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本はごはん。
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978-4-591-11158-1.jpg  昭和38年のお正月、冬の大雪山で11人のパーティが遭難。
 リーダーである1名のみ生還、残る10名が死亡という遭難事件の
 唯一の生還者であるリーダーのドキュメンタリーです。

 事件のことは、事故報告書提出後封印してこられたようですが
 40年以上の時を経て、少しずつ語れるようになったということでしょうか。

 沢山の経験を積んでいながらも、ほんの少しのタイミングのズレ、
 気のゆるみ、ひとつひとつは大したことないものが積み重なって、
 最悪の事態となってしまいます。

 事故の経過はもちろん、リーダーの幼少の頃から掘り起こし、
 その人となりの全体像を上手く描き出していると思います。

 しかし、仲間を、それも自分が率いてきたチームの仲間10人を一度に亡くすという壮絶な
 体験のあと、その遭難の際にも先頭に立って捜索隊を引っ張った親友もまた2年後に山で
 逝ってしまうという体験は、もう想像しようにも想像力を遙かに超えてしまっています。

 その親友の死までも自分の責任ととらえ、身体障害者となりながらも
 精一杯生きてきた彼の生き方は素晴らしいものでありますが、

 ただ欲を言えば、なんというか、恐らく本人が人前では弱い部分を一切さらけ出さないんで
 しょうけれども、心の葛藤みたいなものをもう少し見せてくれても良かったかもと思います。

 特に、事件当時の記述に散見される「若者特有の驕り」みたいなものを、どう総括したのか、
 など。


いのちの代償」 川嶋 康男 ★★★★
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32143300.jpg  はじめは「不倫ものかぁ…、不倫ものねぇ…」と思ったのですが
 タイトルの「十年」がやっぱりインパクトあるなぁと思い、読んでみました。

 10年越しの不倫をしている当事者、もしくはその周辺の人々に取材した
 ドキュメンタリーものですが、これが思った以上におもしろい。
 
 なかなか著者の観察眼と洞察力が鋭いです。
 取材対象者から実際に出てくる言葉だけでなく、彼女たちの背景にあるもの
 にも必死に目をこらしています。

 ただ、沢山のケースが紹介されていますが、成就したケースが1件もないのは
 ちょっと不思議な感じもしました。そういうケースではなかなか取材に応じ
 ないのかもしれないし、それがふつうだとも思いますが。
 
 「依存」とか「自立」と言うことについて考えさせられます。
 女性が経済的に「のみ」自立できても、結局のところそれは「都合のいい女」への近道でしかなく、

 では精神的にも自立「できている」と自己評価する女性が、「私は不倫でいい」と納得ずくで
 関係を成立させた場合、妻子を持ちながらそういう女性との付き合いを10年以上にもわたって
 継続することのできる既婚男性という存在が私には甚だ不思議で、

 その場合はその既婚男性も精神的自立が果たせていないのではないかと、そしてそんな男性を
 選んだ「自称自立した女性」は、本当に自立できているのかと疑問に思ったりもします。

 まあ不倫に限らず、自分の人生ですからその選択に付随するリスクと責任を自分で背負う覚悟
 があるのならいいんじゃないでしょうか。

 結局のところ、自分は何を求めるのかという価値観の問題のように思います。
 それと、「愛」「恋」をどう定義するか、かな。

 「不倫」ということを全て頭から否定するつもりはありませんが、周りや相手や問題や、そして
 なにより自分自身から逃げてたら、ずるずる行くばっかりじゃないかしら。
 不倫だけでなくて、結婚も同じだと思うけど。


十年不倫」 衿野 未矢 ★★★
70732001_20090727134844.jpg  仲間が山で遭難してしまい、遺体発見まで約半年の捜索隊活動、その後も
 報告書作成など数年間にわたって仲間の遭難事故と対峙し、格闘した記録で、
 これ以上のノンフィクションがあるだろうか、という本です。

 ひとつひとつの情報に一喜一憂して振り回されたり、自分たちの「希望」が
 情報にバイアスをかけてしまったり、捜索隊全体に暗く重苦しいムードが
 漂いしかし、ささいなきっかけでハイテンションに明るくなったりと、

 リアルな事実の記録が紡がれています。

 私も数年前まで山に登っていましたがそれは「登山」というほどのレベルの
 ものではなく、第1の目的が「山頂(付近)で食べるお弁当」で、
 第2のそして最大の目的が「下山してからのビール」というどうしようもない
 なまくらトレッキングでありましたがそれでも、

 息を切らしてたどり着いた場所で見る風景はやはり格別のものであり、その風景はたとえば、
 ヘリコプターでそこへ降り立っても(同じ風景でありながら)見ることの出来ない風景なの
 ではないかと思ったりしたのであります。

 冬のアルプスという過酷な条件下で山を目指す人たちはの連帯感というか結束は強いものだ
 とは思いますが、それにしても本当に頭が下がる捜索活動です。時には仲間割れの危機にも
 見舞われながらも遭難した仲間3人を見つけ出します。

 惜しむらくは、捜索活動を共にした仲間達のキャラクターをもう少し掘り下げて欲しかった
 とも思いますが、「仲間の遭難」という非常事態下、しかも今後も付き合いの続く人たちで
 しょうから、難しいところもあるのかもしれません。

 「なぜ彼らはそのルートをたどったのか」

 この謎は未だに解けていないようですが、いくら頭で考えても
 「その時、その状況下の、その場所」
 にいなければ判らないこともあるのでしょう。


いまだ下山せず!」 泉 康子 ★★★★
756.jpg  懐かしの「噂の真相」。
 その編集者だった著者の作品ですが、「内幕ものかな…」と思っていた
 想像を良い意味で裏切ってくれたように思います。

 ある種の「編集者成長記」とでもいうのでしょうか。
 新聞記者を皮切りに、いろんな事件を通して成長していく姿がここに
 あります。

 神戸新聞記者時代に阪神大震災と神戸連続児童殺傷事件に遭遇したことは、
 著者にとって(地元の事件だけに)辛いことも多かったようですが、
 しかし記者、編集者として大きな成長となったのではないかと思うし、
 その時の気持ちを忘れないで欲しいなぁとおもいました。

 しかしこの著者の性格(を想像すると)「大きなお世話や」と言われるんだろうなぁ。


「噂の眞相」トップ屋稼業」 西岡 研介 ★★★
610050.jpg  この著者のルポルタージュはしっかりしていますね。

 DV、共依存、幼児虐待、家庭内殺人など、家庭内での犯罪についての
 ルポルタージュです。

 被害者だけでなく加害者にも取材しており、また裁判での様子や近所の
 反応など、事件を複眼的にとらえているのがいいと思います。

 また単に事件を追うだけではなく、法整備や福祉のあり方、
 法律の評価できる点とこれからの課題なども、判りやすく紹介しています。

 それにしても。
 もともと日本は、確かに「家庭内不可侵」みたいな雰囲気があって、家庭と
 いうのはある種の「聖域」だったように思うんですが、残念ですが現代ではそれはもう
 「神話」なんですね。

 やっと政治家が重い腰をあげて法整備を始めたところ、という感じですが、まだまだ家庭内
 犯罪は「加害者有利」なように思えて仕方ありません。

 結局家庭も職場も社会も、弱者にしわ寄せが行くんだよなぁ。


家庭という病巣」 豊田 正義 ★★★★
32186019.jpg  女性の更年期を真正面から扱った本。
 医学書以外で、こんな風なレポートものはなかったんじゃないかなぁ。

 更年期は50歳ブラスマイナス5歳で始まるのが一般的らしく、私がその年に
 至るにはまだ猶予があるモノの、最近立て続けに白髪をみつけて自分でも
 びっくりするくらい動揺してしまった私は、おそるおそるページをめくって
 みました。

 著者の友人のネットワークをフルに使って、彼女たちの更年期の症状や
 性生活のかなりつっこんだところまでレポートしており、また更年期障害の
 対応として婦人科医、漢方医、心療内科医、はてや「セックス奉仕隊」まで
 取材しています。

 つまり更年期の症状(いやほんと多種多様かつ多方面に症状が出るんですね…)や
 それに対する様々な治療法が、いろんな角度から紹介されており、更年期の正しい
 知識を得るにはとても良いと思うし、特に男性も読んだ方がいいと思う。
 
 そして「更年期」が「性生活」とこれほど密接に絡み合ってるとは思っていませんでした。

 同時に見えてくるのは、女性達の様々な「性」に対する考え方、スタンスです。
 どうも「不倫」の問題はついて回るらしい。

 「婚外セックス」も「不倫」も、一概に良いとか悪いとか言えるものではないと思うのですが、
 何と言えばいいのかな、究極の目的は「セックス」ではないんじゃないかと、そう思うんだけどな。

 もちろん「セックス」は重要だけどひとつの表現手段であって、結局ひとは誰かとお互いに
 認め/認められ、求め/求められる関係を築きたいんじゃないかと、そう思うんだけど。

 だから婚外セックスも不倫も、緊急避難的にはありだと思うんですが、たとえばこの中に出てくる
 『自分は、セックスを(夫以外の男と)繰り返すことによって女として進化していく選ばれた女性
 (要約)』みたいな考え方は、私にはよく理解できないけどなぁ。

 更年期を過ぎたらシベリアへ行く(=セックスから撤退? 卒業? する)のかニューヨークへ
 行く(=不倫、婚外セックスに踏み出す)のか、それしか選択肢がないのは淋しいなぁ、
 と思うのだけれど。


快楽(けらく)―更年期からの性を生きる」 工藤 美代子 ★★★★
32247572.JPG  女性の納棺士が、仕事や仕事を通して感じたことを綴ったものです。

 文章がかなり軽いです。これは年配の堅い方からは批判が出るかもと思う
 くらい軽いです。でもこれはこれでいいんじゃないかな。「死」という
 ものを良くも悪くも「穢れ」とか「非日常」なんかに切り離して蓋をして
 しまうよりよっぽどいいと思います。

 ただ文章が、日本語が…と思ったら、これもブログ本なんですね。
 うーん。内容的にも、わざわざ本買わなくてもブログで十分かも…。
 すいません…。




今日のご遺体 女納棺師という仕事」 永井 結子 ★★★
32247222.jpg  かなり久しぶりに上原氏の著作を読みましたが、
 淡々とした文章ながらも温かい眼差しは相変わらずですね。

 ハッピーエンドというか、ああ良かったねぇで終わるものもありますが、
 やるせなさの渦中のひと、思い現実を背負ったままの人など様々です。
 みんなそれぞれに、いろいろあるよね。

 しかし「ママ友」のはどーしても理解できない。




にじんだ星をかぞえて」 上原 隆 ★★★
059651.jpg  またしても裁判傍聴記です。

 ここに取り上げられているのは、歯科医の息子が妹を殺してバラバラにして
 しまった事件とか、渋谷の「セレブ妻」が夫を殺してバラバラにした事件、
 何人かの女性を監禁して捕まったイケメンの「監禁王子」事件など、
 メジャー級の事件が並んでいます。

 これだけメジャー級の事件になると、新聞社がネットで「裁判傍聴記録」を
 詳細かつ(ほぼ)リアルタイムに載せていたりするので、内容については
 ある程度知っていますが、

 新聞社の裁判傍聴記録が、その属性の特徴上、客観的「報道」であるのに
 対し、この本はある意味等身大というか、「被告席に着くまでの動作が
 30代とは思えないほどノロノロだった」とか「ボンヤリした鑑定医」など、
 報道では削除されてしまいがちな情報も記載されているため、情景が
 想像しやすい。

 一方で、メジャー級の事件、つまりは数度の公判、論告求刑、判決と、10回前後にわたる
 法廷を20ページ前後に纏めているため、よく言えばコンパクトでありますが、捨象されて
 いる部分もかなりあります。

 それにしても。
 裁判員制度問題が浮上してからずっと疑問に思っていることがふたつ。

 ひとつは、なぜ裁判員が量刑も決定するのか、ということ。有罪か無罪かを決めるのは
 まあいいとして、量刑についても裁判員が決めるとなると、同様の事件で量刑がかなり
 違ってしまう、という事態が出てきちゃうんじゃないのかしら。

 そしてふたつめが「公判前整理手続き」。
 これは公判前に裁判官と検察官、弁護士が、「争点」や「証人、証拠」について「合意」を
 とる手続きだとおもったんですが(事前にこの辺を整理しておくとによって、裁判の迅速化が
 図れる)、

 この「公判前整理手続き」には裁判員は一切タッチしない。しかしこれ、穿った見方をすると、
 裁判員抜きの場で、「公判のストーリー、シナリオ」みたいなものが作られてしまう、という
 ことはないのかしら。

 そのあたりまで踏み込んだ本はないのかな。


あなたが猟奇殺人犯を裁く日」 霞っ子クラブ ★★★
52fd3aee.jpeg  うーむ。
 遙か昔に読んだ「前世療法」みたいな感じかなぁと思って読みましたが…。
 正直、客観性が著しく低い(と思える)。

 中国のとある奥地の村に、前世の記憶を持つ人たちが結構いて、その人達が
 経験した(覚えている?)「生まれ変わり」について取材したレポートです
 が、その場所を明確にしないのはいいとしても…。
 
 まず、その一帯の人口がどのくらいで、前世の記憶を持つ人がどのくらい
 居るのかとか、その土地の支配的死生観や弔いの儀式などの「死」に対する
 支配的意識、また、
 
 「前世の記憶を持っている人」に対して、「前世の記憶を持っていない人」
 は、どのような感情を抱いているのか、とか、

 背景となる情報が全くない。文化人類学並のデータや考察までは要求しないけど、とにかく
 バックボーンになる情報がなさすぎる。

 そんななかで、前世を記憶している人たち84人だかの証言がつらつら並んでいますが、
 これだと「ふーん」としか言いようがない。

 なんでも「スープ」を飲まなければ前世の記憶を持ったまま転生するそうです。

 以前何かで聴いた「忘却の泉」に似ています。生まれ変わる前に「忘却の泉」に落とされ、
 その泉は底に穴が開いていて(しかし水はその穴から抜けない)、その穴から落ちて転生する
 んだそうですが、その際、泉の水を飲んでしまうことによって前世の記憶を失うという説です。

 まあこの手の話は洋の東西を問わず、結構似た話が多いですしね。

 ここに書かれていること全てに懐疑的に思っているわけでもありませんが、
 「何とも言いようがない」というのが正直なところです。

 ただねぇ…占いで株が大当たりして億単位の儲け、あなたもどうぞ! なんて書かれちゃうと、
 胡散臭さが限りなく…。
 
 あと、編集者ちゃんと文章見てるのかな、と思った。この文章はちょっとなぁ。


生まれ変わりの村1」 森田 健 ★★
138151.jpg  元警視庁刑事による警察裏話集。
 ちょっと露悪的なところもないでもない。

 一時期裏金問題などで警察組織が叩かれたことがありますが、
 「一生懸命やっているひとたちもいるんだよ」ということを訴えたかった
 のだろうと思います。確かにそれはそうだろうとも思います。

 ここに書かれているそれぞれの逸話は(ちょっと自慢話に思える部分も
 あるけど)まあ面白く読めなくもないですが、なんというかエピソード集
 以上のものになっていないのが残念です。

 警察という機構、組織、政治との関わり、現場の考え方やあり方、そういったことに
 対して、著者なりの視点とか問題提起とか、そういうものが潔いくらい「ない」んですよねぇ…。


警察裏物語」 北芝 健 ★★
32034703.jpg  タイトル通りの裁判傍聴記です。しかしまあ25年は長いなぁ。

 しかしこの手の本が増えてきているにも関わらず、大概のこの手の本で指摘
 されている事柄、例えば最高裁は検察側が上告すると扉を開けるけれど、
 被告側からの上告にはめったに扉を開かないとか、

 警官などが証人で、しかしその証言について傍聴人が明らかに疑問を感じる
 ものであってもほぼ無条件に採用されてしまうとか、
 
 痴漢被害者の証言偏重(と感じられること)とかが、

 相変わらず繰り返されているように感じるのは気のせいでしょうか。

 最後の章だけが救いかなぁと思います。


裁判中毒―傍聴歴25年の驚愕秘録」 今井 亮一 ★★★
ihin_obiari.jpg  著者は「遺品整理」の草分け的存在であり、誠実かつ真摯にその
 仕事に向き合う姿にはまったく頭が下がります。

 遺品整理業で関わった様々なケースについて紹介されており、なかには
 まるでドラマのような展開もあります。そういう意味で、ケース集としては
 いいのかもしれません。

 しかし、正直なところ、表面的な印象が拭いきれない。

 もちろん親族を失うという非日常の渦中に放り込まれ、精神的に大きな
 ダメージを受けているクライアントに、個人のことをあれこれ聞けるわけは
 ないと思いますし、

 個人のプライベートなことをだらだらと書くわけにもいかないのでしょう。
 しかし男性と女性の傾向の違いとか、「孤独死」と「孤立死」とか、ちらりと出てきており、
 
 そのあたりをもう一歩掘り下げて欲しいなぁというのも正直なところです。
 これだと、ブログで十分なんじゃないかなぁ…と思ってしまうのですすいません。


遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実」 吉田 太一 ★★★
610314.jpg  今や殺人事件の約半数が「身内の犯行」だそうです。
 親が子を、子が親を、妻が夫を、そして祖母が孫を殺す時代。

 10の事件が纏められており、ケース集としてはいいと思います。

 どの事件も背景には「親子関係」があって、特に母親が、子供を自己実現や
 自分の自己愛を満たすための手段、道具としてしまった場合、悲劇的な結果に
 繋がるリスクが格段にあがるのでしょう。

 ただ、「我が子を殺人者にしないために」とありますが、ちょっと表層的
 かなぁと言う気がしないでもない。
 
 健全な親子関係を築くことの重要性を訴えており、それはとても大事なことだと思いますが、
 例えば愛されないで育ったがために子供を愛することが出来ず苦しんでいる親や、共依存に
 陥ってしまった妻は実際どうすればいいのか、

 不幸にもDV家庭で育ってしまった人が家庭を持ったとき、DVを連鎖させないためにはどう
 したらいいのか、そのあたりもうちょっと踏み込んでみて欲しかったかも。

 ケースの中でちょっと薄ら寒い気がするのは、住み込みの管理人をしている両親を殺して
 しまった高校生のケースです。

 これを読む限り、大人に「ウケる」謝罪の言葉を流ちょうに話し、周りの大人たち(弁護士、
 心理士、裁判官、支援者などなど)を「言葉によってコントロール」する自分に酔っている
 ような印象を受けます。

 犯行動機が実年齢に比してあまりにも未成熟であるように感じられることと併せて、
 「大人をコントロールしている感」、つまり「幼児的万能感」に浸っているように思えて
 仕方ないのです。
 
 それにしても。
 思春期なんてものは、子供が精神的に親殺しを果たし、自立していく時であると思うのですが、
 上手く乗り越えられないケースが増えてきてるんでしょうか。

 それでも実際に「殺人」という行為にまで至るには、相当な溝があると思うんですが。


身内の犯行/a>」 橘 由歩 ★★★
133871.jpg  順番が逆になりましたが(発行年度は「累犯障害者」のほうが先)、
 この著者の1作目である「獄窓記」です。

 「累犯障害者」は刑務所で出会った障害者達と、障害者を取り巻く現実に
 スポットが当たっていましたが、こちらは事件を起こす前から出所まで、
 自分の心情と刑務所での現実が中心となって展開されています。

 自分が被告となった裁判で、著者はその印象を

 「弁護士の言う善良の塊である自分と、検察の言う極悪非道の塊である自分
  との戦いが裁判というもので、しかし本当の自分はそのどちらでもない」
 (正確な表現ではありません)

 というような記述があってとても印象的です。

 それにしても、秘書給与詐欺で執行猶予なしの実刑というのは他のケースと比べても重いよう
 な気がします。「見せしめ」「スケープゴート」と思われても仕方ないんじゃないかな。

 結局収容された刑務所で、「指導補助」という作業に就き、沢山の障害者の世話係をすること
 になりますが、しかしここでの著者の働きは本当にすごいというか、自分は絶対にできないなぁ
 と思います。

 口では「福祉」を叫んでいても、本当に実行できる政治家なんてほんとうに居るんでしょうか。
 そういう意味でも、こういう人にこそまた政治の世界に戻って貰った方がいいんじゃないか、
 と思ったりもします。


獄窓記」 山本 譲司 ★★★★
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