bookshelf エッセイ系 忍者ブログ
本はごはん。
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02164841.jpg  年末年始お風呂で読む本がなくて、いやまだ読んでない本は
 たくさんあるのだけれども、あんまり重たいモノとかは読みたくなくて
 どちらかというとサラリとしたものはないかと本棚を物色していたら
 出てきました。

 数年前に読んだ本で確か面白かった。ので再読です。
 
 初出(単行本)は94年らしいので、もう15年前の本ですね。
 著者の学生時代のアルバイト体験を通した青春の記、といったところ
 でしょうか。

 ガソリンスタンドを皮切りに、肉まん工場での気が狂いそうな単純労働や、
 危険な製本工場、スタンドのホットドックやら居酒屋やら松茸梱包など、
 実に様々なアルバイトを経験しています。

 それぞれのアルバイトの描写も面白いんだけれど、それぞれのアルバイト先で出会った人や
 そこで考えたことなど、もうこれでもかと言うくらいに面白い。
 そして時々、「ぐっ」と胸が詰まるような場面をさらりと出してきます。

 そしてこの本を読んで思ったのは、やっぱり学生時代には「肉体労働」というか、身体を使う
 労働を必ず経験すべきなんじゃないか、ということです。家庭教師とか塾の教師ばかりじゃなくて、
 販売員でもウエイターでも工場でもいいから、「身体で稼ぐ」ということを経験しておく
 ことは大事なんじゃないかと。 

 読み返してもやっぱり面白い、貴重な本です。


 「はたらく青年」 原田 宗典 ★★★★★
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41vHs5vvvkL._SL160_.jpg  タイトルにちょっとびっくりしてしまいますが、愛猫家の詩人による
 ねこにまつわるエッセイです。

 タイトルの意味は言葉通りの意味ではなく、前頭葉問題のことを
 言っています。

 詩人というカテゴリーに属する人たちは、なんて軽やかに言葉と戯れ、
 なんと的確に言葉を操り、なんと豊穣な世界を紡ぎ出すのだろう。
 うっとりするような美しい文章が、リズミカルに綴られています。

 30年以上前に刊行されたものなので、今のように避妊もしくは去勢手術
 &完全室内飼いがあたりまえ、という時代ではなく、ねこは自由に家と
 外を出入りし、野良猫も多かった、ある意味おおらかな時代の話ですが、
 
 とにかく文章表現のセンスが良く、ちょっと絵本のような雰囲気も漂っている良書です。


 「ねこに未来はない」 長田 弘 ★★★★
9784480424938.jpg  自分のことも含めて、ここまでストレートに表現できる人は
 少ないんじゃないかな。
 個人的には「伊藤 比呂美」と傾向が似てるというか、近しい
 イメージを抱きます。
 
 農村での日常の中のあれこれを綴っていますが、その日常の中で真理というか
 「ほんもの」みたいなものをさらりと掬い上げていたり、「ありのままの
 自分」をストレートに表現しています。

 そしてかなり面白い。

 感受性と言語能力(表現能力)がかなり高いレベルでバランスしているというか、
 右脳と左脳の両方がかなり発達している人のように感じます。
 うらやましい。


 「神も仏もありませぬ」 佐野 洋子 ★★★
9784167523152.jpg  ガンが見つかり、入院するまでの日記です。

 著者はドイツ文学者が本業(?)ですが、私はずいぶん昔に
 「ハラスのいた日々」を読んだことがあるくらい。
 もしかしたら「カフカ」はこの著者が翻訳したのを読んだのかもしれませんが。

 ガンが見つかり入院するまでの1ヶ月ちょっと。その間の心の動きが記されて
 います。放射線や抗ガン剤による治療は医療的拷問であると考え、自宅で
 静かに過ごしたいと著者は当初考えていましたが、刻々と変化する体調に
 入院を決意したり、

 セネカの翻訳を通して強い精神力を得たと思っていても、「良医がいる」と
 聴くとその医者にかかろうとしたりおよそ人間的です。

 そしてそのなかでもやはり、「死」を現実視せざるを得ないがためか、親族や犬、友人たち
 との縁や「命」への温かい眼差しが際だっています。
 
 「死に際しての処置」として、12項目について指示した遺書のようなものも掲載されて
 いますが、それが清々しいほどきっぱりと、凜としています。特に最後の4行。
 
 そして、本当に美しい日本語で綴られているのがとても印象的でした。


 「ガン日記―二〇〇四年二月八日ヨリ三月十八日入院マデ」 中野 孝次 ★★★
02750496.jpg  ニューヨークで日本語教師をしていた著者の、
 ニューヨークやそこに住む人々についてのエッセイです。

 「はじめに」にこの本についてのエッセンスが全て抽出されています。
 東京では考えられないような、フレンドリーなコミュニケーション。
 それに尽きると思います。

 以前何かで、「アメリカ人が誰にでもフレンドリーに声をかけるのは(移民の
 多い国であるために)自らをオープンにして語りかけることにより、自分は悪人
 ではないとアピールするため」

 という説を目にしたことがありますが、由来はどうあれ、
 オープン・コミュニケーションはアメリカ人のひとつの特徴なのでしょう。

 しかしこれはちょっと見方を変えれば「お節介」だったり「出しゃばり」だったりもするわけで、
 そのへんがちょっと難しいんじゃないでしょうか。特にあたくし、もともと交友範囲を広く
 したいという願望自体ないし、なかなか馴染めなような気もする。引きこもり気質ですしね。
 
 しかしその一方で、こういったコミュニケーションに対するちょっとした憧れというか羨望と
 いうか、そういう一種矛盾した感情も自分の中に見いだしたりもするのであります。

 大体の話が見開き2ページで完結しており、とても読みやすいです。
 そして必ずちょっとした英語のセンテンスが解説と共に入れ込まれていて、どれも簡単な
 ものでありながら「ふーん、こんな言い回しをするんだ」と思うものもあり、なかなか面白い。

 あたくしの独断と偏見により、薄っぺらい「癒し」とか「やさしさ」とかをウリにしている
 「イメージ」「匂い」を感じるものは基本的に避けて通るのですが、
 そしてこの本も「それ系」ではないかと思ったんですが、そうでもなかったです。


 「ニューヨークのとけない魔法」 岡田 光世 ★★★
0bbd4255.jpeg  ジャズピアニストである著者の、若かりし頃の回顧録(?)です。
 ピアノを始めたこともあって、読んでみました。

 銀座のクラブのピアノ弾きとなった青年が、いわゆる夜の業界の人々や
 「ある組織」の方々に揉まれながら、悩みながら、ジャズピアニストの
 道を歩み始める、といった感じでしょうか。

 とてもしゃれた文章で、そういった業界慣習や強烈なキャラクターの方々との
 人間模様を面白く描き出していますが、その背景にはある種の切なさみたいな
 ものが流れているように感じます。

 こんどライブに行ってみよう。


 「白鍵と黒鍵の間に―ピアニスト・エレジー銀座編」 南 博 ★★★
133552.jpg  こんなに笑える本だとは思わなかった。

 奥さんがデブなんだそうです。でもダイエットは嫌いなんだそうです。
 一見ダイエットの検証本のようにも見えますが、実は女性心理について
 書かれているように思います。

 奥様の「努力は嫌い。努力には美がない」とか「楽してやせたい」などの
 数々の言葉に、うんうん、と頷きながら、それを男性から見ると
 こう見えるのかー、と思いました。

 著者と女性編集者との間に交わされるダイエットについての会話をはじめ、
 もう異文化コミュニケーションの域にあるようで、なんともおかしい。


 「やせれば美人 」 高橋 秀実 ★★★
mangamadori.jpg  企画モノです。とっても賛否両論というか、
 好きな人と、全く興味のない人にキレイに分かれそうな企画です。
 あたくしはこれ系、だいすきです。

 サザエさんとかドラえもんとかハイジなんかの家の間取りがだーっと
 収められています。
 どうも外観と内観が矛盾するケースもあるらしく、想像で補っている
 部分がすくなくないようですが、どうがんばって間取りを作っても、
 ドラえもんが階段を上り下りできない(要するにドラえもんが太い)
 とか、笑っちゃうケースが多いです。

 サリーちゃんの家は、あの時代で既にアイランドキッチンなんだ
 そうですよ。すごいですね。

 大草原の小さな家も、ローラたちのお家だけじゃなくて、
 オルソンさん(いじわるネリーの家)の間取りもついています。

 所在地(推定含む)、入所者一覧、工法(RC造りだのSRCだの木造だの2×4だの)や、
 ハイジの家なんかは

 長期ホームステイ:クララ・ゼーゼマン
 短期ホームステイ:ロッテンマイヤーさん

 なんてことまで書いてあって凝ってます。

 ただ、「釣りバカ日誌」とか「軽井沢シンドローム」とか、ちゃんと読んでないコミックの
 場合はやっぱりあんまり興味が湧かない。
 
 番外編で「磯野家立替計画」とかもあって、なかなか楽しめました。
 今回の★の数は、企画に対する評価です。しかしカテゴリ分けに困った。


 「名作マンガの間取り」 影山 明仁 ★★★★

 【追記】

 ご指摘(ドラえもんの頭のまわりが129.3cmということは、頭が真円だとすると幅は約41センチ
 だから、階段や廊下は通れるはず)をいただきましたので追記します。

 > どうも外観と内観が矛盾するケースもあるらしく、想像で補っている
 > 部分がすくなくないようですが、どうがんばって間取りを作っても、
 > ドラえもんが階段を上り下りできない(要するにドラえもんが太い)
 > とか、笑っちゃうケースが多いです。

 と、かなりはしょって&要約して上記のように書きましたが、著書には

 ---------------引用開始-------------
 部屋の構成はわかるけど、見たまま描くと階段がハシゴみたいになっちゃう。まともに
 九尺で上がれる階段をつくると、1階の部屋が大きくなる。どうにか完成したのがこの間取り。
 ドラえもんは、身長・胸囲・頭のまわりがすべて129.3cmということになっているけれど、
 これでは本当はこの廊下は歩けない。階段を上がろうにもつかえて前に進めない…。
 (「名作マンガの間取り」004ページ)
 ---------------引用ここまで------------

 とあります。
 著者はさすがに階段がハシゴじゃまずいだろうと、階段と廊下を多少広げたようですが、それが
 幅何センチあるのかは明記されていないのでわかりません。

 それでもドラえもんが上り下りできないのですから、人間なら横向きにカニ歩きすれば
 通れるのが、ドラム缶スタイル(=円)であるらしいドラえもんは、横向いてカニ歩きしても
 つっかえてしまうと言うことかもしれません。

 そうだとすると悲劇はドラえもんの『太さ』にあるのではなく、その『丸さ』にあるのかも
 しれませんが、残念ながら不明です。【2008/08/26 21:06】

 【更に追記】
 
 著書から読み取れる限りの情報をもとに、上記のように推測(?)しましたが、版元から
 「訂正記事」が出ましたね。なんかちょっと残念な感じも。【2008/08/28 13:32】

697126de.jpg  いつも思うのですが、正常と非正常の境界線というのは非常に曖昧で
 どこまでが正常でどこからがそうではないのかなんて、線が引けるような
 ものではないと思うし、そもそも正常の定義は何か、となるともう
 定義しきれるものではないと思うのです。
 
 そういう意味では「異星人」との「異文化交流」という表現はなかなか
 面白いし的を得ていると思います。

 実際海外と仕事をしていると、この本の場面に出てくるようなことには
 よく直面します。


 ■言葉の裏が読めない
 ■雰囲気が読めない

 かなり通訳レベルの高い人でも、こんなんしょっちゅうです。
 だって当たり前ですよね。日本語は知識としては知っていても、彼らの文化と言えるほどには
 身についてないのだから。

 だいたい誰にしたって何かしらの問題を抱えているわけで実際に私だってここまで極端では
 ないにしろ、ああこういう傾向は自分にもあるわな、とおもうところがないわけじゃない。
 結局のところ、みんな程度の差しかないと思うのです。

 「自閉症」もまだ誤解されている部分が多いようですが、判りやすく紹介している良書だと
 おもいます。
 ただ残念ながら、文章がちょっとあたくしには好みではありませんでした。

 
 「僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活」 泉 流星 ★★★
51H-n55VoqL._SL160_.jpg  ノンフィクション・ライターの第一人者であり、
 「千年、働いてきましたー老舗企業大国ニッポン」の著者でもある野村氏による
 「ノンフィクション・ライター入門講座」のような実用書です。

 しかし内容が濃い。ものすごく濃い。
 もともとこの著者は、風景とか背景とかから入っていく書き方が特徴的だと
 思っていましたが、やはりそこには著者の信念と、膨大で地道な作業が背後に
 あるのだということがよくわかります。

 実用書としてだけではなく、後半かなり多くのノンフィクションが「例文」と
 して引用されておりその面白さは尋常ではなく、参考文献リストともに
 「名ノンフィクションの紹介書」としても秀逸だと思います。

 更に言うならば、これは「ノンフィクション・ライターを目指す人」以外の多くのひとにも
 役に立つ、言い換えれば通常のビジネスにも応用可能なことがたくさんつまっています。

 現代の経済社会に於ける優秀なビジネスマンというのは、基本的に課題解決型提案のできる
 ひとのことであり、課題解決型提案をするにはまず、先方のことを知らなければ話に
 なりません。「御社の課題は何ですか?」と聴いて、「それは○○です」というような
 ことではなくて、先方の潜在意識の中にはあるのだけれど顕在化されていない、もしくは
 無意識のうちに眼をそらしているような課題をすくい上げ、その解決策と同時に提案する
 のが、本来のホワイト・カラーの仕事であります。

 そういった先方も意識していない、顕在化していないような、しかし漠然とした不安のような
 ものを引きずり出し(事前調査とインタビュー、取材)、企画(構成)し、プレゼン(最終文章化)
 するという一連のビジネス・プロセスにそのまま転用可能です。

 しかし。
 実行は難しいなきっと。

 ほんと、さすがにプロだなぁと唸らせる名著です。


調べる技術・書く技術」 野村 進 ★★★★
32032435.JPG<br />  残念ながら、前書き(「はじめに」)がいちばん面白かった…。

 外国人から日本や日本人そのものがどんなふうに見られているか、
 まあ日本もすてたもんじゃないということが言いたかったのかも
 しれませんが、

 外国人は日本人のことをこんな風に見ている、というイグザンプルに
 特に真新しい発見はありませんでした。
 で、「外国人からみて不思議に思う日本人の行動、精神構造」について
 著者が日本人の歴史や根本的な部分を解説しているんですが、
 これについてもまあ前から言われてることだよねぇ、という感じ。

 しかも著者の解説の部分の方が割合が多いように感じます。
 なんだけど著者の結論が良く判んない。
 各論言いっ放しな気がして仕方ありません。

  類書(と言っていいのか?)の、「「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート 」の
 ほうが断然面白かったなぁ。

 「ひらがなタイムズ」の元編集長ということで期待してたんだけど、残念。


日本人の背中」 井形 慶子 ★★
02990251.jpg<br />  こんどはヤクザ屋さんです。現役の(しかもかなり偉い)方みたいです。

 あの金嬉老との獄中エピソードなんかがあって、びっくりしました。

 ただ思うに、主張し自分の権利を獲得していくことは大事だと思うのですが、
 ゴネ得みたいのはどうなんだろう?
 まあ線引きが難しいですけどね。

 教育論については、いくつかちょっと異議があります。特に、
 子供を身体を張って守るのは確かに大事だし、
 「子供の言い分を信じて教師と対決」するのはいいんですが、それと同時に
 家庭教育とか親子間の信頼関係とかがかなり重要なんじゃないかと思うんですが。

 そうした家庭に於ける基本的なベースとなる教育なり躾なり親子間の信頼関係なりを
 すっ飛ばして教師を殴りに行っちゃったりするのがいわゆる「モンスター・ペアレント」
 というやつじゃないかと思うんですけどね。
 義務を果たす前に、権利ばっかり振りかざすというか。

 もちろんそういったベースの信頼関係や躾についてはあたりまえ、前提としているのかも
 しれませんが、これだけだと短絡的に「教師を殴りに行って良いんだ」って思う親が出て
 きそうな気がします。なにしろ給食費も払わないご時世らしいですから。

 しかし最近、自分で判断できない(としか思えない)、または前述の給食費じゃないですけど、
 どう考えても「ヘン」としか思えない行動基準で動いている人が多い(ように見える)なか、
 さすがトップまで上り詰めた人だけあって、自分の価値判断がきっちりあるので読みやすいですね。
 そうでないと、そもそも議論にもなんないしね。

 この原稿はテープ起こしなのかなぁ。

 以下、蛇足です。
 昔、下記のような場面に遭遇したことがあります。
 とあるレジャー施設の駐車場内で、駐車場内を走っていた車の前に、3〜4歳くらいの子供が
 飛び出しました。駐車場内でしたので車の速度は人が歩くくらいの速さだったため、車が
 急停車し大事には至りませんでした。子供が転んだだけ。
 で、この子供の親が、ヤクザを職業としている方だったようで、ものすごい勢いで運転手に
 怒鳴りはじめ、ヤクザ屋さんの言論で運転手を非難しました。ずーっと。かなりしつこく。

 しかし、どう見ても非は子供(ひいては眼を話した親)にあります。
 こういう場合、この本の著者である親分はどうするのでしょうか?
 是非伺ってみたいところであります。


ヤクザ者の屁理屈―貴方もヤクザになりませんか」 森田 健介 ★★
32054458.JPG  ペットの次はぱんつ…。我ながらこの乱脈さはどうなんだろう…。
 しかも最近やたら文章長いし…。いかんいかん。エッセンスだけを抜き出して
 簡潔にすぱんすぱんと書き殴って終わりにする信条だったのに。

 ま、とりあえず「ぱんつ」です。
 たかがパンツですが、ロシアでは(下着の)パンツを手作りしていた
 (第2次対戦が終わるまで製品として売られてなかった)とか、
 家庭科でいちばん初めに教わるのは「パンツの作り方」であるとか、

 現在でも製品化された使い捨ての生理用品を使える女性の方が、世界的には
 少数派であるとか、

 かなりカルチャーショックをうける事実が多く紹介されています。
 そういう意味では、文化人類学的側面ももっています。

 アラビアン・ナイトとかにでてくるあの踝まであるゆったりしたパンツ(ズボン)
 の起源とか、雑学ではありますが面白く紹介してくれます。

 専門書という見地からすると、著者自ら告白しているようにまだ浅いのかも知れません。
 それでも巻末の参考文献の山はまあものすごい。パンツふんどしだけでよくここまで…。
 この著者の尽きない好奇心と飽くなき探求心には全く敬服します。


パンツの面目ふんどしの沽券」 米原 万里 ★★★
02961576.jpg<br />  この著者がメディアに出始めた頃数冊読みましたが久しぶりです。
 久しぶりですが相変わらず…。
 
 まあ著者は社会学者ではないので特に新たな論説なんかは期待していなかった
 のですが、精神医学的見地から見た昨今のペットと人間の関わりかたなんかに
 対する見解とかも一切ないし、ペットを巡るニュースなどは多数引用されて
 いますが、データは殆ど提示されていません。

 (一部の)過激な動物愛護団体や、夫よりペットの方が大事になってしまった例
 なども載っていますが、それに対しても
 「こういう人たちは自分が正しいと信じ切っている」で終わり。

 江藤淳の解釈も、ちょっと違うんじゃないかなぁ…。

 そもそも新書というのは専門書のとば口みたいな位置づけで、専門分野を判りやすくかつ
 包括的に解説したものと思っていました。その昔、「哲学のすすめ 」とか
 「正常と異常のはざま―境界線上の精神病理」とか「悪について」とか「犯罪心理学入門」とか
 「アイデンティティの心理学」とか「自殺の心理学」とかとか読み漁ってた時期がありましたが、
 内容は判りやすく、しかしぎっちり詰まった良書ばかりだったけどな。

 それが「Web進化論」が当たってしまった頃からタイトルはやたら長くなるし
 級数はでかくなるし中身は薄くなるし。…まあいいや。

 で、ペットに話を戻すと、我が家にも「上のおじょうさん」という名前(あくまでWeb上での
 通り名ですよ)の女王様ねこがおり、そして私はかなりの親ばかだと自認しておりますが、
 それでも一応の線引きはあるんですよ。寝室は進入禁止(つまり寝るときは別々)とか
 人間の食べ物は与えないとかそれなりに。

 以前別の本で、ペットに人間の食べ物、それもポテトチップスとかを大量に与えていて当然
 ペットはでぶでぶ。で、「人間の食べ物は与えない方がいいのでは?」と言ったらその飼い主は、
 「なんで? かわいそうじゃない!?」と言ったそうですよ。

 「かわいそう」!
 日本語間違えてるというかなんというか。

 こういう飼い主も(一部の行きすぎた)動物愛護運動も、結局は「かわいそう」のおしつけで、
 その行為がほんとうに対象にとって良いことであるかどうかの検証は為されてないように思います。
 そして最終的に悪い結果が出ても、「でも良かれと思ってやったのだから」免責されるべき
 ことであると思っているように感じます。人間なんて所詮は自己満足を追求する生き物ですが、
 それが結局は害をもたらしたり、他者の犠牲を強要するのであれば全く迷惑です。

 ペットに限らずコミュニケーションの本質は、まず対象を「理解」し、なにが対象にとって
 良いか、喜ばれるか、求められているかなどを「想像」し(「なにもしない」という行動も含め)
 実行に移すことだと思うんですが、そういった段階を全てすっ飛ばして、「かわいそう」という
 自分の情緒的衝動だけで行動に移してしまう人が増えてきてるんですかね。

 まあ人間同士の間でも自分の情緒的衝動だけで動く人が多いですから(そういう場合は得てして
 「余計なお世話」になるケースが多い)、言葉をしゃべらない動物に対しては更に
 そうなってしまうのかも知れません。

 そりゃああたくしも下のおじょうさんが死んでしまったときはペットロス的症状に陥りましたし、
 上のおじょうさんが死んでしまったら相当落ち込むだろうと思いますが、それでも、
 良くも悪くも猫は猫で、犬は犬でしかないと思うのですが。


イヌネコにしか心を開けない人たち」 香山 リカ ★★
11UvYfxCHdL._PC_SH50_.jpg ジャンル分けに一瞬悩みましたが。

この著者の(というか詩人の)「良いおっぱい悪いおっぱい
パパはごきげんななめ」 「居場所がない!」あたりを読んだのは、
もう10年以上前じゃないかしら。
今回新刊を見つけて著者の出版物一覧を見たら、読んでない本を発見!

おなか ほっぺ おしり トメ」「伊藤ふきげん製作所」いずれももう 古本しか
ないので、amazon でユーズド品を取り寄せ。

なんとなんと。「おなかほっぺおしりそしてふともも」あたりまであんなに
小さかったカノ子とサラ子がこんなに大きくなったんですね

ほうほう思春期ですかしかももうひとりトメまでいるんですか
ええええっ !? 西さんと離婚れちゃったんですかあっ!
なんだか勝手に、昔近所に住んでいた一家に久しぶりに会った気分。

それでもってこの「とげ抜き」です。
いつも思うのですが、これほど繊細でこれほど強いひとがいるだろうか。それはどんな逆風にも
しゃなりしゃなりとしなやかにしなり、決して折れることのない強さ。

そして相変わらず言葉をまるで自分の肉体の一部のように扱う。
甘やかすのではなく辛辣に。これでもか! と使う。
言葉は呪いであると識りながら、流れるように言霊を紡ぐ。

まったく、参るなぁ。


とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起」 伊藤 比呂美  ★★★★
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