bookshelf 『偽りの明治維新―会津戊辰戦争の真実 』 星 亮一 / 『修理さま 雪は』中村 彰彦 忍者ブログ
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31996922.JPG<br />  幕末から明治維新へと突入する動乱の時期、この頃のことについて
 あたくしは「会津びいき」を自認しておりますが、それにしても…。

 初めのうちは「ふんふん」と読んでいたのですが、だんだんと
 「ん?」「え?」「あれ?」「……」。
 
 著作の中において著者が主観を入れるべきではない、などとは全く
 思っていません。しかしこの本は著者の主観というより思いこみ、
 感情的な表現が多いような気がします。

 例えば「…の日記には、薩長に対する恨みは一切書かれていなかった」
 としながらも「しかし強い怨念を抱いていに違いない」という余計な一言
 というか決めつけというか、そういう表現があちこちに出てきてちょっと食傷します。

 挙げ句の果てには「原爆」(しかも他人の言)まで引っ張ってくるのはどうなんだろう。
 参考文献の少なさにもちょっと唖然とします。

 また、著者は「薩長憎しだけでなく、会津の戦略不足などの苦言も呈してきた」
 と言っていますが、この本を読む限り、そうは思えません。

 神保修理という会津藩の家老の長男が切腹させられた件に関して、「気の毒」とひと言
 で終わりにしていますが、この神保修理の切腹は、会津藩内に於ける権力闘争であった
 という「説」もあったりします。

 あくまで「説」なので真偽の程は判りませんが、もしそうだとすると、鳥羽伏見の戦いが
 勃発しているのにもかかわらず、藩内の権力闘争であたら優秀な人材を散らしてしまう。
 しかしこの本は、こういった類のことには一切突っ込んでいきません。

 正しい歴史を伝えると言うことは大切だと思います。しかし今はもう、会津を討てと
 命じた宸翰も錦旗も捏造であったことや、会津の人たちがなめた辛酸、薩長の仕打ちなど
 広く知られるようになってきていると思うのですが。
 そんななかで被害者意識だけで突っ走ってしまうと、かえって逆効果ではないかと思います。


31583488.JPG<br />  しかしこれだけだと何なので、会津関連で秀逸だと思われる本を
 1冊あげておきます。

 しばらく前に読んだ本ですが、おそらく膨大な資料を読み込んで著したと
 思われる連作短編集です。当時の会津の悲劇、絶望、そして気質などが
 とてもよく表現されています。

 タイトルにもなっている最初の短編「修理さま 雪は」は、前述した
 神保修理の妻、雪の話ですが、戊辰戦争が勃発し実家は全員自刃、
 雪はひとりで、殺戮、強奪、暴力、陵辱のなかを死に場所を求めて
 彷徨います。

 彷徨いながら彼女は、切腹した夫に心の中でいろいろな思いを
 語りかけます。

 しかし最後の最後、彼女が夫に語りかけた血を吐くような心の叫びは、封建時代を
 生きた女性の叫びであり、会津の悲劇だけにとどまらない作品にまで昇華されています。
 
 週末、本棚ほじくり返してもう一度読んでみよう。


偽りの明治維新―会津戊辰戦争の真実」 星 亮一
修理さま 雪は」 中村 彰彦 ★★★★★
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