bookshelf 『あんたのバラード』 島村 洋子 忍者ブログ
本はごはん。
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3992650-1.jpg<br /><br />  タイトルにもなっている「あんたのバラード」やチェッカーズの
 「星屑のステージ」、「悲しい色やね」など、今や懐かしい、しかし名曲の
 数々が短編のタイトルになっています(短編の扉には歌詞付き)。
 そういう意味では企画モノですね。
 
 島村洋子は決して嫌いな作家ではなく、いやむしろ好きな方なんですが、
 この作品集はちょっとそれぞれの歌とストレートにつなげ過ぎかなぁ、
 と言う気がしなくもない。もうちょっと捻るというか、読み終わってそれから
 「ああ、そういうことか」と判るような歌の世界観の広げ方というか、
 そんなのを期待していたのでちょっと残念。

 短編のなかのひとつに、出奔してしまう主婦の話があるのですが、
 これがまた「無敵荘夜話」の2編目の短編とだぶって見えます。
 
 だぶってみえるのはどうでもいいんですがこの究極の逸脱とも言える「出奔」。
 一応社会生活をそれなりに営んでいるものの実は根っこに強力な引きこもり指向をもっている
 あたくし、この「出奔」というのにとても興味があります。 

 ある日突然、何の前触れもなく姿を消し、本人はそれまでの一切合切を捨てて、
 着の身着のままで漂着した土地でまったく新しく生き直す。

 のが「正しい出奔」だとすると、確かにそれを実行する人は少ないのでしょうが、しかし考えて
 みればこの出奔願望は誰にでもあって、実際に人それぞれのやり方で出奔しているのではないか、
 すこし前に流行った「海外短期留学」だの「自分探し(の旅)」だのはたまた今はもう本来の
 意味を外れてきているのではないかと思える「エコ」だの「ロハス」だの、みーんな「出奔」の
 一形態、もしくは「プチ出奔」なのではないか、そういう意味ではあたしも「プチ出奔」して
 いるなぁと、そんな風におもいました。

 出奔とはつまり「自分の居場所探し」であり、それは突き詰めれば「本当の自分」探しで、
 しかし「本当の自分」なんてモノはどこにもなくて(と、「免疫の意味論」にも
 「ヤクザの文化人類学」にも出てきましたね)、
 「霧笛荘夜話」の言葉を借りれば
 「青い鳥を探しているうちに迷子になっちゃった」のが出奔なのかもしれず、そういう意味では
 「プチ出奔」を通して自分の居場所を「創る」ほうが穏当かもしれません。

 「大坂で生まれた女」が16番まであるということ、つまりはあの歌には続きがあるということを
 初めて知りました。


あんたのバラード」島村 洋子 ★★
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