bookshelf 『家族』 南木 佳士 忍者ブログ
本はごはん。
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02350566.jpg  著者は現役のお医者さんで、うつ病を患っていらっしゃるようです。
 
 タイトルにもなっているひとつ目の短編「家族」は、限りなく自叙伝に近い
 ようですね。
 死を目前にした年老いた父親をめぐり、息子(著者)、姉、義母、そして
 死にゆく父本人のそれぞれの心情が展開されていきますが、
 
 同じ状況の中にあって、家族でありながらも思うことはばらばらで、そして
 事実に対する認識ですら異なる「家族の現実」が描かれています。
 しかしそれでも「家族」なんでしょう。
 
 エッセイ風の短編も収められていますが、そのなかでとても驚愕することが。

 80歳を超えるおばあちゃん、長年働き続けて首のしわの中まで真っ黒に日焼け
 しています。
 このおばあちゃん、自分の主治医である著者の作品(著書)はすべて読んでいます。
 これだけでもびっくりなのに、ある日このおばあちゃんは

 「あんたの文章は静かでいいけれど、書くことがみんな後ろ向き過ぎていけない。
  これはあたしが若いころに読んで、力をもらった本だからあんたも読みなさい」
 
 と、岩波文庫の『自省録 』(マルクス・アウレリウス著)を、著者に差し出すのです。
 
 これが驚愕せずにいられようか。
 古い時代に生き、嫁ぎ先に仕え子供を育て、働きずめでありながら、お風呂をまきで焚きながら
 本を読んでいたのです。そして今も。
 
 おそらく暮らしはさほど豊かでもなく、自由も自分の時間も持てなかったであろうおばあさん
 ですが、なんと心は豊かで、自由だったのか。
 こういう人を本当の文化人というのではないかと思う。

 あたしも「自省録」読んでみよう。


 「家族 」 南木 佳士 ★★★
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