bookshelf 忍者ブログ
本はごはん。
[3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

149010.jpg  子供時代、寂しさを紛らわせるために架空の友人を作り上げることは
 「アンネの日記」をみても判るとおり、洋の東西を問わず普遍的なこと
 なのかもしれません。自分もそんなことをしてたような気もしないでもない。

 で、大人になってからその子供時代の架空の友達「あねのねちゃん」が
 また現れ、自分にできない「復讐」をやってくれるのだけれど、
 その手法が…。そして…。というものですが。

 初めのうちは面白かったんだけどなぁ…。
 すごく良いと思ったんだけどなぁ…。後半の展開はどうなんだろう…。
 この解決の仕方ってどうなんだろう…。

 あねのねちゃんによって主人公が自分を肯定し自立していくところは
 いいと思うのですが、

 そもそも主人公の女性の描きたかがちょっと薄いところとか、恋愛がメインではないとは思う
 ものの、素敵な人が現れて「ええもうケッコンすか!?」な展開とか…。

 そしてこの(ラストではなくて)決着の付け方がどうしても、「なんだかなぁ」という感じが
 否めないのであります。


あねのねちゃん」 梶尾 真治 ★★
PR
129752.jpg  数年前、40代も後半の男が、10歳の女の子を誘拐して沖縄で捕まった
 事件ですが、この事件を記憶していたのは当時の報道で、

 「主導していたのは10歳の女の子の方だったらしい」

 とあったのが強い印象を残しているからだと思います。

 この事件について、当時10歳の女の子を除き(さすがに会えなかった
 らしい)、加害者当人やその家族に対して綿密な取材を重ねて書き上げ
 られています。

 まず気になるのはこの加害者(である40代後半の男性)、著者の取材申し込み
 を受け入れ、ものすごい量の手紙を送ってくる自己顕示欲の強さ。

 そして彼の主張は、いみじくも彼が刑務所内で得た評価「自分を正当化しすぎている」
 「まるでヒーロー気取り」以外の何物でもないように感じます。

 10歳の少女を救いたかったと言う気持ちが全くなかったわけではないでしょうが、
 それよりも自分が救われたかったということとそして何より、性欲に負けただけというか、
 彼の性癖が少なからず影響しているように思います。

 少女の家族もみんな少しずつ歪んでいて、そんな中で少女が生きて行くために彼女が学んだ
 処世術はとても悲しいものであるとも思います。

 この著者の作品は始めて読みましたが、本作はとにかく構成が素晴らしい。


帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件」 河合 香織 ★★★★
04379904.jpg  まもなく閉鎖される、78年続いた遊園地が舞台となっています。

 幼い頃この遊園地を訪れたことがあったけれどもう長いこと訪れること
 もなかったひとたちが、閉鎖されるということをきいてやってきて、
 ひととひとの線が時代をも超えて交錯していきます。

 連作になっているのですが、正直なところ、「閉鎖直前の遊園地」つながり
 だけで良かったのではないかと。つまり人物も無理に関連させなくても
 良かったんじゃないかなぁと、連作好きな私が思う。

 それぞれのストーリィも悪くないんだけど、なんか無理に他の短編の
 主人公を脇役で引っ張ってきてるような気がして…。

 まあもちろん、あちこちで出てきていながら肝心の本人同士がどうやら会えて
 いないらしい、というのもありますが、ものすごく狭い世界で完結させようとしているように見えてしまう。

 悪くないんですけどね。全般的に決して悪くないんだけど、もう一声期待したい。


世界でいちばん淋しい遊園地」 西田 俊也 ★★★
40611.jpg  「ハードボイルド・エッグ」の続編です。
 探偵なのに舞い込んでくる依頼は相も変わらずペット探し。
 新しいヒロインはなにやら訳ありだし、ヤクザにも絡まれるし。

 相変わらず面白いんですが、ちょっと冗長に感じてしまったのは
 なぜだろう。

 テーマは変わってませんね。心のよすがとする「理想」と、それとは
 ほど遠い「現実」。そのとき、人はどのように生きるべきなのかー。

 引きこもっちゃうのも世間に背を向けるのも簡単ですが(いや簡単じゃ
 ないのかな)、それでもやっぱり、自分が今ある場所でじたばたと
 足掻くしかなく、
 
 時にみっともなかろうが、滑稽だろうが、そして淋しかろうが、「生きる」ってことは
 そういうことなのかもしれません。


サニーサイドエッグ」 荻原 浩 ★★★
04366103.jpg  中山可穂という作家は不思議な作家であると思う。
 ビアンであることをカムアウトして、ビアン小説ばっかり書いているから、
 ということではなくて。 

 この本に収められている短編はどれも女性同士の恋愛を扱っていて、
 たとえば冒頭に収められている「夕鶴」は、乱暴にいってしまえば
 出会って別れる(その別れ方は悲劇的であるけれど)それだけの
 話であって。

 しかしこの話に限らずどのストーリィからも、「渇望の悲鳴」のような
 ものが聞こえてくるようで、そしてそれは何に対する渇望なのだろうか、と。

 それについて解説で酒井順子が、同性愛に付随する
 「子供の不在(子供を産み出せない愛)」に対する不安と指摘していますが
 それだけではないように思うのです。

 どちらかというと、同じく酒井順子が指摘している「いつ終わるともしれない」ものに対する
 不安と、そしてそれを求めずには生きていけない自分に対する悲鳴なのではないかと。

 「安定」と「安住の地」を渇望しながらも、きっとそこに安住することはできないであろう
 自分に対するもどかしさ。
 
 だとすれば、彼女はいつも同性愛をテーマに描いているけれども、そこで真に語られているのは
 性別も何も関係ない、普遍的なものであると思うのであります。


花伽藍」 中山 可穂 ★★★
1102886303.jpg  幼稚園と大学がたまたまミッション系で、聖書そのものも、小説風に書かれた
 聖書物語的なものもそこそこ読んでいますが、それでもやっぱり
 「聖書そのもの」は読み下すにはかなり難解なシロモノです。

 で、タイトル通り「聖書の読み方」の本です。

 冒頭で「なぜ聖書は読みにくいのか」、学生からのアンケート結果を基に
 いくつかのカテゴリで整理し、次にどう読むのが良いのか、著者のアドバイス
 が述べられている形式ですが、
 
 なるほどとか、ああそういう風に解釈すればいいのか、ともうところも多々
 あるものの、この1冊を読んだだけで聖書を一人で読破&理解するには
 まだまだ難しいなぁというのが正直なところ。もとより著者も
 「聖書は(中心に)躓きながら読む」ものだと言っていますが。

 印象的なのは、「キリスト教信者ではないひとが抱く聖書に対する戸惑いを理解し、彼ら
 にも判る言葉で語る努力が関係者には必要」というところ。もっとそうなれば、最終的に
 信仰の道にはいるかどうかはともかく、今よりいろいろと理解し合えるんじゃないかと思う
 のだけれど。


聖書の読み方」 大貫 隆 ★★★
276652-2.gif  ジャンル的にはミステリなんでしょうかね。連作になってます。

 未来が見えてしまうという設定で、運命は変えられるか、つまりは
 どう生きるかということがテーマでしょうか。
 
 夢を追い続けても諦めても、きっと「もしもあのとき…」という思いは
 一生つきまとうものなのかもしれません。結局のところ、どちらの道を
 選ぶかということが重要な問題なのではなく、きちんと自分で選択する
 ことと、どちらの道を選んだとしてもどう生きていくかということが 
 大切なんでしょう。

 あとこの著者、若者の持つ寄る辺の無さややるせなさ、若者特有の
 不安定さみたいなものに敏感な気がします。

 それと脚本家出身らしく、ああなるほどとおもいました。場面描写がちょっと台本ぽい
 感じがしたもので。

 なかなか面白かったです。


6時間後に君は死ぬ」 高野 和明 ★★★
10132581.jpg<br />  19歳で失明してしまった主人公の女子大生。その後母親を交通事故で失い、
 父親は失踪、残された彼女と2歳年上の決して仲の良くない兄が
 それからの12年間を交互に語ります。

 初めは仲の良くない兄妹ですが、お互いに全盲という障害を受け入れて
 行く過程で、いろんなことに遭遇しながらお互いを思いやれるように
 成長していきます。

 ただ、全ての疑問が解明されるワケではないので、そのあたりを
 不満に思う人もいるかもしれません。でも全てのことが明らかになる
 ことのほうが少ないんじゃないでしょうかね。

 なんでも明快な答えを今すぐ求めたがる風潮は、個人的には疑問に
 思います。

 良質の小説だと思います。


明日この手を放しても」 桂 望実 ★★★
02261669.jpg  (元?)外科医による医療エッセイです。

 初出が20年近く前ですが、内容は古びてはいないように思います。

 それはひとつは、医療に係わる普遍的なことが取り上げられている
 と言うことと、

 そしてもうひとつは、医療が仁術から算術へと変貌してしまった
 保険診療の弊害が未だに解決できていないと言うことなのでしょう。

 一方で、癌告知がタブー視されていることを著者は憂いていますが、
 これは最近ではずいぶんと変化したことの一例でしょう。

 エホバの証人の輸血問題も取り上げられています。これは難しい
 問題ですね。教義とはいえ、今時どんな宗教だって教義をきちんと守ったら現実問題として
 生活できないと思うんですが、しかしだからといって本人がそれで良いというのであれば
 それは尊重されるべきなんでしょうし。

 そして尊厳死の問題。著者の言う尊厳死の本質、

 「スパゲッティ状態さえ回避できれば、それが尊厳死というわけではない。尊厳死とは
  とどのつまり、どう生きたかに他ならない」(要約)

 という当たり前の主張に、ちょっとハッとさせられました。

 あと、単に読みやすいだけではなく、文章がしっかりしていて驚きました。


両刃のメス ある外科医のカルテ」 大鐘 稔彦 ★★★
5cacdc78.png  プラハが続きます。

 チェコという国は、こういう言い方はどうかと思うけれども
 少なくとも私にとってはあまりメジャーではないというか、 

 「プラハの春」「ビロード革命」あたりは知識としておぼろげに
 知ってはいるものの、果たしてどこまで判っているのか
 とても怪しく。

 で、この「プラハの春」であります。

 第二次大戦後ロシア軍によってナチから解放され、ソ連の指揮下で共産主義路線を取って
 きたチェコに、民主化の波が押し寄せる。強力なリーダー(第1書記)のもと、民主化を
 進めようとしたらなんとソ連が軍事介入して民主化を潰されてしまう、

 というのがざくっとした歴史ですが、この本ではその場所に第三者として居合わせた
 日本人外交官の目から事件の一連が、民主化を求める国民の熱意や、ソ連との緊張関係が
 徐々に高まっていく様、そしてなにより軍事介入の実際がリアルに語られています。

 そしてその中で国際ラブロマンスが展開されるのですが…。

 惜しい。なんとも惜しい。惜しいなんてもんじゃない。
 プロットもストーリィも、そしてなによりその目で見た歴史的事件をベースにしていると
 いうのに、文章が…。キャラクターの描き出し方が…。

 いちばん気になるのは、申し訳ないけど会話が台本みたいというか、棒読みのセリフのようで
 そこにキャラクターが感じられない。文章もあちこちひっかかる。 

 まあ文章のプロじゃないですしね。外交官の方のようだから仕方ないのでしょうけれども
 もう返す返すも惜しい。これをプロが書いたらそれは壮大な小説になったであろうに…。


プラハの春(上)」「プラハの春(下)」 春江 一也 ★★★
41FNPDFYYZL.jpg  チェコの歴史です。
 
 教科書のようにチェコの歴史を淡々と解説するのではなく、時代ごとに
 切り取って一人の人物にフォーカスすることにより、その時代のチェコを
 描き出しています。

 しかし複雑ですねこの国の歴史。それをよくここまで纏めたなぁ、という
 のが素直な感想です。プラハの春を初めとする近年の動向について、
 もうちょっと紙面を取って貰えると良かったんですが、そこまで詰め込む
 には新書ではちょっと難しいかも。

 良くも悪くも四方を海に囲まれていて、1,000年近く他民族の威力に
 さらされることのなかった島国の住民から見ると、地続きかつ他民族
 という状況は、リアルには想像しにくいものであるなぁと思います。

 プラハの地図を眺めながら読むと楽しいですね。


物語チェコの歴史―森と高原と古城の国」 薩摩 秀登 ★★★★
205307.jpg  ずいぶん前に、本人の著作である「流転の王妃の昭和史」を読んだことが
 ありますが、第三者の目から書かれた本書を読んでみます。

 国家を挙げての政略結婚とも言える、満州国皇帝溥儀の弟、溥潔に嫁いだ
 皇族とも縁続きの良家のお嬢様の波瀾万丈の人生ですが、それにしても
 なんとも美しい人ですね。

 彼女の波乱の人生に思いを馳せるとき、どうしても同時に思い起こされる
 のは彼女の長女、慧生の人生です。

 学習院大学の同級生であるボーイフレンドと天城山で自殺してしまいますが、
 果たしてこれは「心中」だったのか、それもと男性側による「無理心中」
 だったのか。

 真相を知ることはもちろんできませんが、ここに引用されている慧生が男性に宛てた手紙を
 読むと、彼女も孤独だったのだな、と思う。

 恐らく子供時代がなかったんじゃないだろうか。浩自身も「手のかからないとてもよい子」で
 あったと回想しているが、それは「子供らしくない子」ということとイコールだ。

 「子供らしい子供時代」を持てなかった子供は、生き急ぐと同時に、自分の中に着々と
 孤独を育んでしまう。ふくれあがる「孤独」はいつも、出口を切望して止まない。
 ボーイフレンドと出会った彼女は、一気に「出口」めがけてなだれ込んでしまったのではないか。

 しかし一方で、「孤独」+「恋」=「心中」という方程式が、どうしても彼女にしっくり
 来ないのも事実で。(心中を覚悟した手紙がありますが、それをもってして「心中」だとも
  言い切れないと思うのです)。

 母親の浩は、終戦後2年間も慧生の妹、嫮生をつれて中国の牢獄を転々としなければならず
 (慧生は日本にいた)、やっとの思いで帰国したものの戦後の日本を生き抜くのに精一杯、
 父親はソ連に拘留中とあっては、慧生がこれだけの孤独を抱え込んでしまったことについて、
 誰も責められるものではなく、陳腐な言葉ではあるけれど、時代に翻弄された一家、という
 ことに尽きるのかもしれません。

 唯一の掬いは、晩年の溥潔と浩が仲むつまじく暮らしたということと、妹の嫮生が幸せな
 家庭を築いたということですが、その幸せを手に入れるまでに受けなければならなかった
 試練の多さに、呆然としてしまいます。


愛新覚羅浩の生涯―昭和の貴婦人」 渡辺 みどり ★★★
1102906480.jpg  むむむ。
 これは、このタイトルはちょっと違うんじゃないでしょうか。

 タイトルからして、ERのインターンの話だと思っていたのですが、
 連作短編集なのですけれども、メディカルスクールを目指す恋人同士
 の破綻、メディカルスクールでの解剖学習をめぐるあれやこれやとか、

 その後もERそのものの話ではなく、ERに運び込まれた人の家族の話
 だったり、精神科や産婦人科ドクター、また航空救難ドクターに
 なってからの話など、そんな彼らを巡る話で(しかも彼らは個別独立
 して描かれる)、

 どれも話は悪くないのですが、タイトルはちょっと外れてるんじゃ
 ないかと…。

 翻訳がちょっと硬い感じでリズムを阻害されるときが結構あるんですが、
 全編通してちょっとひんやりした硬質な空気を感じます。

 「夜間飛行」がいちばん好きかな。


ER 研修医たちの現場から」 ヴィンセント・ラム ★★★
9784480065438.jpg  元刑事による、いろんな事件のケース集。
 捜査二課勤務が長かったようですが、自殺や泥棒、火災現場など、
 捜査二課担当である知能犯罪以外にもたくさんのケースが取り上げられて
 います。

 ただ、「あんな事件やこんな事件」はたくさん乗っていますが、後日談や
 「刑事論」は殆どなく、そう言う意味ではケース集以上のものではなく、
 一方で説教臭さや自慢話が鼻につく、ということもなく、
 
 現場の刑事の日常というのはこんなかんじなんだろうなぁ、というのが
 よくわかります。こういう刑事さんは、著者も杞憂するように減って
 きているんでしょうかね…。



刑事魂」 萩生田 勝 ★★★
01331071.jpg  『珠玉の』という形容詞がまさしくぴったりな短編集。

 著者自身が後書きで書いていますが、
 「エッセイでもノンフィクションでも小説でもなく、しかし同時に
  それらすべての気配を漂わせる」作品集。

 単行本の刊行は1991年と20年近く前ですが、まったく古さも
 感じさせません。

 相変わらず鋭い観察眼でいろんな人生を掬い上げていますが、
 その鋭さの片鱗も見せつけることなく、渇いた空気を感じさせながらも
 決して冷たいわけではなく。まったく羨ましい文章能力。

 どの短編も短いですがそこにはどれも濃縮された「人生」が詰まっています。
 個人的には「手帳」と「ネクタイの向こう側」「大根を半分」が、特に
 この著者らしい良い作品だと思います。


彼らの流儀」 沢木 耕太郎 ★★★★★
bar code.
search.
※ 忍者ブログ ※ [PR]
 ※
Writer 【もなか】  Powered by NinjaBlog