺体に使う必要があったのだが、現代の
 人間は日頃防腐剤が使われている食品を多く摂取しているがために、
 さほど防腐剤を使わなくとも遺体が腐らない、ということのようです。

 これが果たして事実なのか、それともまことしやかな都市伝説の一種で
 あるのかは定かではありませんが、なんとなく説得力があるというか。

 さてこの本は、CM制作会社から湯灌師へとずいぶんな異業種転職(?)を
 果たした著者の体験記であります。異業種も異業種。
 イメージもサービス対象も、何より業務内容が違いすぎます。

 しかし読み進めていくうちに彼ら(夫婦で湯灌師)は彼らなりのポリシーを持ってきちんと
 仕事、遺体そのものや遺族と向き合っていることがよく判り、きっとなるべくしてこの職業
 に就いたのであろう、と思います。

 特筆すべきは「湯灌」というプロセスを通して遺族はどう癒され、身内の死を受け入れて
 いくのか。
 そして何より、遺族に寄り添いその癒しを手伝うことにより自分たちも癒されていくこと
 をよく自覚していることだと思います。
 
 なかなかできる仕事ではないと思うんですが、静かにしかし誠実に取り組まれている
 ことに好感を持つと同時にすこし安心したり。ああ、まだまだ捨てたもんでもないのかな、と。


死体とご遺体 夫婦湯灌師と4000体の出会い」 熊田 紺也 ★★★
105825.jpg.jpg  この作家は小説よりエッセイが秀逸だと思ったのだけど、よく考えてみると
 まだ小説は2冊、エッセイはこの作品がはじめてなので、そう断言する
 資格はあたくしにはないのであった。

 とにかく買い物というか、ものの値段にまつわるエッセイ、というより
 「考察」にあたくしには思えたのだけれども、どーしてこれが面白い。

 特に、「携帯電話」に関する考察は秀逸だと思います。
 あと「男値段」と「女値段」とか、「母親との温泉旅行」とか。

 「バレンタインデー」に関する考察は、まったくもって以前から自分も
 そう思っていたことを簡潔に歯切れよく「すぱん」と言い切ってくれて
 いてなんとも気持ちがいい。

 それにしても、考え方の傾向が似ているというか反応する、感じるツボみたいなものが近い
 のは同年代だからかなぁと思いながら読み進め、「あとがき」を読むと、育ち方がまったく一緒
 で驚いた。

 私の親も決して「お金がない」と言わなかった人で、初めて「お金がないからだめ」と
 言われた確か私が高校生だったとき、私はまったくその言葉を信じなかったのであった。

 おかげで私も著者の言うところの「お金とは水道の蛇口のようなもので、断水などで出の悪く
 なることはあっても、地下水脈と蛇口は繋がっていて、いついかなるときも水は出続ける」
 というゆがんだ金銭感覚を持っていて、

 もちろん今はそんなことないと頭では判っているものの、どーしてもそういう「感覚」が
 すっぽり身体を覆っているのであります。

 つまりたとえば、
 「今自分は窮状にあるのにそれを正しく窮状として認識できていない自分に対する不安」
 みたいなややこしい不安を抱くことになるのです。

 20代のお金の使い方がその人の30代を決める、と著者は言っていますが、自分を振り返っても
 たしかにそうなのかもしれません。


しあわせのねだん」 角田 光代 ★★★
1cc33ad5.jpg  大人の絵本、ですかね。

 まだ何も持たない子供の頃、アンネ(の日記)には「キティ」がいたように、
 空想上の親友を持っていた人は多いのではないでしょうか。

 社会化していくにしたがって、自立していく課程でその存在は
 薄れていきますが決してなくなってしまうわけではなく、

 そしてそれは、独立して孤独と対峙していくためのベースとなる
 力を与えてくれる、重要なステップなのでしょう。

 見えないだけで、美しい草原は存在する。
 「目では何も見えないよ。心で探さなきゃ」と星の王子さまも言っていましたね。


モーラとわたし」 おーなり 由子 ★★★
01347053.jpg  映画「おくりびと」がアカデミー賞を獲ったそうで。
 その「おくりびと」の世界観の元となった本です。

 「納棺師」という仕事を通して感じたことが綴られていますが、さすが
 元詩人、透明度の高い独特のリズムを持つ文章です。

 納棺師の仕事そのもの、というよりも、その仕事にまつわる感情や心象、
 そして著者の宗教観が語られています。

 その宗教観についてどうのこうの言えるほど私は詳しくはないのですが、
 ただ、宗教的結論と科学的結論が究極のところ一緒であるということには
 「ほぅ」と思うと同時に「やっぱり」とも思ったのでありました。

 「悟りとは死を受け入れることではなく、どんな時でも平気で生きていることである」
 という正岡子規の言葉には、深く考えさせられてしまいます。
 と言うことはわたしも、生から死を切り離して考えていたということなんでしょう。


納棺夫日記」 青木 新門 ★★★
202077b.jpg  ほんと「ねこのも」には弱いんです。

 著者はペットシッターの草分け、といっていいんじゃないでしょうか。
 シッター先で出会ったたくさんのねこさんたちのこと、そこから
 感じたこと、学んだことなどが綴られています。

 この著者の良いところは、盲目的な愛猫家ではないというところだと思います。
 (保護運動の名の下に、実は自己満足的な行動でしかないケースも耳にしたり
  するので…)。

 「自立した飼い主のねこは情緒的にも安定している」みたいなことが書いて
 あって、我が身を振り返って、ぐぐぐっと思う。

 たくさん登場するねこたちの様々なエピソードやそれぞれの性格も面白いです。 
 そして、「ねこはねこで留守番を楽しんでいる」という著者の言に、特に旅行の時なんか
 どうしても後ろめたさを拭いきれないあたくしは、ちょっとほっとしたのでありました。


猫、ただいま留守番中」 南里 秀子 ★★★
9784167228088.jpg  「制服好き」を自認する著者の、制服論。

 制服定番モノのセーラー服やスチュワーデス、ナースなどはもちろん、
 宝塚音楽学校やら料理人、自衛隊に鳶職に矢沢永吉まで、まあ制服だけで
 ここまでよく…、と感嘆を禁じ得ません。

 しかしなかなかに面白く、「拘束される快楽」「滅私するヨロコビ」とか、
 ウエディングドレスや七五三を「儀式制服」とカテゴライズしたりしている
 あたり、社会学的な考察も入っています。

 サラリーマンの制服である「スーツ」の章が、あっけないほど短い。
 やはり著者の思い入れの度合いが表れてしまっているのでしょうか。

 因みにあたくしも制服好きです。


制服概論」 酒井 順子 ★★★
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Writer 【もなか】  Powered by NinjaBlog