本はごはん。
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ううむ。ううむ。
全てが明らかにされる訳ではなく、(ミステリーではないですが)謎は謎の
まま放り出されており、人によっては消化不良かもしれません。
しかし私はこういうの嫌いじゃないです。本来読書というのは
「自分の頭で考える」ことだと思うので。
心に残る、印象的なフレーズも結構出てきます。
そういうのはすごく良いと思うのです。
が。
なんというか、(他の著書も含め)ちょっとパターン化してきてやしないか…
というのが正直な感想でもあります。
うーん、悪くないんだけどなぁ。
「誰の中にでもいる彼」 蓮見 圭一 ★★★
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著者自ら記しているように、まだ臨床経験も浅い時代であり前のめりな感は
多少あるものの、総じて誠実な医療行為者であると思います。
精神科であってもERである以上、施せるのは急場の治療であって翌日には
指定された病院へ転送されなければならず、治療を継続しながら患者の
その後を見届けることができないためか、臨床例はそこそこあるものの、
もうちょっと突っ込んでほしかったというのが正直なところです。
電気ショック療法については、偏見によって遠ざけるのではなく、
もっと議論されるといいのにと思います。
「精神科ER 緊急救命室」 備瀬 哲弘 ★★★
とにかく心中ものの名作が6本、一度に読めます。
しかし「心中」とひとくちに言っても、親子心中もあれば、別々の場所で
同時に死を選ぶもの、どちらかだけが生き残ってしまったなどの様々な
ケース、また戦後の混乱期を背景にした物や、愛の不思議をベースに
した物など、「心中」に至る道もまた色々です。
後書きで「心中小説を書いているのは男性作家が圧倒的に多い」という
コメントがあって、それにはなんとなく納得したようなしないような。
やっぱり女性の方が現実的なんでしょうか。
巻頭の川端康成の「心中もの」が圧倒的な力を持って迫ってきます。
「心中小説名作選」 藤本 義一 ★★★
不条理ものとかナンセンスものとかって、かなりの筆力が要求されると
思うんですが、ものすごい展開なのにちゃんと収めていてすごい。
ナンセンスなんだけど、話はぶっ飛んだりしてるんだけど、細部がきっちり
詰めてあったりして、そのあたりも面白い。
短い作品はほんの数ページだったりするんですが、星新一を彷彿とさせる
雰囲気も漂っています。
最後の短編「送りの夏」はすごくいいんですが、主人公の女の子がちょっと
子供らしくなくて、そこだけがすこし残念。
他の作品も読んでみようかな。
「バスジャック」 三崎 亜記 ★★★★
結構丁寧に追っているとは思うんですが、1冊に14件の事件が取りあげ
られているというところからも判るように、ひとつひとつの事件に割かれて
いるページが短かい。
今の時代、ネットで裁判状況なんかもかなり詳しく読めたりしますので
本にはやっぱりそれ以上の物を無意識に期待しています。
そういう意味では、渋谷のセレブ妻が夫を殺害した事件なんか特に、
ちょっと薄い感じで残念です。
逆に言えばどの事件もコンパクトに纏められていて全体像は掴みやすいん
ですが、ちょっとワイドショーチックな感じがしないでもない。
一方で、中国人妻が、自分の子供の幼稚園友達である幼児2人を刺殺して
しまった事件は、あまり報道されなかった(ように思う)部分や、背景にある
文化的思想的違いなどについても検証されていて、良かったと思います。
事件の背景にはそれぞれの家庭との確執が横たわっていたりするわけですが、どこの家庭にも
多少なりとも確執はあるわけで、その「確執」と「行為(殺人)」の間にはそれなりの壁も
あるんじゃないかと思うんですが、その「壁」を超えさせてしまうものって何なんだろう、
と考えてしまいます。
もちろん、そのひとそのひと、それぞれなんでしょうが。
「悪魔が殺せとささやいた―渦巻く憎悪、非業の14事件」 新潮45編集部 ★★★
それ以来かなり久しぶりです。
フランス革命の始めから終わりまで時系列に紹介されていますが、とても
判りやすい。かといって「簡単」に紹介されているわけではなく、たくさんの
人がエピソードも交えて紹介されており、また一度だけでなく何度か繰り返し
出てきたりするので、その人物像を重層的に掴みやすい。
有名なフランス革命であるがためか、ルイ16世は「ふがいない人」
ロベスピエールは「恐怖政治を行って沢山の人をギロチンに送った残酷な人」
みたいなステレオタイプなイメージがついちゃってるように思いますが、
そのひとの本来の(であろう)姿、何故そうなってしまったかなど、いわゆる
再評価がきっちりされています。
歴史的事実としてのフランス革命だけではなく、本来のフランス革命の「理想」とか、男性の
女性に対する矛盾した真理とか、革命政府の本音と葛藤などもきちんと描かれているため、
厚みのある歴史検証となっているように思います。
しかし「サンージェストのファンクラブが東京にある」というのには驚きました。
「物語フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで」 安達 正勝 ★★★★
ドキュメンタリーです。
犯人の男は自閉症という障害を持っていたようですが、メディアで報道される
こともなく、裁判は「自閉症」という障害を認めずに進行していく様を丹念に
追っています。
障害者だから減刑されるべき、という論調にあるのではなく、被害者遺族の
感情にも寄り添いながら、障害を持つ者が事件当事者となった場合の公平な
裁判のあり方、について考察しながら論を進めています。
愛されて育ちながら突然生命を奪われた女子大生と、この事件によって
見いだされ、福祉の手当てを受けながら短い生を終えた、末期ガンを抱えた
レッサーパンダ男の妹。この二人の女性の存在がなんとも運命的です。
総じて「渾身のドキュメンタリー」という感がありますが、残念なのは文中にちらちらとその
影を認めつつ、最後まではっきりとは書かれなかった、被告人が「ある人と知り合ってから
(自分は)変わった」「結婚したい」と言っている女性の存在です。
まあプライバシーの問題もあるでしょうし、弁護団や支援団体と意見が合わなかったのかどうか
判りませんが、この女性の存在はおそらく大きな影響を持っていたであろうと想像され、
そのあたりについて言及がないのは残念です(文庫版後書きには少し出てきます)。
しかしこの手のドキュメンタリーで共通してあぶり出されるのは、ひとつは「裁判」そのものの
ありかたで、つまり「裁判」とは真実を明らかにして罪の重さを「刑罰」にあてはめるもの
ではなく、より重い罪を追求する検察側とより軽い罪を目指す弁護側との闘いであって、
その闘いの前に「真実」は下手をすると作り替えられもする、ということです。
それからメディア。
この本でもメディアの報道についての批判が書かれていますが、最近のメディアに関わる人たち
は、このような批判を見ても何とも思わないんじゃないかしら。
ひと昔前のメディアに関わる人間であれば、激怒しそうなことでも、
「だって世間がそうなんだから仕方ない」とか平気で言いそうな気がする。
現在のメディアは、そのくらい末期的なんじゃないかと思ってしまうのです。
つまり、現代はコマーシャリズムはあっても、メディアは既に死んでいるのではないか、と。
「自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」」 佐藤 幹夫 ★★★★
読んでみましたが。
たしかにずいぶん刺激的ですね。
「意志を持たない」「欲望をもたない」そうなったとき人は、だれかの
思うままに振る舞うほか、生きようがないのかもしれない。
それに「孤独ではない」状態を知らないと本当の「孤独」は判らないのかも
しれない。
「孤独ではない」状態を知らず「孤独」状態が続いたらそれは本人にとって
「普通」のことなんだろう。
とっても淡々と、透明感のあるイノセンスな、かつ孤独な世界。
「履き忘れたもう片方の靴」 大石 圭 ★★★
著者はドイツ文学者が本業(?)ですが、私はずいぶん昔に
「ハラスのいた日々」を読んだことがあるくらい。
もしかしたら「カフカ」はこの著者が翻訳したのを読んだのかもしれませんが。
ガンが見つかり入院するまでの1ヶ月ちょっと。その間の心の動きが記されて
います。放射線や抗ガン剤による治療は医療的拷問であると考え、自宅で
静かに過ごしたいと著者は当初考えていましたが、刻々と変化する体調に
入院を決意したり、
セネカの翻訳を通して強い精神力を得たと思っていても、「良医がいる」と
聴くとその医者にかかろうとしたりおよそ人間的です。
そしてそのなかでもやはり、「死」を現実視せざるを得ないがためか、親族や犬、友人たち
との縁や「命」への温かい眼差しが際だっています。
「死に際しての処置」として、12項目について指示した遺書のようなものも掲載されて
いますが、それが清々しいほどきっぱりと、凜としています。特に最後の4行。
そして、本当に美しい日本語で綴られているのがとても印象的でした。
「ガン日記―二〇〇四年二月八日ヨリ三月十八日入院マデ」 中野 孝次 ★★★
刑事としても人間としても成長していく姿が描かれています。
しかしあまりにリアルで、捜査本部が作られていく様とかその影響とか
一斉指令が流れたときの刑事たちの反応とかとにかくリアルでびっくり
したのですが、著者は警視庁の警部補だった人なんですね。
ものすごい仕掛けがあるわけではなく、むしろ淡々と綴られています。
捜査や法律の限界みたいなものも表現されていますが、かといって
救いがないというわけでもありません。
残念ながら著者は数年前に亡くなってしまわれたようで、もう新作は
読めないんですね。
「ショカツ」 佐竹 一彦 ★★★★
サービスの達人たちを紹介しています。
もちろんみんな「お客様の立場にたって」いろいろ考えて行動して
いらっしゃる訳で、でもこれって、頭では判っていても実行するのは
なかなか難しいことだと思います。
「お客様」とひとくちに言ったところで人それぞれなわけだし、つまりは
個別かつ瞬時に客を見極めて、そのひとに合ったアプローチでサービスを
提供しなきゃいけない。かなり頭を使うんですよね。
相手の立場に立って考えるということは、しっかりした「観察力」の上に
「想像力」があって初めて可能になることであって、これって相当難しい
ことだと思うのです。
あと、これを読んでいて、あるクライアント(の社長)が言っていたことを思い出しました。
雑談中のことで、どんな話の流れからそうなったのか記憶が定かではないですが、
「邪念が混じると(ビジネスは)失敗するよね。」
つまり、軸をぶらしてはいけない、と。
そういう意味でも、ここに登場する人たちはまったくぶれがなく、そして誠実です。
伝説のゲイバーのママの話と、靴磨きの源ちゃんの話が特に好きです。
「サービスの達人たち」 野地 秩嘉 ★★★
よってそれぞれ結果(診断)が分かれるケースも少なくないように、
やはり精神疾患というものの判断がいかに難しく、ましてやその原因の
特定などは、限りなく不可能に近いのが現状であるのだと思います。
一方でというか、それであるが故になのか、擬態鬱病のように精神疾患を
言い訳のように、逃げ道に使う人も出てきているのが実態だと思うのです。
この本では「PTSD発言」をした芸能人なんかもばっさり斬っていて、
なかなか気持ちがいい。
「アダルト・チルドレン」だって、親との関係に於いて何の問題もな
かった人って存在するんでしょうか?
しかし自分はアダルト・チルドレンであるってことに「してしまえ」ば、
今の自分の生きにくさも不幸な境遇も郵便ポストが赤いのも全ては親の
せいにできますからね。
最近何かと言えば「心のケア」と言いますが、心にだって自己治癒能力があるはずで、それを
適正に鍛えないから些細なことで「傷ついた」と大騒ぎするひとが増えてるんじゃないで
しょうか。だから「心のケア」が必要以上に「行きすぎる」ことは、返ってマイナス
なんじゃないかと思ってしまうんですが。
一方で本当の精神疾患を患っている人およびその周辺のひとたちの深刻さもこの本からよく
わかります。かなり臨床症例が豊富です。
「片付けられない女たち」が流行った頃、「自分もADHDではないか」という女性患者が増えた
そうですがその多くは、
「ADHDのせいにするんじゃない! お前がずぼらなだけだーっ!!」
と言われるんじゃないでしょうか、もちろんあたくしも含めて。
それにしても。
よく「精神疾患チェック表」みたいなみたいなものがありますが、そういったものの設問の
文章って、占いの文章と似てるなぁといつも思います。
誰でも当てはまりそうなことばかり書いてあるような気がするところが。
「狂気の偽装―精神科医の臨床報告」 岩波 明 ★★★★
すれ違いの生活の中でお互いにメモを書き冷蔵庫に貼る。
その「メモによる会話」形式のストーリィです。
こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、ストーリィ自体は良くある
話です。
しかし「メモによる会話」という形式が最大限に活かされていると思います。
「これを買ってきておいて」という買い物リストのメモなどの狭間から、
母親が自分の身体に起こった不幸をどう娘に伝えるか逡巡する様子や、
若い娘はその母親の逡巡に一向に気づかず、失くした鍵やお小遣いや、
ボーイフレンドのことで大忙しである様なんかがよく伝わってきます。
なにしろ「メモ形式」ですからあっという間に読めてしまうんですが、
おそらくこれだと原文(英語)で読めるんじゃないかな。
「冷蔵庫のうえの人生」 アリス カイパース ★★★
ニューヨークやそこに住む人々についてのエッセイです。
「はじめに」にこの本についてのエッセンスが全て抽出されています。
東京では考えられないような、フレンドリーなコミュニケーション。
それに尽きると思います。
以前何かで、「アメリカ人が誰にでもフレンドリーに声をかけるのは(移民の
多い国であるために)自らをオープンにして語りかけることにより、自分は悪人
ではないとアピールするため」
という説を目にしたことがありますが、由来はどうあれ、
オープン・コミュニケーションはアメリカ人のひとつの特徴なのでしょう。
しかしこれはちょっと見方を変えれば「お節介」だったり「出しゃばり」だったりもするわけで、
そのへんがちょっと難しいんじゃないでしょうか。特にあたくし、もともと交友範囲を広く
したいという願望自体ないし、なかなか馴染めなような気もする。引きこもり気質ですしね。
しかしその一方で、こういったコミュニケーションに対するちょっとした憧れというか羨望と
いうか、そういう一種矛盾した感情も自分の中に見いだしたりもするのであります。
大体の話が見開き2ページで完結しており、とても読みやすいです。
そして必ずちょっとした英語のセンテンスが解説と共に入れ込まれていて、どれも簡単な
ものでありながら「ふーん、こんな言い回しをするんだ」と思うものもあり、なかなか面白い。
あたくしの独断と偏見により、薄っぺらい「癒し」とか「やさしさ」とかをウリにしている
「イメージ」「匂い」を感じるものは基本的に避けて通るのですが、
そしてこの本も「それ系」ではないかと思ったんですが、そうでもなかったです。
「ニューヨークのとけない魔法」 岡田 光世 ★★★
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